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憲法記念日を前に~「憲法学者、石川健治・東大教授に聞く」(毎日新聞・特集ワイド)を読む

 今晩(2016年5月2日)配信した「メルマガ金原No.2444」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
憲法記念日を前に~「憲法学者石川健治・東大教授に聞く」(毎日新聞・特集ワイド)を読む

 憲法記念日を前に、毎日新聞(夕刊)の特集ワイドに、「憲法学者、石川健治・東大教授に聞く」という記事が掲載されました。
 ただし、この特集ワイドは、1か月に5ページまでという閲覧制限のかかった記事だと思います。デジ
タル毎日の無料会員に登録すれば、さらに5ページ追加(月に計10ページ)できますが、それ以上読みたければ、有料会員登録が必要ということのようです(※デジタル毎日会員登録ページ)。
 
 ところで、今日の特集ワイドのタイトルは、より正確に書けば「「クーデター」で立憲主義破壊 憲法学者、石川健治・東大教授に聞く」なのですが、従来の政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使ができる場合があるとした2014年7月1日の閣議決定を、石川教授が「これまでに築かれた法秩序の同一性・連続性」を破壊するものであり、「法学的には、クーデター」であると断じていることは、かなり知られたことだろうと思いますので、その部分はリンク先でお読みください。
 
 ここでは、「7月1日 クーデター説」ほどは知られていない部分を2箇所ほど引用したいと思います。
 まず、石川教授の「学統」に関わる部分です。
 
(引用開始)
 実は長年、忠実にある教えを守り、メディアの取材にはほとんど応じなかった。その教えとは「憲法学
者は助平根性を出してはならない」。憲法学は政治と密接な関わりを持つ研究分野だからこそ、メディアなどで政治的な発言をするようになると、学問の自律性が損なわれかねない??という意味だ。師と仰ぐ東大名誉教授で「立憲デモクラシーの会」の共同代表を務める樋口陽一氏(81)から受け継いだ「一門」の戒め。そもそもは、樋口氏の師で東北大名誉教授の清宮四郎氏(1898?1989年)が説いた。戦後の憲法学の理論的支柱だった清宮氏は、こうも言い残したと、樋口氏から聞かされた。「『いざ』という時が来れば、立ち上がらねばならん。
(略)
 正直、今が師の教えである「いざ」の時かは分からないが、「ここで立たねば、立憲主義を守ってきた
諸先輩に申し訳が立たない」という思いが全身を駆け巡った。
(引用終わり)
 
 もう1つ、「国民全員が敗者」ということについて。
 
(引用開始)
 石川さんはもう一つ大きな問題があると指摘する。解釈改憲と安保関連法の成立は、安倍政権を支持する人々の勝利であり、9条を守りたい人々の敗北だ-と見る構図だ。「いや、そうではありません。私たち全員が負けたのです」と切り出した。「立憲主義は主張の左右を問わず、どんな立場を取る人にも共通した議論の前提です。安倍政権はこの共通基盤を破壊しました。だから私たち国民全員が敗北したといえる
のです」
 国民が敗者--。戦後、新憲法のもとで築き上げた共有財産が崩れたというのだ。大切な土台は突然破壊されたわけではない。安倍政権は13年8月、集団的自衛権行使に賛成する官僚を内閣法制局長官に登用した。「法の番人」の独立性を保つため長官人事に政治力を発揮しない、という歴代内閣の慣例を破った。さらに昨秋、野党が要請した臨時国会を召集しなかった。憲法は衆参どちらかの総議員の4分の1以上の要求があれば召集せねばならない、と規定しているにもかかわらず。「基盤」は破壊され続けている。
(略)
 石川さんは「憲法を守れ」とだけ叫ぶことはしない。「日本国憲法は権力の制限や人権尊重を最重要視する近代立憲主義の上に成り立っています。『政権がそれ以上踏み込めば立憲主義が破壊される』という
、越えてはいけない最後の一線はここだと指摘し続けることが、僕の役割だと思っているのです」
 憲法学者の毅然(きぜん)とした覚悟と誇りを見た。
(引用終わり)
 
 石川教授自身、執筆した記者が少し格好良く書きすぎている、と困惑されているかもしれないと思いながら、それでも良い記事だ、多くの人に是非読んでもらいたいと思い、ご紹介しました。
 そして、憲法学者としての「覚悟と誇り」を持っているのは、何も石川教授に限ったことではなく、実に多くの憲法研究者が声を上げたことを私たちは知っています。
 少しばかり「格好良く」書かれていたとしても、それは、立憲主義を守ろうと声を上げた全ての憲法学
者に対する感謝の気持ちの表れだと理解しましょう。
 

(付録)
『ほんものとにせもの』 作詞作曲:ピート・シーガー 日本語詞・演奏:中川五郎