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初詣客が驚いた「憲法改正に賛成する1000万人賛同署名」~改憲派は本気だ

 今晩(2016年1月4日)配信した「メルマガ金原No.2325」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
初詣客が驚いた「憲法改正に賛成する1000万人賛同署名」~改憲派は本気だ

 御用始め、というほどのこともなく、ごく普通に平常業務が始まった今日(1月4日)の昼休み、食後のコーヒーを飲みながらネットサーフィンをしていると、「みんな楽しくHappy♡がいい♪」に、「<神社の政治的活動は許されるのか!>初詣が悪夢に変わった日~神社の真の姿~」というまことに悲痛なトーンの記事が掲載されているのに目がとまりました。
 読んでみると、昨日(1月3日)、「みんな楽しくHappy♡がいい♪」の管理人「きーこちゃん」が、東京都杉並区の大宮八幡宮に初詣に出かけ、大枚1万円を払ってお祓いをしてもらおうと支払いを済ませて待合場所へ入ろうとしたところ、「この署名のテントに遭遇し、待機場所の中にもこの署名のお願いは貼られていて、わたしは1万円支払ったことをどんどん後悔していった。」という、その「署名」というのが、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が推進する「憲法改正に賛成する1000万人賛同署名」だったというのです。たしかに、それは「後悔」したでしょうね。賽銭箱に100円入れたって「後悔」するでしょうが、1万円ですからね。

みんな楽しくHappy♡がいい♪ 2016年1月3日
<神社の政治的活動は許されるのか!>初詣が悪夢に変わった日~神社の真の姿~

(抜粋引用開始)
「そして署名用の紙を見て私はまたまたおったまげた!署名集めの母体は東京都神社庁
東京都神社庁ってなに?
「東京都神社庁は、東京都内にある1,398の神社を包括している組織です」と書いてある。
ということは、東京都の他の神社でも、このような署名活動を大々的にしているということなのか!?
とりあえず渋谷区の東京都神社庁所属の神社の名前を見てみた。
明治神宮東郷神社金王八幡宮氷川神社代々木八幡宮八幡神社熊野神社、北谷稲荷神社等々
う・・・・
神社という神社全部が東京都神社庁というところのもののようだ><。明治神宮もちゃんと入っている。
明治神宮明治天皇の神社。
今の天皇憲法改正には賛成していないと思うのだけど、
天皇陛下の意思を無視して、神社は安倍望む憲法改正を支持していることをはっきりと表明しているのだ。
お伊勢さまと氏神様って、いったいなんなんだろう?
ありがたいものだと思っていたけど、こんなに政治的で右翼的な思想を持っていたなんて・・・
わたしはおそろしくてたまりません。」
「大宮八幡宮の神様は、神社で政治的活動をしていることをどう思ってらっしゃるのか?
この状態で神社に神様は本当にいらっしゃるというのか?
ああ…日本の神様ってなんなんだ!!!
宗教ってなんなんだ!
と叫んでふと思った。
様々な宗教家が団結していろいろと正しい行いをしているじゃないかと。
たとえばこれ↓
”宗派の枠を超え集結”原子力行政を問い直す宗教者の会福井県庁へ「大飯原発再稼働反対」要望書提出(動画・内容書き出し)

神社は宗教じゃないんだ!
と、おもっていいのかな?
なんだか、なんだか、なんだかな…
今までわたしがしてきたことって、なんだったんだろう??
神社って なんなんだーーーっ!」
「2016年1月3日
私は1万円の授業料を払って、神社の正体を知ることができたと思うことにした。
これからはお賽銭は入れない。
神社ではお祓いもしない。
おみくじも買わない。
だって、わたしの払ったお金が、タカ派資金になって、結果
独裁政治軍国主義の道への手助けになるから」
(引用終わり)
 
 これを読んでの私の感想は2つあって、1つは「きーこちゃんも、ようやく気がついてくれましたか」ですが、もう1つは「彼ら(改憲派)もいよいよ本気を出してきたな」というものです。
 この「美しい日本の憲法をつくる国民の会」による「憲法改正に賛成する1000万人賛同署名」は、一昨年(2014年)10月1日に同会が結成されて以来の既定方針であり、私は、メルマガ(ブログ)でこの動きを紹介するにあたり、以下のように指摘していました。
 
