wakaben6888のブログ

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「日の丸9条の会」って何だ?

 今晩(2015年9月9日)配信した「メルマガ金原No.2208」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「日の丸9条の会」って何だ?

 今日の昼休み、事務所で食後のコーヒーを飲みながら、様々なメーリングリストへの着信をチェックしていたところ、青年法律家協会弁護士・学者合同部会MLで、「taro takimoto」氏からの「報告-日の丸9条の会のこと」という件名のメールにふと目がとまり、開封して読んでみる気になりました。
 発信者は、横浜弁護士会滝本太郎弁護士で、以下のような内容でした(ブログにもほぼ同じ内容でアップされていますので、転載もOKでしょう~と勝手に決める)。
 
(引用開始)
こんにちは。以下、報告までに。
お騒がせいたします。私は皆のまあ頭の体操としても、ご容赦を。
「日の丸9条の会」の件、旗頭など変更して確定しましたあ。
理由などは本日9月9日のブログに書いた通りです。
ご賛同頂ける方は、各自その趣旨など広めていって下されれば幸いです。
ああ、仕事仕事。それからチラシ配り、声だし、国会などへ。

 
http://sky.ap.teacup.com/applet/takitaro/20150909/archive
草々-滝本太郎
(引用終わり)
 
 滝本弁護士独特の文体(と言っても、面識がある訳ではありませんが)にややとまどいつつ、「『日の丸9条の会』って何だ?」という疑問が頭の中に点滅し、MLを少し遡ってみましたが、滝本弁護士のこの前の投稿は、同弁護士の地元・神奈川県大和市での安保法案廃案を目指す行動日程の紹介(8月28日付)であり、「日の丸9条の会」に関係ありそうな投稿は見つかりませんでした。

 余談ですが、大和市といえば、「憲法九条やまとの会」が6月13日に開催した「若者と国家-自分で考える集団的自衛権」(講師:柳澤協二氏、歌:制服向上委員会)が、大和市及び大和市教育委員会から、「アイドルグループの歌の中に特定の政党名などあげて揶揄・批判する内容があり政治活動ともみられる」との理由で事後的に遡って後援名義が取り消されたことで注目を浴びましたが、滝本弁護士も、主催団体に深く関わっておられるのでしょう、青法協のMLにも報告の投稿をされていました。
※「憲法九条やまとの会」ブログに掲載された「集会の後援取り消しについての声明」
 
 かくなる上はということで、滝本太郎弁護士自身のブログを探索することにしたのですが、読み始めたところで昼休みがタイムアップとなり、とりあえずFacebookに情報を投げ込み、あとは日が暮れて一段落してからということにしました。
 そして、夜になってからもう一度、滝本弁護士のブログ「『生きている不思議 死んでいく不思議』-某弁護士日記」(なかなか不思議なブログタイトルですね。5月末に変更するまでは「日常生活を愛する
人は?」だったようですが)を読んでみました。
 その結果、「日の丸9条の会」立ち上げ(?)はごく最近。ブログ上にあらわれたところでは、一昨日(9月7日)のことのようなのですね。
 滝本さんは、この日、ブログを2本アップしています。
 
まともな右翼 2015年9月7日
(抜粋引用開始)
 ようやくまともな右翼が声を出し始めたように思う。日本が専守防衛にとどるべきではない、という主
張であれば私とは違うが、今回の法案の位置づけ・評価は、私の主張とまずは同じかと。
 うーん、日章旗自体にはなんの罪もなくデザインもよく日本を象徴しているから、「日の丸9条の会」
とか作りたいと思っていたが、今からでも勝手に名乗るべきかなあ。
(引用終わり)
 
 「まともな右翼」というのは、9月6日に安倍首相の私邸にデモをかけた民族派(対米自主・民族自決デモ実行委員会)のことで、ジャーナリストの田中龍作さんのネット記事を読んでの感想です。
 
