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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

自衛隊リクルートCM(2015年版)を見る~若者をだましてはいけない

軍事 社会
 今晩(2015年8月3日)配信した「メルマガ金原No.2171」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自衛隊リクルートCM(2015年版)を見る~若者をだましてはいけない

 私の母方の血縁の叔父が2人まで元自衛官(いずれも陸上自衛隊)であったことは、過去何度かこのメルマガ(ブログ)に書いたことがありました。
 私が小学校低学年か中学年であった頃、和歌山の実家に帰省した制服姿の下の叔父に遊んでもらったかすかな記憶がありますので、2人の叔父が陸上自衛隊に入隊したのは、昭和29年(1954年)の自衛隊発足からそれほど経っていない頃であったのは間違いありません。何しろ、私自身が自衛隊と同じ昭和29年生まれなのですから。

 2人の叔父が何故自衛隊入隊を志願したのか、直接尋ねたことはありません。
 しかし、10年以上前、私の母が亡くなった時にかけつけてくれた叔父(自衛隊に行った2人の叔父の
上の方)から聞いたところでは、戦後間もなく連れ合いを喪い、私の母を年頭とする6人の子どもを抱え寡婦となった私の祖母は非常に苦労したということでした(だから私は祖父の顔も知りません)。
 その叔父が高校に入学した時、既に働いていた私の母が、「これだけしかしてやれない」と言って、乏しい給料の中から工面して制服とカバンを買ってくれたことがどんなに嬉しかったことか、という話を叔父から聞き、思わず涙をぬぐったものでした。
 もちろん、当時「経済的徴兵」などという言葉はありませんでしたが、母の弟2人(二男、三男)が自衛隊に入隊した事情として、家の経済問題があったことは間違いないでしょう。高度経済成長はまだこれらという時代でした。
 
 その自衛隊も昨年(2014年)創立60年を迎え、志望動機や採用倍率なども発足期とはおそらく大
きく様変わりしていることと思います。
 自衛隊ウォッチャーでも何でもない私には、せいぜい「防衛白書」に記載されている程度のことしか分かりません。
 
 
 ここでは、上記「防衛白書」に、「また、地方公共団体は、募集期間などの告示、広報宣伝などの自衛官の募集事務の一部を行うこととされており、防衛省は、そのための経費を地方公共団体に配分している。より質の高い隊員を確保していくためには、地域に密着した地方公共団体による募集協力を含め、募集活動をより充実させていくことが不可欠である。」とある部分の根拠法令を、少し長くなりますがご紹介しておきます。こういうことになっているって、知らない人が多いでしょうから。
 
自衛隊法施行令(昭和二十九年六月三十日政令第百七十九号)
第七章 雑則
(募集期間の告示)
第百十四条 二等陸士として採用する陸上自衛官(第百十七条において「二等陸士」という。)又は陸上
自衛隊自衛官候補生の募集期間は、防衛大臣の定めるところに従い、都道府県知事が告示するものとす
る。
(応募資格の調査及び受験票の交付)
第百十五条 市町村長は、前条の募集期間内にその管轄する市町村の区域内に現住所を有する者から志願票の提出があつたときは、その志願者が防衛省令で定める応募年齢に該当し、かつ、法第三十八条第一項に規定する欠格事由に該当しないかどうかを調査し、応募資格を有すると認めた者の志願票を受理するも
のとする。
2 市町村長は、前項の志願票を受理したときは、これを当該市町村を包括する都道府県の区域を担当区域とする地方協力本部地方協力本部長に送付し、これらの者と試験期日及び試験場について協議の上、
志願者に受験票を交付するものとする。
(応募資格の調査の委嘱)
第百十六条 市町村長は、前条第一項の志願者の本籍が当該市町村にない場合には、同条同項の調査を志
願者の本籍がある市町村の市町村長に委嘱することができる。
(試験期日及び試験場の告示等)
第百十七条 都道府県知事は、当該都道府県の区域を警備区域とする方面総監と協議して二等陸士又は陸上自衛隊自衛官候補生の採用試験の試験期日、試験場の位置及び名称その他必要な事項を定め、これを
告示するものとする。
2 都道府県知事は、自衛隊が管理する場所、施設又は器具(以下この項において「場所等」と総称する。)以外の場所等を二等陸士又は陸上自衛隊自衛官候補生の採用試験のため使用しようとする場合には、都道府県知事の管理する場所等又は他の者の管理する場所等をその管理者と協議の上、自衛隊に使用さ
せるものとする。
(海上自衛官、航空自衛官等の募集事務)
第百十八条 都道府県知事及び市町村長は、第百十四条から前条までの規定の例により、二等海士として
採用する海上自衛官若しくは二等空士として採用する航空自衛官又は海上自衛隊若しくは航空自衛隊の自
衛官候補生の募集に関する事務を行う。
(広報宣伝)
第百十九条 都道府県知事及び市町村長は、自衛官又は自衛官候補生の募集に関する広報宣伝を行うもの
とする。
(報告又は資料の提出)
第百二十条 防衛大臣は、自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知
事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。
 
