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長谷川公一氏「日本学術会議 暫定保管提言を考える」講演と意見交換(11/16原子力資料情報室 第88回公開研究会)

 今晩(2015年11月17日)配信した「メルマガ金原No.2277」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
長谷川公一氏「日本学術会議 暫定保管提言を考える」講演と意見交換(11/16原子力資料情報室 第88回公開研究会)

 今年の4月24日付で、日本学術会議提言「高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策提言-国民的合意形成に向けた暫定保管」を発表しました。

 ところで、これに先立つ2010年9月7日、日本学術会議は、原子力委員会委員長から「高レベル放射性廃棄物の処分の取組における国民に対する説明や情報提供のあり方についての提言のとりまとめ」という審議依頼を受け、3.11をはさみ、2012年9月11日に回答を行いました。
 その回答において、日本学術会議は、
(1)高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直し
(2)科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保
(3)暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築
(4)負担の公平性に対する説得力ある政策決定手続きの必要性
(5)討論の場の設置による多段階合意形成の手続きの必要性
(6)問題解決には長期的な粘り強い取組みが必要であることへの認識
などを柱とする提言を行いました。

 2015年提言は、上記の「回答で提示した提言を政府等が政策等に反映しやすくするために、より一層の具体化を図ることが重要であるとの認識から、2013年5月に「高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ検討委員会」を設置し、回答のより具体的な方策について技術と社会という総合的視点から検討を重ねた結果、以下の 12 の提言を取りまとめた。」ものです。
 以前にもメルマガ(ブログ)でご紹介したことがありましたが、以下に、12の提言を再度引用します。
 
(引用開始)
2 提言の内容
(1) 暫定保管の方法と期間
提言1
 暫定保管の方法については、ガラス固化体の場合も使用済燃料の場合も、安全性・経済性の両面から考えて、乾式(空冷)で、密封・遮蔽機能を持つキャスク(容器)あるいはボールト(ピット)貯蔵技術による地上保管が望ましい。
提言2 暫定保管の期間は原則50年とし、最初の30年までを目途に最終処分のための合意形成と適地選定、さらに立地候補地選定を行い、その後20年以内を目途に処分場の建設を行う。なお、天変地異など不測の事態が生じた場合は延長もあり得る。
(2) 事業者の発生責任と地域間負担の公平性
提言3
 高レベル放射性廃棄物の保管と処分については、発電に伴いそれを発生させた事業者の発生責任が問われるべきである。また、国民は、本意か不本意かにかかわらず原子力発電の受益者となっていたことを自覚し、暫定保管施設や最終処分場の選定と建設に関する公論形成への積極的な参加が求められる。
提言4 暫定保管施設は原子力発電所を保有する電力会社の配電圏域内の少なくとも1か所に、電力会社の自己責任において立地選定及び建設を行うことが望ましい。また、負担の公平性の観点から、この施設は原子力発電所立地点以外での建設が望ましい。
提言5 暫定保管や最終処分の立地候補地の選定及び施設の建設と管理に当たっては、立地候補地域及びそれが含まれる圏域(集落、市区町村や都道府県など多様な近隣自治体)の意向を十分に反映すべきである。
(3) 将来世代への責任ある行動
提言6
 原子力発電による高レベル放射性廃棄物の産出という不可逆的な行為を選択した現世代の将来世代に対する世代責任を真摯に反省し、暫定保管についての安全性の確保は言うまでもなく、その期間について不必要に引き延ばすことは避けるべきである。
提言7 原子力発電所の再稼働問題に対する判断は、安全性の確保と地元の了解だけでなく、新たに発生する高レベル放射性廃棄物の保管容量の確保及び暫定保管に関する計画の作成を条件とすべきである。暫定保管に関する計画をあいまいにしたままの再稼働は、将来世代に対する無責任を意味する。
(4) 最終処分へ向けた立地候補地とリスク評価
提言8
 最終処分のための適地について、現状の地質学的知見を詳細に吟味して全国くまなくリスト化すべきである。その上で、立地候補地を選定するには、国からの申し入れを前提とした方法だけではなく、該当する地域が位置している自治体の自発的な受入れを尊重すべきである。この適地のリスト化は、「科学技術的問題検討専門調査委員会(仮称)」が担う。
提言9 暫定保管期間中になすべき重要課題は、地層処分のリスク評価とリスク低減策を検討することである。地層処分の安全性に関して、原子力発電に対して異なる見解を持つ多様な専門家によって、十分な議論がなされることが必要である。これらの課題の取りまとめも「科学技術的問題検討専門調査委員会」が担う。
(5) 合意形成に向けた組織体制
提言10
 高レベル放射性廃棄物問題を社会的合意の下に解決するために、国民の意見を反映した政策形成を担う「高レベル放射性廃棄物問題総合政策委員会(仮称)」を設置すべきである。この委員会は、「核のごみ問題国民会議(仮称)」及び「科学技術的問題検討専門調査委員会」を統括する。本委員会は様々な立場の利害関係者に開かれた形で委員を選出する必要があるが、その中核メンバーは原子力事業の推進に利害関係を持たない者とする。
提言11 福島第一原子力発電所の激甚な事故とその後の処理過程において、国民は科学者集団、電力会社及び政府に対する不信感を募らせ、原子力発電関係者に対する国民の信頼は大きく損なわれた。高レベル放射性廃棄物処分問題ではこの信頼の回復が特に重要である。損なわれた信頼関係を回復するために、市民参加に重きを置いた「核のごみ問題国民会議」を設置すべきである。
提言12 暫定保管及び地層処分の施設と管理の安全性に関する科学技術的問題の調査研究を徹底して行う諮問機関として「科学技術的問題検討専門調査委員会」を設置すべきである。この委員会の設置に当たっては、自律性・第三者性・公正中立性を確保し社会的信頼を得られるよう、専門家の利害関係状況の確認、公募推薦制、公的支援の原則を採用する。
 
