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崎山比早子さんの講演を聴いて~民主的で原発のない未来を展望するために

 今晩(2016年1月16日)配信した「メルマガ金原No.2338」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
崎山比早子さんの講演を聴いて~民主的で原発のない未来を展望するために

 今日(1月17日)午後1時30分から、和歌山ビッグ愛(9階会議室A)で開催された崎山比早子さんの講演会「身近な放射線健康被害について」を聴講してきました。
CIMG5010 東京から母子避難されているお子さん連れのお母さんを含め、多くの方が熱心に崎山さんのお話に耳を傾け、質疑応答に移ってからも、活発な質問が続きました。
 崎山さんが和歌山市で講演されるのは、福島第一原発事故から5か月余経った2011年8月20日以来、4年5か月ぶりとなります。
 この4年5か月の間に、我が国は、憲法などあってなきが如しという恐るべき政治状況に陥り、そこから脱却する道筋も見えていませんが、原発をめぐっても、事故当初、「あまりにひどい」と思っていた民主党政権の政策が、「今に比べればずっとましだった」と回顧される始末です。
 
 ところで、私は、崎山さんも委員を務められた国会事故調の報告書(2012年7月公表・9月刊行)を時折ひもとくことがあるのですが、いつも痛切に思うのは、根拠法議員立法で、しかも1年限定の時限立法だったから仕方がないとはいえ、「おおむね六月後を目途として」報告書を提出しなければならなかったのは、いくら何でも短かすぎたということです。
 事故原因の調査についてもそうですが、事故による健康被害の問題などは、継続した調査が絶対に必要な分野であり、事故から丸5年が経過するのを機に、第2次国会事故調の設置が望まれるところです(今の政権が続く限り、与党は絶対に同意しないでしょうし、万一設置されたとしても、崎山さんや石橋克彦さん、田中三彦さんなどが委員に選ばれることなど金輪際ないでしょうけどね)。
 
 とはいえ、短い期間の中で可能な限りの調査を尽くし、取りまとめられた報告には、そこから新たな知見を積み上げていく土台を提供するという重要な価値があります。
 崎山比早子さんが主として関わられたと推測される「第4部 被害の状況と被害拡大の要因」中の「4.4 放射線による健康被害の現状と今後」(401~439頁)のHTML版にリンクを貼るとともに、目次を引用しておきます。
 
4.4 放射線による健康被害の現状と今後
 4.4.1 放射線の健康影響
  1)急性障害と晩発障害
  2)被ばく線量と発がんリスク
  3)被ばくの仕方によってリスクは違うのか
  4)年齢や個人によって異なる放射線感受性
  5)放射線によるがん以外の疾患
  6)政府、電力会社は放射線のリスクをどう伝えたか
  7)将来を担う子どもへの伝え方
 4.4.2 防護策として機能しなかった安定ヨウ素剤
  1)ヨウ素剤と小児甲状腺がん
  2) ヨウ素剤服用指示における国と県のすれ違い
  3)医療関係者の立ち会いと今後の課題
  4)責任の所在と対応策
 4.4.3 内部被ばく対策と今後の健康管理
  1)不十分な初期被ばく評価
  2)放射性物質による食品の汚染と内部被ばく対策
  3)内部被ばく検査が含まれない県民健康調査
  4)食品の検査と内部被ばく線量のモニタリングの必要性
 4.4.4 学校再開問題
  1)再開の可否から校庭利用制限の要否への論点の転換
  2)目安値の意味
  3)被ばく低減措置の対応
 4.4.5 原発作業員の被ばく
  1)政府による原発作業員の線量基準の引き上げ
  2)高度の被ばく被害の実態
  3)不十分な原発作業員への放射線防護教育と現場判断による放射線防護対策
  4)原発作業員の労働環境
 4.4.6 避難の長期化によるメンタルヘルスへの影響
  1)以前から指摘されるメンタルヘルス対策の重要性
  2)本事故における住民への精神的影響と対策
 
 今日、崎山さんが用意された資料の大項目のみ以下に転記しておきます。ただし、最後の「9 未来に希望をつなぐためにこれからの課題」のみ、レジュメの文章を引用します。

身近な放射線健康被害について  高木学校 崎山比早子
CIMG50041 医療被ばくのリスク(正当化、最適化)
2 放射線のリスクを理解するために 遺伝子、DNAについて
3 放射線のリスクとは?遺伝子に傷をつける低線量被ばくによる発がん
4 福島安全キャンペーン 収束見透しのない事故現場 20mSv以下帰還政策の愚
5 100mSv以下での発がん 疫学調査による照明
6 福島における甲状腺がんの多発
7 食品汚染と内部被ばく
8 無視され続けている非がん性疾患
9 未来に希望をつなぐためにこれからの課題
 核災害はひとたび起きると生業を根こそぎ奪ってしまう。
 しかもその持続時間は人の寿命をはるかに超える。 
 政府は核エネルギー利用促進のために政府に従順な研究者を利用して原発放射線のリスクを過小評価する
 だまされないために科学的根拠に基づいて個人個人が判断力をつける
 民主的で原発のない社会を築くのは最終的には個人の力
 一人一人は微力 でも集って社会を変えよう!!
 
 その講演の中身については、動画に収録して後日YouTubeにアップということが予定されていたようなのですが、技術上の問題が発生し、これはキャンセルということになりました。
 そこで、その代わりと言っては何ですが、昨日(1月16日)、岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館(岡山市北区)において、「低線量被ばくによる健康被害―収束見透しのない事故現場と帰還政策―」と題した崎山比早子さんによる講演会(主催:岡山弁護士会)が開かれ、IWJ岡山による中継動画がアーカイブとしてアップされていますので、そちらを視聴されることをお勧めします。
 何しろ、2日連続の講演ですから、基本的なお話の構成は同一であったようです。
 
 
 最後に、講演の中で崎山さんが批判されていた帰還政策を推進するための安全キャンペーンについての参考サイトをご紹介しておきます。
 
 
 いやあ、何とも言葉がありません。ここでは、昨年の8月に公開された動画を1つだけ紹介しておきましょう。ただし、視聴して反吐が出ても知りませんよ。
 
福島安全宣言CM「心の除染」編(1分25秒)
 

 このCMを見て私が直ちに思い出したのは、昨年11月に産経新聞讀賣新聞に掲載された「News23」の岸井成格氏を誹謗する全面意見広告を出稿した「放送法遵守を求める視聴者の会」なる正体不明の組織でした。民間を装っていますが、これらのキャンペーンに要する費用は誰が出しているの?ということですね(「報道の自由」にとっての最高度の危機~「放送法遵守を求める視聴者の会」からの攻撃について/2015年11月16日)。
 
 もう1つ、崎山さんが触れられていた「なすびのギモン」については、以下の私のブログをご参照ください。「福島安全宣言」よりも、こちらの方がずっと巧妙です。
 
 

(付録)
メルトダウン』(高田渡『値上げ』の替え歌) 作詞・演奏:不詳