wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

放送倫理検証委員会(BPO)「NHK総合テレビ『クローズアップ現代』“出家詐欺”報道に関する意見」(2015年11月6日)を読む

 今晩(2015年11月7日)配信した「メルマガ金原No.2267」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
放送倫理検証委員会BPO)「NHK総合テレビ『クローズアップ現代』“出家詐欺”報道に関する意見」(2015年11月6日)を読む

共同通信 2015/11/06 20:11
BPO、放送への圧力と異例批判 自民・総務省に

(引用開始)
 NHKの報道番組「クローズアップ現代」でやらせがあったとされる問題で、放送倫理・番組向上機構
BPO)の放送倫理検証委員会は6日、「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表、その中でNHKを厳重注意した総務省と事情聴取した自民党を「極めて遺憾」「圧力そのもの」などと厳しく批判した。BPOが政府・与党を批判するのは極めて異例で、放送業界でつくった第三者機関が権力の介入
に強く警鐘を鳴らすかたちとなった。
 意見書は、総務省がNHKに文書で厳重注意したことを「政府が個別番組の内容に介入することは許さ
れない」と非難した。
(引用終わり)
 
放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会 ニュース
NHK総合テレビ『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見

(引用開始)
 NHK総合テレビクローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線
(同年4月25日放送 関西ローカル)は、寺院で「得度」の儀式を受けると戸籍の名を変更できることを悪用した"出家詐欺"が広がっていると紹介。番組で「ブローカー」とされた人物が、演技指導によるやらせ取材だったと告発したのに対して、NHKは「過剰な演出」などはあったが「事実のねつ造につながるいわゆ
るやらせは行っていない」との報告書を公表していた。
 委員会は、NHK関係者のみならず、番組で紹介された「ブローカー」「多重債務者」に対しても聴き取り調査を行った。その結果、2つの番組は「情報提供者に依存した安易な取材」や「報道番組で許容される範囲を逸脱した表現」により、著しく正確性に欠ける情報を伝えたとして、「重大な放送倫理違反があった
」と判断した。
 その一方で、総務省が、放送法を根拠に2009年以来となる番組内容を理由とした行政指導(文書での厳重注意)を行ったことに対しては、放送法が保障する「自律」を侵害する行為で「極めて遺憾である」と
指摘した。
(引用終わり)
 
KYODO NEWS BPO総務省と自民批判 NHK番組やらせ問題(3分23秒)
 
 
 BPO放送倫理検証委員会の昨日の意見書発表については、夜遅く帰宅してネットで知り、マスメディアがこの意見書をどう取り上げるのか、とりわけ、総務相自民党の対応を批判した部分をどう報じるのか(あるいは報じないのか)について関心はあったものの、何しろTVでニュースを視聴するという習慣をなくしてから久しいため、正直よく分かりませんでした。
 また、新聞メディアについても、私が今日、事務所で読んだ朝日新聞(大阪本社13版)は、一面準トップ(文字数ではトップ)+社会面トップという非常に大きな扱いで驚いたのですが、他紙の扱いについ
ては不明です。
 しかし、朝日の扱いが不自然とは思えぬほど、放送倫理検証委員会が指摘したことはまことに重大な問題だと思います。朝日新聞も記事の中で「安倍政権自民党の反発は必至だ。」と述べるとおり、「言論と表現の自由を確保」(放送倫理・番組向上機構規約3条)することは、報道機関やBPOに任せておけばよいということではなく、国民の「不断の努力」(日本国憲法12条)によって保持しなければならないのだと痛感します。
 
 特に私にとっては、放送大学が、「日本美術史('14)」単位認定試験問題を学内サイトに掲載するにあたり、主任講師に無断で問題文の一部を削除し、その後、学長声明により、その根拠が放送法4条であると受け取れる見解を明らかにしたことを批判していましたので(「放送大学「日本美術史('14)」単位認定試験にかかわる見過ごせない大学の措置について」「放送大学長「単位認定試験問題に関する件について」を批判的に読む」)、特に大きな関心をもって意見書を読みました。
 また、昨日は、和歌山弁護士会主催によるシンポジウム「今、報道の自由を考える~国民の知る権利の観点から~」に参加し、斉加尚代さん(毎日放送記者・ディレクター)ら、現役の記者の率直な意見に耳を傾ける機会を得ましたので、「報道の自由」「言論と表現の自由」に対する鋭敏な感性の必要をいつも以上に感じていたこともあります。
 
