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映画『ヤクザと憲法』(東海テレビ)を観たいと思いませんか?

 今晩(2016年1月8日)配信した「メルマガ金原No.2329」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
映画『ヤクザと憲法』(東海テレビ)を観たいと思いませんか?

 時々このメルマガ(ブログ)で映画の上映会をご案内しておきながら、こんなことを言うのははばかられるのですが、私自身、いわゆる映画館(私の場合、現状ではシネコンとほぼ同義)で映画を観るという
習慣がなく、昨年1年間で(自主上映以外で)観た映画は、『インサイド・ヘッド』(ピート・ドクター
監督)1本だけという有様です。
 自宅から車で15分圏内に、10スクリーンを持つシネコンが2箇所もあり、既に還暦を過ぎた私は、
どちらのシネコンであれ、いつでも1,100円で観られるのですから、地方居住者としては非常に恵まれた環境にあるはずなのに、全然活用できていない訳で、周りに映画館が全くない地域に住む映画好きの人に対して申し訳ないような気持ちです。
 
 というようなマクラをふったのは、年明け2回にわたって映画『みんなの学校』を取り上げた上に(1月5日7日)、今日もまた、映画の話題だからです。しかも、現状では、1月2日から公開が始まった東京のポレポレ東中野でしか上映されておらず(明日9日から名古屋シネマテークで公開されるようですが)、和歌山では果たして上映の機会があるかどうか疑問という作品です(多分、2月13日から始まる大阪の第七藝術劇場まで行くしかないようです)。
 その映画とは?『ヤクザと憲法』(土方宏史監督/東海テレビ放送/96分)なのです。
 
『ヤクザと憲法』劇場予告編(1分47秒)
 

 映画好きの方ならとうに情報を持っておられたでしょうが、私はこんな映画が作られていたというのは
今日初めて知りました。
 知ったきっかけというのは、週刊通販生活メールマガジンが着信し、何気なく開いてみたところ、「今週の読み物」として、以下のような記事が掲載されており、ついつい読みふけってしまったことです。
 
映画『ヤクザと憲法』監督 土方宏史さんインタビュー
「『ヤクザと憲法』をどう解釈すればよいか、僕も分からない。だけど、まずは今生きているヤクザを見
てほしい」

(抜粋引用開始)
――その暴排条例によって、「ヤクザとその家族が人権侵害を受けている」と親分が語るシーンは印象的
です。
土方 ヤクザが人権を語るのですから、驚きますよね。でも話を聞けば、親が暴力団員であることで、子どもが保育園の入園を拒否されたり、学校側から偏見を受けたりすることがあるそうで、「子どもはヤクザやないんやから」と言う親分の気持ちも分からなくはない。また、ヤクザだからという理由で、銀行口
座の開設や保険の加入を拒否されるというのも、困るだろうなとは思います。
 一方で、彼らが超えてはいけない一線を超えているのもまた、事実でもあり……。
――作中には、野球賭博や違法薬物売買を匂わせるような言動をするヤクザの姿も収められています。
土方 ああいったシーンでは、こちらの方が「えっ、撮っていいの?」とびっくりしてしまうのですが、彼らはなぜか、ギリギリのところまで見せるんですよ。ただ、肝心なところは絶対見せない。普段、警察
に追われ慣れているから、決定的なところを隠す技術に長けているのかもしれません。
――監督自身、そういった違法行為すれすれのシーンを目の当たりにしながら、タイトルを『ヤクザと憲
法』としたのはなぜでしょうか。
土方 これはプロデューサーが決めたんですけど、いいタイトルですよね(笑)。まず、公の場で表現す
るのがなんとなくはばかられつつある〝ヤクザ〟という単語を前面に出すこと自体に、大きな意味があると思います。メディアがどんなに自主規制を敷こうと、ヤクザが社会の中で生きているのは事実ですから

 テレビドキュメンタリーの担い手としては、見る人それぞれに自由な解釈の余地を残しながら、〝今起
きていること〟を伝えるのが一つの役割だという思いがあります。違法行為を生業とするヤクザに人権を語る権利はあるか否か。このテーマ自体、受け容れ難い人もいるかもしれませんが、まずは僕自身が見て
きた〝現状〟を知ってもらい、そこから何かを感じてほしいですね。
(引用終わり)
 
 このインタビューを読み、公式サイトを閲覧し、予告編を視聴した結果、ついメルマガ(ブログ)でご紹介しようという気になってしまったのです。
 皆さんも、「観てみたい」と思いませんか?
 
