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『憲法カフェへようこそ 意外と楽しく学べるイマドキの改憲』(あすわか編著)を推奨します

 今晩(2016年4月23日)配信した「メルマガ金原No.2435」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
憲法カフェへようこそ 意外と楽しく学べるイマドキの改憲』(あすわか編著)を推奨します

 今年の7月、いよいよ国政選挙に18歳、19歳の有権者が参加します。はたしてこの年齢層はどれくらい投票所に足を運ぶのだろうか?どのような投票行動の傾向を示すのだろうか?政党関係者はもちろん
、多くの人が固唾をのんで注目していることでしょう。
 そのような中、「立憲主義」や「民主主義」を分かりやすいことばでどのように若い人たちに伝えていけば良いのか(対象は若い人に限ったことではありませんが)ということに、多くの人が腐心しているは
ずです。
 長年、憲法関連の講演会や学習会を開催し続けている団体は、どこも、参加者の固定化、高齢化に悩ん
でいると言っても言い過ぎではないでしょう。
 そのような状況だからこそ、「あすわか」(明日の自由を守る若手弁護士の会)が全国的に展開してい
る「憲法カフェ」に大きな期待が集まるのだと思います。
 「あすわか」ホームページに掲載された「憲法カフェのご依頼方法」から抜粋して引用してみましょう


(抜粋引用開始)
 そのあすわかによる気軽な憲法学習会、その名も【憲法カフェ】。少人数でも大人数でも、レストラン、カフェ、公民館のお座敷、お寺、病院…どこでも駆けつけて、憲法のイロハや民主主義・平和を学び合
う、そんな敷居の低いライトなスタイルの学習会を提唱しています。
 早いもので、設立(注:2013年1月)以来2年半で全国で累計700回以上開催されてきました。
 毎日、ご依頼メールが絶えません。
 これは市民の皆さまが「今の政治、よく分かんないけれどおかしい」「基本知識があれば政治ニュース
をもっと理解できるのに」「子どもの将来が不安だから、しっかりイロハを学んでおきたい」という主権者としての熱意を高めて下さっている証拠だと思います。
 そういう「今まであんまり政治には興味なかったけれど、いい機会だから基本をおさえたい!」という
方の熱意に応えるべく、あすわか一同、喜んで主権者力を高めるお手伝いをしております☆
<ご依頼方法>
① お名前
② 日程についていくつか候補日を設定して教えて下さい。弁護士という職業柄、およそ2ヶ月先の予定まで埋まっている(つまり12月の予定は10月に決ま
る)ので、2ヶ月先あたりでご計画下さい。
③ おおよその場所(最寄り駅)を教えて下さい
④ テーマを教えて下さい  
⑤ 講師料 (想定されている金額をご記載ください。(最終的には講師との話し合いでお決めいただくこと
になります。)
 以上の5点をお書きになった上で、
 
peaceloving.lawyer@gmail.com までお申し込み下さい。
<ご注意>
● 講師料の金額につきましては、当会一律の基準はございません。講師となった弁護士と直接ご交渉くだ
さい。(持続可能な活動を続ける上で、無償での講師派遣は、事務局としてはお受けすることはできませ
ん。)
(引用終わり)
 
 「あすわか」の会員が、どの程度の講師料で「憲法カフェ」の講師を引き受けているのか、その相場など知りませんが、私は「無償では引き受けない(少なくとも事務局としては)」という方針は正しいと思います。
 たとえ、過去(もしかしたら今も)、多くの弁護士(個人)や弁護士9条の会が、献身的に無料講師活動を行ってきたにもせよです。
 
 さて、その「あすわか」による「憲法カフェ」が本になりました。
 『憲法カフェへようこそ 意外と楽しく学べるイマドキの改憲』(かもがわ出版)です。
 私は昨日、数少ない和歌山における「あすわか」会員であるS弁護士から1冊購入し、今日読み上げました。何しろ本文79ページしかない上に、大島史子さんによるイラストもふんだんに使われているので
、あっという間に読めます(これで1,200円+税というのは少し高いような気もしますが)。
 奥書には「2016年5月3日 第1刷発行」と書かれており、既に書店の店頭に並んでいるかは分かりませんが、いずれ目に付くようになるでしょう。
 
2016-04-26

 この本の構成をご紹介しましょう。
 
はじめに 早田由布子「あすわか」事務局長(第二東京弁護士会
憲法カフェは、全国いろんな場所で、年中行っています。年間数百件(厳密に把握不可能)です。でも
、自分の近くでやっていない、とか、時間が合わなくて行けない、というご意見をよくいただくのです。
 そこで、本書を作らせていただきました。この本を読んでいただければ、全国各地で行われている「憲
法カフェ」を体験できます。いろんなテーマの、いろんな形の憲法カフェがあります。まさに自分が、憲法カフェに参加したような気になれる、そして憲法について詳しくなった気になれる、そんな内容になっています。
 さぁ、みなさんも、憲法カフェに入店しましょう! コーヒーや紅茶を片手にお楽しみください。」
 
