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安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(10・完)~私はこう読んだ(総集編)

 今晩(2015年10月25日)配信した「メルマガ金原No.2254」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(10・完)~私はこう読んだ(総集編)

 10月4日から同月20日まで、9回にわたって「メルマガ金原」(及び本ブログ)に連載してきた「安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか」も、内容的に甚だ不十分ながら、一応逐条解説を終えましたので、それを踏まえた「総集編」を書かねばと思っていました。とにかく、私が書く文章はだらだらと長くなりがちという悪癖がある上に、馴染みのない法律の条文が大量に引用されていたのですから、数少ない最後まで読み通してくださった読者にとっても、訳が分からなかった可能性が高く、せめて「総集編」だけでも、もう少し手短かに分かりやすく書きたいと思っています。
 とはいえ、時間的な制約と能力不足から、短いものを一から書いている余裕はありませんので、結局、これまで書いてきた文章の中から結論だけを抜き出すことになり、どうしても論証不足となることは否めません。そこで、そのような場合には、逐条解説を試みた過去記事を参照いただければと思います(結局、元に戻ることになりますが)。
 なお、私は、メルマガ(ブログ)をいつも「ですます調」で書いていますが、以下の「総集編」本体は「である調」で書いてみます。少しは文章が短くなるかもしれませんので。
 
1 はじめに~「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」の経緯
 2015年5月15日に内閣から衆議院に提出されたいわゆる安全保障関連法案(「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」及び「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」の2法案)は、7月16日に衆議院を通過して参議院に送られた。参議院では、「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」(鴻池祥肇委員長)で審議が行われてきたが、9月27日の会期末を控え、与党による強行採決が取り沙汰される中、9月15日には中央公聴会、翌16日には地方公聴会横浜市)が行われるという日程が確定した。
 以上のような緊迫した情勢の中、自民・公明の与党と一部少数野党との間で修正協議が行われてきたが、修正案を可決しても、会期末までに衆議院での再議決を行う時間的余裕はなく、結局9月16日、自由民主党公明党、日本を元気にする会、次世代の党、新党改革の5党は、「平和安全法制に関する合意事項」を内容とするいわゆる「5党合意」を締結し、これを踏まえ、翌17日の参議院特別委員会において「附帯決議」を付した上で安保関連2法案を可決し、9月19日未明の参議院本会議における採決によって両法案が成立したことを受け、持ち回りにより、閣議決定「平和安全法制の成立を踏まえた政府の取組について」が行われた。
 参議院における「附帯決議」に法的効力がないが、今回の「5党合意」の特徴は、合意事項を担保する方法として、「附帯決議」の他に「閣議決定」を行うことも合意されたことであり、この合意に基づき、9月19日に行われた閣議決定では、「4 政府は、本法律の施行に当たっては、上記3の5党合意の趣旨を尊重し、適切に対処するものとする。」とされた。
 なお、「附帯決議」については、そもそも9月17日に参議院特別委員会で行われた採決自体、不存在ではないか、という疑義が強く提起されていることは承知しているが、本稿ではその問題には触れない。
 
 
2 「合意事項」逐条解説
 9月16日の「合意事項」も翌17日の参議院特別委員会での「附帯決議」もほぼ同内容であるが、9月19日の閣議決定が「趣旨を尊重し、適切に対処するものとする。」としたのは、直接的には「5党合意」についてであって「附帯決議」ではない。そこで、以下には、「5党合意」について、その原文を引
用(茶色で表記)するとともに、これに私の簡単な解説(黒色で表記)を注記する。
 
【合意書本文】
(引用開始)
平和安全法制についての合意書
平成二十七年九月十六日
 
5党は以下の三点について合意した。
 
一、別紙「平和安全法制に関する合意事項」を合意する
二、別紙「平和安全法制に関する合意事項」を以下の手続きで担保する
   一 政府答弁
   二 附帯決議
   (三 国会決議)
   四 閣議決定
(注)閣議決定の内容は、「この政党間合意の趣旨を尊重する」「適切に対処する」ことを明らかにする
ものとする
三、別紙「平和安全法制に関する合意事項」において、今後検討すべき事項については、協議会を設置し
た上、法的措置も含めて実現に向けて努力を行う
 
内閣総理大臣 
自由民主党 総裁
    安 倍 晋 三
公明党 代表
    山 口 那津男
日本を元気にする会 代表
    松 田 公 太
次世代の党 代表
    中 山 恭 子
新党改革 代表
    荒 井 広 幸
 