「日の丸9条の会」よびかけ 2015年9月7日
(抜粋引用開始)
「日の丸9条の会」の設立趣旨・要綱 省略(金原注:2日後に改訂された)
(私、高校の卒業式の際に、日の丸がアジア侵略の旗頭となっていたことから、降ろせ!と言い、式典終了直後に静粛に降ろしに行き、演台に置いて、たしか一礼して降壇した者なのだが、日の丸は確かにそれ自体としてなんら罪がなく、それ自体として憲法に矛盾した思想もないので、この行為はいつしか間違いだと考え、反省しています。そして今、日の丸をまた汚さないためにこそ、日の丸9条の会の設立をと考
えました。)
 現在のところ会員は私一人、まあ会員名簿なども作りようがないが。この旗と、裏にこの趣旨などを記
載したものを作ろうかな、なんて考えています。賛同される方は、「いいね」とかしたり、メールでどうぞご連絡くださいませ。メールアドレスなどは固く秘密を守ります。
 滝本太郎
 
takitaro@yha.att.ne.jp
(引用終わり)
 
 「設立趣旨・要綱」を省略して以上の文章だけ読んでも、滝本弁護士の高校(神奈川県立希望ヶ丘高等学校とWikipediaには書いてあった)時代の武勇伝は分かるとしても、何故、滝本弁護士が後年「改心」するに至ったかは、いまひとつよく分からないでしょう。
 ということで、「設立趣旨・要綱」をご紹介します。実は、今日(9月9日)のブログで、早くも「設立趣旨・要綱」が改訂されていました(とりあえず「確定」だそうです)。
 
確定「日の丸9条の会」の旗頭・趣旨・要綱 2015年9月9日
(抜粋引用開始)
「日の丸9条の会」の設立趣旨・要綱
 日章旗は、過去「日本帝国」の旗頭として使われ、未だその侵略戦争の傷は癒えていない。しかし、こ
れ自体にはなんら罪はなく、デザインも大変に優れており、もとより日本国の象徴として定着している。
 ここに、これに愛着をもち「九条も立憲主義もこわすな」と下記の点で賛同する者の緩やかな集まり「
日の丸9条の会」を設立する。
1-憲法が権力者を縛るための最高規範であることを認識し、今次の安倍政権解釈改憲を認めない。
2-日章旗に愛着心をもつことを誇りをもって宣言する。
3-国旗・国歌の使用・不使用につき、誰に対するいかなる強制も嫌がらせも許さない。
4-専守防衛を明確にするための改憲でない限り、日本国憲法9条等の改憲を許さない。
5-侵略のための軍備は許さず、日本の核武装もその計画研究も認めず、非核三原則を堅持させる。
6-アメリカ合衆国を含めどの国の属国化していくことを認めない。
7-啓発・運動にはもとより非暴力の手法のみを使い、他団体とも随時、共同で行動する。
8-添付の画像を旗頭とする。(金原注:日の丸の上余白に「九条も立憲主義もこわすな」、下余白に右
寄せで「日の丸9条の会」と黒字で表記)
                   平成27年9月9日
日の丸9条の会上記の出典を示しての転載を歓迎しまあす。
 どうぞご賛同下さって、メール連絡でも下されれば嬉しいです。まあ、下されなくても、この旗頭・趣
旨・要綱の意味合いにて、国会議事堂前、駅頭やネット上などで広げて下されれば、「日の丸9条の会」のまあ会員さんです。
(引用終わり)
 
 
 さて、「要綱」を読んでの感想です。
 和歌山弁護士会広報委員会での「会報」校正歴27年の経験から言うと、6項は、
6-アメリカ合衆国を含めどの国に対しても属国化していくことを認めない。
 または
6-アメリカ合衆国を含めどの国の属国となることも認めない。
と「校正」したいところです。
 
