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石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演をレジュメから振り返る~4/2「守ろう9条 紀の川 市民の会」第12回総会から

 今晩(2016年4月2日)配信した「メルマガ金原No.2414」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同じ内容で掲載しています。
 
石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演をレジュメから振り返る~4/2「守ろう9条紀の川市民の会」第12回総会から

 好天に恵まれた今日(4月2日)、和歌山城をはじめと桜の名所はさぞ花見客で賑わっているだろう想像つつ(そういえば、私も会員になっている「和歌山うたごえ九条の会」から花見の会の案内が届いていましたが、今日だったたかかな?)、その間の短い状況を学ぼうという熱心な人々が和歌山市市小路(いちしょうじ)の河北コミュニティセンター(2階多目的ホール)に集まりました。今日は、紀の川北岸に住む
 和歌山市民で構成する「守ろう9条紀の川市民の会」(原通範代表/会員数約600名)の第12回総会ががれ、龍谷大学法科大学院の石埼学(いしざきまなぶ)教授(憲法)学)が、「戦争法は廃止、憲法9条が輝く日本を増設そう~今、私たちにできること~」と題した記念講演をされたのです。私
 のメルマガ(ブログ)でも事前告知したとおり(石埼学(いしざきまなぶ)龍谷大学法科大学院教授(憲法学)講演会へのお誘い~4/2「ろう守9条 紀の川市民の会」@和歌山市/2016年2月10日)です。

 最後に少し応答の時間を入れて合計90分の石埼​​教授の講演は、龍谷大学での「講義」もかくやという盛り沢山な内容でした
 。全部書き写す文にもいきませんので、ここでは講演全体の構成を知ってもらうために、各項目の先頭を転記するとともに(一部内容も引用)、4箇所に挿入された【設問】をご紹介皆さんも答えに挑戦してみてください(正解のない問題もあります)。
 

安倍内閣憲法-これまでとこれから-安保
関連法制定(2015年9月)・憲法


53条の無視(2015年)年10月)
・将来への探究
 
【設問】 あなたが平和憲法を大切だと考える理由は以下のどれですか。
 ① 「悲惨な戦争禍」を繰り返したくないから。 ②
 構造的暴力のない世界を実現したいから。
 ③ 平和憲法の下
 ④ 他の憲法よりも良いから。
 その他
 
憲法9条と現代の戦争
憲法9条憲法
禁止された国連憲章武力行使原則
 国連憲章2条4項全て参加国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、国家の慎重保全あるいは政治的な独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他の穏当な方法によるものも慎まなければならない・・
「戦争」という概念は使用されていない。
・例外として検証51条【国際法上の人権
保持の要件(国連憲章51条)】
 
【問】人権権についての以下の記述の中から正しいものを一つ選択して下さい。
①他国による自国への武力行使に対して自国の主権を守るために人権権を行使することは国際法上②
他国による自国への武力攻撃に対して自国の主権を守るためになす武力行使は権利権の付与として国際法上認められている
。をすることは憲法上許されるとした判例がある。
 
3 総力戦、核戦争、空爆、パリチザン戦、対テロ戦争の時代に。
 
二安保法批判
1 変わったのか

1)従来の政府見解は、武力行使の禁止を前提としつつ、例外として個別的権利の行使としての武力行使憲法上禁止されていないというもので
・従前/我が国に対する武力攻撃が存在する(自衛隊法76条1項1号)の場合のみ武力行使が許され
。 2)他国の武力
行使と一体化しない「後方地域支援」という政府の立場の転換
。海外での防衛の「武器使用」は、正当防衛・緊急避難および限定的・受動的なもの(防衛の武器の防護・防衛法95条)
安保関連法/他国軍事の武器の防御(防衛法95条)条の2)、PKO活動における「駆け付け警護」(PKO協力法3条5号ト・ラ)、コミットメントのための「武器使用」(PKO協力法26条、自衛隊法94条の5)等が法律上認められた。
 
