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「報道の自由」にとっての最高度の危機~「放送法の遵守を求める視聴者の会」からの攻撃について

 今晩(2015年11月16日)配信した「メルマガ金原No.2276」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
報道の自由」にとっての最高度の危機~「放送法の遵守を求める視聴者の会」からの攻撃について

 今日の昼休み、事務所のパソコンでFacebookに流れる情報を拾い読みしていたところ、和歌山県かつらぎ町の町会議員、東芝弘明(本名:ひがししばひろあき、議員名:とうしばひろあき)さんが昨日書かれたブログをシェアしている人が複数いて、ふと読んでみる気になりました。
 
 
 すると、昨日(11月15日)の讀賣新聞に、「「News23」の岸井成格氏を名指しで批判する」全面意見広告が掲載されたというではありませんか。
 そこに掲載された広告を一瞥したところ、
  
私達は、違法な報道を見逃しません。
  
私達の「知る権利」はどこへ?
という文字が躍っており、「放送法の遵守を求める視聴者の会」なる組織が出稿者のようです。
 東芝さんの書かれていることは至極もっともと思えましたが、とりあえず裏をとらねばということで、「放送法の遵守を求める視聴者の会」のホームページにあたってみることにしました。
 その結果、同会ホームページはすぐに見つかったものの、このサイトがいつ立ち上げられたのかについては、よく分かりませんでした。
 
 ただ、共同呼びかけ人(7人)の1人であり、事務局長とされる小川榮太郎氏(文藝評論家)のFacebookでは、産経新聞に全面広告を掲載した一昨日(11月14日)、超拡散希望 御報告と題して、「この度、憂いを同じくする民間人7名が呼びかけ人となり、「放送法遵守を求める視聴者の会」(以下「視聴者の会」)を発足し、本日11月14日付産経新聞朝刊に一面全面広告を掲載いたしました。同広告ではTBSニュース23のメインキャスター岸井成格氏の放送法違反である疑いの非常に濃厚な発言を明確、詳細に批判し、国民に違法な報道への注意を喚起しました。また、視聴者の会では、TBS、岸井氏宛公開質問状を近く正式に投函する予定です。」以下の文章を公表していますので、同会ホームページの公開も、それほど以前のことではなさそうです。
 
 なお、「放送法遵守を求める視聴者の会」の7人の呼びかけ人は以下の方々です。いずれも、特定の方面でよくお見かけする名前ですね。
  すぎやまこういち氏(代表/作曲家)
  渡部昇一氏(上智大学名誉教授)
  渡辺利夫氏(拓殖大学総長)
  鍵山秀三郎氏(株式会社イエローハット創業者)
  ケント・ギルバート氏(カリォルニア州弁護士・タレント)
  上念司氏(経済評論家)
  小川榮太郎氏(事務局長/文藝評論家)順不同
 
 「放送法の遵守を求める視聴者の会」の主張がいかにおかしいか、個別に検討すべきことはいくつもありますが、今日のところは詳しく検討して論じるだけの時間的余裕がないため、とりあえず、「表現の自由」「言論の自由」「報道の自由」に対する介入・攻撃は、このような形態、すなわち権力そのものではなく、「市民」を装った形によってもなされるのだということに注意を喚起したいと思います。
 
 前掲の小川榮太郎事務局長の文章によれば、「行動方針」として、「当会は新聞メディアは対象としません。新聞には完全な言論の自由が保障されています。今回の我々の会が問題にするのは放送法に規制された放送局のみです。」とした上で、さらに「今後の活動」として、「本日の新聞広告掲載に続き、矢継ぎ早に各種広報を始めキャンペーンを展開します。違法性ある報道を国民の皆様に知らせ続けるホームページの更新、各界有識者の賛同者の募集、大規模な署名活動を展開してまいります。報道番組の公平化が早期に達成されるまで、皆様の力強い御賛同、御支援をお願いいたします。」という闘争宣言で締めくくられています。
 
 とりあえず、14日には産経新聞に、15日には讀賣新聞に、それぞれ全面意見広告を出稿した「放送法の遵守を求める視聴者の会」ですが、それだけで終わるつもりがないことは、小川事務局長の文章でも明らかです。
 そのことを如実に示すのは、同会ホームページの中の以下の箇所です。
 
(引用開始)
スポンサー各位殿への公開質問状
・今回明らかにした通り、TBSの報道番組NEWS23放送法第4条を無視していると受け止めざるを得ない報道姿勢をとっています。スポンサー各位は、今後もこの方針を容認した上で番組スポンサーを務め続けるつもりですか?
・または、番組制作者に対し、放送法を遵守するよう番組編集の改善を求めるお考えはありますか?
・番組制作者に対し放送法遵守を求める場合、もしも番組制作者がその求めに応じない場合は、スポンサーを降板することも視野に入れ検討されますか?

お問い合わせガイド
 ※視聴者から各スポンサーへの問い合わせは、節度をもって行いましょう※
この件に関すると思われる番号の公開が無いスポンサーに関しては、本社番号が記載してあります。番組スポンサーの件に関する問い合わせである旨を伝えたうえで、関連部署へ問い合わせを行ないましょう。
(略)
まず最初に「NEWS23の番組スポンサーに関する問い合わせです」との旨を伝えましょう。
《全国ネット共通スポンサー》(2015.04~09)
(略)
ローカル局ごとのスポンサー》(2013.04~)
(略)
(引用終わり)
 
 これだけの番組スポンサーを調べ上げているのですから、それなりの情報提供ソースの存在が推測されるところですが、何よりも、「節度をもって行いましょう」と言いながら、スポンサーに対する組織的な圧力行動を呼びかけていることを看過することはできません。
 自民党「文化芸術懇話会」での「スポンサーに圧力を」「経団連にお願いしよう」という暴言を思い出すまでもなく、民間放送局を締め上げるには糧道を断つのが一番ということで、政府や自民党ではやりにくいのなら、私たちがやりましょう、ということでしょう。
 全ての良識ある人々に対し、最高度の危機意識を持つべき事態が起こっていると訴えたいと思います。


(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。
 
(引用開始)
  あしたのための声明書
 
わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。
 
わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。
 
わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。
 
わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。
 
きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。
 
わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。
 
     自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり) 
 

(付録)
辺野古節』『満月の夕』『踊れ踊らされる前に』
作詞・作曲:中川 敬 演奏:中川 敬&リクオ
(2015年11月14日 SEALDs辺野古アピール 新宿アルタ前にて)