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珍道世直さんの新たな闘い~「閣議決定・安保法制違憲訴訟」を津地裁に提起

 今晩(2015年11月25日)配信した「メルマガ金原No.2285」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
珍道世直さんの新たな闘い~「閣議決定・安保法制違憲訴訟」を津地裁に提起

 元三重県職員の珍道世直(ちんどう・ときなお)さんが、2014年7月1日の閣議決定(集団的自衛
権行使容認等)が憲法9条に違反するとして提起した違憲訴訟の帰趨については、過去私のメルマガ(ブログ)で、3度にわたりご紹介してきました。
 
 
 
 
 詳細は上掲の記事をご覧いただきたいのですが、その経過を簡単に記せば、以下のとおりでした。
 
第1審 東京地方裁判所
 2014年7月11日 東京地方裁判所に対し、安倍晋三以下、当時の閣僚全員を被告として提訴。請
求の趣旨は以下の3点。
  ①7月1日閣議決定憲法第9条に違反して無効であることの確認を求める。
  ②閣議決定を先導した内閣総理大臣とこれに加担した各大臣の懲戒処分を求める。
  ③閣議決定によって被った精神的苦痛に対する慰謝料10万円の支払を求める。
 同年12月12日 訴え却下(③については棄却)の判決
控訴審 東京高等裁判所
 2014年12月19日 東京高等裁判所控訴申立て
 2015年4月21日 控訴棄却の判決
上告審 最高裁判所
 2015年5月1日 最高裁判所に上告及び上告受理を申立て
 2015年7月29日 第二小法廷が上告棄却の判決 
 
 さて、その珍道さんから、今日(11月25日)私の事務所に、去る11月16日、「閣議決定・安保法制違憲訴訟」を津地方裁判所に提起したことを知らせるお手紙と資料が届きました。その手紙の一節には、「「違憲立法」に対する訴訟の動きが、全国的に鈍いように思われます。弁護士先生方におかれましては、法施行後の2016年3月以降の違憲訴訟の提起を検討しておられると思慮いたしておりますが、私はそれまでの間、動きを止めるのではなく、司法に対しても「違憲」であると言い続けていくことが必要だと考えております」と書かれていました。
 現在、有力な弁護士グループが中心となって違憲訴訟が準備されており、その中には、施行を待たずに
提訴されるものがあるかもしれませんが、珍道さんとしては、しびれを切らしたのかもしれません。
 なお、前回の違憲訴訟(第1審、控訴審)に引き続き、今回も「本人訴訟(弁護士が代理人についていない)」での提訴だということです。
 
 以下に、珍道さんから送られてきた資料の中から、「請求の趣旨」(全文)及び「請求の原因」の見出しを抜き出して引用します。珍道さんの主張の骨子がご理解いただけるのではないかと思います。
 なお、被告は「国 同代表者法務大臣 岩城光英」です。

第Ⅰ 請求の趣旨
1.「集団的自衛権」の行使を容認・法定した「閣議決定憲法第9条の下で許容される自衛の措置)」
及び「存立危機事態への対処」を定めた「安全保障法制(武力攻撃・存立危機事態法、自衛隊法等)」は
憲法第9条に違反する決定或は法制であり、無効であることの確認を求める。
2.「重要影響事態法」による「後方支援」、「国際平和支援法」による「協力支援」のうち、「軍事支
援」については、憲法第9条に違反する支援であり、無効であることの確認を求める。
3.損害賠償請求
 「閣議決定」及び「安全保障法制」によって原告は身体的・精神的苦痛を被り、憲法に規定する平和的生存権など諸権利が侵害されたので、国家賠償法第1条の規定に基づき、金10万円の損害賠償を請求する。
 
第Ⅱ 請求の原因
1.「閣議決定」の違憲
2.「武力攻撃・存立危機事態法」等の違憲
3.「重要影響事態法」による「後方支援」、「国際平和支援法」による「協力支援」のうち、軍事支援
違憲
4.本「安全保障法制」に対する憲法学者らの違憲の主張(違憲性の補完)
5.本「閣議決定」及び本「安全保障法制」による国内外への影響
6.原告の「具体的争訟性」
7.損害賠償請求
8.戦争放棄を国の道義・国是に―不戦永久の国家を目指して
 