第1章 憲法カフェ 憲法ってなあに?から立憲主義まで
太田啓子(神奈川県弁護士会→4月1日に「横浜弁護士会」から名称変更)

「でも、多数決でもやってはいけないことがある、多数決にも限界があるのです。どんな限界かというと憲法に書いてあることに反してはいけないという限界です。ですから、99人がいいと言っても、残り
1人の憲法上の人権を侵害してはいけません。
 このように、裁判所・司法の大事な存在意義は、「少数者の人権保障の最後の砦」というところにあり
ます。
 だから、憲法があって本当によかった、と実感するのはおそらく、自分が少数派になり多数派から憲法上の人権を脅かされそうになったときです。」
 
第2章 9条カフェ 戦力の放棄、新安保法制、改憲による国防軍の創設
小谷成美(大阪弁護士会
「私たち市民はどうでしょう?「心配しすぎ。今の政府は昔と違う。本当に戦争になるはずはない」と思
いますか?第二次世界大戦が始まった時、女学生だった方が、「国民は、政府の言うことを信じて、安心したまま戦争に突入していったんです。そうとは知らず、学生だった私は、おいしいものを食べたり、ルンルンしてましたよ」とおっしゃっています。その頃と、今の日本、重ならないでしょうか。
 第二次世界大戦前と違うのは、今は国民主権だということです。私たちは政治家やこの国の未来を選択することができます。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないよう」にするため(憲法前文)、私たちが今しなければならないことは何なのか。みなさん一人ひとりが考えて、行動していただきたいと思っています。」
 
第3章 秘密保護法カフェ 安保とコラボで戦争できる国づくり
内山 宙(静岡県弁護士会
特定秘密保護法強行採決された時に、マスコミで「民主主義が終わった」と言われたりしました。し
かし、SEALDsの奥田愛基さんは、「民主主義が終わったんなら、俺たちが始めるぞ」と言ってデモを始めました。ま、私もそのスピーチを現場で聞いていて、頭をガツンとやられた気がして、そこから憲法カフェを始めたんですけれどもね。しかし、デモだけでは変わりませんので、そこに集まった数を、今度は票にまとめて、おかしな法律を作った政府を変えていくことが必要になってきます。
 このように、特定秘密保護法は、国民・マスメディア・国会議員から情報を奪って「考えられない・議論
できない・批判できない」ようにし、民主主義を骨抜きにする実質的な改憲にも近い最悪な法律です。違憲な新安保法制をさらに使いやすくするという意味で、いわゆる「戦争できる国づくり」の大黒柱の一つであり、自由と民主主義を守るためには必ず廃止しなければならない法律なのです。」
 
第4章 緊急事態条項カフェ 自民党改憲草案の紹介をしつつ
田中淳哉(新潟県弁護士会
「大規模災害が起こったとき必要となるのは、混乱した状況を直接見聞きしている現場に権限をおろすことです。そして、災害時に現場に権限をおろすための法律は、【法制度一覧表】のとおり、既に整備され
ています。
 緊急事態条項は、「権限を上に上げる」ものですので、「現場に権限をおろす」のとは発想が逆です。内閣が現場の状況を把握できないまま不適切な指示をすれば、かえって現場の混乱が拡大することにもな
りかねません。」
衆議院議員の任期満了を控えた時期に大規模災害が起こり、既存の法律では対応しきれないような場合
にどうしたらよいのか、という点は問題となり得ます。
(略)
 ただ、この場合でも、憲法54条2項を類推適用して、参議院の緊急集会を召集できると考えられてい
ます。わざわざ憲法を改正して緊急事態条項を創設する必要はありません。」
「1946年、新しい憲法の制定について審議する国会で、金森徳次郎憲法担当国務大臣は、緊急事態条項の危険性について「国民の意思をある期間有力に無視しうる制度である。」とズバっと指摘しています。そして、「過去何十年の日本の、この立憲政治の経験に徴しまして、間髪を待てないと云うほどの急務はないのでありまして、そういう場合は何らか臨機応変の措置をとることができます。」と述べ、緊急事態条項は必要ないんだ、ときっぱり否定しました。」
 