 原文は縦書き。「平和安全法制に関する合意事項」は別紙に譲るとともに(一)、その合意事項を担保する具体的方法として、「政府答弁」「附帯決議」「国会決議」「閣議決定」を挙げている(ただし、「国会決議」は括弧付き)。
 本合意書が締結された後に行われた委員会審議は9月17日だけであったが、5党合意による「合意事項」を確認するような政府答弁が行われた形跡はない。
 9月19日の閣議決定については上掲参照。
 なお、合意書三で言及された協議会がいかなる構成を想定しているのか判然としないが、仮に5党による協議会であるとすれば、法案成立後、そのような協議会が設置されたという報道には接していない。
 
 
【平和安全法制に関する合意事項(以下「合意事項」という) 前文】
平和安全法制に関する合意事項  
平成27年9月16日  
 
日本国憲法の下、戦後70年の平和国家の歩みは不変。これを確固たるものとする。二度と戦争の惨禍を繰り返さない。不戦の誓いを将来にわたって守り続ける。
国連憲章その他の国際法規を遵守し、積極的な外交を通じて、平和を守る。国際社会の平和及び安全に
我が国としても積極的な役割を果たす。
・防衛政策の基本方針を堅持し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならない。平和安全法制の運用
には国会が十全に関与し、国会による民主的統制としての機能を果たす。
 
 このような基本的な認識の下、政府は、本法律の施行に当たり、次の事項に万全を期すべきである。
 
 2014年7月1日の閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の前文と読み比べると、そこには言及されていなかった以下の2点が合意事項に盛り込まれたことが分かる。
「二度と戦争の惨禍を繰り返さない。不戦の誓いを将来にわたって守り続ける。」
「平和安全法制の運用には国会が十全に関与し、国会による民主的統制としての機能を果たす。」

 前者の「不戦の誓い」については、毎年8月15日に行われる全国戦没者追悼式における首相式辞において、2012年の野田佳彦首相に至るまで、歴代の内閣総理大臣がほぼ例外なく言及してきた「不戦の誓い」という言葉を、安倍晋三首相が2013年以降全く使わなくなったことが想起すべきである。
 後者の「国会による民主的統制」を具体化したものが、まさに合意事項の本体(1項~9項)である。
 
 
【合意事項 1項】
1 存立危機事態の認定に係る新三要件の該当性を判断するに当たっては、第一要件にいう「我が国の存
立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」とは、「国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」であることに鑑み、攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮して、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険など我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむる
こととなる犠牲の深刻性、重大性などから判断することに十分留意しつつ、これを行うこと。
 さらに存立危機事態の認定は、武力攻撃を受けた国の要請又は同意があることを前提とすること。また
、重要影響事態において他国を支援する場合には、当該他国の要請を前提とすること。
 
第1文について
 存立危機事態を認定するための「いわゆる新三要件」の内、安保法制に取り入れられた第一要件「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」の認定にあたり考慮すべき事項を説明した、2014年7月14日に開かれた衆議院予算委員会における、横畠裕介内閣法制局長官公明党北側一雄副代表からの質問に対する答弁を明文化したものであり、これを閣議で「趣旨を尊重し、適切に対処する」と約束させたことに一定の意義があるというものである。  
 ただし、もともと与党と内閣法制局の間で十分なすり合わせを行った上で法制局長官が答弁した内容を確認したというだけのことであり、「心構え」という以上の意味があるのかは疑問であるが、少なくとも横畠答弁に反するような政府答弁を今後させないための歯止めにはなり得る。
 
第2文について
 今回の「合意事項」の中でも、非常に重要な条項の一つである。
 国会論戦を通じても、存立危機事態を認定して自衛隊を出動させる要件として、武力攻撃を受けた「我が国と密接な関係にある他国」から我が国への「要請」が必要か否かについて、政府の答弁は、はなはだ曖昧なものであった。そもそも政府は、存立危機事態について、いわゆるフルスペックの集団的自衛権を認めるものではなく、あくまで自国防衛のためのものであるかのような答弁を繰り返してきた。
 この被攻撃国からの「要請」は、国際司法裁判所によるニカラグア事件判決などから見ても、普通の集団的自衛権であるなら当然要件となってしかるべきものであるにもかかわらず、政府が、答弁をあいまいにしてそれを認めてこなかったのは、他国防衛のための普通の集団的自衛権ではないと言い張ってきたからである。
 ところが、5党合意で「武力攻撃を受けた国の要請又は同意があることを前提とすること。」を認めて
しまったため、結局のところ、存立危機事態というのはフルスペックの集団的自衛権(他国防衛のための武力行使)を認めるための要件であったということにならざるを得なくなった。
 もしも、本当に自国防衛のために必要であるというのなら、そのような必要があるにもかかわらず、他
国(武力攻撃を受けた国)の要請又は同意がない限り、自衛隊を出動させることができないはずはない。
 他国の要請又は同意が要件だというのなら、それは、存立危機事態が、自国防衛のためではなく、他国防衛のためだということを認めたということに他ならない。
 この合意により、はなはだあいまいであった存立危機事態の本質的な危険性がはっきりと露呈したとと
もに、他面、その論理的破綻がいよいよ明確になったと言えよう。
 
