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障害者差別解消法(2016年4月1日施行)を学習するための資料のご紹介

 今晩(2015年12月17日)配信した「メルマガ金原No.2307」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
障害者差別解消法(2016年4月1日施行)を学習するための資料のご紹介

 昨日(12月16日)、大阪市で開かれたある会議に出席したところ(前半で私が報告しなければならない案件があったため)、その後半は、辻川圭乃(つじかわ・たまの)弁護士を講師に迎えた「障害者差
別解消法の施行にむけて」という研修会でした。
 お恥ずかしいことですが、障害者法制に関する私の知識ははなはだ頼りないレベルであるため、「猫に
小判」状態であったかもしれません。
 そもそも、障害者差別解消法という新しい法律が出来たということは、うっすらと聞いたことがあったように思いますが、実はまだ施行されておらず、来年(2016年)4月1日から施行されるのだという
こと自体、昨日の研修会で初めて知ったありさまです。
 
 そこで、せっかく障害者問題に造詣の深い辻川弁護士から分かりやすい解説を伺ったのですから、これを契機として、「猫に小判」状態から抜け出して少しは知識を身につけるため、このメルマガ(ブログ)
で同法のことを取り上げようと思いたちました。
 いわば、本格的に勉強したくなった際のインデックスにしようという魂胆であり、読者の方も、私に付き合っていただければ、有益な知識が得られる(?)という仕掛けです。
 
 ただし、障害者差別解消法の内容をご紹介する前に、その前提として、やはり障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)への署名と批准に触れざるを得ません。
 「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的と」して、2006年12月13日に国連総会で採択され、2008年5月3日に発効した「障害者の権利に関する条約」について、我が国は、2007年9月28日に署名しましたが、批准書を寄託し、我が国について効力が発生したのは、ようや
く2014年2月19日のことでした。
 以下には、締約国に課された一般的義務を定めた第4条を引用します。
 
第四条 一般的義務
1 締約国は、障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に
実現することを確保し、及び促進することを約束する。このため、締約国は、次のことを約束する。
(a)この条約において認められる権利の実現のため、全ての適当な立法措置、行政措置その他の措置をと
ること。
(b)障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するための全ての適
当な措置(立法を含む。)をとること。
(c)全ての政策及び計画において障害者の人権の保護及び促進を考慮に入れること。
(d)この条約と両立しないいかなる行為又は慣行も差し控えること。また、公の当局及び機関がこの条約
に従って行動することを確保すること。
(e)いかなる個人、団体又は民間企業による障害に基づく差別も撤廃するための全ての適当な措置をとる
こと。
(f)第二条に規定するユニバーサルデザインの製品、サービス、設備及び施設であって、障害者に特有のニーズを満たすために必要な調整が可能な限り最小限であり、かつ、当該ニーズを満たすために必要な費用が最小限であるべきものについての研究及び開発を実施し、又は促進すること。また、当該ユニバーサルデザインの製品、サービス、設備及び施設の利用可能性及び使用を促進すること。さらに、基準及び指
針を作成するに当たっては、ユニバーサルデザインが当該基準及び指針に含まれることを促進すること。
(g)障害者に適した新たな機器(情報通信機器、移動補助具、補装具及び支援機器を含む。)についての研究及び開発を実施し、又は促進し、並びに当該新たな機器の利用可能性及び使用を促進すること。この
場合において、締約国は、負担しやすい費用の機器を優先させる。
(h)移動補助具、補装具及び支援機器(新たな機器を含む。)並びに他の形態の援助、支援サービス及び
施設に関する情報であって、障害者にとって利用しやすいものを提供すること。
(i)この条約において認められる権利によって保障される支援及びサービスをより良く提供するため、障
害者と共に行動する専門家及び職員に対する当該権利に関する研修を促進すること。
2 各締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、これらの権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、また、必要な場合には国際協力の枠内で、措置をとることを約束する。ただし、この条約に定める義務であって、国際法に従って直ちに適用
されるものに影響を及ぼすものではない。
3 締約国は、この条約を実施するための法令及び政策の作成及び実施において、並びに障害者に関する問題についての他の意思決定過程において、障害者(障害のある児童を含む。以下この3において同じ。)を
代表する団体を通じ、障害者と緊密に協議し、及び障害者を積極的に関与させる。
4 この条約のいかなる規定も、締約国の法律又は締約国について効力を有する国際法に含まれる規定であって障害者の権利の実現に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。この条約のいずれかの締約国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ、又は存する人権及び基本的自由については、この条約がそれらの権利若しくは自由を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、
それらの権利及び自由を制限し、又は侵してはならない。
5 この条約は、いかなる制限又は例外もなしに、連邦国家の全ての地域について適用する。
 
