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武藤類子さんの講演(11/23)を聴き、まんが「なすびのギモン」(環境省)を読んで考えた

 今晩(2015年12月3日)配信した「メルマガ金原No.2293」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
武藤類子さんの講演(11/23)を聴き、まんが「なすびのギモン」(環境省)を読んで考えた

 一昨日(12月1日)「11/23世界核被害者フォーラム「広島宣言」&「世界核被害者の権利憲章要綱草案」(付・森松明希子さんの会場発言「避難の権利と平和的生存権」)」を書いた際、そのフォーラムの
模様を一部なりとも撮影した動画はないだろうかと探してみたのですが、見つけられませんでした。
 3日間の日程を見てみると、2日目(11月22日)の特別セッションで小出裕章さんが基調講演をさ
れていますし、同じ日の「反核利用キャンペーン(ウラン採掘・原発核燃料サイクル)」セッションと「世界放射線被害者人権憲章起草委員会」には武藤類子さんが参加されたようです。
 
 実は、このお2人に注目したのは、世界核被害者フォーラムの動画を探していた時に、偶然、小出さんと武藤さんを講師に迎えた「ゴメンだね!原発も戦争も!脱原発をめざす女たちの会11.23集会」(於:浜離宮朝日ホール・小ホール)の動画がアップされていることに気がついたことによります。
 22日まで広島での世界核被害者フォーラムに参加していたお2人が、翌23日の午後には東京で講演
されていたのですから、なかなかの強行軍であったと思われます。
 いつもよく利用させていただく三輪祐児さんによるUPLANの動画をご紹介します。
 
20151123 UPLAN 小出裕章 武藤類子「ゴメンだね!原発も戦争も!脱原発をめざす女たちの会11.23集会(2時間33分)

冒頭~ 開会挨拶
3分~ 小出裕章氏 講演「原子力を廃絶するために必要なこと」
1時間33分~ 武藤類子氏 講演「福島の今 原発事故は終わらない」
2時間22分~ 福島瑞穂
2時間30分~ 大河原雅子
2時間32分~ 小笠原厚子氏
2時間33分~ 閉会挨拶
 
 京大原子炉実験所を定年退職され、長野県松本市に居を移した小出さんの講演にも興味はあるのですが、時間の都合もあり、私はまず武藤類子さんの講演を視聴しました。
 武藤さんが報告された「福島の今」を、主な項目のみ箇条書きにすると以下のとおりです。
 
福島第一原発の原状(汚染水、排気塔鋼材の破断)
除染(汚染土処理)
〇廃棄物の焼却
〇帰還政策の推進
〇災害関連死
〇新たな安全神話(「まんが なすびのギモン」など)
〇国道6号線・清掃ボランティア
〇元東電会長らに起訴議決
 
 私は、武藤さんのお話で、「まんが なすびのギモン」というものを初めて知りましたので、インターネットで検索してみました。
 すると、環境省の報道発表資料にこういうものがありました。
 
平成26年12月12日
除染・放射線に関する『まんが なすびのギモン』の発行について

(引用開始)
 除染放射線に関する情報を分かりやすくお伝えする『まんが なすびのギモン』を発行します。本日よ
り、除染情報プラザ等で順次配布するほか、除染情報プラザサイト内の「なすびのギモン」のウェブサイトに掲載します。
1.特徴
除染放射線に関する日常の疑問について、マンガでわかりやすく、データに基づいて詳しくお伝えし
ます。
福島県出身のタレントなすびさんが専門家に取材する様子をマンガにしました。福島県内で放映された
テレビ番組「なすびのギモン」とも連動しています。
2.テーマ
今回は以下の2編を発行します。今後「食品編」等を発行予定です。
①身の回りの放射性物質編:渡邊明 福島大学特任教授 監修
②健康影響編:髙村昇 長崎大学教授 監修
3.ご利用方法
除染情報プラザ(福島市)等、福島県内各所にて順次配布します。詳しくは除染情報プラザ(電話番号
024-529-5668。10:00-17:00、月曜日除く。)にお問合せください。
除染情報プラザサイト内の「なすびのギモン」のウェブサイトに掲載しています。テレビ版「なすびのギ
モン」の動画や参考資料と合わせてご覧ください。
(引用終わり)
 
 「なすび」という芸名の福島県出身のタレントさんがいたんですね。知らなかった。
 といういことで、除染情報プラザサイト内の「なすびのギモン」のウェブサイトを閲覧してみました。
 