第3文について
 重要影響事態において、後方支援等をうける米軍等からの要請がないということは、その活動の性質上あり得ないと思われるので、この合意は単なる確認事項と解される。
 
【合意事項 2項】
2 存立危機事態に該当するが、武力攻撃事態等に該当しない例外的な場合における防衛出動の国会承認
については、例外なく事前承認を求めること。
 現在の安全保障環境を踏まえれば、存立危機事態に該当するような状況は、同時に武力攻撃事態等にも該当することがほとんどで、存立危機事態と武力攻撃事態等が重ならない場合は、極めて例外である。
 
 事態対処法における、武力攻撃事態等及び存立危機事態と国会承認の関係を整理すれば以下のとおりとなる。
 
①「特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合」
 武力攻撃事態又は存立危機事態であって、表記の要件を満たす場合には、国会の承認を得ることなく、内閣総理大臣自衛隊に防衛出動を命じることができる(事態対処法9条4項2号)。ただし、その旨を対処基本方針に記載しなければならない。 
 そして、その防衛出動を命じることが記載された対処基本方針を閣議決定の上、国会に承認を求めなければならない。この場合、既に自衛隊は防衛出動しているだろうから、結局、国会には事後承認を求めることになる。
 国会によって対処基本方針が不承認となった場合には、既に出動していた自衛隊は直ちに撤収させなければならない(11項)。
②「特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合」とはいえない場合
 武力攻撃事態又は存立危機事態であって、緊急性の要件を満たさない場合には、事態対処法9条4項1号に基づき、対処基本方針に「内閣総理大臣が防衛出動を命ずることについての自衛隊法第七十六条第一項の規定に基づく国会の承認の求め」を行うことを記載した上で、閣議決定を経て(6項)、国会の承認を求める(7項)。
 承認が得られれば、「対処基本方針を変更して、これに当該承認に係る防衛出動を命ずる旨を記載」(10項)し、自衛隊に防衛出動を命じることになり、もしも承認が得られなければ、「対処措置は、速やかに、終了」しなければならない(11項)。
 
 ところが、5党合意の合意事項2項では、「存立危機事態に該当するが、武力攻撃事態等に該当しない例外的な場合における防衛出動の国会承認については、例外なく事前承認を求めること。」とし、さらにだめ押し的に、「現在の安全保障環境を踏まえれば、存立危機事態に該当するような状況は、同時に武力攻撃事態等にも該当することがほとんどで、存立危機事態と武力攻撃事態等が重ならない場合は、極めて例外である。」という解釈規定まで置いている。
 この合意事項2項を素直に読めば、存立危機事態と認定できる場合というのは、ほとんど武力攻撃事態等でもあるのだが、ごく例外的に武力攻撃事態等ではないが、存立危機事態であるという場合がある。そこで、そのような場合には必ず事前の国会承認を求めなければならず、「特に緊急の必要があり事前に国会の承認を得るいとまがない場合」などとして自衛隊に防衛出動を命じてはならない、ということになる。
 ただし、合意事項2項の解釈上特に注意すべきは、「武力攻撃事態等」の「等」とは、事態対処法1条「武力攻撃事態等(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態をいう。)」に従って解釈すべきであるということである。
 事態対処法2条は、「二 武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態をいう。」「三 武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。」とされている。
 そして、武力攻撃事態においては自衛隊に防衛出動を命じることができるのに対し(自衛隊法76条1項)、武力攻撃予測事態にあっては、防衛招集命令あるいは防衛出動待機命令等は発令できるが(自衛隊法77条、事態対処法9条5項等)、防衛出動は命じられないということが最大の相違点である。
 以上を前提に5党合意の合意事項2項を読み直してみると、結局、以下の3類型に分けられることになる。つまり、
①存立危機事態でありかつ武力攻撃事態である場合
 →場合によっては事後承認でも良い。
②存立危機事態でありかつ武力攻撃予測事態である場合
 →場合によっては事後承認でも良い。
③存立危機事態であるが武力攻撃事態等(武力攻撃事態又は武力攻撃予測事態)ではない場合
 →例外なく事前承認を求めなければならない。
 従って、5党合意の2項について、存立危機事態における防衛出動は全て国会の事前承認を要することになったと解するのは明らかに誤りである。特に、上記②の場合、「存立危機事態でありかつ武力攻撃予測事態である場合」には、5党合意によっても、政府の判断による(国会の事前承認なしでの)防衛出動(もちろん、存立危機事態を根拠とする)が可能である。
 