第5章 民主主義カフェ 選挙・政治のアクション、「不断の努力」
竪十萌子(埼玉弁護士会)、黒澤いつき(「あすわか」共同代表)
日本国憲法
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久
の権利として信託されたものである。
 胸を打ちますよね。すごいですよ憲法は。国民が政治に無関心になれば、権力が暴走することはわかっている。自由も、平和も、決して「あって当然」のものじゃない。しっかり自分や家族の生活と政治をつなげて考えて、政治の行方をきちんと追って、ダメだと思ったら「NO」という意思を行動に移す。この地道な「不断の努力」があってこその自由であり、平和なんです。普段からコツコツ続ける「不断の
努力」こそが、民主主義のサイクルをうまく回していく鍵になるんですよね。
黒澤 「主権者」って、学問的には「国政のあり方を最終的に決定する最高権力者」とか説明されるわけですが、「不断の努力」というある意味めんどくさいことを全部引き受ける、その覚悟がある有権者、というニュアンスがあるような気がします。しんどい道のりだけれども、自分はこの国で尊厳ある個人とし
て生き続けていくために、不断の努力を続けることを引き受けるぞ、という覚悟がある人。
 「政治は無関心ではいられても、無関係ではいられない」です。
 政治は、私たちや子どもたちの暮らし、命、生き方など、全てに関わっています。だからそれを大切に
思う人は、政治を一生懸命考えなくてはいけない。政治こそが全ての土台だからです。共に頑張りましょう!」
 
おわりに 神保大地「あすわか」共同代表(札幌弁護士会
「でも、最近、変える内容は決まっていないけど「とりあえず憲法を変えたい」という発言をよく耳にします。しかも、それを「憲法を尊重擁護する義務」を負っている(憲法99条)政治家さんが言っている
んです。
 憲法だって変えるべき理由があったら、変えていいんです。そもそも、いまの憲法は、改正することを前提に、改正の条文を用意しています。だから、憲法を変えることで、市民(個人)がより幸せになれる
のであれば、ぜひ変えるべきですよね。
 でも、変える必要もないし、憲法を変えることで、市民が不幸になってしまうのだとすれば、それは変
えないほうがいい。
 ですので、私たちは、憲法を変えるかどうかの議論をすべき前提として、まず、憲法が何のためにあっ
て、どのような役割・機能があるのか、いまある法律が憲法とどのような関係にあるのかを知っていなければなりません。そのために、本書のような憲法カフェを全国各地でやっています。」
 
 以上、全体の構成と若干の引用で『憲法カフェへようこそ 意外と楽しく学べるイマドキの改憲』をご紹介しました。
 本文では、実際の憲法カフェでも使われていると思われる「Q&A」方式も挿入されており、親しみや
すい工夫が随所に見られます。
 もちろん、何を言うにも79ページの本ですから、これは導入です。
 けれども、「憲法と政治」について、考えたこともなかった人に向かって、何をどう訴えれば良いのか?という課題に対し、数多くの憲法カフェでの経験を積み重ねながら真摯に向き合ってきた「あすわか」のメンバーが、現時点での到達点としてまとめ上げたこの本は、全ての弁護士、少なくとも、自らが憲法学習会の講師となるかもしれないという自覚のある弁護士にとっては、必読・必携の本だと自信をもって推奨します。
 
(付記1 「王様をしばる法~憲法のはじまり~」について)
 「あすわか」の名を高からしめたのは、最初はリーフレット
「憲法が変わっちゃったらどうなるの?~自民党案シミュレーション~」と紙芝居「王様を縛る法~憲法のはじまり~」だったように思います。
 以上は、いずれも「みんな楽しくHappy♡がいい♪」の管理人、きーこちゃんがナレーションを担当した
YouTube版がアップされています。
 私は、特にこのうちの「王様をしばる法 ~憲法のはじまり~」がずっと気になっていました。
王様をしばる法 ~憲法のはじまり~(6分30秒)
 
 というのも、『憲法カフェへようこそ』の第1章で太田啓子さんも引用されているように、2014年2月の衆議院予算委員会での質疑において、安倍晋三首相は、「憲法の性格をどう考えるか」と問われた際、「国家権力を縛るものだという考え方があるが、それはかつて王権が絶対権力を持っていた時代の主流的考え方だ」という歴史のイロハもわきまえない無茶苦茶な答えをしたのですが、彼は一体誰に吹き込まれてこういう風に思い込んだのだろう?ということが疑問でした。
 そして、もしかすると、安倍首相は、「あすわか」の「王様をしばる法~憲法のはじまり~」(6分30秒)を視聴して、「立憲主義とはこういうもの」と勝手に曲解したのではないか?と密かに疑ってい
るのです。もちろん、証拠は何一つありません。
 
(付記2 正誤表)
 単なる一読者の私が正誤表というのはまことに僭越ですが、明白な校正漏れに気がつきました
ので指摘しておきます。
第2章 9条カフェ 戦力の放棄、新安保法制、改憲による国防軍の創設
26頁 8行目
誤)「自国から攻撃を受けたときに自国を防衛する」
正)「他国から攻撃を受けたときに自国を防衛する」

『憲法カフェへようこそ』カバー