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「自衛隊を活かす会」協力シンポから学ぶ「憲法9条のもとで自衛隊の在り方を考える」(2/28仙台)

 今晩(2016年5月23日)配信した「メルマガ金原No.2465」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自衛隊を活かす会」協力シンポから学ぶ「憲法9条のもとで自衛隊の在り方を考える」(2/28仙台)

 自衛隊を活かす会(自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会)は、安保法制が成立した昨年9月以降、「新安保法制の予想される発動事例の検証」にシリーズで取り組んでおり、昨年12月22日に東京で開催された「南シナ海―警戒監視のための自衛隊派遣をどう見るか」、今年1月30日に札幌で開催された「南スーダン─。駆けつけ警護で自衛隊はどう変わるのか」という2つのシンポジウムについて
は、その動画とテキストを本メルマガ(ブログ)でご紹介済みです。

2016年1月1日
「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「南シナ海―警戒監視のための自衛隊派遣をどう見るか」①動画編(付・札幌企画(1/30)のご案内)
2016年2月14日
「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「南シナ海―警戒監視のための自衛隊派遣をどう見るか」②テキスト編(付・札幌シンポ(1/30)の動画紹介)
2016年3月3日
「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「南スーダン─。駆けつけ警護で自衛隊はどう変わるのか」(1/30@札幌)
 
 その後、同会は既に3回のシンポジウムを重ねており(本年2月、4月、5月)、その内、2月と4月のシンポについては、テキストも最近ホームページにアップされましたので、ご紹介しようと思います。
 まず今日は、2月28日に仙台市で開かれた「2.28仙台緊急集会 憲法9条のもとで自衛隊の在り方を
考える」(於:エル・パーク仙台6階ギャラリーホール)です。
 ただし、このシンポ(集会)は、従前の「自衛隊を活かす会」のシンポとは異なり、同会は「協力」と
いう立場であり、主催は他団体(共催:立憲民主主義を取り戻す弁護士有志の会、野党共闘で安保法制を廃止するオールみやぎの会)でした。
 だから伊勢﨑賢治さんが出ていないのか?については不明というしかありませんが、テキストをお読みいただければ分かりますが、全体の議論のトーンが、ややいつもの「自衛隊を活かす会」シンポとは異な
る印象を受けます。
 それは、伊勢﨑さんが出ていないというだけではなく、元自衛官でも、これまで登壇された方々は、とっても偉い将官級の方々でしたけど、泥憲和さんは違いますからね。泥さん自身、普通の退役自衛官とはだいぶ毛色の異なった方ではあるでしょうが、やはり、その発想は将官クラスとは当然違いますよね。
 なお、このシンポは、南スーダンで初めて「駆け付け警護」の任務を与えられることになるのは、東北方面隊ではないか、という推測がなされる中での地元での開催でしたから、PKO活動と駆け付け警護の問題に力点を置いた議論がなされています。
 それでは、以下に、動画とテキスト(特に印象深い部分の抜粋)をご紹介します。
 
動画 憲法9条のもとで自衛隊の在り方を考える(2時間38分)