【合意事項 3項】
3 平和安全法制に基づく自衛隊の活動については、国会による民主的統制を確保するものとし、重要影
響事態においては国民の生死に関わる極めて限定的な場合を除いて国会の事前承認を求めること。
 また、PKO派遣において、駆け付け警護を行った場合には、速やかに国会に報告すること。
 
第1文について
 内閣総理大臣は、重要影響事態を認定し、後方支援活動等の対応措置が必要であると判断した場合には、基本計画案について閣議決定を経た上で(重要影響事態法4条)、具体的な後方支援活動等についての承認を「対応措置の実施前に」国会に求めなければならないとされている(5条1項)。
 しかし、同項ただし書において、「緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで当該後方支援活動、捜索救助活動又は船舶検査活動を実施することができる。」との規定があるため、政府が緊急性を広くとらえれば、国会による事前承認の原則など有名無実化してしまう。
 今回の5党合意の第1文は、重要影響事態法5条1項ただし書の規定の適用を事実上限定する合意と読むことができる。つまり、法文上「緊急の必要がある場合」とあるのを、「国民の生死に関わる場合」として運用する旨の合意、あるいは、そのように解釈する旨の合意である。
 これは、もともと第1条における重要影響事態の定義自体が抽象的でいくらでも拡大解釈が可能である上に、さらに国会の事前承認を不要とする要件(緊急の必要)がいくら何でも広過ぎるという問題に、少しでもしばりをかけようということで、その趣旨は了としたい。ただし、「国民の生死に関わる場合」が、法1条の「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」と実質的に同義であるかについては分明ではない。
 
第2文について
 PKO協力法において、実施計画や国際平和協力業務についての国会への報告義務について定めた規定は7条であり、これは改正されておらず、「実施計画の決定又は変更があったとき」(1号)、「実施計画に定める国際平和協力業務が終了したとき」(2号)、「実施計画に定める国際平和協力業務を行う期間に係る変更があったとき」(3号)に「遅滞なく、国会に報告しなければならない。」とされている。
 5党合意の3項第2文は、7条に追加して(横出しして)別途報告義務を課した合意と解することができる。
 私は、個人的には、「駆け付け警護」(3条5号ラ)よりも、「治安維持活動」(3条5号ト)の方がはるかに危険な業務ではないかと思っており、後者も併せて抑制するような合意はできなかったのか、などと思ったりもする。
 
【合意事項 4項】
4 平和安全法制に基づく自衛隊の活動について、国会がその承認をするにあたって国会がその期間を限定した場合において、当該期間を超えて引き続き活動を行おうとするときは、改めて国会の承認を求める
こと。
 政府が国会承認を求めるにあたっては、情報開示と丁寧な説明をすること。
 当該自衛隊の活動の終了後において、法律に定められた国会報告を行うに際し、当該活動に対する国内
外、現地の評価も含めて、丁寧に説明すること。
 また、当該自衛隊の活動について、180日ごとに国会に報告を行うこと。
 
第1文について
 そもそも、国会に承認するかしないかを判断する権限があるのなら、(明文はなくても)期間を限定して承認することも出来て当然ではないかという解釈も可能であるが、別異の解釈もあり得ない訳ではなく、この点を明確にしたという意義があると考えられる。
 もっとも、両院の調整がつかず(あるいは行わず)、例えば、衆議院が「無条件承認」、参議院が「2
年間限定承認」の議決をした場合、「少なくとも2年間については両院の承認がある」と解し、「2年間限定」で国会の承認が得られたということになるのか(この解釈は相当に苦しいと思うが)、両院不一致で結局承認が得られなかったことになるのか、という問題は残されている。
 この合意は、現在の国会のように、衆参両院で与党が圧倒的に多数の議席を占めている場合には、あまり発動される可能性があるようには思えないが、例えば、参議院与野党議席数が伯仲し、少数野党がキャスティングボードを握るような情勢下では、政治的妥協の産物として、「期間限定承認」ということがあり得るかもしれない。
 
