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改憲派の「憲法おしゃべりカフェ」はあなどれない

 今晩(2016年5月13日)配信した「メルマガ金原No.2455」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
改憲派の「憲法おしゃべりカフェ」はあなどれない

 5月3日の憲法記念日、私は終日、“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2016”が開かれた和歌山城西の丸広場を走り回っており、それが終わった後はFacebookへの写真レポートのアップに忙しく、憲法記念日関連のテレビ番組を視聴する時間的余裕など全くありませんでした(
写真レポートで振り返る“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2016”/2016年5月5日)。
 もっとも、普段から、優れた番組が放送される可能性の高いドキュメンタリー番組枠以外は、テレビの
スイッチを入れること自体(よほどの重大ニュースでも見ようという時以外は)まずないですけどね。
 前日の2日の夜も、和歌山弁護士会でTV会議システムで中継された「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」についての学習会に参加しており(被災者のための制度紹介「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」について/2016年5月9日)、帰宅後はメルマガ(ブログ
)執筆に忙しいという訳で、もちろんテレビ番組を見るような時間は全然ありませんでした。
 ですから、今年の憲法記念日関連のNHKの番組はひどかったという話をあちこちで見聞きしても、何しろ「見てないからなあ」状態であったため、基本的には責任をもった発言はしかねるのです。たとえば、以下のような記事を読んだとしても。
 
 
 しかしながら、10年前とはこと違い、今日のネット環境では、見逃した番組の内容を後日検証するということが比較的容易にできることも多いのですよね。
 NHKの憲法記念日関連の番組でも、著作権法適合性に疑問はあるものの、動画サイトで全編視聴でき
るものがあったりするのです。
 たとえば、5月2日の午後10時から放送されたクローズアップ現代「密着ルポ わたしたちと憲法
です。
 さすがに動画サイトについては、見たい人は各自で検索して欲しいと言うしかありませんが、クローズ
アップ現代の番組ホームページでは、「特集ダイジェスト」として、番組の内容がテキストとして再現されており、番組の内容を検証するのにとても便宜です。
 「密着ルポ わたしたちと憲法」で特に私が注目した部分を引用します。
 
(引用開始)
改憲の署名活動に参加している、主婦の白須夏さんです。求めているのは、「家族が国家の基礎であること」を明記することです。1児の母の白須さん。今の社会の閉塞感は、家族よりも個人の権利を優先し
すぎた結果だと考えています。
主婦 白須夏さん
「離婚率も増えていますし、女性もいろいろな事件もありますし、そこが問題だと。個人を優先して、み
んなわがままになっていった結果じゃないかな。
日本人ってどうなっちゃったのかなって。」
個人ではなく家族を土台とした国の形を描くことが、今の日本にとって重要だと考えています。
主婦 白須夏さん
「日本人が日本人のために日本人らしく生きられるために、憲法に(家族について)きちっと明記すべき
だと考えます。」
 
個人の自由よりも国家を重視し、公共に尽くす精神を明確に掲げていくべきだという人たちもいます。
参加者
「ある程度の土台の上に、個人的な自由がある。土台をなくしての自由はありえない。」
参加者
「国の安定が保てないときには、個人の自由はそもそもないと思います。」
参加者
「自由なんて、そうだよね。ひもが付いて、ようやく本当の自由。」
参加者
「今、自由がおう歌できるのは、日本が安定しているから。 だからそこを守るのが第一の目的であって、
自由を守ることが第一目的じゃない。」
(引用終わり)
 
 なぜ上の2つのシーン(連続していますし、説明はありませんが、白須夏さんも後半の一座の中におられたように思います~見間違いかもしれませんが)に注目したかを述べておきます。それは、主婦・白須夏さんが登場するシーンで、これ見よがしに画面に映った書籍2冊のためです。
 
女子の集まる憲法おしゃべりカフェ
まんが 女子の集まる憲法おしゃべりカフェ


 監修者が百地章日本大学教授であることから想像がつくと思いますが、これはれっきとした改憲推進本であり(私自身未読なのですが間違いなくそうです)、この2冊の他にもはっきりと日本会議発行であることが分かるように雑誌「日本の息吹」の表紙をカメラが撮しだしているとおり、インタビューに応じた
白須夏さんというのは、ただの主婦ではなく、こういう公式ホームページも持っておられる方です。
 そして、「4月の活動報告」の中には、「憲法おしゃべりカフェを主催:諌山仁美さんをお迎えしての
勉強会、多くの女性にご参加頂き、憲法改正の重要性を皆で議論いたしました。」という記載があったりします。
 
 『女子の集まる憲法おしゃべりカフェ』が発行されたのが2014年9月のこと。「あすわか」が本格的に憲法カフェを始めたのがいつ頃であったか詳しくは知りませんが、少なくとも、クローズアップ現代のディレクターは、憲法カフェよりも、改憲派憲法おしゃべりカフェの方を取り上げるという選択をした訳です。
 もしかしたら、憲法カフェの方も取り上げたかったのだが、そうすると、番組全体として改憲派の紹介に割く時間よりも、護憲派の紹介に費やす時間の方が多くなってしまうので断念したということだったのか
もしれません。
 何しろ、5月2日のクローズアップ現代は、「改憲派護憲派を平等に扱いましたよ」というエクスキューズはよく伝わってきますが、「それで番組制作者としては何が言いたかったの?」ということがよく分からない番組でした(と後日動画サイトで視聴した感想です)。
 
 ところで、『女子の集まる憲法おしゃべりカフェ』ってどんなことが書いてあるんだ?と気になりますよね。「『憲法カフェへようこそ 意外と楽しく学べるイマドキの改憲』(あすわか編著)を推奨します」2016年4月23日)という記事を書いた私としては興味津々なのです。

 特に、「あすわか」の『憲法カフェへようこそ 意外と楽しく学べるイマドキの改憲』が1200円+税であるのに対し、『女子の集まる憲法おしゃべりカフェ』の方は、半額の600円+税という、とってもお購めやすい価格設定になっていますからね。
 
 「それなら買えばいいのに」と思われるでしょうし、実際、「資料」として近々発注しようかと思っているのですが、その前に「音声による書評」が聴けることに気付きましたので、皆さまにもご紹介しようと思います。
 去る5月5日、TBSラジオの「荻上チキ・Session-22」という番組のオープニング(約15分)で、パーソナリティの荻上チキさんが、この本を「精読」した上での感想をたっぷりと話しておられました(ポッドキャストで録音を聴取できます)。
 
 
 また、この荻上チキさんの「書評」を理解する上で参考となる「アニメ版 女子の集まる憲法おしゃべりカフェ」という気色の悪い動画もご紹介しておきます。ちなみに、このアニメを公開しているのは「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(共同代表:櫻井よしこ田久保忠衛三好達)です。

アニメ「女子の集まる 憲法おしゃべりカフェ」(4分45秒)


 
 荻上チキさんという信頼できる方の紹介によれば、予想通り、とんでもない内容の本であるようですが(アニメを見てもだいたい分かります)、それにもかかわらず、堂々と言うか、ぬけぬけとと言うか、これを広めようとしている勢力が現に存在することクローズアップ現代が伝えるとおりでしょう。
 「憲法おしゃべりカフェ」がどの程度全国で開催されているのか知りませんが、この動きをあなどることはできません
 私たちは私たちで、「あすわか」にだけ憲法カフェをまかしておくのではなく、いたるところで憲法を語る機会を増やしていかねばならず、そのためにも、いかにトンデモ本であろうと、そのトンデモぶりを的確に論破できるだけの準備が必要なのだと思います。