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日本会議「安全保障関連法制問題に関する見解」(7/6)を批判的に読む~「安保法案だよ全員集合!」(9/12和歌山県田辺市)に備えて

 今晩(2015年9月5日)配信した「メルマガ金原No.2204」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
日本会議「安全保障関連法制問題に関する見解」(7/6)を批判的に読む~「安保法案だよ全員集合!」(9/12和歌山県田辺市)に備えて

 1週間後の9月12日(土)、和歌山県田辺市で開催される「安保法案だよ全員集合!」というイベントに私が出演することになっているということは、既にこのメルマガ(ブログ)でご紹介したところです(「安保法案だよ全員集合!」(9/12和歌山県田辺市)に注目を~賛成派・反対派それぞれの意見を聞く/2015年8月31日)。

日時 2015年9月12日(土)10:00-12:00
会場 田辺ひがしコミュニティーセンター

    (和歌山県田辺市南新万28-1/TEL:0739-22-2088)
気になるけどよく分からない。どうなるんだろう?
反対派・賛成派のパネリストを招いての座談会です。
みんなの暮らしに関わるこの法案について色んな意見を聞いて一緒に考えませんか?
主催・お問い合わせ 安保法案だよ全員集合実行委員会
090-6916-5990(小池)、090-1733-5380(笠松
 
 それを書いた時点では、まだ安保法案賛成派としてどなたが出演されるのか聞いていなかったのですが、その後、主催者から出演者(パネリスト)が確定したというお知らせがあり、Facebookのイベントページにも告知されました。
 
【賛成派】
大倉勝行氏(日本会議紀南支部長)
山本  浩氏(日本会議紀南支部事務次長)
【反対派】
小池佳世氏(9条ママnetキュッと世話人代表)
金原徹雄(弁護士)
 
 私自身、賛成派のお2人と面識はなく、経歴も存じ上げないのですが、大倉勝行さんが元田辺市議会議員であったと聞き、少し調べてみたところ、2009年の田辺市長選挙が、現職圧倒的優勢で無投票当選になりそうであったところ、それを阻止するために敢然と立候補したのが大倉さんであったことが分かりました。
 
 さて、当日の進行ですが、あらかじめ主催者が設定した数個の論点について、各パネリストが意見を述べるとともに会場からの意見や質問も受け付ける、パネリスト同士の対論も少しは予定するということのようです。
 今回私は反対派の1人として出演するのですが、司会者(コーディネーター)でなくて本当に良かったと胸をなでおろしているところです。反対派のパネリストとしてなら、言いたいことはいくらでもありますから、時間配分に気をつけて、また小池さんの発言と極力かぶらないように注意すれば良いのですが、司会者は大変だろうなあと思いますもの。
 
 毎日、メルマガ(ブログ)を書くのに時間をとられ、12日のための事前準備が十分にできそうもなく、ほとんど出たとこ勝負になりそうな予感がするのですが(それでも、太田啓子弁護士に教えてもらったアンチョコ~倉持麟太郎弁護士の日刊ゲンダイ連載「安保法案の欠陥を衝く」全20回~はしっかり印刷しました)、賛成派のお2人が日本会議紀南支部の支部長と事務次長であるからには、日本会議の安保法案についての公式見解くらい事前に読んでおくのが礼儀というものでしょう。
 ということで、調べてみたところ、去る7月6日付「安全保障関連法制問題に関する見解」日本会議が公表していました。
 安保法案反対派の人で、わざわざ日本会議の見解を読もうという人は少ないでしょうが、安倍内閣の思想的バックボーンとも言われる日本会議の見解を知っておくことも無駄ではないでしょう。
 以下に全文を引用します。
 
(引用開始)

平成27年6月4日の衆議院憲法審査会で、自民党推薦の憲法学者参考人全員が国会で審議されている安全保障関連法案を「従来の政府見解の枠を超える」などとして「違憲」としたことから、反対派が勢いづき審議が難航することとなった。この結果、通常国会の大幅延長、また憲法審査会の審議中断という事態となった。
 