 
 我が国が、この条約に署名してから批准するまでに6年以上を要したのは、締約国に課される立法等の措置を実現する必要があったからですが、その間の経緯をまとめた論考が、国立国会図書館(調査及び立法考査局)が発行する月刊「レファレンス」2015年10月号に掲載されていましたので、ご一読をお勧めします。
 以下には、目次及び要旨を引用します。
 
レファレンス 平成27年10月号
わが国の障害者施策―障害者権利条約批准のための国内法整備を中心に―
国立国会図書館 調査及び立法考査局 主幹 社会労働調査室 岡村 美保子

(引用開始)
目次
はじめに
Ⅰ 障害者権利条約
 1 概要
 2 条約作成の経緯
 3 障害の概念―社会モデル―
 4 主な内容
Ⅱ わが国の障害者施策の歴史
 1 第2 次世界大戦まで
 2 第2 次世界大戦直後
 3 厚生白書にみられる障害者施策
 4 国際障害者年以降
Ⅲ 条約批准のための法整備
 1 障害者基本法改正
 2 障害者差別解消法制定
 3 障害者雇用促進法改正
 4 障害者総合支援法(障害者自立支援法の改正)
 5 精神保健福祉法改正
 6 障害者虐待防止法制定
おわりに
要旨
① 平成18(2006)年の国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)は、“Nothing about us without us” という有名なフレーズに象徴されるように、起草段階から障害当事者が深く関わり、その内容は、障害の概念そのものに対する発想の転換を含め、大きなインパクトを与える
ものである。
② 障害者権利条約は人権条約であり、障害者の諸権利が人権であることを再確認し、その権利の尊重を強化するためのものである。同条約における障害の概念は、いわゆる障害の「社会モデル」を反映したものであり、締約国に対し、障害者の直接的な差別を禁止するのみならず、障害者が社会における真の平等を享受できるような措置を取ることを求めており、その中には「合理的配慮」の提供といったものが含ま
れる。
③ わが国は、この条約に起草段階から積極的に参画し、平成19(2007)年に署名を行った。しかし、わが国の障害者に対する政府の考え方や施策は、従来障害者権利条約のものとは異なるものであった。徐々に変化を遂げてきてはいたものの、条約の実施を担保するに十分なものではなかったため、拙速な締結に
対する障害者団体の反対もあり、国内法整備を行ってから、平成26(2014)年に批准するに至った。
④ 平成21(2009)年に発足した、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験者等を構成員とする「障がい者制度改革推進会議」での議論を基として、条約に示された障害観に即した障害者基本法の改正、障害者の差別禁止に関する法律の制定、障害者の地域での自立した生活を担保する福祉
等の改正、障害者の人権侵害に対処するための法整備が行われた。
⑤ 障害者を治療や社会的保護の対象として扱ってきた障害者観を転換し、権利の主体として認識し、差別をなくし、人権を守るために社会的障壁の除去や合理的配慮の措置を取るという条約の要請に応えるため、今後、新たに制定された法律の適切な施行のための準備や、制度のさらなる見直し等を行っていく必
要がある。
(引用終わり)
 
 上記論考で解説されている「Ⅲ 条約批准のための法整備」で取り上げられた諸法について、以下にリンクしておきます。
 
 
 そこで、障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)についてなのですが、本文26条、附則9条と、それほど条文数が多いというほどではなく、最初から条文を読んでいけば、おおよその内容は分かるとはいえ、やはり、法律に馴染みのない方には分かりづらいと思いますので、前掲の「レファレンス」に掲載された岡村美保子さんによる論考から、同法制定の経緯とその内容を説明した部分を引用しますので、まずこれで概略を頭に入れていただくのが良いと思います。
 
