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私たちは「将棋の駒」なのだ~院内集会「『テロとの戦争』と安保法制」を視聴して

 今晩(2016年1月21日)配信した「メルマガ金原No.2342」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
私たちは「将棋の駒」なのだ~院内集会「『テロとの戦争』と安保法制」を視聴して

 日本にいわゆる法律家団体というのがいくつあるのか知りませんが、その内の以下の6団体による共同行動、共同声明などがこのところ目立っているな、というのが、青年法律家協会弁護士学者合同部会の一会員である私の雑駁な印象です。
 

 その6団体を構成団体とする「改憲問題対策法律家6団体連絡会」が主催する院内集会「『テロとの戦
争』と安保法制」が、昨日(1月20日)午後5時から、参議院議員会館で開催されました。
 集会では、千葉大学文学部教授で中東現代史が専門の栗田禎子氏(日本中東学会前会長)が「自衛隊の中東派遣がもたらす危険」と題した講演をされ、その後、高木太郎弁護士(日本労働弁護団
前幹事長)から「自衛官と家族・恋人の電話相談から」という報告が行われました。
 集会チラシから、開催の趣旨を記載した文章を引用します。

 

(引用開始)
 9月19日、戦争法強行採決により「成立」されてしまいましたが、戦争法制に反対し、憲法九条守ろうという声は全国各地に拡がり、各層各分野の人々が行動し手を結ぶ歴史的なうねりをつくりあげました。他方で、今年11月13日のパリ同時多発テロ事件を受けて、安倍内閣は『テロとの闘い』を口実とした中東への自衛隊派遣の議論を加速させつつあります。「米国から過激派組織ISに対する空爆への支援要請があった場合、これを断るか」との質問に対し、菅官房長官は断ると明言しなかったこと(12月10日参院内閣委)にも表れています。万が一、IS空爆支援のために自衛隊が中東に派遣されるようなことがあれば、自衛隊員をはじめとする日本国民に、どのような影響と危険がもたらされるのか、米ロ仏英(そして独まで関わって…)の空爆にさらされている中東情勢について、日本の戦争法自衛隊との関わりについて、中東現代史がご専門の栗田禎子先生にご講演戴きます。また、9月12日、同14日と自衛官と家族のための電話相談を実施した日本労働弁護団の高木太郎弁護士より、自衛官と家族が置かれてい
る現状などについても報告されます。
 シリアをはじめとする中東の現状を知り、自衛隊派遣の危険性について学びつつ、戦争法制の廃止を訴
える院内集会に、ぜひ、ご参加ください。
(引用終わり)
 
 この院内集会の模様については、昨日に引き続き、三輪祐児さん(UPLAN)によって撮影・編集された動画をご紹介させていただきます。
 
20160120 UPLAN 栗田禎子「自衛隊の中東派遣がもたらす危険」他(1時間54分)

1分~ 開会挨拶 小澤隆一氏(日本民主法律家協会東京慈恵会医科大学教授)
6分~ 挨拶 近藤昭一氏(民主党幹事長代理)
9分~ 挨拶 初鹿明博氏(維新の党国会対策委員長代理)
14分~ 講演 栗田禎子氏(千葉大学文学部教授)
1時間15分~ 挨拶 高田健氏(解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会)
1時間18分~ 挨拶 福山真劫氏(戦争をさせない1000人委員会)
1時間22分~ 挨拶 小田川義和氏(戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター)
1時間25分~ 挨拶 山岸良太氏(日本弁護士連合会憲法問題対策本部本部長代行)
1時間29分~ 報告 高木太郎氏(日本労働弁護団常任幹事、前幹事長)
1時間35分~ 挨拶 笠井亮氏(日本共産党衆議院議員
1時間41分~ 挨拶 吉田忠智氏(社会民主党党首
1時間45分~ 共同アピール 採択
 
「1・20 院内集会 「テロとの戦争」と安保法制法律家6団体 共同アピール」
1時間49分~ 閉会挨拶 大熊政一氏(日本国際法律家協会会長、弁護士)
 