 
 見てみると、テレビ版「なすびのギモン」というのがあるのですね。パート1からパート3まで各10回の計30回分の放送が視聴できるようになっていました。
 パート1の第1回が2013年10月8日に、パート3の第10回が2015年10月3日に放映されていました。
 
 
 そして、まんが版「なすびのギモン」は、これまでに3冊発行されていました。
 ダウンロード版にリンクしておきます。
 
 
 正直、ざっとこれらのマンガを読み流しただけでは、何が問題なのかに気づくのは大変かもしれず、ただ結論として、「そんなに心配することはないんだ」「大丈夫なんだ」という気分になれるように書かれているということは分かります。
 そこで、11月23日の講演で、武藤類子さんが説明されたことを一部文字起こししてご紹介しましょう(上記動画の1時間50分~です)。
 
「これは環境省が作っている『なすびのギモン』という冊子なんですね。なすび、という方をご存知でしょうか。福島県出身のお笑いのタレントさんなんですね。この方をまんがに描いて、この人が主人公になってる冊子なんです。これはですね、どういうことが書いてあるかというと、放射線は危険ですから気をつけましょうということも書いてあります。だいたい90%は本当のことが書いてあるんですね。でも1(10%)の嘘というか、誤解されやすい表現がうまあく滑り込まされているというものなんですね。例えば、放射線によって細胞は破壊されます、って書いてあります。でも、それは直るんですよね、っていうふうになすびさんが言うわけですよね。そうなんです、直るんです、っていうふうに書いてあるんですね。その細胞が、本当に直るというか、傷つけられたものが回復する細胞ももちろんあるんですけれども、間違った回復の仕方をするということになれば、癌がおきたりとかするわけですよね。そういうことについては言及していないわけなんですね。」(金原注:「第2話 健康影響編」をお読みください)
 
 このまんがの冊子版は、福島市除染情報プラザの他、福島県内の「各市町村の役所、東邦銀行各店舗
セブン-イレブン各店舗、ヨークベニマル浜田店など」で配布されているそうです。
 
 もちろん、この「まんが なすびのギモン」も、環境省福島県が推進する帰還政策に資するための「リスク・コミュニケーション」の一実践例ということなのでしょう。
 誰が読んでも「嘘だ」と分かるようなものでは、官製リスコミにとっては逆効果であり、90%の真実の中に10%の誤解を招くような表現を巧妙に埋め込むことこそが、その目的達成の手段として合理的ということなのだろうと思い
ます。
 これは、対抗する側にとってもよりしんどい段階に来ているということなのかなあ、と思ったものでした。
 

(忘れないために)
 「自由と平和のための京大有志の会」による「あしたのための声明書」(2015年9月19日)を、「忘れないために」しばらくメルマガ(ブログ)の末尾に掲載することにしました。
 
(引用開始)
  あしたのための声明書
 
わたしたちは、忘れない。
人びとの声に耳をふさぎ、まともに答弁もせず法案を通した首相の厚顔を。
戦争に行きたくないと叫ぶ若者を「利己的」と罵った議員の無恥を。
強行採決も連休を過ぎれば忘れると言い放った官房長官の傲慢を。
 
わたしたちは、忘れない。
マスコミを懲らしめる、と恫喝した議員の思い上がりを。
権力に媚び、おもねるだけの報道人と言論人の醜さを。
居眠りに耽る議員たちの弛緩を。
 
わたしたちは、忘れない。
声を上げた若者たちの美しさを。
街頭に立ったお年寄りたちの威厳を。
内部からの告発に踏み切った人びとの勇気を。
 
わたしたちは、忘れない。
戦争の体験者が学生のデモに加わっていた姿を。
路上で、職場で、田んぼで、プラカードを掲げた人びとの決意を。
聞き届けられない声を、それでも上げつづけてきた人びとの苦しく切ない歴史を。
 
きょうは、はじまりの日。
憲法を貶めた法律を葬り去る作業のはじまり。
賛成票を投じたツケを議員たちが苦々しく噛みしめる日々のはじまり。
人の生命を軽んじ、人の尊厳を踏みにじる独裁政治の終わりのはじまり。
自由と平和への願いをさらに深く、さらに広く共有するための、あらゆる試みのはじまり。
 
わたしたちは、忘れない、あきらめない、屈しない。
 
     自由と平和のための京大有志の会
(引用終わり)