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「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」の声明を批判的に読む~公開討論に備えて

 今晩(2015年8月18日)配信した「メルマガ金原No.2186」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」の声明を批判的に読む~公開討論に備えて

 人は、自分と異なった立場の意見を積極的に知ろうという努力は普通しませんよね?別に意識的にそうしているつもりはなくても、自分の考えに近い、共感できる意見や情報はどんどん入ってくるけれど、逆
はそうではないですよね?
 特に、Facebooktwitterなどから専ら情報を仕入れていると、意識的あるいは無意識的にフィルターをかけた情報しか入ってこないのが普通です。私もFacebookをやっていますが、友達リクエストが届いても、思想的に共感できる要素が全くなさそうな人からのリクエストは承認する気になりませんもの。からまれたりしたら鬱陶しいですからね。
 従って、こういう傾向になることもある程度仕方がないのかなとは思うのですが、一番の問題は、こういう事態が恒常化すると、国民の間における「議論」が成り立たなくなるのではないかということです。
 とはいえ、今さら櫻井よしこ氏や曾野綾子氏の著書を買い込んで勉強しよう、などという気に全然なら
ないのは仕方がないと我ながら思いますけど。
 
 ところで、なぜこんなことを書いているのかというと、本当に実現するかどうか半信半疑ながら、「安保法案」“賛成派”と“反対派”が2人ずつ登壇して公開討論を行う(一種のディベートでしょうね)という企画が進んでおり(和歌山県下でです)、“反対派”の1人として出演してくれないかという打診に対して「いいですよ」と安請け合いしたものの、「一体“賛成派”って、どんな主張をするんだろう?」ということが全然イメージできないことに気がついたのです。
 そもそも、“安保法案”は政府提出法案ですから、「内閣の主張は正しい」というのが“賛成派”の基本的立場なのでしょうが、その「内閣の主張」というのが、国会審議を見ていても訳が分かりませんから。
 もちろん、“賛成派”が支持しているであろう基本文献というものはあります(そうだろうと思います)。例えば、最低限以下の文書は、公開討論に出ようというからにはもう一度しっかり読んでおかねばならないでしょう(そんな時間があるかが心配ですが)。
 
 
 
 
 それに、何より「安保法案」自体ですよね。
 
 さて、これだけでは“賛成派”がどういう論戦をしかけてくるかを想定するには不十分です。正直、TVの政治討論番組など見たくもないので、「TV論客」がどんなことを言っているのかなど全然知らず、あまり時間もないので「困ったな」と思っていたところ、ちょうど良い記事を見つけました。
 
産経ニュース 2015.8.13 20:28
「戦争抑止のためであり、戦争法案ではない」 櫻井よしこ氏ら、早期成立へ声明

(引用開始)
 ジャーナリストの櫻井よしこ氏ら保守系有識者らが13日、「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」を設立し、「安全保障関連法案は戦争を抑止するためであり、『戦争法案』ではない。一刻
も早く平和安全法制を確立することを強く要望する」との声明を発表した。
 フォーラムの設立は櫻井氏や杏林大の田久保忠衛名誉教授らが呼びかけ、11日までに大学教授や弁護
士、財界人ら318人が賛同。13日に都内で行われた記者会見には、櫻井氏ら約90人が出席した。
 櫻井氏は記者会見で「国会で議論されている安保法制の実現こそが、戦争の危険性を下げる」と安保関連法案の意義を強調。「徴兵制の導入につながる」との批判があることについて「いかなる知的基盤に基づいているのか非常に理解しにくい」と非難した。田久保氏も安保関連法案を違憲とする主張に対し「国
際情勢に疎い人たちが低い次元で問題を論じている」と断じた。
(引用終わり)
 
 これまで、集団的自衛権行使容認や7・1閣議決定に反対する立場の団体の「声明」や「提言」は数々フォローしてきましたが、“賛成派”の論客を結集した(と言えるのかどうか、あちらの陣営の内情に疎いので断言はできかねますが)団体の「声明」というのは読んだことがなく、是非目を通しておこうと調べてみることにしました。
 ところが、どうも「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」自体のホームページはまだ開設されていないようなのですね(私が見つけられないだけかもしれませんが)。
 そして、ようやく「声明」全文を掲載しているサイトを見つけました。日本会議ホームページの中の「国民運動」コーナーです。あまりにも「いかにもね」というところですが。
 全文引用します。
 
