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安保法制(戦争法)廃止を目指す学習会用レジュメ~2016年2月ヴァージョン

 今晩(2016年2月20日)配信した「メルマガ金原No.2372」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
安保法制(戦争法)廃止を目指す学習会用レジュメ~2016年2月ヴァージョン

 今日(2月20日)は全国的に大荒れの天候となったところが多かったようですが、和歌山県も例外ではなく、県の北西端に位置する和歌山市から紀南の白浜町を目指した私も激しい雨にたたられました。特に帰りはひどかった(自動車専用道路で前が見えないほどの大雨というのは恐い!しかも対面通行だし)。
 それでも、こんな悪天候にもかかわらず、「戦争法を廃止するために今すべきことは・・・」という学習会に参加してくださった「『戦争法』に反対する退職教職員の会」の皆さんの熱心さには頭が下がります。

 今日の学習会については、1週間ほど前に予告記事(安保法制(戦争法)廃止を目指す学習会で語りたいこと~2016年2月ヴァージョン/2016年2月12日)を書き、その中で、学習会が終わったらレジュメを「アップするかもしれません」と断っておいたのは、そのような下心があったからで、予定通り(?)、今日の学習会のために書いたレジュメを掲載します。
 もっとも、上記記事でも述べたとおり、「これまでの学習会で使用したレジュメやスピーチ用原稿、それに議案書などから抜き出してコラージュ(コピペ)し、必要な修正を加えたものに過ぎません」から、「どこかで読んだことがある」という文章ばかりかもしれませんが、2016年2月という今だからこそ、こういう構成になったとも言えるので、なにがしかの参考になればと思い、アップすることにしました。 
 

2016年2月20日(土)13:30~ 白浜町立児童館(2F大ホール)
戦争法」に反対する退職教職員の会
 
          戦争法を廃止するために今すべきことは・・・
 
                                 弁護士 金 原 徹 雄
                                     
[今日のお話の流れ]
第1 「安全保障関連法制」(戦争法)とは何か?
 1 成立した法律は2つだけ
 2 大ざっぱに言って何が変わったのか?
 3 新「安保法制」はいつから施行されるのか?
第2 「安保法制」(戦争法)のどこが憲法に違反するのか?
 1 集団的自衛権の行使は憲法9条(とりわけ2項)に違反する 
 2 後方支援、協力支援は武力の行使を禁じた憲法9条(特に1項)に違反する
 3 憲法73条(内閣の権限)に違反する
第3 中国・北朝鮮脅威論と「安保法制」(戦争法
 1 前提として(法制の合理性を判定するために)
 2 中国・北朝鮮脅威論に立法事実はあるか?
 3 「安保法制」(戦争法)は中国・北朝鮮に対する抑止力を高めるか?
第4 明文改憲に向けた動向
 1 現在の国会議席状況
 2 今夏の参院選の死活的重要性(改憲派護憲派の双方にとって)
第5 「安保法制」(戦争法)を廃止するために今すべきこと
 1 安保法案成立阻止の闘いを振り返る
 2 「安保法制」(戦争法)の施行を見据えた活動を 
 3 参院選勝利に向けて
 