そもそも集団的自衛権については、国連憲章51条において主権国家が持つ固有の権利とされている。この51条に関して、わが国は国連に加盟するにあたって何の留保条件もつけてはいない。日本が留保なしで国連憲章51条を受け入れ、また憲法9条が明示的に集団的自衛権を禁止していない以上、憲法9条の下においても、集団的自衛権を含めた自衛権の行使は当然認められる。昭和34年の砂川事件最高裁大法廷判決も、米軍駐留および日米安保条約という集団的自衛権にかかわる事案において、わが国が主権国家として「自衛権」を有し、「必要な措置」を取り得るとしているのである。
 
しかも今回国会に提出された安全保障関連法案は、日本以外の武力行使であってもそれによって「日本の存立が脅かされる危険がある場合」に限って集団的自衛権の行使を容認しようとする「集団的自衛権限定容認」の立場に立つものである。
 
また集団的自衛権の行使の限度も、これまでの政府解釈において憲法9条が認める自衛権行使の条件とされてきた「必要最小限の実力行使」にとどまる。したがって安全保障関連法案は憲法9条の許容範囲であり、合憲であることは明白である。
 
近年、わが国を取り巻く国際環境には、劇的な地殻変動が起きている。アメリカのオバマ大統領が『世界の警察官』をやめると宣言したとたんに、中国は、南シナ海を自国領海であるとして軍事基地化を強行して、関係諸国と深刻な対立を引き起こしている。この海域は、わが国の重要な海上輸送路でもあり、航行の自由が脅かされる事態となっている。
 
こうした国際環境の変化に対応するべく、日米関係を中心に国際協力をより強力にしてアジアの平和を維持するため、国会は、速やかに安全保障関連法案の成立をはかるべきである。これらの法案が成立し、日米の同盟関係が強化されれば、わが国の平和に大きく資するのみならず、フィリピンはじめ東南アジア諸国の期待にわが国が応えることにもなる。
 
それとともに、安全保障関連法案をめぐる国会論議は、自衛隊の活動のあり方が憲法9条論争を招き、世界の平和とわが国の安全を守るために必要な政策決定が滞るという、過去幾度も繰り返されてきた悪例を再現したものとなった。この貴重な時間の空費のそもそもの原因は、憲法9条自衛隊の存在に一切触れておらず、そのため、自衛隊を合憲とする政党と違憲とする政党が国会に混在していることにある。
 
平成27年3月発表の内閣府の世論調査によれば、現在、国民の75.5%は日本が戦争をしかけられたり巻き込まれたりする危険があると考えており、ほとんどの国民がそう思う理由を「国際的な緊張や対立があるから」としている。一方、憲法9条があるからそうした危険はない、と考える国民は8.5%にしか過ぎない。そして91.2%の国民は、自衛隊を支持し、日本の安全保障を自衛隊が担うことを期待している。
 
わが国を取り巻く国際環境の変化や国民世論を踏まえ、国会は、速やかに憲法審査会の審議を再開して、一刻も早く自衛隊の存在を憲法に明記するために憲法9条改正案を発議し、国民の意思を問うべきである。
 
平成27年7月6日
日 本 会 議
(引用終わり)
 
 しばらく前にこのメルマガ(ブログ)で、8月13日に発表された「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」声明をご紹介したことがありましたが(「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」の声明を批判的に読む~公開討論に備えて/2015年8月18日)、その声明の1か月余り前に発表されたのが上記日本会議の見解です。
 まあ、基本的には同じ立場と言って良いのでしょうが、1か月余り検討を加える時間が余計にあっただけあり、国民フォーラム声明の方がより堅実になったというか、反対派から突っ込まれる無駄なところをそぎ落としたという印象を受けます。
 正直、日本会議見解の、国連憲章51条に留保を付さずに国連に加盟したことをもって集団的自衛権を行使できる根拠にするという点など、まともな学者、法律家であれば、真顔で議論する気にもならないでしょう。
 また、「近年、わが国を取り巻く国際環境には、劇的な地殻変動が起きている。」という、第1次安保法制懇(2007年)以来、聞き飽きたフレーズについては、「聞き飽きた」ということ自体が有力な反論の根拠でしょうね。
 
 さて、今日は、日本会議の見解をざっと流し読みしただけなので、12日までにもう少し詳しく読み込みたいものです(時間があるかな?)。