 そこで、放送倫理・番組向上機構(BPO)サイトに掲載された上記意見書(全部で30ページあります)の内、特に総務大臣自民党の対応を厳しく批判した「Ⅵ おわりに」の部分を全文引用しますので、是非1人でも多くの方にお読みいただきたいと思います。決して、難しい文章ではありません。法律に馴染みのない方であっても、じっくりと読み進めれば、きっと得心がいくと思います。それだけ論理的に練り上げられているとともに、委員会が覚悟を決めて公表した意見書であることがひしひしと伝わってくるようです。
 以下、意見書の文章は紺色で、私が参照すべきと考えて引用した法律や規約の条文は茶色で表記しています。
 
 ところで、対象とした2つの番組(『クローズアップ現代 追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~』、かんさい熱視線 追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~』)の制作過程を検証し、その問題点を指摘した部分(Ⅰ~Ⅴ)も、非常に読み応えがありますので、是非通読されることをお勧めします(この部分は目次のみ引用します)。
 
 
Ⅰ はじめに
Ⅱ 審議の対象とした番組
 1 『クローズアップ現代 追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~』
   (2014年5月14日放送 26分)
 2 『かんさい熱視線 追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~』
   (2014年4月25日放送 25分)
Ⅲ 番組の制作・放送から問題が発覚するまでの経緯
 1 記者とB氏との関係
 2 A氏とB氏との関係
 3 記者とA氏の初めての接触
 4 『熱視線』のテーマ設定、初期段階の番組打ち合わせの状況
 5 相談場面の撮影前日までの経緯
 6 相談場面の撮影当日の撮影前までの状況
 7 相談場面、インタビューの撮影状況及び撮影終了後の状況
 8 編集、試写、そして『熱視線』と『クロ現』の放送
 9 「やらせ」報道と、NHKによる調査委員会の立ち上げ
Ⅳ 委員会の検証と分析
 1 相談場面の問題点
 2 問題の背後にある要因~なぜこのような放送がなされたのか
Ⅴ 委員会の判断~重大な放送倫理違反があった ・・・ 
 
Ⅵ おわりに
 戦後70年の夏、多くの人々が憲法と民主主義について深く考え、放送もまた、自らのありようを考え
させられる多くの経験をした。
 6月には、自民党に所属する国会議員らの会合で、マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番、自分の経験からマスコミにはスポンサーにならないことが一番こたえることが分かった、などと
いう趣旨の発言が相次いだ。メディアをコントロールしようという意図を公然と述べる議員が多数いることも、放送が経済的圧力に容易に屈すると思われていることも衝撃であった。今回の『クロ現』を対象に行われた総務大臣の厳重注意や、自民党情報通信戦略調査会による事情聴取もまた、このような時代の雰囲気のなかで放送の自律性を考えるきっかけとするべき出来事だったと言えよう。
 
 2015年4月28日、総務大臣はNHKに対し、『クロ現』について文書による厳重注意をした。番組内容を問題として行われた総務省の文書での厳重注意は2009年以来であり、総務大臣名では2007年以来である。NHKが調査報告書を公表した当日、わずか数時間後に出された点でも異例であった。
 総務大臣は、厳重注意の理由は「事実に基づかない報道や自らの番組基準に抵触する放送が行われ」たことであり、厳重注意の根拠は、放送法の「報道は事実をまげないですること。」(第4条第1項3号)と「放送事業者は、放送番組の種別及び放送の対象とする者に応じて放送番組の編集の基準を定め、これ
に従つて放送番組の編集をしなければならない。」(第5条第1項)との規定だとする。
 しかし、これらの条項は、放送事業者が自らを律するための「倫理規範」であり、総務大臣が個々の放送番組の内容に介入する根拠ではない。
 
放送法(昭和二十五年五月二日法律第百三十二号)
   