【設問】安保関連法に関する以下の記述の中から正しいものを一つ選択しなさい
。 ②重要影響事態法等では、自衛隊が後方支援等をしている現場
「現に戦闘行為が行われている現場」となった場合には、自衛隊は一切の③ 修正武力攻撃事態法決定存続危機
事態において集団的自衛権が設定されている例は歴史上存在しない。
 
2 安保法が「法戦争」と言われる所以
1)我が国に対する武力攻撃の不存在関連、自衛隊武力行使をできる(憲法9条1項禁止)
2)後方支援、協力活動支援等が他国軍の武力行使と一体化しております、従前の政府見解と同じ立場であっても、武力行使に該当する)憲法9条1項予告)
。 「派兵」された場合、武器の防護対象である他国軍隊や自衛隊が攻撃対象となり、それへの防衛の対応措置(武器の使用)が武力行使に該当する(憲法9条1項保留)
。 )そもそも、自衛隊が「(個別的)安全のための必要最低限​​の実力」(政府見解)では廃止している、従前の政府見解と同じ立場に立っても憲法9条2項に予防する存在となった。
 
三 改憲をめざす安倍内閣
1 憲法9条改正
2 緊急事態条項の新設
1)緊急事態条項とは
① 定義
② 緊急事態条項の危険性
③ 理論的な困難
2)自民党改憲案の緊急事態条項
・安保関連法(特に武力攻撃事態に基づく自衛権の行使、重要影響事態法に基づく後方支援等、国民保護法)を実施するには、憲法に緊急事態条項が必要である。
→国民の協力の義務化(憲法18条)、報道機関の統制(憲法21条)、令状抜きの逮捕・捜索(憲法35条・35条)、内閣への立法権も含む権限の一時的集中(憲法41条)。
→仮に安倍首相が「お試し改憲」と主観的に考えているのだとしても、客観的には、安保関連法を実際に効果的に運用するために不可欠の規定。
→安保関連法そのものが、緊急事態法制なのである。ただ日本国憲法の上記の規定等があるため、不十分な。
【既存の「緊急事態」法制】
大日本帝国憲法の緊急事態条項】
3)日本国憲法と緊急事態条項
 
四 今、私たちにできること―行動すること
憲法9条を世界へ発信(例「憲法9条にノーベル平和賞を」運動への署名・協力、諸言語への翻訳)
・請願権(憲法16条)の行使(例 安保関連法の廃止を求める2000万人署名運動への署名・協力)
・地域での地道な活動(「9条の会」運動は、その成功例)。
・安保関連法の廃止を目指す政党・議員等への投票、そうではない政党・議員等との対話
・etc
 
【設問】安保関連法の廃止・平和憲法護持のためにあなたにできる行動を考えなさい。
(引用終わり)
 
