杉田敦法政大学教授による「憲法9条の削除・改訂は必要か」~1/29立憲デモクラシー講座 第5回)
今晩(2016年1月31日)配信した「メルマガ金原No.2352」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
杉田敦法政大学教授による「憲法9条の削除・改訂は必要か」~1/29立憲デモクラシー講座 第5回)
立憲デモクラシーの会が主催する立憲デモクラシー講座、一昨日(1月29日)の杉田敦法政大学教授(政治学)で5回までが終わりました。これまでの講師と演題を振り返っておきます。
立憲デモクラシーの会が主催する立憲デモクラシー講座、一昨日(1月29日)の杉田敦法政大学教授(政治学)で5回までが終わりました。これまでの講師と演題を振り返っておきます。
第3回(2015年12月11日) 講師:山口二郎氏(法政大学教授・政治学)
「戦後70年目の日本政治:民主主義を再考する――参加、代表、多数決」
「戦後70年目の日本政治:民主主義を再考する――参加、代表、多数決」
第5回(2016年1月29日) 講師:杉田 敦氏(法政大学教授、政治学)
「憲法9条の削除・改定は必要か」
「憲法9条の削除・改定は必要か」
以上、第5回までは、いずれも「安保関連法の廃止を求める早稲田政経有志の会」との共催であり、早稲田大学早稲田キャンパス3号館を会場として開催されました。
これまでの4回と同様、UPLAN(三輪祐児氏)YouTubeチャンネルに動画がアップされましたので、ご紹介します。
これまでの4回と同様、UPLAN(三輪祐児氏)YouTubeチャンネルに動画がアップされましたので、ご紹介します。
(当日配付資料から)
・立憲デモクラシーと憲法改正
・「押しつけ」論と「選び直し」論
・practicesとしての憲法
・「新9条」論
・解釈の範囲と限界
・9条削除論
・9条と立憲主義
参考文献
長谷部恭男・杉田敦『憲法と民主主義の論じ方』(朝日新聞出版)
加藤典洋『敗戦後論』(ちくま学芸文庫)
長谷部恭男『憲法と平和を問い直す』(ちくま新書)
杉田敦『政治への想像力』(岩波書店)
井上達夫「九条問題再説」『法の理論33』(成文堂)
想田和弘「憲法9条の死と再生」
※金原注 想田さんの補論もお読みください
想田和弘「「憲法9条の死と再生」への反響に対する所感と補足」
杉田教授による演題は、去る1月22日に岡山市で行われた「立憲デモクラシーの会シンポジウムin岡山」での基調講演(その2)と同じであり、岩波書店の「世界」2016年1月号に掲載された同教授の論考のタイトルが、やはり「憲法9条の削除・改定は必要か」というものでしたから、今回の講座も、いわゆる「新9条」論や井上達夫氏の9条削除論に対する批判がメインと考えて間違いありません。
ここで、「世界」1月号に掲載された論考の狙いを、岩波書店ホームページから引用してみましょう。
憲法9条の削除・改定は必要か
─立憲デモクラシーに基づいた安全保障論議のために─
杉田 敦
(引用開始)
「憲法9条は空文化した──」。解釈改憲による集団的自衛権行使を可能とする安保法制の成立後、このような前提のもとに、だからこそ自衛隊の存在と矛盾せず、それ以上の拡大解釈はいっさいできないような「新9条」をつくるべきだという主張や、「絶対平和主義としか読めない」9条2項を削除すべきだという主張が方々から聞こえてくる。
だが、ほんとうに憲法9条は空文化したのだろうか、いっさいの解釈を許さない憲法条文などは可能なのか、そして、現行9条なくして、政府に対抗的な安全保障論議を組み立てることは可能なのか──。巷間大きな注目を集める“9条の削除・改定論”への批判的考察を通じて、立憲主義に基づく民主政治と戦後平和主義の理念を実現していくための方途を論じる。
すぎた・あつし 法政大学法学部教授。立憲デモクラシーの会呼びかけ人。1959年生まれ。専門は政治理論。著書に『政治的思考』(岩波新書) など多数。近著に『安倍流改憲にNOを!』(共著、岩波書店) 『安保法制の何が問題か』(共編著、岩波書店) など。
(引用終わり)
─立憲デモクラシーに基づいた安全保障論議のために─
杉田 敦
(引用開始)
「憲法9条は空文化した──」。解釈改憲による集団的自衛権行使を可能とする安保法制の成立後、このような前提のもとに、だからこそ自衛隊の存在と矛盾せず、それ以上の拡大解釈はいっさいできないような「新9条」をつくるべきだという主張や、「絶対平和主義としか読めない」9条2項を削除すべきだという主張が方々から聞こえてくる。
だが、ほんとうに憲法9条は空文化したのだろうか、いっさいの解釈を許さない憲法条文などは可能なのか、そして、現行9条なくして、政府に対抗的な安全保障論議を組み立てることは可能なのか──。巷間大きな注目を集める“9条の削除・改定論”への批判的考察を通じて、立憲主義に基づく民主政治と戦後平和主義の理念を実現していくための方途を論じる。
すぎた・あつし 法政大学法学部教授。立憲デモクラシーの会呼びかけ人。1959年生まれ。専門は政治理論。著書に『政治的思考』(岩波新書) など多数。近著に『安倍流改憲にNOを!』(共著、岩波書店) 『安保法制の何が問題か』(共編著、岩波書店) など。
(引用終わり)
「新9条」論を、論外と言って切り捨てる訳にはいかないと思うものの、素直に受け入れ難いという気持ちも厳然としてある、という人が多いのではないでしょうかね(実は私もそうなのですが)。
そういう意味から、頭の中で論点を整理するためにも、杉田教授の講演(講義と言ってもよい)を聴講することの意義は大きいと感じます。
そして、杉田教授が憲法学者ではなく、憲法に詳しい政治学者である、ということも、私たちが理解しやすい理由なのではないかと思いながら聴いていました。
自衛隊の存在を憲法に明記した上で、専守防衛を厳格に義務付けるという「改憲案」を、私も可能性の一つとして考えないではないのですが、実際に「改憲案」を作るとなるとこれは難しいだろうなあと思いますね。
正直、現行日本国憲法9条(+2014年7月1日閣議決定前の内閣法制局解釈)以上に優れた憲法の条文など、思いつかないなあというのが正直な感想です。
・・・というようなことをあらためて考えるきっかけとなる貴重な講演でした。
皆さまにも受講されるようにお勧めします。
そういう意味から、頭の中で論点を整理するためにも、杉田教授の講演(講義と言ってもよい)を聴講することの意義は大きいと感じます。
そして、杉田教授が憲法学者ではなく、憲法に詳しい政治学者である、ということも、私たちが理解しやすい理由なのではないかと思いながら聴いていました。
自衛隊の存在を憲法に明記した上で、専守防衛を厳格に義務付けるという「改憲案」を、私も可能性の一つとして考えないではないのですが、実際に「改憲案」を作るとなるとこれは難しいだろうなあと思いますね。
正直、現行日本国憲法9条(+2014年7月1日閣議決定前の内閣法制局解釈)以上に優れた憲法の条文など、思いつかないなあというのが正直な感想です。
・・・というようなことをあらためて考えるきっかけとなる貴重な講演でした。
皆さまにも受講されるようにお勧めします。
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年11月4日
「立憲デモクラシーの会」による安保法制“今日までそして明日から”
2015年11月15日
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