第二章 放送番組の編集等に関する通則
(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当た
つては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
2 放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たつては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番
組をできる限り多く設けるようにしなければならない。
(番組基準)
第五条 放送事業者は、放送番組の種別(教養番組、教育番組、報道番組、娯楽番組等の区分をいう。以下同じ。)及び放送の対象とする者に応じて放送番組の編集の基準(以下「番組基準」という。)を定め
、これに従つて放送番組の編集をしなければならない。
2 放送事業者は、国内放送等について前項の規定により番組基準を定めた場合には、総務省令で定めるところにより、これを公表しなければならない。これを変更した場合も、同様とする。
 
 放送による表現の自由憲法第21条によって保障され、放送法は、さらに「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」(第1条2号)という原則を定めている。
 しばしば誤解されるところであるが、ここに言う「放送の不偏不党」「真実」や「自律」は、放送事業者や番組制作者に課せられた「義務」ではない。これらの原則を守るよう求められているのは、政府などの公権力である。放送は電波を使用し、電波の公平且つ能率的な利用を確保するためには政府による調整が避けられない。そのため、電波法は政府に放送免許付与権限や監督権限を与えているが、これらの権限は、ともすれば放送の内容に対する政府の干渉のために濫用されかねない。そこで、放送法第1条2号は、その時々の政府がその政治的な立場から放送に介入することを防ぐために「放送の不偏不党」を保障し、また、時の政府などが「真実」を曲げるよう圧力をかけるのを封じるために「真実」を保障し、さらに、政府などによる放送内容への規制や干渉を排除するための「自律」を保障しているのである。これは、放送法第1条2号が、これらの手段を「保障することによつて」、「放送による表現の自由を確保するこ
と」という目的を達成するとしていることからも明らかである。
 「放送による表現の自由を確保する」ための「自律」が放送事業者に保障されているのであるから、放
送法第4条第1項各号も、政府が放送内容について干渉する根拠となる法規範ではなく、あくまで放送事業者が自律的に番組内容を編集する際のあるべき基準、すなわち「倫理規範」なのである。逆に、これらの規定が番組内容を制限する法規範だとすると、それは表現内容を理由にする法規制であり、あまりにも広汎で漠然とした規定で表現の自由を制限するものとして、憲法第21条違反のそしりを免れないことになろう。放送法第5条もまた、放送局が自律的に番組基準を定め、これを自律的に遵守すべきことを明ら
かにしたものなのである。
 したがって、政府がこれらの放送法の規定に依拠して個別番組の内容に介入することは許されない。とりわけ、放送事業者自らが、放送内容の誤りを発見して、自主的にその原因を調査し、再発防止策を検討して、問題を是正しようとしているにもかかわらず、その自律的な行動の過程に行政指導という手段によ
り政府が介入することは、放送法が保障する「自律」を侵害する行為そのものとも言えよう。
 
放送法(昭和二十五年五月二日法律第百三十二号)
  
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な
発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにす
ること。
   
第二章 放送番組の編集等に関する通則
(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当た
つては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
2 放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たつては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。
 
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
   
第三章 国民の権利及び義務
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
 
 もっとも、放送が他からの命令や指導によってでなく自由と自律の下で番組の質を維持し向上させるには、不断の自己検証と努力に加えて、放送局の独善に陥らないための仕組みが必要であろう。そのためにこそ、BPO放送倫理・番組向上機構)がある。当委員会は、2007年に設置されて以来、番組内容に問題があると判断した場合には、勧告・見解や意見を公表して放送局と放送界全体に改善を促してきたが、これを受けて各放送局は社内議論を深め、正確な放送と放送倫理の向上のための施策を定めるという循環が生まれてきている。政府もまた、このような放送の自由と自律の仕組みと実績を尊重し、2009年6月以降は、番組内容を理由にした行政指導は行わなかった。今回、このような歴史的経緯が尊重されず、総務大臣による厳重注意が行われたことは極めて遺憾である。
 また、その後、自民党情報通信戦略調査会がNHKの経営幹部を呼び、『クロ現』の番組について非公開の場で説明させるという事態も生じた。しかし、放送法は、放送番組編成の自由を明確にし「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」(第3条)と定めている。ここにいう「法律に定める権限」が自民党にないことは自明であり、自民党が、放送局を呼び説明を求める根拠として放送法の規定をあげていることは、法の解釈を誤ったものと言うほかない。今回の事態は、放送の自由とこれを支える自律に対する政権党による圧力そのものであるから、厳しく非難されるべきである。
 