第2文について
 読んだとおりの内容で、仮にこれが法文に書き込まれたとしても、訓示規定以上の意味はない。とはいえ、国会が承認を求められる事態というのは、ほぼ全て「防衛に関する事項」「外交に関する事項」「特定有害活動の防止に関する事項」「テロリズムの防止に関する事項」(特定秘密保護法別表)に関わる事項の固まりであり、政府が適切な情報開示を行うかどうかについて疑念が持たれるため、あえて野党が盛り込むことを求めたという趣旨に解すべきか。
 
第3文について
 国会の承認を得て行った自衛隊の活動については、その終了後に国会に報告することが義務付けられているが、その報告の内容がどのようなものでなければならないかが定められている訳ではない。従って、5党合意の4項第3文は、その点についての指針としての意味はあるものの、「当該活動に対する国内外、現地の評価」という例示によって何を期待しているのかは判然としない。
 いずれにしても、「遅滞なく」提出することが求められている報告については、報告書作成のために過
大な時間をかける訳にはいかないため、結局、「丁寧に説明する」という心構えを求めているという以上の意味をくみ取ることは難しい。
 
第4文について
 これは、第2文、第3文とは異なり、具体的な行為を政府に約束させたと解される合意事項である。この規定は、これにすぐ続く合意事項5項「国会が自衛隊の活動の終了を決議したときには、法律に規定がある場合と同様、政府はこれを尊重し、速やかにその終了措置をとること。が実効的に運用される前提としての、政府による国会に対する適時適切な情報提供を制度的に保証するという意味合いを持っており、5党合意全体の中でも、かなり重要な合意事項の1つではないかと思われる。
 また、この180日ルールは、合意事項9項第1文「平和安全法制に基づく自衛隊の活動の継続中及び活動終了後において、常時監視及び事後検証のため、適時適切に所管の委員会等で審査を行うこと。」を実施するにあたっても、重要な意義を持ち得ると考えられる。
 
【合意事項 5項】
5 国会が自衛隊の活動の終了を決議したときには、法律に規定がある場合と同様、政府はこれを尊重し、速やかにその終了措置をとること。
 
 5項は、合意事項4項第1文「平和安全法制に基づく自衛隊の活動について、国会がその承認をするにあたって国会がその期間を限定した場合において、当該期間を超えて引き続き活動を行おうとするときは、改めて国会の承認を求めること。」と対になる規定であり、4項は承認を与える際に期間を限定することにより、また、5項は承認して自衛隊が活動を開始した後に終了の議決をすることにより、国会が、無限定に自衛隊の海外派遣が長期化すること防ぐ手段を確保しようとした合意事項であり、それなりに意義のある規定である。
 ただ、「法律に規定がある場合と同様」とあるとおり、法律自体が、国会の議決によって対処措置の終了を政府に義務付けている場合もある。
 例えば、存立危機事態又は武力攻撃事態において、国会による事前の又は事後の承認を得て自衛隊が防衛出動していたとしても、国会が「対処措置を終了すべき」と議決した場合には、政府がそれに従わなければならないことについては(武力攻撃事態について前からそうだった)明文の規定がある。
 しかし、重要影響事態における国会承認を定めた重要影響事態法5条は、その3項において「政府は、前項の場合において不承認の議決があったときは、速やかに、当該後方支援活動、捜索救助活動又は船舶検査活動を終了させなければならない。」とはあるが、いったん承認した後の「活動終了の議決」は規定されていない。従って、5党合意の5項は、重要影響事態における後方支援活動等を「終了させる国会の議決」において、特に意味を持つ。
 なお、国際平和支援法に基づく国政平和共同対処事態については、重要影響事態と異なり、2年ごとにあらためて国会承認を求めなければならないことになっている。これは、テロ特措法やイラク特措法が時限立法であったこともあるが、直接的にはPKO協力法(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律)6条の規定を踏襲したものであり、一定期間ごとに国会の判断を求めるべきという考えに基づくものである。
 そこで、5党合意の5項が国際平和共同対処事態における対処措置や、国際連合平和維持活動又は国際連携平和安全活動などに適用があるのかどうかが一応問題になる。
 法律の規定がもともと2年ごとに国会の判断を求めることになっているのであるから、国会によるコントロール(民主的統制)は、それによって十分担保されており、合意事項の5項にいう「法律に規定がある場合」にあたるので、合意事項そのものは適用されないと解釈することも不可能ではないかもしれない。
 しかしながら、国際平和支援法やPKO協力法が定める2年のインターバルの途中であっても、国会が自衛隊の活動を終了させるべきとの判断に至る可能性もある以上、あえて合意事項を限定的に解釈する合理性はなく、2年の期間内であっても、国会が自衛隊の活動の終了を議決した場合には、政府はそれを尊重して活動を終了すべき義務を負う(閣議決定の効力による)と解すべきである。
 