(引用開始)
2 障害者差別解消法制定
(1) 経緯
 上記のように、障害者基本法に第4条として差別の禁止が規定され、社会的障壁の除去の実施において合
理的な配慮が義務付けられた。なお、障害者に対する差別禁止が障害者基本法に盛り込まれたのは、平成
16(2004)年改正時である(本稿Ⅱ4(3)参照)。
 日本国憲法にも差別禁止が定められている(第14条)が、憲法の差別禁止条項は基本的には私人間を問題にしないという枠組みとなっており、差別の防止や救済が困難であること、障害者基本法の差別禁止は
理念規定であり、裁判規範性が弱く、救済手続もないことから、差別禁止法が必要であるとされた。
 平成22年閣議決定により、「障害を理由とする差別の禁止に関する法律の制定」につき、推進会議の第一次意見に沿って必要な検討を行い、平成25年常会への法案提出を目指すこととされたのを受け、平成22年(2010)年11月、推進会議に「差別禁止部会」が設置された。ここで21回の会議を行った後、平成24(2012)年7月に障害者政策委員会の下に置かれた「差別禁止部会」に移行して、さらに検討を重ね、同年9月「「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見」が取りまとめられた。一方、同年7月に民主党に「障害者差別禁止PT」(江田五月会長)が設置され、12月に考え方(方針)を取りまとめ、政権交代後には自由民主党の障害者特別委員会(衛藤晟一委員長)、公明党の「障がい者福祉委員会」(高木美智代委員長)を中心に、与党内での検討が開始された。翌年(平成25(2013)年)には、自由民主党公明党民主党の3党による協議の結果、「障害を理由とする差別の禁止に関する立法措置に係る主な論点と基本的な考え方について」がまとめられた。これを受けて、政府が障害者政策委員会差別禁止部会の意見や障害者団体を含めた関係団体からの意見も盛り込んで法案を作成、3党協議の場に提示して説明し、各党の部会等の法案審査手続を経て了承を得、閣議決定の上国会に提出した。衆参とも全会一致で可決・成立した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25 年法律第65 号。いわゆる「障害者差別解消法」)は、このような成立過程を経ており、「閣法でありながら実質的には
議員立法」と評されている。
(2) 内容
 この法律は、障害者基本法第4条に規定された差別禁止の基本原則を具体化するものであって、差別の禁
止に関する具体的な規定をガイドライン方式で示し、それが遵守されるよう具体的措置等を定める、「行政法的アプローチ」(行政法規により行為規範を定立し、行政措置によりその実効性を確保する手法)を基本としている。題名が「差別解消法」とされた趣旨については、『概説障害者差別解消法』では、「本法は、差別を禁止するとともに、それを社会において実効的に推進するための基本方針や指針の策定等の措置、相談、紛争解決の体制整備等の国や地方公共団体における支援措置についても規定しており、これ
らを通じて差別のない社会を目指すものであることから」としている。
 この法律は、障害者に対する差別一般を律するものであるが、雇用分野については、同じ常会で改正さ
れた障害者雇用促進法の定めるところによるとされた(第13条)。
 具体的な措置は、行政機関等と事業者に義務付けられる差別を解消するための措置(第3章)と、国及び地方公共団体が行うこととされる差別を解消するための支援措置(第4章)の2種類であり、前者は「差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」からなる。合理的配慮の提供は、民間事業者に関しては努力義務とされている。支援措置としては、相談・紛争の防止又は解決の体制整備、啓発活動、情報収集等のほか、地域における関係者のネットワーク構築のため、障害者差別解消支援地域協議会の組織の根拠規
定を置き、同協議会による関係機関等の連携を図ることとしている。
 本法の平成28(2016)年4月1日の施行に向け、準備作業が行われており、平成27(2015)年2月24日
には「基本方針」が閣議決定された。その概要は以下のとおりである。
 「不当な差別的取扱い」については、「障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否、場所・時間帯などを制限、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどによる、障害者の権利利益の侵害を禁止する」という趣旨であり、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いとしないとしている。「合理的配慮」については、「行政機関等及び事業者が、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の表明があった場合に、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないもの」であり、その事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られ、非障害者との比較において同等の機会の提供を受けるためのもので、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないものとしている。また、「過重な負担」は、事務・事業への影響の程度、実現可能性の程度、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断するとしている。なお、相談及び紛争の防止等のための新たな機関は設置せず、既存の機関等の活用・充実を
図るものとされた。
 禁止される不当な差別的取扱いや義務とされる合理的配慮の具体的内容については、障害者や事業者等の意見を反映し、今後作成される対応要領(行政機関等が自らの職員に向けて示すもの)や対応指針(民間事業者の事業を担当する大臣が民間事業者に向けて示すもの)で具体的事例を示しつつ、事例や裁判例を積み上げていく中で概念の共有を図っていくものとされている。実効性を確保するためには、「国民に
差別に関わる「ものさし」がいかにわかりやすく示されるか」が重要であろう。
(引用終わり)
 