第1 「安全保障関連法制」(戦争法)とは何か?
1 成立した法律は2つだけ
 新法「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」(国際平和支援法)
 一括改正法「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」
※細かな改正を含めれば全部で20(主要なものは10)の法律を「改正」したもの。
 自衛隊法
 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(PKO協力法)
 周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律
 周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律
 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
などが最も主要なもの。
2 大ざっぱに言って何が変わったのか?
(1)従来の(9.19前の)安保法制
〇武力攻撃事態(武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態)→防衛出動
※日本が攻撃を受けた場合に反撃する個別的自衛権の行使。
〇周辺事態(そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態)→後方地域支援(周辺事態に際して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っているアメリカ合衆国の軍隊に対する物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置であって、後方地域において我が国が実施するものをいう/後方地域とは、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。」)
※主として朝鮮有事を想定。
テロ特措法(2001年)、イラク特措法(2003年)
 非戦闘地域における協力支援活動、捜索救助活動、被災民救援活動等
〇PKO協力法(1992年)
 国際平和協力業務等
(2)新「安保法制」で何が出来ることになったのか?
〇武力攻撃事態だけではなく存立危機事態でも防衛出動が可能になった。
 存立危機事態:我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
※要するに集団的自衛権に基づく武力行使を認めた。
5党合意(9月16日)「存立危機事態の認定は、武力攻撃を受けた国の要請又は同意があることを前提とすること」に注意!(5党合意の「趣旨を尊重し、適切に対処するものとする。」との閣議決定もなされている)
周辺事態法が重要影響事態法に「改正」されて後方支援を行う
 支援対象国が米国以外にも広げられた。
 周辺地域という限定が無くなった(世界中どこでも)。
 非戦闘地域という制限がなくなり、「現に戦闘行為が行われている現場では実施しない」とするだけ。
 具体的な後方支援としての「物品及び役務の提供」につき、従来は禁止されていた以下のような活動が出来ることになった。
  弾薬の提供
  戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備
※後方支援は、実態としては「logistic(兵站)」そのもの。現に昨年4月27日に締結された新日米ガイドラインでは「logistic support=後方支援活動」という用語が使われている。
〇国際平和共同対処事態→協力支援活動
 テロ特措法、イラク特措法などに代わる恒久法。
 協力支援の対象は多国籍軍
 非戦闘地域という制限が無くなったのは、重要影響事態(米軍等への支援)と同じ。
 実際に行う協力支援活動の内容は、ほぼ重要影響事態法に基づく後方支援活動と同じ。
国連平和維持活動(PKO)において、新たに「住民保護・治安維持活動」、「駆け付け警護」などが追加され、それらの業務に従事する自衛官は、「やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で」「武器を使用することができる。」とされた。
 また、新たに認められた国際連携平和安全活動は、アフガニスタンにおいて活動したNATO軍を主体としたISAF(国際治安支援部隊)などが想定されていると言われている。
自衛隊法の中に、「在外邦人の保護措置」や「合衆国軍隊等の部隊の防護のための武器の使用」などの規定が設けられたが、運用次第では非常に危険な事態を招来しかねない。
3 新「安保法制」はいつから施行されるのか?
 一括法の附則により、公布の日から6か月以内の政令で定める日から施行されることになっている。9月30日に公布されたので、遅くとも今年の3月31日までには施行される。
 
第2 「安保法制」(戦争法)のどこが憲法に違反するのか?
1 集団的自衛権の行使は憲法9条(とりわけ2項)に違反する 
 憲法13条が保障する「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」が「国政の上で、最大の尊重を必要とする」とされていることから考えれば、我が国が他国から武力攻撃を受けた場合にその急迫不正の侵害を排除し、国民の権利を守ることは、国の責務として憲法もこれを容認している。従って、上記の目的を達成するための必要最小限の実力は、憲法9条2項が保持を禁じた「陸海空軍その他の戦力」にはあたらない。自衛隊は、そのような必要最小限の実力にとどまっているので合憲である。
 以上が、自衛隊発足以来、2014年7月1日午後の閣議決定に至るまで、日本国政府が維持し続けてきた自衛隊を合憲とする論理である。
 いわゆる1972年(昭和47年)政府見解というのは、上記の論理を前提として、「そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」と明確に断じたものである。
 大半の憲法学者が、2014年7月1日の閣議決定と今次の安保法制(戦争法)が、従来の合憲性判断の枠組では説明できず、それを超えてしまったもので違憲であるとしているのは以上のような理由による。
 これを別の面から評すれば、集団的自衛権の行使ができるとする解釈は、自衛隊の存在を正当化する憲法上の根拠を喪失させ、単なる私兵におとしめるものだと言わなければならない。
昨年6月4日の衆議院憲法審査会に出席して安保関連法案を違憲と断じた3人の参考人長谷部恭男早大教授、小林節慶大名誉教授、笹田栄司早大教授)は、いずれも自衛隊合憲論者である。合憲論者「であっても」違憲としたという理解は正確ではない。合憲論者「だからこそ」違憲と判断するしかなかったということである。
2 後方支援、協力支援は武力の行使を禁じた憲法9条(特に1項)に違反する
 米軍等への後方支援(重要影響事態法)、協力支援(国際平和協力法)は、「我が国周辺の地域」(周辺事態法)という地域的制限を廃し(世界中どこへでも)、非戦闘地域でなければ実施しないという制限も撤廃し(現に戦闘行為が行われていなければ良い)、従来から認められていた武器の輸送の他、弾薬の提供、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を解禁するなど、兵站(ロジスティック)そのものであり、米軍等による武力行使と一体となる可能性が非常に高い、あるいは一体化そのものであって、武力の行使を禁じた憲法9条1項に違反する。
 なお、憲法9条1項は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定め、不戦条約(1928年)以来の伝統的慣用から、一般に侵略戦争の放棄を定めた規定と解されているが、9条2項が「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」として、戦争(含武力行使)を行うための物的手段と法的権限を否認していることから、侵略目的でないとしても、「武力の行使」一般が禁じられていると解するのが通説である。
 この点に関する判例としては、2008年4月17日、イラク特措法に基づいて米兵等の空輸を行っていた航空自衛隊の活動を憲法9条1項に違反すると判断した名古屋高裁判決がある。
3 憲法73条(内閣の権限)に違反する
 日本国憲法は、近代立憲主義に基づく権力分立制をとっており、各国家機関にいかなる権限を付与するかの基本は憲法自身によって定められている。そして、行政権を担う内閣に与えられた権限を明記しているのが憲法73条であるが、この規定をどのように読んでも、日本が武力攻撃を受けた訳でもないのに海外で戦争する(武力を行使する)権限を内閣に与えたと読める規定は存在しない。
 戦前(大日本帝国憲法体制下)天皇大権とされていたもののうち、行政権は内閣に、立法権は国会に、司法権は裁判所にそれぞれ帰属することになったが、どこにも継承されなかった天皇大権があった。それは、以下の各条項である。
  第11条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
  第12条 天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム
  第13条 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス(条約締結権は内閣に)
  第14条 天皇ハ戒厳ヲ宣告ス
   2 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
 すなわち、この1946年に行われた憲法改正の経緯から考えても、内閣に海外で戦争する権限などないことは明らかである。
 