【合意事項 6項】
6 国際平和支援法及び重要影響事態法の「実施区域」については、現地の状況を適切に考慮し、自衛隊が安全かつ円滑に活動できるよう、自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を指定すること。
 
 今般の安保法制により、周辺事態法(1999年)、テロ特措法(2001年)、イラク特措法(2003年)で維持されてきた非戦闘地域(現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域)でなければ自衛隊の活動を実施しないという原則は放擲され、単に「現に戦闘行為が行われている現場では実施しないものとする」(重要影響事態法2条3項、国際平和支援法2条3項)とされるに至った。
 これにより、自衛隊が支援する外国軍隊の武力行使との一体化の危険が格段に高まり、安保関連法案が憲法9条に違反するという重要な論拠の一つとなった。
 5党合意の合意事項6項は、防衛大臣が、国際平和共同対処事態において協力支援活動を実施する区域(実施区域)を指定するに際し、また、重要影響事態において後方支援活動を実施する区域(実施区域)を指定するに際し、「自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を指定する」ことを(閣議決定を通じて)約束したということになる。
 これは、テロ特措法やイラク特措法(あるいは周辺事態法)で定められていた「そこで実施される活動
の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」と実質的に同じだと解すべきであろう(次期国会において政府答弁による言質が必要であるが)。
 ただし、この合意においては、閣議決定される基本計画を実施に移すにあたって防衛大臣が行う実施区域の指定に際しての要件であるから、どこが実施区域になるのかに責任を負うのは、第一義的には防衛大臣である。
 そもそも、本来であれば法律の基本原則に規定すべき要件を、防衛大臣の実施区域の指定に際しての要件に格下げし、おまけに法文の修正ではなく、5党合意、附帯決議、閣議決定という便法を用いたのであるから、おかしいと言えばおかしいが、そんなことは承知の上で、合意事項6項により、重要影響事態法に基づく後方支援活動も、国際平和支援法に基づく協力支援活動も、従来の周辺事態法や2つの特措法で維持されてきた「戦闘地域では実施しない」という原則を、結局、実質的には継続することに与党が同意し、政府も閣議決定によってそれを追認したと主張することだろう(そのことによる違憲訴訟に与える影響は別途考えることである)。
 
【合意事項 7項】
7 「弾薬の提供」は、緊急の必要性が極めて高い状況下にのみ想定されるものであり、拳銃、小銃、機関銃などの他国部隊の要員等の生命・身体を保護するために使用される弾薬の提供に限ること。
 
 7項(弾薬の提供)は、8項(武器の輸送)とともに、重要影響事態法(周辺事態法の「改正」法)に基づく後方支援活動及び国際平和支援法に基づく協力支援活動とし行われる「物品及び役務の提供」についての合意である。
 重要影響事態法3条2項は「後方支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供(略)は、別表第一に掲げるものとする。」とし、具体的な内容は別表第一に規定されている。そして、その別表第一の備考には、「物品の提供には、武器の提供を含まないものとする。」と定められている。
 しかし、「改正」前の別表第一備考は「一 物品の提供には、武器(弾薬を含む。)の提供を含まないものとする。」「二 物品及び役務の提供には、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含まないものとする。」と定められていたのであるから、「改正」後の備考の解釈としては、武器は提供できないが弾薬なら提供できる、そして、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備もできることになったと解することになる(国際平和支援法の別表第一も基本的には同じ)。
 そのことを前提として、合意事項7項は、今回の「改正」で解禁された「弾薬の提供」を極力狭く絞り込む合意である。
 なぜこういう合意事項が締結されるに至ったかと言えば、国会答弁における政府答弁の混乱ぶりのために、「弾薬の提供」「武器の輸送」がどこまで拡大するか分からないという深刻な懸念が生じたためであった。
 そのきっかけを作った参議院特別委員会における中谷元防衛大臣の答弁は、「弾薬の提供」や「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備」を出来るようにするのは、かつて(周辺事態法制定時)は「米軍からのニーズがなかった」が、今は米側から「期待が示された」からだという、米軍のニーズがあれば何でもするのか?と問い返したくなるひどい内容であった上に、劣化ウラン弾クラスター弾もミサイルもみんな「弾薬」だと答弁するまでに至った。
 7項において、新たに解禁された「弾薬の提供」にしばりをかけようと努力した野党3党の努力は多と
するが、もう1つ、周辺事態法別表の備考から削除された「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備」は手付かずで終わった。これこそまさに他国の武力行使と一体化する行為そのものなのであったが、そうであればこそ、小手先の合意や附帯決議で何とかなるようなレベルではなかったということだろう。
 