 ただし、映画公式サイト「作品解説」はいまひとつ解説になっていないところがあるので、この映画のベースとなったテレビドキュメンタリー「ヤクザと憲法暴力団対策法から20年~」(2015年3月30日(月)深夜24時35分~)放映時の「プロデューサーより」という文章を引用したいと思います。
 
(引用開始)
 疑問に思ったこと。知りたいと思ったこと。それが番組の原点です。
 取材、撮影、編集、ナレーション、整音、音楽、字幕、CGを作る…。そうして番組を放送する。これ
が、私たちの仕事の流れです。取り扱う題材に禁止事項を設けるべきではありません。むしろ、難しいことこそトライしたいと思っています。取材を通じて知ったことを、それを取材のプロセスも含めて描き出
すことで、この時代の一端を伝えたい。そう思うのです。
 かつて、『山口組~知られざる組織の内幕~』(NHK特集)などヤクザの内部に入ってその様子を世に知らせるドキュメンタリーが何本かありました。しかし、この20年、取り締まりの際の断片的情報はありますが、暴力団の内側を描いた番組はありませんでした。その理由はわかりません。ただ、ヤクザのイメージと実態は、乖離しているようです。 「暴力団排除条例以降、ヤクザと接触ができなくなり、実態がつかめない。」「ヤクザは地下にもぐり始めている」「ヤクザのかわりに半グレやギャングなど面倒な
連中が蔓延してきた」。
 この番組のディレクターは最近まで事件・司法担当記者で、捜査関係者からそんな話を聞いていました。テレビドラマや映画などで描かれるヤクザは縄張りをめぐって抗争を繰り返す輩たちで、拳銃を所持し、地上げに介入し、覚せい剤を密売する犯罪集団…。しかし、現実はそうではなさそうだ…。ディレクタ
ーは、暴力団対策法、続く、暴力団排除条例以降のヤクザの今を知りたいと考えました。
 「取材謝礼金は支払わない」「収録テープ等を放送前に見せない」「顔のモザイクは原則しない」。こ
れは、私たちがこの取材の際に提示する3つの約束事です。しかし、この条件に応えるヤクザはいません
。彼らにとって、姿をさらしても、何の得もないし、警察に睨まれたくないのです。
 そんな中、大阪の指定暴力団「東組」の二次団体「清勇会」に入ることになりました。半年に及ぶ取材の途上、組トップが全国の組関係者の実例を出して、「ヤクザとその家族に対する人権侵害が起きている」と言い始めます。ヤクザと人権…!?。また、山口組の顧問弁護士を30年してきた弁護士を追いますが、自ら被告となった裁判などに疲れ、引退を考えていると言い出します。徐々にヤクザの現実が見えてき
ます。
 ヤクザの存在を擁護するつもりはありません。「社会」と「反社会」…。その一線はどこにあるのか。ヤクザを無くしていく、その道程を振り返って考える時に来ているのではないか…。知られざるヤクザの実像から、私たちの社会の姿が見えてくるかもしれません。 この番組に何を感じ、どう考えたか、どう
ぞ、ご意見をお寄せください。
(引用終わり)
 
 本来「何の得もない」はずの取材に応じた「ヤクザ」についてさらに知りたい方(もしかするといるかもしれない)には、以下のような記事を見つけましたのでご紹介します。ただし、私はこの世界に疎いので、内容の真偽のほどは判断できません。
 