第3 中国・北朝鮮脅威論と「安保法制」(戦争法
1 前提として(法制の合理性を判定するために)
 ①立法事実は存在するか?
 ②立法目的は正当か?
 ③法制の内容は立法目的達成の手段として合理的か?
2 中国・北朝鮮脅威論に立法事実はあるか?
 脅威のレベルをどこに想定するかが問題の本質であり、両国による直接軍事侵攻を本気で心配しなければならないのか否かを議論すべきだろう。
3 「安保法制」(戦争法)は中国・北朝鮮に対する抑止力を高めるか?
(1)9.19前の我が国の有事法制の中核は、武力攻撃事態法周辺事態法であった。
 武力攻撃事態とは、要するに日本が侵略された場合に、個別的自衛権を行使してこれを排除するための法制である。ちなみに、その場合、日本が米国に救援を求めるとすれば、その根拠は日米安保条約5条であって、この場合、米国は「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動」することを日本に対して約束している。
 従って、日本が中国や北朝鮮から武力攻撃を受けたのであれば、武力攻撃事態法日米安保条約で対処することになるのであって、「存立危機事態」など不要である。
 次に、周辺事態法は、主には朝鮮有事を想定して合意した1997年版日米ガイドラインを踏まえて制定された法律であり、米軍に対する自衛隊の「後方地域支援」を行うことを主目的としていた。要するに、米軍が(韓国軍とともに)北朝鮮軍と交戦状態に入った場合に、日本が米軍にどのような支援をするのかということであって、北朝鮮が日本にミサイルを発射した場合の話ではない。そういう場合は、武力攻撃事態となる。
(2)それでは、新安保法制でやろうとしている「これまで出来なかったこと」とは何か?それは本当に中国や北朝鮮に対する抑止力向上に役立つのか?
 先に第1、2で述べたとおり、その中核は、「存立危機事態」なる曖昧な要件で、日本が武力攻撃を受けてもいないのに、自衛隊に「防衛出動」を命じることができるようにするということと、「周辺事態」や「非戦闘地域」という制限を取り払い、世界中どこへでも自衛隊を派遣して、米軍等の兵站(後方支援または協力支援)に従事させることができるようにするということである。
 これのどこが中国や北朝鮮に対する抑止力を向上させることになるというのか?海外派遣のオペレーションに対応するためには、そのような任務に即応できる部隊編成が必要となるのが当然で、その分、日本防衛が手薄になるのは見やすい道理である。
(3)察するに、同盟国である米国のコミットメントをより確保するために(つまり、日本有事の際に米軍に確実に参戦してもらうために)、対価としての日本から米国へのサービスを奮発し、「見捨てられ」恐怖を払拭したいということなのだろうが、そもそも抑止力が効果を発揮するかどうかは、相手国(中国や北朝鮮)が「抑止されている」と考えるかどうかにかかっているのであって、自衛隊が世界中で米軍の2軍となって活動することによって、中国や北朝鮮が「より抑止された」と感じるとは到底思えない。
(4)この他にも、本気で中国や北朝鮮による侵攻を心配するのなら、まず真っ先にやらなければならないのは原発全基廃炉であるにもかかわらず、中国に最も近い鹿児島県川内原発敦賀湾に面した高浜原発を再稼働したこと自体、安倍政権が本気でそんな心配などしていない証拠である、ということも付け加えておこう(これは「立法事実」の問題だが)。
 