【合意事項 8項】
8 我が国が非核三原則を堅持し、NPT条約、生物兵器禁止条約化学兵器禁止条約等を批准していることに鑑み、核兵器生物兵器化学兵器といった大量破壊兵器や、クラスター弾劣化ウラン弾の輸送は行わないこと。
 
 8項で例示された「核兵器」「生物兵器」「化学兵器」「クラスター弾」「劣化ウラン弾」は「輸送は行わない」だけではなく、当然、「弾薬」として提供することもしないということが含意されていると解すべきである。
 ただし、これらが「弾薬」ではないのかどうかについては、合意事項は直接には触れていない。

(参考資料)
非核三原則
核兵器の不拡散に関する条約(NPT条約)
細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発,生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約
化学兵器の開発,生産,貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約
クラスター弾に関する条約               
 
【合意事項 9項】
9 なお、平和安全法制に基づく自衛隊の活動の継続中及び活動終了後において、常時監視及び事後検証
のため、適時適切に所管の委員会等で審査を行うこと。
 さらに、平和安全法制に基づく自衛隊の活動に対する常時監視及び事後検証のための国会の組織のあり方、重要影響事態及びPKO派遣の国会関与の強化については、本法成立後、各党間で検討を行い、結論を得ること。
 
第1文について
 最後の9項は、合意事項前文の「平和安全法制の運用には国会が十全に関与し、国会による民主的統制としての機能を果たす。」を、自衛隊の活動継続中における「常時監視」及び活動終了後における「事後検証」の両面から具体化しようとする規定である。
 まず、第1文は、「適時適切に所管の委員会等で審査を行う」としているが、この合意によって、何ら
か具体的な保証が得られたというものではなく、第2文において、「常時監視及び事後検証のための国会の組織のあり方」について「各党間で検討を行い、結論を得ること」が約束されているのもそのためである。
 もちろん、「常時監視及び事後検証のため」に国会の委員会等が審査を行うことがとりあえず与党と野党の一部で合意され、附帯決議となったことに、それなりの意味はあるだろう。
 ただし、8項までの諸合意とは異なり、9項については、9月19日閣議決定があまり意味を持たないことには注意すべきである。9項の内容は、政府がしなければならないことを定めているのではなく、国会が何をするのか、5党がどうするのかということを合意しているのであって、政府は関係がないからである。
 
第2文について
 第2文は、検討課題を列挙しただけであって、今すぐどうこうという規定ではなく、はたして具体的な結論が出るのかどうかの保証もないが、考え方の方向性としては重要な合意ではないかと思われる。
 第2文前段は、「平和安全法制に基づく自衛隊の活動に対する常時監視及び事後検証のための国会の組織のあり方」について、「各党間で検討を行い、結論を得ること」とされている。この「各党」というのは合意に加わった5党に限られるのか、それとも他党にも開かれているのかがはっきりしないが(合
意事項全体の流れからすると前者と読むべきか)、いずれにせよ、この規定とそのすぐ前の第1文との関係をまず整理しておくべきである。
 第1文は、「常時監視及び事後検証のため、適時適切に所管の委員会等で審査を行うこと」と定めているにもかかわらず、第2文前段は、そのための「国会の組織のあり方」を検討するとしているのであるから、読む者を混乱させかねないが、おそらく、「国会の組織のあり方」についての結論を得るまでの間は
既存の委員会又は特別委員会で審査するという趣旨だと読むのが自然であろう。
 そこで、「自衛隊の活動に対する常時監視及び事後検証のための国会の組織のあり方」であるが、自衛隊の海外派遣と事後検証ということで言えば、日本における事後検証の「不存在」こそ問題であり、イラク戦争については、わずかに外務省が2012年12月(民主党政権の最末期)に「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」なるものを外務大臣に報告したが、あくまでも調査の主体は外務省自身であり、その方法もあくまで省内調査であるに過ぎず、その上、「報告の中には,関係国政府とのやり取り等,そのまま公開した場合には各国との信頼関係を損なうおそれの高い情報等が多く含まれていることから,報告そのものの公表は行わない。」始末であり、「検証」などと名乗るのもおこがましいものであった。
 ここで想起されるのは、福島第一原発事故について検証するために設置された国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)である。委員会設置の根拠となる法律を制定し、国政調査権を背景とする様々な調査権限を付与するとともに、委員の身分が保障されるなど、その独立性が担保されていた。
 合意事項9項が言うように、事後検証のための組織を国会に設けるというのであれば、福島原発国会事故調を十分参考とすべきであろう。
 最後に、9項第2文後段の「重要影響事態及びPKO派遣の国会関与の強化については、本法成立後、各党間で検討を行い、結論を得ること。」については、なぜ、安保法制の中でとりわけ「重要影響事態及びPKO派遣」を取り出して「国会関与の強化」をうたう必要があるのかがいまひとつよく分からない。「国会関与の強化」が求められるのは、何もこの2類型に限ったことではないからである。
 あるいは、これは文章がやや言葉足らずなだけであって、重要影響事態には、ほぼ同じような活動が想定されている国際平和共同対処事態を含むという趣旨であり、また、PKO派遣には、従来から実施してきた国際連合平和維持活動のみならず、新たに実施できることとなった国際連携平和安全活動を含むという趣旨なのかもしれない。
 ただし、「国会関与の強化」が具体的にどのようなことを指しているのかは、これだけでは不分明であ
り、各党間での検討を注意深く見守るしかない。
 