 
 正直言って、私の家の近所にある2箇所のシネコンで『ヤクザと憲法』が上映される可能性は(現状では)ほぼ無いだろうと思います。
 それでは、自主上映はどうだろうか?と考えてみるのですが、この作品の上映を企画する団体って、あ
るでしょうか?
 実は、次々と自社ドキュメンタリー作品の劇場用映画化を進める東海テレビは、1月2日の『ヤクザと憲法』に続き、1月16日から『ふたりの死刑囚』(鎌田麗香監督/85分)を、やはりポレポレ東中野で緊急公開すると予告しています。
 
『ふたりの死刑囚』劇場予告編(2分07秒)

 
 「ふたりの死刑囚」とは、「袴田事件」の袴田巖さん(2014年に約48年ぶりに釈放)と「名張毒ぶどう酒事件」の奥西勝さん(2015年に獄死)のことで、昨年10月25日に放映された「ふたりの死刑囚~再審、いまだ開かれず~」をベースとして劇場用に再編集されたものです(ナレーション:仲代達矢)。
 実際、『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(主演:仲代達矢東海テレビ)や『BOX 袴田事件 命とは』高橋伴明監督)は、和歌山弁護士会でも、人権擁護委員会が所管する死刑を考える集いで上映されていますので、『ふたりの死刑囚』も、和歌山での自主上映のチャンスはありそうです

 でも、『ヤクザと憲法』はどうでしょうかね?仮に、和歌山弁護士会人権擁護委員会が「やりたい」
と声をあげても、他の委員会から反対される可能性が高いでしょうしね。
 ということで、『ヤクザと憲法』を観ようという人は、当面公式サイトの中の「公開劇場」のページに
注目するしかないようです。
 
(付記1/映画のデジタル化について)
 いくら映画は門外漢の私でも、さすがに、フィルムの時代が終焉し、映画の撮影から上映までの全過程がほぼ完全にデジタルに移行しているくらいの知識は持っていますが、そのことが映画の在り方にどのよ
うな影響を与えたのか、与えつつあるのかについては、全く「分かりません」と言うしかありません。
 ただ、東海テレビが自社ドキュメンタリーをかくも矢継ぎ早に劇場用映画にできるのも、映画がフィルムからデジタルに移行したことと無縁であるはずはなく、また、身近では、昨年私が少し自主上映のお手伝いをした映画『祝福(いのり)の海』(東条雅之監督)にしてもそうなのですが、映画はフィルムで撮るしかなかった時代に比べ、多くの意欲を持った映像作家に門戸が(とりあえず撮影するこ
とに関しては)開かれていることもまた、映画デジタル化の効果でしょう。
 この映画デジタル化という、サイレントからトーキーへ、あるいはモノクロからカラーへの転換に比すべき、いやそれ以上の大転換かもしれない現象を考えるために有用なサイトを探しているのですが、自分
の不得手な分野はネット検索もあまりうまくいかないもので、今のところこれはというサイトを見つけら
れていません。
 ただ、なかなか興味深く、時間があれば目を通す価値があるかもしれない「報告書」が、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻サイトに掲載されていましたのでご紹介します。
 
 
(付記その2/落合恵子さんと岸井成格さんの対談/2015年「通販生活秋冬号」より)
 実は、「週刊通販生活」をネットで閲覧し、『ヤクザと憲法』の監督インタビューを読むことになったのですが、その際、気がついた対談記事がこれです。
 
 
 「通販生活」の2015年秋冬号のための仕込み(上記対談)がいつなされたのかよく分かりませんが、杉田二郎さんが「戦争を知らない子供たち」を歌うCMがYouTubeにアップされたのが昨年10月5日のことなので、対談自体が安保法案国会通過の前に行われたものであることは確実でしょうし、もちろん、11月14日(産経)、15日(読売)に掲載された「放送法遵守を求める視聴者の会」の全面意見広告のずっと前のことです。
 そういう時期的なことはのみこんだ上で、一読されることをお勧めしたいと思います。
 
2015年秋冬号TVCM60秒バージョン【通販生活公式】