(引用開始)
国会に対し、わが国の安全保障を見据えた審議と、平和安全法制の早期成立を要望する
 
 現在、国会で行われている平和安全法案の審議は、集団的自衛権の限定的容認をめぐる政府見解の合憲性や過去の政府解釈との整合性など、憲法解釈論争に焦点がおかれている。だが、最も重要なのはわが国周辺の安全保障環境の変化に着目し、現実的な審議をすることである。
 集団的自衛権の行使は、国連憲章五十一条によってすべての加盟国に認められた国際法上の権利である。日本にも当然、認められている。ただ、わが国には自衛力を超える「戦力の不保持」を定めた憲法九条二項がある。従って、行使に一定の限界を設け、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する」
(九条一項)という国民の願いに合致する内容でなければならない。
 政府が新三要件で示した「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底からくつがえされる明白な危険のある場合」に限り、集団的自衛権の行使を容認するとの見解は、この意味で明らかに憲法の許容範囲内である。また日本が主権国家として「固有の自衛権」を有し、「必要な自衛
の措置」を取り得ることを認めた砂川事件最高裁判決の法理に照らしても、まったく問題はない。
 今、わが国周辺の安全保障環境は激変しつつある。オバマ米政権は内向き志向を強め、軍事費を大幅に削減する一方で、一昨年九月には「米国はもはや世界の警察ではない」と宣言した。これに呼応するように、中国は国際法を無視した「力による現状変更」に拍車をかけ、南シナ海では、近隣諸国からの強い抗議をよそに七つの岩礁を埋め立て、三千メートル級の滑走路も建設した。東シナ海でも、日本との中間線上付近に十六基のガス田用のプラットフォームが確認され、軍事転用される危険もある。これらの海域はわが国にとって重要な海上輸送路であり、中国による軍事支配は、航行の自由を脅かし、国民生活を根底からくつがえすことになりかねない。また、北方四島を不法占拠しているロシアはクリミア半島を併合し、武力による露骨な領土拡張政策を推し進めている。北朝鮮は核開発を進め、日本海に向けて弾道ミサイ
ルを何度も発射している。
 このような現状を見れば、平和安全法制の整備こそ急がれる。日米安保条約を緊密にし、抑止力を高め
ることが大事である。
 平和安全法案は戦争を抑止するためであり、「戦争法案」ではない。にもかかわらず、「徴兵制に行き
着く」などとあり得ない危機を煽るのは、無責任であり、非現実的である。
 国会において真にわが国の安全保障を見据えた審議を行い、一刻も早く平和安全法制を確立することを強く要望する。
 
平成二十七年八月十三日
平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム

(引用終わり)
 
 一読した上での正直な感想は、「え、これだけ?」、「他に言うことはないの?」というものですが、記者会見の動画を全編視聴すれば、もう少しまともな(こちらが反論に窮する)意見を述べている人がいるかもしれませんので、即断するのは控えておきましょう。
 以上の「声明」は、以下のような構成になっています。
 
第1段落 憲法解釈論より安全保障環境論の方が優位であるべきという立論
第2段落・第3段落 「安保法案」合憲論
第4段落 わが国周辺の安全保障環境の激変(米国のプレゼンスの低下、中国の拡 張主義、ロシア
による北方四島占拠、北朝鮮の弾道ミサイル)
第5段落 上記に対処するためには日米安保条約の緊密化が必要
第6段落 「徴兵制に行き着く」という主張への反論
第7段落 結論(一刻も早い平和安全法制の確立を
 
 以上、ざっと内容を要約する作業をしたおかげで、「もしも公開討論で“賛成派”がこういう主張をしてきたらこう返そう」という心構えができたのは有意義でしたね。
 その心構えの内容を一々書く必要もないでしょうが、それにしても、クリミア併合をだしにしているとはいえ、ロシア(ソ連)が「北方四島を不法占拠」しているのは1945年以来ですよ。どこが安全保障環境の「激変」なんだろうと笑ってしまいましたけれど(さすがにこれは「ヒゲの隊長」も自民党広報アニメで言っていなかった)。
 
 なお、この「声明」が発表された憲政記念館での記者会見の動画とその文字起こしをご紹介しておきます(西修氏の分だけは文字起こしはありませんでした。その値打ちはないと思われたんだろうか?分からないでもないが)。
 たまには、あちら側が何をどう主張しているのか、認識しておくのも無駄ではないと思います。
 
8月13日「平和安全保障法制の早期成立を求める」記者会見(公式動画)

8/13:平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム質疑応答(前半)

8/13:平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム質疑応答(後半)

(余談)ところで、上記で文字起こしをご紹介したのは「聞文読報」(どうやら「ブンブントクホウ」と読むようなのですが)という、今年の7月に開設されたサイトで、「アバウト」や「プロフィール」などはなく、単に「聞こえる言葉を文字に起こし、目で聴く読み物に変えて発信します。」とあるだけなので、サイトの方向性はいまひとつはっきりしませんが、上記「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」記者会見をはじめ、「『ザ・ボイスそこまで言うか!』木曜日コメンテーター 青山繁晴(全文)」とか、「ダウンタウン 松本人志 平和安全法制関連法案(いわゆる安保法案)についての持論(まとめ)『ワイドナショー』」などが文字起こしされており、そういう発言を「発信」することに意義を感じる人が運営しているサイトのようです。
 私としては、「みんな楽しくHAPPY♡がいい♪」の更新がここ1ヶ月止まっているのが気になる今日この
頃、手強いサイトが出てきたな、と正直思ったりしています。