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立憲デモクラシー講座第8回(4/8)「大震災と憲法―議員任期延長は必要か?(高見勝利氏)」のご紹介(付・『新憲法の解説』と緊急事態条項)

 今晩(2016年4月11日)配信した「メルマガ金原No.2423」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
立憲デモクラシー講座第8回(4/8)「大震災と憲法―議員任期延長は必要か?(高見勝利氏)」のご紹介(付・『新憲法の解説』と緊急事態条項)

 昨年の11月から始まった「立憲デモクラシーの会」による「立憲デモクラシー講座」ですが、今年3月までの7回は全て早稲田大学を会場に開催されてきましたが、4月から5月にかけての3回(第8回~
第10回)は、立教大学池袋キャンパスを会場とし、しかも同大学大学院比較分明学専攻との共催となっています。
 予告されている3回の講座の内容は以下のとおりです。
 
いずれも
 会場:立教大学池袋キャンパス11号館A-203教室
 時間:18:30~(開場:18:00)
 立教大学大学院比較文明学専攻との共催
2016年4月8日(金)
 高見勝利氏(上智大学教授・憲法学
 「大震災と憲法――議員任期延長は必要か?」
2016年4月22日(金)
 阪口正二郎氏(一橋大学教授・憲法学
 「言論の自由と自民改憲草案」
2016年5月13日(金)
 西谷 修(立教大学特任教授、哲学)
 「戦争化する世界と日本のゆくえ」
 
 以下に、UPLANにアップされた「立憲デモクラシー講座」の第8回「大震災と憲法――議員任期延長は必要か?」(高見勝利氏・憲法学)の動画(とレジュメの一部)をご紹介します。
 
20160408 UPLAN 高見勝利「大震災と憲法――議員任期延長は必要か?」(1時間51分)

冒頭~ 司会 西谷修氏(立教大学特任教授、立憲デモクラシーの会呼びかけ人)
2分~ 西原廉太氏(立教大学文学部長、立教大学大学院文学研究科院長)
9分~ 山口二郎氏(法政大学教授、立憲デモクラシーの会共同代表)
12分~ 高見勝利氏(上智大学教授・憲法学
(レジュメから引用開始)
大震災と憲法――議員任期延長は必要か? 2016.4.8 立憲デモ講座 高見
1.憲法改正「発議」の手続と改正案の「立法事実」
(1)手続法による憲法改正「内容」の限定
(2)政府が予測する大地震の災害規模
(3)「首都直下地震」への改正項目の集約
2.「大災害緊急事態」対応の「両議院の議員の任期延長」
(1)参議院議員の任期延長は論外
(2)衆議院議員の任期延長と解散阻止の議員心理
(3)参院の緊急集会による対応
3.自民党第1次案とドイツ基本法の緊急事態条項
(1)ドイツ基本法がモデルの第1次案
(2)自然災害モデル規定に任期延長の特例なし
(3)自然災害時の任期延長規定はポーランド憲法のみ
4.1941年衆議院任期延長法から見えてくるもの?
(資料1~11 略)
大震災と憲法――議員任期延長は必要か? (補正・追補)
1.憲法改正「発議」の手続と改正内容の「特化」
(1)手続上の要請としての改正内容の「区分」
(2)緊急事態条項の内容「区分」と批判のポイント
(3)政府が予測する大規模災害の規模
(4)「首都直下地震」における国会対応への特化
2.「大災害緊急事態」対応の「両議院の議員の任期延長」
(1)参議院議員の任期延長は論外
(2)レア・ケースとしての衆院議員任期延長
(3)「解散されない」とは解散権行使の一時凍結
(4)解散後の対応措置としての改憲二案
(5)「参院の緊急集会」による解散・任期満了への対応
3.自民党第1次案とドイツ基本法の緊急事態条項
(1)ドイツ基本法がモデルの第1次案
(2)自然災害モデル規定に任期延長の特例なし
(3)自然災害時の任期延長規定はポーランド憲法のみ
4.1941年衆議院任期延長法から見えてくるもの?
(資料12~19 略)
 
 まず冒頭で、西原廉太氏(立教大学文学部長、立教大学大学院文学研究科院長)の「主催者挨拶」が行われますが、司会の西谷修氏がほのめかされたように、誰しも昨年10月にあった出来事(「安全保障関連法に反対する学者の会」が学生団体「SEALDs(シールズ)」との共催で計画したシンポジウムについて、会場使用の申請を受けた立教大学が「純粋な学術内容ではない」などとして不許可にした)を連想したことでしょう。
 4月から5月にかけて3回にわたって行われる「立憲デモクラシー講座」については、立教大学は単に
会場の使用を許可したというだけではなく、大学院文学研究科比較分明学専攻と「立憲デモクラシーの会」との共催という形で関わっており、西原文学部長がかなり長い「主催者挨拶」を行ったのは、その趣旨をあらかじめ明らかにする必要があると考えられたからだと推測します。
 昨年10月のシンポも、別に「学者の会」が立教大学に共催して欲しいと申し込んだ訳ではなく、単なる会場使用許可申請だったのだから、認めても良かったのにと思いますけど、まあ、色々事情があったのでしょう。
 