弁護士・金原徹雄のブログ 2015年2月22日
「改憲派」の準備はここまで進んでいる
(抜粋引用開始)
 しかし、この署名用紙のどこを見ても、日本国憲法のどこをどのように「改正」するのかということが一言も書かれていません。こんな署名用紙って見たことあります?
 しかも、この用紙には、送付先は書いてありますが、宛名がありません。
 一体、この署名用紙で署名を集めてどうしようというのでしょうか?
(略)
 しかし、どんな「改正案」が発議されるかも不明であるのに、「賛成します」という賛同者を集め、実際に国民投票となれば「賛同の呼びかけ」をするというのですから、無茶苦茶ですが、そんなことにはお構いなしに「署名」を集めようとしているのです。
 日本会議国会議員懇談会日本会議地方議員連盟神道政治連盟などに所属する議員が本腰を入れて後援会中心に呼びかければ、短期間で相当数の「署名」を集めることも不可能ではないでしょうし、さらに自民党が組織的にこれに乗っかることになれば、私やあなたのところにも、知り合いの自民党地方議会議員から郵送で署名用紙が届くかもしれせんよ。
 そして、義理でも何でも、この署名用紙に名前が載れば、「憲法改正国民投票運動」のための、とりあえずの「支援者名簿」になるという訳です。
 実際の国民投票となれば、この名簿に記載した電話番号に手当たり次第に「賛成投票をお願いします」という電話をかけまくろうということでしょう。
 そういえば、賛同署名には、署名用紙を使う方法の他に「国民の会」サイトから電子署名する方法もあり、こちらの方は、氏名・郵便番号・メールアドレスが分かることになるので、インターネットを利用した「憲法改正国民投票運動」のための基礎資料にしようという目論見でしょう。
(引用終わり)
 
 時あたかも、本日(1月4日)首相官邸で行われた(伊勢神宮でやりたかったけれど、今日、常会を招集したのでやむなく官邸でやったのでしょう)年頭記者会見において、安倍晋三首相は、「参議院選の争点についてはどのように考えていらっしゃいますか」との質問に対し、「憲法改正については、これまで同様、参議院選挙でしっかりと訴えていくことになります。同時に、そうした訴えを通じて国民的な議論を深めていきたいと考えています。」と、改憲への意欲を明言しました。前からそうですが、自民党総裁としての会見ではなく、官邸での年頭記者会見の場での発言ということは、内閣総理大臣としての発言であって、憲法99条(憲法尊重擁護義務)との整合性はどうなっているんだ?と言ったところで、9条も、21条も、53条も、73条も守る気のない首相が、99条を守るはずがありませんけどね。
 
 このような情勢をうけて、神社本庁や各地の神社庁も、改憲に向けた臨戦態勢に入り、初詣客に署名を呼びかけたということなのでしょう。
 蛇足ながら、田中恆清神社本庁総長は、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」代表発起人の1人です。
 「みんな楽しくHappy♡がいい♪」では、東京都神社庁が昨年11月14日に開催された東京都神社関係者大会で採択したという宣言を引用してくれていますが、ここでも全文紹介させてもらいます。
 
憲法改正運動を推進する宣言
(引用開始)
 日本国憲法は、昭和21年、敗戦後、占額下で制定されたものである。我が国民は一致協力の下に、戦後の復興と経済の発展を成し遂げ、現在国際社会において大きな信頼を得る国へと発展させた。
 しかし、憲法が制定されて以来69年を経た今日、国を取り巻く国際環境は激変している。現在の憲法が将来に亘って自国の繁栄と安全を確保し、以て国際社会の発展に寄与する内容のものであるのかを見つめ直すことが必要と思われるに至った。
 このような中にあって、国民の声により「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が、昨年10月に神社本庁参画のもと設立された。東京都神社庁においても「美しい日本の憲法をつくる東京都民の会」を主体として、憲法改正論の喚起と、憲法改正を実現する1000万人賛同者拡大運動を展開することとなった。
 この秋(とき)にあたり、神社界では積年の課題である、現憲法の制定時に失われた日本国としての普遍的な意志と、建国以来守り受け継いで来た伝統精神を憲法に取り戻し「誇りある日本をめざして」との信念のもと、憲法改正の運動に取り組むこととなった。東京都神社総代会としても、国の根幹である憲法に、正しい国民精神が涵養される麗しい日本の国柄が、活かされることを強く希望するものである。
 よって本日、東京都神社関係者大会にあたり、東京都神社総代会は東京都神社庁と共に、憲法改正の本運動推進に取り組むことを総意として採択し、茲に宣言するものである。
     平成27年10月14日
      東京都神社総代会
 