3 おわりに~5党合意をどう活かすか
 参議院・我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会で、安全保障関連2法案が強行採決される前日の9月16日に、自由民主党公明党、日本を元気にする会、次世代の党、新党改革の5党間で締結された「平和安全法制に関する合意事項」については、締結直後の冷ややかな雰囲気も過ぎ去り、いまやほとんどの国民が忘れてしまっているのではないかと思える今日この頃である。
 実際、「5党合意」でGoogle検索をかけてみても、合意直後の当事者による発信や報道を除けば、私の連載「安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか」が上位でヒットするありさまである。
 私自身、神保哲生氏と宮台真司氏によるニュース・コメンタリーを視聴して、はじめて「これはしっかり読み込まねば」と気がついた始末であるから偉そうなことは言えないが。
 もちろん、5党合意と一口に言っても、様々な内容を含んでおり、各条項の解釈にしても、必ずしも断
定しかねる曖昧さを残すものも少なくない。それに、私自身、浅学非才の故に、思わぬ検討不足や勘違いをしている可能性も十分にある。従って、多くの人が「5党合意を自分はこう読んだ」という意見を次々と発表してくれることが一番良いと思っている。
 安保関連法制自体を廃止できる時がくれば、「5党合意」はその意味を失うが、それまでにあとどれだ
けの期間を要するのか誰にも分からない。それまでにも、生身の自衛官が危険な戦地に派遣される可能性は(法律の施行後は特に)常に存在する。そうである以上、自衛隊の戦地派遣を阻止する、あるいはせめて抑制するために使える手段はどんなものでも総動員しなければならない。私が5党合意の注釈をしつこく続けたのはそのためであった。
 このまことに中途半端と言えば中途半端な5党合意が、もしかすると将来、思わぬ効力を発揮する場面があるかもしれない(それが良いことなのかどうかは別論として)。
 
 最後に、この5党合意が安保法制違憲訴訟にどのような影響を及ぼすのか(あるいは及ぼさないのか)については、違憲訴訟を準備しているグループの中で既に十分に検討していることと思うが、私自身はその点についての検討はまだ手つかずであることをお断りしておく。
 
(過去の連載/弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年10月4日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(1)~とにかく読むだけは読まなければ(資料編)
2015年10月5日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(2)~逐条的に読んでみた①(前文・1項)
2015年10月7日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(3)~逐条的に読んでみた②(2項)
2015年10月9日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(4)~逐条的に読んでみた③(3項)
2015年10月11日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(5)~逐条的に読んでみた④(4項)
2015年10月13日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(6)~逐条的に読んでみた⑤(5項)
2015年10月15日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(7)~逐条的に読んでみた⑥(6項)
2015年10月18日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(8)~逐条的に読んでみた⑦(7項、8項)
2015年10月20日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(9)~逐条的に読んでみた⑧(9項)


(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。
 
(引用開始)
  あしたのための声明書
 
わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。
 
わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。
 
わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。
 
わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。
 
きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。
 
わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。
 
     自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)
 

(付録)
『世界』 作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ヒポポフォークゲリラ