 それはさておき、「要綱」では、とりわけ2項~4項が引っかかる(気になる)という人が多いでしょう。
 
 2項 レイシストや安倍信奉者が街頭で日の丸を打ち振る様を眺めながら、「日の丸がかわいそうだ」
「日の丸に罪はない」と思う気持ちがない訳ではないものの、「日章旗に愛着心をもつことを誇りをもって宣言する」気になるかと問われれば、「うーん」と考え込む人が多いでしょう。
 3項 「国旗・国歌の使用」の強制や「不使用」についての嫌がらせを許さないというのは良いとしても、「国旗・国歌の不使用」の強制や「使用」についての嫌がらせって、事実としてあるんですか?理念としてなら分からないこともないけれど、社会における実態とかけ離れ過ぎても問題ではないだろうか。
 もっとも、この点については、天皇や皇后に「陛下」という敬称を付けるべきではないと主張し、自分がそのように実践するのは良いとして、敬称を使用する者を批判する言説に対して、私はかねがね腹立た
しく思っていますので、分からないこともありませんが。
 4項 将来的に、専守防衛を明確化するための9条改憲を許容するかどうかは、たしかに今後の大問題だろうという気はしていますが、簡単に結論が出せることでもないし・・・と、個人的には悩むところです。
 
 「日の丸・君が代」を強制する教育現場(これを何と大学まで及ぼそうという動きがある)で闘っている人々がいる中で、「日の丸9条の会」ってどうなんだろう?という逡巡もありますしね。
 もっとも、日の丸をナチスハーケンクロイツ並みに絶対悪視するのなら別ですが、日の丸に愛着や誇
りを持つかどうかを、可能な限り自由に、オープンに、自ら判断できる環境をこそ目指すべきであって、そのためには、「日の丸9条の会」にも十分存在意義があるという見方も可能かもしれません。
 あなたはどう考えますか?
 私は、滝本さんに賛同のメールを送るかどうかは、もっとよく考えてからにしたいと思います。
 
(付記)
 滝本太郎弁護士のプロフィールを、同弁護士が理事を務める「日本脱カルト協会」公式サイトから引用します。
(引用開始)
滝本太郎(たきもとたろう) 
 1957年1月17日生まれ。私立早稲田大学法学部を卒業後、神奈川県職員を経て、1983年4月から市井の弁
護士。89年11月4日未明、友人坂本堤弁護士と 妻都子さん、生後一歳二ヶ月の龍彦君が行方不明になり(1995年9月惨殺されていたことが判明)、同弁護士が闘っていた破壊的カルト集団オウム真理教と相対する
オウム真理教被害対策弁護団としての民事訴訟のほか、さまざまな調査活動。
 1993年8月から、元出家者の永岡辰哉氏と共にカウンセリング活動を始める。松本智津夫こと麻原彰晃教祖の最終解脱の証明-「空中浮揚」を、自らが被写体となって写真にしてしまう。1994年5月9日(松本サリン事件の1ヶ月余り前)オウム真理教の出家者弁護士青山吉伸らにより、甲府地方裁判所の駐車場で運転する直前の自動車の空気吸入口付近に化学兵器サリンをかけられたが、換気を車内循環にしていたためか縮瞳現象のみで生存。9月化学兵器VX溶剤を自動車のノブにかけられたが、運転用の手袋を偶然していたからか死なず。11月、出家者の二歳直前の子どもを取り戻す交渉中(離されていた親が先に脱走)ボツリヌス菌入りジュースを飲まされるが、毒素が出ていなかったので死なず。オウム真理教被害対策弁護団(事務局長小野毅)は、様々な証拠をもとに、大規模な強制捜査を強く要求していた。1995年3月22日の強制捜査直前の20日、東京 で地下鉄サリン事件になる。95年6月、オウム真理教脱会者に集まりをよびかけ、その「カナリヤの会」の窓口になる。同会は脱会者同士がケアしあい、また現役の信者らにも月刊の会報「カナリヤの詩」を送付している。無宗教。「マインドコントロールから逃れて」(共編著、恒友出版)1995年、「破防法とオウム」(共著、岩波ブックレット)、 1996年「宗教トラブル110番」(共著、民事法研究会)1999年、「オウムをやめた私たち」(カナリヤの会編)2000年、「異議あり
!奇跡の詩人-ドーマン法、FCの真実」(共編著、同時代社)2002年
(引用終わり)