 以上の内、栗田禎子さんの講演については、撮影された三輪祐児さんがFacebookに書かれた感想を引用します。
 
(引用開始)
 日本中東学会の会長でもあった栗田禎子さんは中東問題の第一人者。論旨は明快で、中東はパリテロを受けて戦争の危機が本格化しており、オバマ後の政権次第ではアメリカの軍事介入があり得る。シリアそしてサウジ・イラン対立が戦争につながる可能性が大きい。あわせて日本ではその戦争に参加するための
体制づくりが同時併行で進められていて「止められるとしたら今しかない」という結論。
 会社員だったころサウジは四~五回訪れ、イエメン国境まで足をのばしたこともある。日本人だという
それだけで尊敬されテントの宴で歓待された。九条に護られていた自分を、いま身に染みて実感している。 
(引用終わり)
 
 この栗田教授による講演も是非視聴していただきたいのですが、時間に配慮してわずか6分でまとめられた高木太郎弁護士による「自衛官と家族・恋人の電話相談から」は、是非とも視聴してください。
 自ら語ることのできない自衛官やその家族の苦しみから目を背けては絶対にならないと思います。
 この電話相談の結果報告が日本労働弁護団ブログにアップされています。必読です。
 その内3つだけご紹介します。
 
(引用開始)
陸上自衛隊 20代男性隊員の母
「入隊後、3,4年は本当につらかったが、頑張り、その後、東日本大震災でも5か月も東北に入り、奮闘し
た。家に帰ってきて、話をする子が、この安保法制については水を向けても話をそらす。結婚を進めるが、給料も安く貯金もないのでできないという。安倍首相には本当に腹が立つ。自分に子供がいないから、この母の苦しみ、心配がわからないのではないか、とさえ思う。」
 
陸上自衛隊 40代男性隊員の妻の母
「この法案が通ると派兵される危険もあり、退職を考えているが、再就職では、とても今の収入は維持できないので、定年まで働かざるを得ないと考えている。ついついすぐ派兵されることはなく定年までの間は大丈夫なのではないか、とよいほうに考えてしまうが甘いのだろうか。娘は友達にもどこにも相談できる場所がなく、自分だけが聞き役になっている。婿はとても外部に相談どころではなく、婿も外部との接触が厳しくなっているようで、この7,8月は休暇で実家に戻る場合でも、どこにいくのか、厳しく報告を求められたようだ。また、家族の「健康調査」と称して、同居もしておらず、妻の親に過ぎない私のことも、報告させられているそうだ。」
 
陸上自衛隊 未成年男性隊員の祖母
「孫は高校卒業して入隊したが、今は陸自の補給部隊にいるようだ。孫は「立派な自衛官になりたい」と年賀状に書いてきた。まさか、今回のように海外の戦地に派遣されるようになるとは思わなかった。私の勉強不足で悔やんでも悔やみきれない。自分を責めている。不安で夜も眠れない。私の父は戦場に行き、父の兄弟は戦死している。そんなことになったらと心配している。今は自衛隊をやめてほしいと思っている。ただ、直接連絡とれないので、毎日自衛隊に入隊するのを止めなかったことを後悔している。足が悪いのでデモに行きたいがいけないのが残念。娘(孫の母親)とは、この話を不憫でできない。新聞の記事
を見て、自分の声を電話で伝えたかった。」
(引用終わり)
 
 昨年、日本労働弁護団が発表した2つのアピールもご紹介しておきます。一々引用はしませんが、是非リンク先で全文を読んでいただければと希望します。
 
 
 私は、「自衛隊員と家族・恋人のための安保法案緊急相談」に寄せられた相談内容を読みながら、和歌山弁護士会の敬愛する大先輩・月山桂先生が口癖のように語られてきた「九条を考え、軍について語るとき、将棋の駒を振る立場でなくて、振られる駒の立場で考えなければならない」という言葉をあらためて噛みしめていました(憲法9条を守る和歌山弁護士の会・創立10周年の日に月山桂弁護士の講演録を読み返す/2015年5月13日)。
 

(付録)
『世界』 
作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ポポフォークゲリラ