第4 明文改憲に向けた動向
1 現在の国会議席状況
 現在の衆参両院の議席状況は以下のとおりである。
[衆議院 定数475]
 自由民主党     291
 公明党         35
  与党計       326
 おおさか維新の会   13
  改憲政党計    339(議席占有率71.3%)
 その他         135
 欠員            1
[参議院 定数242]
 自由民主党     115(改選49)
 公明党         20(改選9)
  与党計       135(改選58)
 おおさか維新の会    7(改選2)
 日本のこころを大切にする党
                 4(改選1)
  改憲政党計    146(改選61)(議席占有率60.3%)
 その他          96(改選60)
 欠員            0
 ※これまでの主張を参考に野党の一部を便宜上「改憲政党」としてカウントした。
2 今夏の参院選の死活的重要性(改憲派護憲派の双方にとって)
 2016年1月4日に召集された第190回常会の冒頭から、明文改憲への意欲を隠そうともしない安倍首相であるが、その前提としては、上記のような議席状況がある。特に、民主党参議院議員59人の内、実に42人が今年改選期を迎える。もしも改憲政党の現職議員(61人)全員が議席を守ったと仮定すると、参議院の2/3(162人)を確保するためには、民主党などの野党から16議席を奪えば良いということになり、ここ数年の選挙の傾向(2013年参議院選挙で議席を得た民主党議員は17名しかいない)から考えて非常に現実性のある数字である。
 逆の面から言えば、今夏の選挙で改憲派が2/3を超える議席を獲得できなければ、3年後の参議院選挙で改憲派がこれ以上議席を増やすことは難しく(3年前に民主党が負け過ぎている)、「改憲のチャンス」が当面遠のく可能性が高い。
 日本会議神社本庁などが中心となって推進している「美しい日本の憲法をつくる1,000万人賛同署名」についても、有名神社の境内で初詣客に署名を呼びかけるなど、非常に活動が活発化しており、明らかに今年の参議院選挙後の国会による改憲発議を目指した動きである。
 現在のところ、まず緊急事態条項から具体的な改憲発議を目指すとされているが、それ自体危険極まりない内容を含んでおり、警戒を怠るわけにはいかない。
 