 ところで、高見勝利先生による講演のテーマは、憲法を改正して、大震災に備えた国会議員の任期延長条項を設けることについてという、具体的といえば具体的、細かいといえば相当に細かなテーマですが、実はかねてから、民進党の枝野幹事長が、まさにこの問題(大震災発災時の国会議員任期延長)について現行憲法に規定がないのは不備であるという持論を開陳しており、うっかりするとこれを突破口に「憲法改正発議」がされかねないと私などは懸念しており、その意味からも非常に興味深い講演であったと思います。
 
(付記/『新憲法の解説』1946年11月3日発行について)
 大災害に備えた緊急事態条項など、不要であるばかりか有害であるということを積極的に主張している津久井進弁護士(兵庫県弁護士会)が、昨日、ご自身のFacebookタイムラインに投稿したところ、あっという間に多数の人がシェアしている情報があります。
 1946年11月の憲法公布に際して内閣が発行した『新憲法の解説』という冊子の内容を紹介したものであり、災害と緊急事態条項ということで共通するだけではなく、何より3年前にこの『新憲法の解説』を収録した文庫本(後掲)を編集したのが高見勝利先生なのですから、ここで一緒に紹介する価値はあるでしょう。
 以下に津久井進弁護士の投稿を引用させていただきます。
 
(引用開始)
 内閣発行・法制局閲(はしがき;吉田茂首相)の『新憲法の解説』という,政府による憲法の国民向け
の解説本があります。
 それによると,憲法は,あえて緊急勅令などを置かず「参議院の緊急集会」で対処するようにしたそう
です。
憲法は緊急事態を想定してない」というのはデマでした。
(『新憲法の解説』より引用)
・・・明治憲法においては、緊急勅令、緊急財政処分、また、いわゆる非常大権制度等緊急の場合に処する途が広くひらけていたのである。これ等の制度は行政当局にとっては極めて便利に出来ており、それだけ、濫用され易く、議会及び国民の意思を無視して国政が行われる危険が多分にあった。すなわち、法律案として議会に提出すれば否決されると予想された場合に、緊急勅令として、政府の独断で事を運ぶよう
な事例も、しばしば見受けられたのである。
 新憲法はあくまでも民主政治の本義に徹し、国会中心主義の建前から、臨時の必要が起れば必ずその都度国会の臨時会を召集し、又は参議院の緊急集会を求めて、立憲的に、万事を措置するの方針をとってい
るのである。・・・
(引用終わり)
 
 『新憲法の解説』は、2013年9月に岩波現代文庫から刊行された『あたらしい憲法のはなし 他二編』(高見勝利編)に収録されました。

 『新憲法の解説』冒頭に付された説明(編者によるものでしょう)を引用しておきます(78頁)。
 
(引用開始)
 1946年11月3日発行。本冊子の表紙は「法制局閲 新憲法の解説 内閣発行 高山書院発売」とあり、そこには著者名が記されていない。通常、表紙には著者名が記載されている。本冊子を収蔵した図書館は、書誌の作成にあたって戸惑ったようだ。「序」や「奥付」の記述から、著者は山浦貫一または林譲治とされる。これは、内閣が本冊子を自らの著作として明示したくなかったことによるものと思う。それなら出版しなければよいということになるが、そうも行かない事情があったようである。その事情とは、おそらく、政府の肝いりで憲法普及会を立ち上げさせた手前、その活動に要する簡便な憲法解説書を早急に整えておく必要があったからであろう。瓢箪から駒である。私たちは、本冊子を通じて、新憲法に関する内閣の初めての所見に接することができるのである。政府与党が憲法改正を進めようとしているいま、67年前、内閣が国民に提示した憲法見解とは一体どのようなものであったかを確認してみてはどうか

(引用終わり)
 
 高見先生(多分)が、「政府与党が憲法改正を進めようとしているいま、67年前、内閣が国民に提示した憲法見解とは一体どのようなものであったかを確認してみてはどうか。」と勧めておられたにもかかわらず、刊行時に購入したことはしたものの、性根を入れて読んでいなかった私は、津久井先生が気付いた記述(文庫の116頁です)があったことなど、全く知りませんでした。
 ちなみに、高見先生が編集されたこの文庫本には、『新憲法の解説』の他に、『新しい憲法 明るい生活』(1947年5月3日刊)と『あたらしい憲法のはなし』(1947年8月2日刊)の2編が収められています(他に、資料として大日本帝国憲法、英文対訳日本国憲法を収録)。後2著については、そのテキストをインターネットで読むことができますが、『新憲法の解説』については、現在容易に読めるのは、岩波現代文庫だけだと思います。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年11月15日
佐々木惣一が発見した「国民の存在権」(憲法13条)と自民党改憲案~石川健治東大教授の講義で学ぶ(11/13立憲デモクラシー講座 第1回)
2015年12月12日
山口二郎法政大学教授による「戦後70年目の日本政治」一応の総括~12/11立憲デモクラシー講座 第3回)
2016年1月8日
中野晃一上智大学教授による「グローバルな寡頭支配vs.立憲デモクラシー」~1/8立憲デモクラシー講座第4回)
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杉田敦法政大学教授による「憲法9条の削除・改訂は必要か」~1/29立憲デモクラシー講座 第5回)
2016年2月6日
立憲デモクラシーの会・公開シンポジウム「緊急事態条項は必要か」を視聴する
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立憲デモクラシー講座第6回(3/4三浦まり上智大学教授)と第7回(3/18齋藤純一早稲田大学教授)のご紹