 高レベル放射性廃棄物の処分については、多くの国で処分地の選定と国民の合意形成が
進められている。日本でも早急な対応が望まれる。
(引用終わり)
 
 2012年回答においても社会学者の舩橋晴俊法政大学社会学部教授(2014年8月ご逝去)が取りまとめにおいて中心的な役割を果たされたように、2015年提言でも、長谷川公一東北大学大学院文学研究科教授(社会学)が、幹事として重要な役割を務められました。

 その長谷川教授が、昨日(11月16日)、原子力資料情報室が主催した第88回公開研究会「どうする核のゴミ 日本学術会議 暫定保管提言を考える」で講演されました。
 原子力資料情報室サイトに掲載された事前告知の一部をご紹介します。
 
(抜粋引用開始)
●日時:2015年11月16日(月) 18:30~20:30(開場:18:00)
●会場:連合会館2階【201会議室】
  東京都千代田区神田駿河台3-2-11
● 講師:長谷川公一
東北大学教授、日本学術会議 高レベル放射性廃棄物の処分に関するフォローアップ委員会幹事、原子力資料情報室理事)
 現在、国は原発から出てくる放射性廃棄物を地下深くに埋設処分する、いわゆる最終処分のための候補地の検討をおこなっています。
 日本学術会議は2010年に原子力委員会から高レベル放射性廃棄物の処分について審議依頼を受け、2012年に「回答 高レベル放射性廃棄物の処分について」を回答。2015年4月には「高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策提言-国民的合意形成に向けた暫定保管」を発表しました。講師の長谷川公一さんは、社会学の観点からこれらの提言にかかわられています。
 公開研究会では長谷川公一さんに「提言」を解説いただき、参加者のみなさんと意見交換することで、放射性廃棄物への向き合い方を考えたいと思います。
(引用終わり)
 
 以下に、原子力資料情報室(CNIC Japan)のYouTubeチャンネルに2分割でアップされた動画をご紹介します。1本目が講演、2本目が意見交換(質疑応答)です。
 
20151116 第88回公開研究会 どうする核のゴミ 日本学術会議 暫定保管提言を考える①(1時間06分)

20151116 第88回公開研究会 どうする核のゴミ 日本学術会議 暫定保管提言を考える②(51分)
 

 第1部の長谷川公一教授による講演も勉強になりますが、第2部の意見交換は、提言を評価しない参加者による発言もあり、なかなか刺激的です。
 ただし、第2部については、提言を十分に読み込んだ上でないと、何が議論の本質なのかが分からないかもしれません(私自身、ついていけない議論もあります)。
 いずれにせよ、2015年提言を理解するために有用な研究会の動画であると思いますので、視聴をお勧めしたいと思います。
 
 なお、当日の模様を三輪祐児さんも撮影してアップされていました(1本にまとめられています)。こちらもご紹介しておきます。
 
20151116 UPLAN 長谷川公一「日本学術会議暫定保管提言を考える」(1時間)58分)
 

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2012年10月1日(2014年1月18日にブログに再アップ)
2012/9/11 日本学術会議による高レベル放射性廃棄物の処分に関する「提言」

2012年12月31日(2013年2月22日にブログに再アップ)
12/2日本学術会議 学術フォーラム「高レベル放射性廃棄物の処分を巡って」
2014年10月3日
日本学術会議・分科会が公表した高レベル放射性廃棄物問題についての2つの「報告」

2015年2月19日
「核のごみ」をめぐる注目すべき動き~国の「基本方針」改訂と日本学術会議の「提言」
 
2015年5月7日
日本学術会議「高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策提言―国民的合意形成に向けた暫定保管」をこれから読む
 

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。
 
(引用開始)
  あしたのための声明書
 
わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。
 
わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。
 
わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。
 
わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。
 
きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。
 
わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。
 
     自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)
 

(付録)
辺野古節』『満月の夕』『踊れ踊らされる前に』
作詞・作曲:中川 敬 演奏:中川 敬&リクオ
(2015年11月14日 SEALDs辺野古アピール 新宿アルタ前にて)