 東京都神社庁は誇りある日本を目指して、憲法改正を推進します。
      東京都神社庁
(引用終わり)
 
 私の地元である和歌山県神社庁のホームページで、同様の「宣言」をしていないか調べてみたのですが、よく分かりませんでした。
 いずれにしても、和歌山県神社庁も「神道政治連盟和歌山県本部」や「日本会議和歌山」を「関係団体」と公言しているのですから(それらの事務所も和歌山県神社庁内にあるのかもしれません)、仮に「宣言」までは出していないとしても、「憲法改正論の喚起と、憲法改正を実現する1000万人賛同者拡大運動を展開する」方針に変わりはないでしょう。
 
 どうですか、和歌山県内の神社に初詣に行って賽銭をあげたり、神札を購入したりしたことを後悔している人はいませんか?
 私自身はどうかといえば、何代も前から氏子となっている地元の小さな氏神様にお詣りし、神札を買ってきましたけどね。これはまあ仕方がないというか、神社本庁和歌山県神社庁などの今出来の組織よりも、小なりといえど、私の地元の神社の方がはるかに由緒がありますからね。
 ただし、この地元の社以外の神社には、一切立ち入らないようにしてけじめをつけています。
 
 ツイッターなどでは、この初詣客狙いの「1000万人賛同署名」活動が報告されたりしているのですが、どの程度の広がりをもって取り組まれているのか、いまひとつ判然としません。
 ここは、東京新聞毎日新聞に、神社本庁や東京都神社庁を取材して詳しく報道してもらいたいところです。
 
 とにかく、改憲派は本気です。私たちもそれを前提として立ち向かわなければならないでしょう。
 なお、「きいこちゃん」が憤慨する「神社の政治的活動は許されるのか!」という点について一言すると、「許されないとする根拠はない」ということになるだろうと思います。憲法20条1項後文には、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」とありますが、「政治上の主張をしてはならない」とか「(私的な立場で)政治活動をしてはならない」とは定められていませんからね。
 
 このままで終わると、何だか暗澹たる気持ちになってしまいそうなので、最後に、少しは元気になる記事をご紹介したいと思います。「宗教家」といっても様々ですよ。
 
毎日新聞 2016年1月4日 地方版(長野県)
初詣客に戦争反対訴え 善光寺住職らが集会 長野

(抜粋引用開始)
 
安全保障法制の撤廃を求める全国の医師や看護師らが3日、善光寺への初詣客でにぎわう長野市大門町の交差点で、戦争反対を訴える集会を開いた。市民団体「いのちと暮らしを脅かす安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会」(事務局=千葉県南房総市)が主催。善光寺の住職も登壇し、参加した約20人が計3時間にわたり、安全保障関連法廃止を訴えた。
(略)
 ゲストとして登壇した善光寺白蓮坊の若麻績敏隆(わかおみびんりゅう)住職(57)は「恨みは連鎖するというのが、お釈迦様の大切な教え」とした上で、「日本は、自らの心に、そして他者の心に、恨みを持たせない政治こそ目指すべきではないのか」と訴えた。【川辺和将】   

(引用終わり)
注:「白蓮坊」というのは善光寺に39ある宿坊の1つです。
 ちなみに住職の若麻績敏隆氏の経歴は「東京芸術大学日本画専攻卒業、同大学院修士課程修了。大正大学大学院仏教学コース修士課程修了。」だそうです。