 以上の概説を読んだだけでも、少なくとも、この法律の条文を読んでいるだけでは、実質的な差別解消に向けた具体的なイメージがわいてこないはずだ、ということは理解できました。
 そこで、「この法律は、障害者基本法第4条に規定された差別禁止の基本原則を具体化するもの」である以上、その条文をまず読んでみましょう。
 
障害者基本法(昭和四十五年五月二十一日法律第八十四号)
(差別の禁止)
第四条
 何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為を
してはならない。
2 社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要
かつ合理的な配慮がされなければならない。
3 国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。
 
 この基本理念を踏まえて制定された障害者差別解消法ですが、はじめの方だけでも読んでみましょう。
 
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)
第一章 総則
(目的)
第一条
 この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての
障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てら
れることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
(定義)
第二条
 略
(国及び地方公共団体の責務)
第三条
 国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関し
て必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。
(国民の責務)
第四条
 国民は、第一条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに
鑑み、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。
(社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備)
第五条
 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行
うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整
備に努めなければならない。
第二章 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針
第六条
 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、
障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければなら
ない。
2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向
二 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
三 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
四 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項
3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意
見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければならない。
5 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなけ
ればならない。
6 前三項の規定は、基本方針の変更について準用する。
第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置
(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)
第七条
 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差
別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実
施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
事業者における障害を理由とする差別の禁止)
第八条
 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いを
することにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必
要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。
(国等職員対応要領)
第九条
 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し、当
該国の行政機関及び独立行政法人等の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条及び附則第三
条において「国等職員対応要領」という。)を定めるものとする。
2 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、
障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
3 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、国等職員対応要領を定めたときは、遅滞なく、これを公表
しなければならない。
4 前二項の規定は、国等職員対応要領の変更について準用する。
地方公共団体等職員対応要領)
第十条
 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第七条に規定する事項に関し
、当該地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の職員が適切に対応するために必要な要領(以下この条
及び附則第四条において「地方公共団体等職員対応要領」という。)を定めるよう努めるものとする。
2 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければな
らない。
3 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方公共団体等職員対応要領を定めたときは、遅滞な
く、これを公表するよう努めなければならない。
4 国は、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人による地方公共団体等職員対応要領の作成に協力し
なければならない。
5 前三項の規定は、地方公共団体等職員対応要領の変更について準用する。
事業者のための対応指針)
第十一条
 主務大臣は、基本方針に即して、第八条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するため
に必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めるものとする。
2 第九条第二項から第四項までの規定は、対応指針について準用する。
 
 以上の第11条まで読んだだけでも、「レファレンス」掲載論文が言う「「行政法的アプローチ」(行政法規により行為規範を定立し、行政措置によりその実効性を確保する手法)を基本としている」ということの意味が何となく分かってきました。
 「行政法規により行為規範を定立し」に対応するのが、基本方針(第6条)、対応要領(第9条、第10条)、対応指針(第11条)ということですね。つまり、これを読まないと具体的な行為規範の内容(
公務員や事業者が、何をなすべきか、何をしてはならないか)が分からないということです。
 いちいち引用しませんが、内閣府ホームページの中の「障害者施策」「障害を理由とする差別の解消の推進」に、基本方針、対応要領、対応指針にリンクがはられていますので、ご参照ください。それらの文書に記載された「具体例」を、より豊富に、かつ適切なものにしていくことが、今後期待されているとい
うことだと思います。
 
 
 なお、「行政法的アプローチ」の後半部分「行政措置によりその実効性を確保する」については、障害者差別解消法の「第4章 障害を理由とする差別を解消するための支援措置(第14条~第20条)」をご覧ください。
 この中では、第17条~第20条に規定された「障害者差別解消支援地域協議会」(設立は任意)が注目されますが、はたして実効性のある組織になり得るかどうか、まずは、地方公共団体の意欲と力量が試されると思われます。
 
 何しろ、私自身が「本格的に勉強したくなった際のインデックスにしようという魂胆」で書いたものですから、もしも付き合ってここまでお読みいただいた方がいたとして(それほどいるとは思えませんが)、「何だかよく分からなかった」という感想を持たれるのではないかと思います。
 そういう方のために、内閣府ホームページ「障害を理由とする差別の解消の推進」に掲載された以下の
「関連資料」を最後にご紹介しておきます。
 障害者差別解消法のだいたいのイメージをつかんでいただくためには有用だろうと思います。
 
 

(付録)
『ラブソング・フォー・ユー(LOVESONG FOR YOU)』 
作詞・作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