第Ⅲ 裁判所は、「違憲審査権」を行使して、速やかに「憲法適合性」の審査を
1.原告らの訴えを排除するなら、次は集団的自衛権の行使(戦争の準備・実行)の段階―その時では回
復し難い重大な損害を被る
2.国民の裁判を受ける権利と違憲審査の国際的動向を踏まえ、「具体的争訟性」の認定を
3.「平和的生存権」の具体的権利性の認定を
4.本「閣議決定」及び本「安全保障法制」は、砂川事件最高裁判決の「一見極めて明白な違憲無効であ
ると認められるもの」に該当
5.今この時に「憲法適合性」の審査を
 
 珍道さんから届いた資料の中には訴状自体は含まれておらず、その抜粋が封入されていたのですが(100ページ近い大作のようですから無理もない)、ご紹介した見出しだけでも、珍道さんの言いたいことは十分に伝わると思います。
 正直、私にしても、弁護士としてこの主張を日本の裁判所で通す自信はありません。また、現在準備されている違憲訴訟に代理人として加わる場合、その訴訟と整合性を保てない主張はできませんからね。今
回も「本人訴訟」となったのも、やむを得ないかなとは思います。
 けれども、珍道さんが主張される「原告らの訴えを排除するなら、次は集団的自衛権の行使(戦争の準備・実行)の段階―その時では回復し難い重大な損害を被る」ということは、多くの人が抱く大きな懸念であるでしょう。疑いなく「具体的争訟性」を満たす事態が生じた時では「手遅れ」ではないのか?と
いうことが。
 
 なお、珍道さんによれば、今回の提訴にあたり、珍道さんも会員である「九条の会・津」(会員数約3
50名)が、11月6日に臨時委員会(役員会)を開催し、「九条の会・津」として、安保法制廃止運動の一環として、この訴訟を支援(訴訟費用のカンパ・広報・裁判の傍聴参加等)することが決定されたとのことです。
 
 最後に、今回の提訴を報じた中日新聞の記事を引用します。
 
中日新聞 2015年11月16日 13時13分
安保法は無効と提訴 元三重県職員、津地裁に

(引用開始)
 集団的自衛権行使を認めた閣議決定と安全保障関連法は憲法9条に違反し無効だとして、元三重県職員の珍道世直(ちんどうときなお)さん(76)が16日、国に無効確認を求める訴えを津地裁に起こした

 訴状によると、行使容認を「従来の政府見解の憲法解釈を超え、9条を根底から覆す」として「9条改正と同等の効果のある憲法解釈変更の閣議決定は内閣の職権を逸脱している」と主張。安保法も「『他国の武力行使との一体化は違憲』との立場から実施してこなかった、弾薬の提供や武装した兵士の輸送が可
能とされている」として「自衛の枠からはみ出し、他国の戦争に加担するもの」と訴えている。
 珍道さんは同日、県庁で会見し「平和を守るのか、戦争への道に進むのか。日本にとって戦後最大の岐
路。安保法制が施行される来年3月までに無効確認を得たい」と話した。
 珍道さんは昨年7月にも、閣議決定違憲だとして無効確認を求める訴訟を東京地裁に起こしたが、1
、2審とも「ただちに原告の権利を侵害するわけではない」と訴えを退け、最高裁も上告を棄却した。
 安保法をめぐっては9月、松山市の自営業男性が無効確認を求める訴えを東京地裁に起こした。東京地裁は先月8日、「法律が憲法に適合するかどうかの判断を抽象的に求めるもので、審判の対象にならない
」と訴えを退けている。
(引用終わり)
 

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。
 
(引用開始)
  あしたのための声明書
 
わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。
 
わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。
 
わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。
 
わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。
 
きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。
 
わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。
 
     自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)
 

(付録)
『世界』 作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ヒポポフォークゲリラ