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翁長雄志沖縄県知事が国連人権理事会で読み上げた声明を読む

 今晩(2015年9月22日)配信した「メルマガ金原No.2221」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
翁長雄志沖縄県知事が国連人権理事会で読み上げた声明を読む

 沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事は、9月21日午後(日本時間22日未明)、スイスのジュ
ネーブで開催中の国連人権理事会において、名護市辺野古への米軍基地建設に反対する英語によるStatement(声明)を読み上げて発表しました。
 声明(英語)原文及びその日本語訳について、沖縄県公式ホームページを探したのですが見つけられませんでしたので、とりあえず、沖縄タイムスに掲載されたものを、動画ととともに引用したいと思います。
 ただし、英語原文については、テキストデータではなく、画像が掲載されているだけでしたので、以下
に私が再入力したものを掲載します。タイピングを誤ってスペルミスが生じている可能性がありますので、引用する場合には、沖縄タイムスの画像データとの照合が必須であることをお断りします。
 
 
沖縄タイムス公式動画チャンネル
辺野古の状況見てください」沖縄知事、国連人権理で声明
 

(英語原文・引用開始)
Oral Statement at the United Nations Human Rights Council by the governor of Okinawa
 
  Thank you, Mr.Chair.
  I am Takeshi Onaga, governor of Okinawa Prefecture, Japan.
  I would like the world to pay attention to Henoko where Okinawans' right to self-
determination is being neglected.

  After World War Two, the U.S.military took our land by force, and constructed military bases
in Okinawa.
  We have never provided our land willingly.

  Okinawa covers only 0.6% of Japan.
  However, 73.8% of U.S.exclusive bases in Japan exist in Okinawa.

  Over the past seventy years, U.S.bases have caused many incidents, accidents, and
environmental problems in Okinawa.
  Our right to self-determinatin and human rights have been neglected.
 
  Can a country share values such as freedom, equality, human rights, and democracy with other nations when that country cannot guarantee those values for its own people?
 
  Now, the Japanese government is about to go ahead with a new base construction at Henoko by reclaiming our beautiful ocean ignoring the people's will expressed in all Okinawan elections last year.
  I am determined to stop the new base construction using every possible and legitimate means.
 
Thank you very much for this chance to talk here today.
(引用終わり)
 
(日本語訳・引用開始)
 ありがとうございます、議長。
 私は、日本国沖縄県の知事、翁長雄志です。
 沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている辺野古の状況を、世界中から関心を持って見てくだ
さい。
 沖縄県内の米軍基地は、第二次世界大戦後、米軍に強制接収されて出来た基地です。
 沖縄が自ら望んで土地を提供したものではありません。
 沖縄は日本国土の0.6%の面積しかありませんが、在日米軍専用施設の73.8%が存在しています

 戦後70年間、いまだ米軍基地から派生する事件・事故や環境問題が県民生活に大きな影響を与え続け
ています。
 このように沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされています。
 自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価
値観を共有できるのでしょうか。
 日本政府は、昨年、沖縄で行われた全ての選挙で示された民意を一顧だにせず、美しい海を埋め立てて
辺野古新基地建設作業を強行しようとしています。
 私は、あらゆる手段を使って新基地建設を止める覚悟です。
 今日はこのような説明の場が頂けたことを感謝しております。ありがとうございました。
(引用終わり)
 
 なお、これに対し、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部次席常駐代表を務める嘉治美佐子大使がすかさず反論を行った動画がアップされていましたのでご紹介しておきます。
 

 この反論の日本語訳はまだ目についていませんので、主旨を要約して伝えた(と思われる)沖縄タイム
スの記事を引用しておきます。
 
沖縄タイムス 2015年9月22日 05:30
【動画あり】翁長知事が国連で声明「沖縄ないがしろ」辺野古反対訴える

(抜粋引用開始)
ジュネーブ21日=阿部岳】国連人権理事会での翁長雄志知事の声明発表を受け、日本政府代表部は21日、「米軍普天間飛行場辺野古移設は抑止力を維持し、人口密集地にあるリスクを取り除く唯一の手
段だ」と反論した。
 これまでの政府の主張通り、1999年に稲嶺恵一知事と岸本建男名護市長から移設への同意を得たと主張。2013年には仲井真弘多前知事から埋め立て承認を「合法的に」取得したと強調した。環境面の
配慮についても述べた。
 今年3月のキャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区の返還など負担軽減の実績を挙げ、「アジアのハブとし
ての可能性を秘める沖縄の経済振興策を展開している」と報告した。
(引用終わり)
 
 嘉治美佐子大使といえば、母校の東京大学大学院に出向して教鞭をとったり、『国際社会で働く 国連の現場から見える世界』(2014年9月/NTT出版)という著書を出版したり、今年の6月にはILO理事会の議長に選出されたりと、キャリア外交官としての華々しい活躍が報じられている人ですが(外務省の方針なのでしょう)、所詮は官僚ですからね。
 
 ところで、翁長知事の声明です。発言時間が2分に制限された中ですから、内容的には、これまでの主張のエッセンスを表明するしかなかったのは当然です。
 国連人権理事会で声明を読み上げたからといって、何かすぐに目に見える効果が現れるというものではないはずです。もっとも、政府や、御用メディアや、ネトウヨからの攻撃にさらされるという「効果」なら直ちに現れるでしょうが。
 翁長知事自身も、沖縄県民も、沖縄のメディアも、そんなことは百も承知であるはずで、それは、同知
事の訪米とも共通することでしょう。

 それでは、訪米も国連人権理事会での声明発表も無意味なのでしょうか?私はそうは思いません。
 日本政府を相手にしていても何ともならない以上、辺野古新基地の提供を受ける予定の米国の政府スタッフ、連邦議会議員、州知事などに沖縄の考えを伝えることが無意味であるはずがありません。
 沖縄が日本政府によってその人権を踏みにじられ、差別を受けていることを訴えるのに、国連人権理事会ほどふさわしいところはありません。
 これらは老練な保守政治家である翁長知事による一連の「政治的布石」であると私は考えています。
 すぐに効果は出ないにしても、ボディーブロウのように日本政府を追いつめる時が必ず来ると信じて、
打つべき手を打っていく以外に、他にどういう手段があるというのでしょうか。
 まさか、翁長知事に、キャンプシュワブゲート前で資材搬入車の前に立ちふさがれとか、海上阻止行動を行うカヌーに同乗しなければ本気ではないなどと言う人はいないと思いますが(多分)、少なくともそ
れは知事のスタイルではないでしょう。
 もっとも、以上のようなパフォーマンスが、政治的にどうしても必要だと判断すれば、翁長知事はそれを実行するだけの資質を持った政治家だという気もしますが、そこまでいくと確信がある訳ではありません。
 
 安倍政権が、安保法案の採決を強行したことと辺野古新基地建設は表裏一体の問題であり、分離できません。安保法制廃止を訴える運動を推進しようという者が、辺野古新基地建設に反対する沖縄に注目し、支持しないなどということはあり得ないでしょう。
 そのような趣旨で翁長知事のジュネーブでの声明をご紹介しました。
 

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。
 
(引用開始)
  あしたのための声明書
 
わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。
 
わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。
 
わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。
 
わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。
 
きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。
 
わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。
 
     自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)
 

(付録)
『一台のリヤカーが立ち向かう』 作詞・作曲・演奏:中川五郎