 どうでしょうか。今日の講演を聴講できなかった方にも、その全体像がおおよそご理解いただけたでしょうか?
 今日の講演のタイトル「戦争法は廃止、憲法9条が輝く日本を取り戻そう~今、私たちにできること~」は、主催者から提案し、石埼先生にご了解いただいたものですが、そのテーマに沿いながら、現時点の状況を踏まえ、限られた時間の中で盛り込むべき内容を吟味されたことが窺えます。
 総会終了後、「守ろう9条 紀の川 市民の会」役員数名が石埼先生を囲んで懇親会を開いて様々なお話を伺った中に、石埼先生が「憲法9条ノーベル平和賞を」という運動に積極的に関与され、当初から推薦人になっておられることや、2014年秋の「紀の川 市民の会・憲法フェスタ」で講演された清水雅彦先生(日本体育大学教授・憲法学)が、石埼先生の明治大学雄辯部の先輩にあたるというような興味深い話題があった他に、今日の講演の内容を大学で学生に伝えるとすれば、この3倍の時間をかけることができるし、それが大学教育の優れた点であると話されたのが印象的でした(私の要約に問題があれば申し訳ありませんが)。
CIMG5510 講演終了後、聴講した知人から、「とても充実した講演で素晴らしかったが、やはり難しかった」という感想を聞いたりして、私自身、「そうだろうな」と思いました。それは、上記レジュメの抜き書きを一読していただければ分かると思いますが、今日の講演は、憲法9条の基本的な解釈を国連憲章との関連を踏まえて解説し、正規軍同士が宣戦布告して戦うという時代がとうに過ぎ去っていることに注意を喚起した上で、安保関連法で何が変わり、そのどこが憲法に違反するかを説明し、その上で、今安部政権が進めようとしている危険極まりない明文改憲=緊急事態条項の本質を解き明かし、最後に私たちが何をなすべきかに説き及んで締めくくるという盛り沢山なものであり、2016年4月2日に行われる講演としては「フルコース」ですから、講演の内容にすべて付いて行くためにはかなりの努力(とある程度の予備知識)が必要だったかもしれないと思います。
 しかしながら、お話自体は「分かりやすく」ということを心がけておられましたし、レジュメも後で読み返すことも想定して詳しく書かれていますから、「難しい」と思った人も、講演を思い出しながら「復習」すれば、しっかりとした理解に到達できる講演であったと思います。
 
 なお、最後に少し補足しておくと、今日の講演は、憲法9条を大事なものとして活かしていきたいと願う人々が集う地域「9条の会」での講演ですから、当然のことながら、石埼先生も、ご自身の政治的見解を明示することを躊躇されませんでしたが、大学において、学生を対象に講義する場合には、決して自らの政治的見解を押し付けるようなことはしないという信条を固く守っておられます。
 そのことは、昨年5月28日に龍谷大学での日本国憲法の講義がIWJ京都によって中継された際に、講義を実質的に始めるにあたって、マックス・ウェーバーの『職業としての学問』における見解を引用する形で明快に学生に説明しています。

 IWJ中継の6分~の部分ですから、是非視聴していただければと思います。
 
2015/05/28 【京都】龍谷大学石埼学教授 日本国憲法講義 ―平和主義と安保法制(動画)

 最後に、石埼学先生に関する話題をあと2つご紹介します。
 
その1 懇親会でうかがったことですが、今年の憲法記念日(5月3日)、石埼先生は、三重憲法会議の招きにより、津市で講演されるそうなのですが、同じ日、名古屋市においては、愛知憲法会議の主催により、青井未帆さん(学習院大学法科大学院教授・憲法学)の講演会が開かれることになっており、「みんな名古屋に行ってしまいますよ」という弱気の発言(?)がありました。帰宅した後調べてみると、当日の名古屋の集会は、青井未帆さんの講演とナターシャ・グジーさんのコンサートの豪華2本立になっており、たしかにこれは強敵だ!津市の皆さん、地元で行われる石埼学先生の講演に是非行ってください。内容は私たちが保証しますから。
 
その2今日の総会の司会を担当された馬場潔子さんから
、石埼先生が10年前に大月書店から出版されたタイトルが『デモクラシー検定―民主主義ってなんだっけ?であり、SEALDsの『民主主義って何だ?』を10年先取りしていたという紹介がありました。 !』というSEALDsの本が出ていますが、10年前の石崎先生の本と同じ編集者ですか 。が質問になりましたね(直接には、河出書房新社から出た『民主主義って何だ?』(高橋源一郎、SEALDs)を意識したタイトルなのでしょうが)。



(反省)
 本日の総会、第1部の石埼先生記念講演 その後、第2部総会議事が行われましたが、ご検討の上、その総会議案書をPDFにしてご紹介します。委員の1人であり、その一部(【私たちを考える】5~7ページ)を分担執筆した身で言うのも何ですが、地域9条の会としては、非常に充実した活動をしているのではないかと思います。
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(付録)
『世界』 作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ヒポポフォークゲリラ