放送法(昭和二十五年五月二日法律第百三十二号)
   
第二章 放送番組の編集等に関する通則
(放送番組編集の自由)
第三条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
 
 当委員会は、この機会に、政府およびその関係者に対し、放送の自由と自律を守りつつ放送番組の適正を図るために、番組内容に関しては国や政治家が干渉するのではなく、放送事業者の自己規律やBPO通じた自主的な検証に委ねる本来の姿に立ち戻るよう強く求めるものである。
 また、放送に携わる者自身が干渉や圧力に対する毅然とした姿勢と矜持を堅持できなければ、放送の自由も自律も侵食され、やがては失われる。これは歴史の教訓でもある。放送に携わる者は、そのことを常に意識して行動すべきであることをあらためて指摘しておきたい。
 
放送倫理検証委員会 委員会運営規則
第1章 総則
(総則)
第1条 「放送倫理・番組向上機構」(以下「機構」という)規約(以下「規約」という)第3条の目的
の達成を円滑に行うため、規約第27条の規定に基づき、この規則を制定する。
第2章 放送倫理および番組の向上に関する審議
(放送倫理および番組の向上に関する審議)
第4条 (1) 委員会は、放送倫理を高め、放送番組の質を向上させるため、放送番組の取材・制作のあり
方や番組内容などに関する問題について審議する。
(2) 委員会は、必要に応じて放送事業者および関係者に対し、調査・報告および放送済みテープ等関連資
料の提出を求めることができる。
(3) 委員会は、必要に応じて参考人を招き、意見交換を行う。
(4) 委員会は、第1項の審議に基づき、意見を公表することができる。委員会は、意見を公表した場合、その内容を機構の構成員に報告する。
 
放送倫理・番組向上機構 規約
第1章 総則
(目的)
第3条 本機構は、放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視
聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的とする。
 
 今回の問題を受けて、NHKは、再発防止のためにいくつかの具体策を公表した。この中で、NHKは、本来は実名を原則とするインタビューを匿名とする場合の「正確さと事実確認」を徹底するため、緊急の討議・勉強会で「匿名での放送の原則」を確認し「匿名での取材・制作チェックシート」を導入するとしている。また、試写などでのチェックの強化のために「取材・制作の確認シート」を活用するとともに、ジャーナリストとしての再教育も実施するとのことである。問題の背後にある要因を取り除くために、いずれも一定の効果は期待できるであろう。
 しかし、放送局に不祥事が起きると、再発防止策はどうしても制作現場の管理を強化するという方向に傾きがちである。新たな防止策によって報道現場の管理が必要以上に強化され、「情報源の秘匿」を損な
ったり事件の真相に迫る取材活動の萎縮を招くことのないよう十分な配慮を期待する。
 また、今回の問題が生じた原因のひとつに、番組スタッフ間の率直な対話の欠如があった。真実に迫る取材は報道番組の命であるが、その成果を視聴者に分かりやすく伝える演出も、欠くことのできないものである。両者が結びつき、番組が深化し向上するためには、番組制作に携わる者の間での真に率直な対話が必要である。現場のありようや空気を劇的に変化させる即効性の特効薬はないであろうが、番組にかか
わる者すべてが心がけ、真摯な対話が活発に行われるように体制を整えていくべきである。
 『クローズアップ現代』は、「最終報告書」が公表された4月28日の放送を、すべてこの問題の検証
にあてた。
 キャスターは、番組の最後を「22年間この番組が続いてきたのは、多くの視聴者の方々の番組への信頼という支えがあったからこそであり、今回のことはそのことを損ねてしまいました。この信頼を再び番組の支えとしていくためには、これからの一本一本の番組を今回の調査報告の指摘も踏まえて、真摯な姿勢で制作し続けていくことしかありません」と結んだ。調査報告書自体の不十分さはさておき、番組内で
説明を尽くそうとする自律的な検証の姿勢と真摯さは十分に評価されるべきであろう。
 今回の問題によって番組の活力が削がれることなく、キャスターの言葉どおり、視聴者に信頼され社会の真実に迫る意欲的な番組が今後も生み出されていくことを強く期待している。
 

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。
 
(引用開始)
  あしたのための声明書
 
わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。
 
わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。
 
わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。
 
わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。
 
きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。
 
わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。
 
     自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)