 昨年7月1日の閣議決定国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について)の直後、全国の18歳の高校生らに一斉に自衛隊から募集案内が送られ、あまりのタイミングの良さに(?)、「自衛隊から赤紙が来た」と話題になりましたが(2014年7月5日付・しんぶん赤旗)、何も昨年から始まったことでも何でもなく、従来から行われていた求人活動の一環であり、自衛隊に対する市町村長による戸籍情報の提供は、上記自衛隊法施行令第120条が根拠と考えれば良いのだろうと思います。
 
 なお、上記赤旗の記事の中に「防衛省は1日、募集案内の発送と同時に人気アイドルグループのAKB48のメンバー出演の自衛官募集CMを全国放送しました。」とあるのは昨年のことで、今年の自衛隊リクルート隊長(という辞令が交付されているらしい)には女優の壇蜜さんが起用されています。
 
任命!自衛隊リクルート隊長 壇蜜(1分26秒/陸上自衛隊広報チャンネル)
 

 調べてみると、「自衛官募集ホームページ」という専用サイトがあるのですね。
 そのトップページには、「自衛隊CM特集」のコーナーがあり、今年度のリクルート用に壇蜜さんを起用して作られたCM(や広報ビデオ)が集められています。
 基本となるCMには、陸上・海上・航空の3自衛隊ごとに作られた15秒ヴァージョンと、陸海空統合の30秒ヴァージョンがありますが、ここでは統合版のナレーション部分を文字起こししてみます。
 
平成27年度自衛官募集動画(30秒)

何気ない、でも
「人の役に立ちたくて」(男性海上自衛官
かけがえのない暮らしを守るため
「はじめは少し不安でした」(女性航空自衛官
今日もどこかで、その汗は流される
「自分も何かできるはずって」(男性陸上自衛官
この今を、未来を、守る
陸、海、空、自衛官募集
まずは
 
 この30秒CMを見て、皆さんはどんな感想を持たれるでしょうか。
 おそらく、大手広告代理店が落札して作ったもので、ナレーション部分だけではなく、「人の役に立ちたくて」「はじめは少し不安でした」「自分も何かできるはずって」という自衛官の台詞部分も構成作家が書いたものでしょうが、それなりに、実際の自衛官の正直な気持ち(の一部)をすくい取っているのだろうということを、あえて否定する必要はないと思います。
 しかし、誰が考えても憲法違反の安保関連法案を、政府与党が無理矢理にでも成立させようとしている最中(さなか)に放映されるCMがこれでは、「若者をだましてはいけない」と言わざるを得ません。

 「人の役に立ちたくて」「自分も何か出来るはず」と思って自衛隊に入隊した自衛官に、生命をかけて「米軍の役に立つ」兵站任務を遂行するよう命じることのできる法律を作ろうとしているのですから。
 「かけがえのない(日本人の)暮らしを守るため」に入隊した自衛官に、日本が武力攻撃を受けた訳で
もないのに、「米国を守るために」海外で武力行使することを命じることができる法律を作ろうとしているのですから。
 「この今を、未来を、守る」というキャッチコピーを考えたコピーライターに聞いてみたいですね。自衛官に「誰の」未来を守らせようというのかと。
 
 もっとも、自衛隊に志願しようかと考える若者は、大人が心配するまでもなく、十分に「自衛隊の変質」を把握しているのかもしれません。「変質」を十分に認識した上で、あえて自衛隊を志願する若者も一定数存在するのだろうとは思います。それはそれで恐いことですが。
 それでも、やはり言いたい。「若者をだましてはいけない」と。