第5 「安保法制」(戦争法)を廃止するために今すべきこと
1 安保法案成立阻止の闘いを振り返る
 従来、様々な歴史的経緯から、なかなか統一行動をとることのできなかった諸団体が、安倍政権の暴走を止めるためには団結して統一行動をとるしかないということは、かねてから懸案であり続けていたが、まず反原発の行動で事実上の統一行動の実績が重ねられ、反安保法制の闘いにおいても、「戦争をさせない1000人委員会」、「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」、「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」の3団体が「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」を共同して結成し、戦争法反対の大きなうねりを起こす原動力となったことは特筆すべきことであった。
 また、それ以外でも、SEALDs(自由との民主主義のための学生緊急行動)に結集した若い学生たちが、これまでにないユニークな運動の核となったこと、子育て世代の母親、父親たちが「安保関連法(案)に反対するママの会」を結成し、各地で積極的に発言したこと、「安全保障関連法(案)に反対する学者の会」も、急速に賛同者を増やし、学問研究の場から街頭に出て、市民とともに反対の声を上げ続けたこと、日本弁護士連合会をはじめ、全国すべての弁護士会が一致して安保法制反対のための行動に立ち上がったことなど、大きな共同のうねりを巻き起こすことができたことは、非常に重要であった。これは、今後の安保法制廃止をめざす運動を構想するための前提となるものである。
 そして、このような共同の動きは、全国にやや遅れてではあったが、和歌山でも大きく結実した。
 7月12日に和歌山城西の丸広場で行われた和歌山弁護士会主催による「憲法違反の「安保法制」に反対する7・12和歌山大集会&パレード」には、様々な団体の協力も得て、県下各地から2500人が集まるという盛り上がりを見せた。また、9月13日には、「戦争をさせない和歌山委員会」と「憲法九条を守るわかやま県民の会」が「9.13 戦争法案を廃案に!みんなで総がかり行動in和歌山」を共同で呼びかけるという画期的な動きに発展し、この動きは、以上2団体に加え、「弁護士の会」、「ママの会」、「和歌山大学有志の会」なども加わった9団体共同呼びかけによる集会&デモの開催に引き継がれている。
2 「安保法制」(戦争法)の施行を見据えた活動を
(1)自衛隊員の命と大義を守るために(広汎な世論の醸成を)
 「安保法制」(戦争法)施行後、最も早く自衛隊に危険な任務が命じられるのは、南スーダンにおけるPKO活動であると言われている。南スーダンは、既に事実上「内戦状態」となっており、交戦権を持たない自衛隊を本来派遣してはならない状況であるにもかかわらず(国会でも志位和夫日本共産党委員長がこの点を追及していた)、現在の任務に加え、さらに治安維持業務や駆付警護業務などを命じるのではないかと予想されており、仮にそうなれば、自衛隊が武器使用しなければならなくなる可能性が格段に高まり、自衛隊発足後初めて自衛隊が交戦主体となる(交戦権がないのに!)ことになってしまう。言い替えれば、自衛隊が現地の住民を殺傷するとともに、自衛隊員から戦死傷者を出すということが現実のものになる。
 既に法律が出来、3月末には施行されるのであるから、南スーダンから自衛隊を撤退させるためには、政権交代など待っている余裕はなく、広汎な国民世論を醸成するしかない。
 なお、PKO活動以外で最も懸念されているのは、米軍が「イスラム国」に対して直接武力攻撃に踏み切った場合、その後方支援に自衛隊が駆り出されるのではないかということである。
(2)安保法制違憲訴訟の提起
 これまでも、国民有志が様々な違憲訴訟を提起してきたものの、いずれもほとんど実質審理を行うことなく却下・棄却されてきたが、現在、有力弁護士らが中心となって「安保法制違憲訴訟の会」が結成され、全国8箇所の高裁所在地の地方裁判所自衛隊派遣差止訴訟を、また全国の地方裁判所で、平和的生存権侵害等を理由とした国家賠償請求訴訟を提起すべく、原告や弁護団員を募集している。訴訟というのは、即効性ある手段とは言えないが、「安保法制」(戦争法)の違憲性を訴える重要な手段である。
(3)「戦争法の廃止を求める2000万人統一署名」の取組
 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が呼びかけている「戦争法の廃止を求める2000万人統一署名」(集約日は本年4月25日)は、安保関連法案の審議の過程で低下した内閣支持率が再び5割を上回ったという報道がなされる状況の下、安保法制の廃止を求める圧倒的な世論を「可視化」するためにも、是非とも達成したい。
(4)学習、日常活動、そして共同のさらなる強化を
 本日のような学習会を、もっと広い範囲で、頻度を上げて実施することが望まれる。
スタンディングアピール、地域デモ、集会など、日常的な活動を続けることも重要。
 さらに、全県的(全国的)に広がった「共同」をすみずみまで強化する取組が求められている。
3 参院選勝利に向けて
 日本における憲法の危機はまことに深刻な状況であり、とりわけ上記「第4 明文改憲に向けた動向」で述べたとおり、今年7月に実施される参議院選挙の結果次第では、明文改憲が具体的政治日程に上る可能性が高い。
 そのような事態を何としても阻止すべく、野党共闘によって与党に対抗できる選挙態勢を作り上げようという市民を主体とした動きが、全国各地で湧き起こっている。
 そして、そのような動きを支援するため、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)」や「ミナセン(みんなで選挙)市民勝手連」が活発な動きを始めている。いまだ、野党統一候補の擁立が実現した選挙区はごく一部にとどまるが、今後急速に機運を盛り上げ、勝てる統一候補を擁立する選挙区を1つでも増やすことが必須の政治課題となっている。
 このような動きは和歌山でも起こっており、2015年12月24日、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」など4団体を当初の賛同団体として、「安保法制の廃止を求める和歌山の会」が記者会見を開き、2016年7月の参議院選挙和歌山選挙区に、
 ① 先の国会で成立した安全保障関連法の廃止 
 ② 集団的自衛権の行使を容認した閣議決定の撤回               
 ③ 日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻すこと
を確約しその実行を期待できる統一候補を擁立すること、そのために、野党各党とこの呼びかけに賛同する団体による合同会議を早急に開催することを、県内各野党に要請する予定であることを公表し、同月28日までに、民主党日本共産党社民党維新の党の野党4党に上記申し入れを行った。
 その後、賛同団体、個人賛同者は急速に増えており、2016年1月30日には第1回の「賛同団体・賛同者のつどい」を開催し、具体的な候補者調整の作業を進めている。
 もしも、野党統一候補の擁立が成功したならば、全力をあげて参院選勝利のために1人1人が最大限の努力をしていただきたい。
                                              以上