テキスト 憲法9条のもとで自衛隊の在り方を考える
(抜粋引用開始)
泥憲和氏(元自衛官・防空ミサイル部隊所属)
 今日は南スーダンのことだけに関してお話をしたいと思います。国連平和協力法(PKO協力法)に基づい
て、2011年から自衛隊の施設部隊がおよそ350人が駐屯しています。その任務は皆さんよくご存知のように道路を作ったりなどのインフラ整備が主な役割です。しかし、今後は報道されておりますように、南スーダンPKOでは安倍首相が「駆けつけ警護」任務に就かせようということで、今、非常に心配をされていると
いうことですね。
(略)
 しかし実は、選挙が終わろうが終わるまいが、政府が何を言おうが、自衛隊は「駆けつけ警護」を出来ないし、住民を守れません。それは、安保法制で改定されたPKO参加5原則の「受け入れ国の同意」ということと「中立の厳守」という2つの理由で、結果的に「駆けつけ警護」が出来ない、住民を守れないとい
う状態になっています。
(略)
 どういうことかと言いますと、「駆けつけ警護」や住民の保護というのは反政府武装勢力から住民や他の各国の部隊を守るというのが前提になっていますが、相手は反政府武装集団だけではないんですね。南
スーダンの政府軍が住民をコンテナ詰めにして窒息死させたりなんていうことをやっています。
(略)
 ですから、こうなりますと自衛隊は政府軍から住民を守れません。なぜならば、政府軍が住民を攻撃します。自衛隊は住民を守るために政府軍に武器を使用出来るか?それはできません。武器使用には現地政府の同意が必要だからです(PKO5原則)。政府軍に対する攻撃を現地政府が認めるはずがないです。そうなると、自衛隊は政府軍に武器を使用出来ない、結果として、政府軍の攻撃を止められず、自衛隊は住民を守れないということになります。つまり、PKO5原則の2番目「受け入れ国の同意」(受け入れ国の政府を含む紛争当事者が平和維持隊の活動に同意している)がない。政府軍を攻撃することに同意はありえな
いから、住民を守れない。
 政府軍からは守れないけれども、反政府軍からの攻撃だけが守れるのかというと、それもダメです。と
いうのは、反政府側にしか攻撃出来ないなら、中立性が失われるからです(PKO5原則「中立の厳守」)。
 ですから、どちらにしても自衛隊は身動きができません。このPKO5原則がある限り、法律を変えてもダメです。そこで今、この原則をどうにか失くしてしまおうというのが政府の考えだろうと私は見ています。自衛隊以外の各国の軍隊は既にそういう立場です。中立性を放棄しています。政府軍とはさすがに戦えないけれども、反政府軍側だけを一方的に攻撃する立場に立っています。中立性を喪失しているので、先
ほどのような事件が起きるわけです。
(略)
 ですから、既に欧米諸国はPKOに部隊を派遣していません。南スーダンに部隊を派遣している国名を挙げますと、ケニア、モンゴル、ウガンダカンボジア、インド、ネパール、バングラディシュ、その他には
中国、韓国、日本だけです。
 西洋諸国は司令部要員として幹部を派遣しているだけです。ですから、自衛隊を南スーダンで「駆けつけ警護」の任務にあたらせるということは、欧米諸国の下請けとして、欧米諸国の代わりに自衛隊が現地
の住民の恨みを買わされる、ということになるということです。
 自衛隊が住民を守れない理由はもう1つあります。というのは、今、派遣されているのは施設部隊で、戦闘職種ではないんです。道路工事とかが専門の部隊です。こう言った専門職種の隊員というのは戦闘訓練をほとんどやっていません。やっても年に1、2回、タコツボを掘って敵が向こうから攻めてくるのを待ち構える、あるいは匍匐前進して一斉突撃というような訓練しかやっていません。市街地で敵と渡り合うとか、住民を防護するまでの訓練は全くやっていないんです。そんなことをやる暇はないんです。それ
だけ難しい専門の訓練をやっていますのでね。
 そして、自衛官は誰でもそうですが、訓練したことしかできません。ですから、派遣している部隊をそ
のまま「駆けつけ警護」や住民防護に使うととんでもないことになります。そんな任務は失敗します。多数の死傷者が出るでしょう。そんなことは自衛隊側としては初めから分かっていたはずなんですが、なかなか官邸にそれが伝わらなかった。今になってようやくわかってきたのかな、という気がします。
 それどころか、自衛官は自分の身も守れません。安倍総理は危険ではない理由として、これから「駆けつけ警護」などの特別の訓練をしていく、これまではできなかった訓練をするから、習熟するので安全が増しますと国会で答弁しました。しかし、訓練をするには訓練用の弾薬、実弾訓練が必要なのですが、自衛隊は今、弾薬予算を減らしています(2015年度は対前年比112億円減)。「ヒゲの隊長」の佐藤正久参議院議員ツイッター上で怒っています。「オスプレイだとか、水陸両用車だとか、「高額輸入品」を買うために弾薬予算が減らされている。こんなことでどうして訓練が出来るんだ」と佐藤さんが言うぐらいで
す。
 もっと恐ろしいことに、TECMAGAというアメリカの会社が日本に進出しました。何を売っているか。「警察、自衛隊海上保安庁、警備会社又それに準ずる組織の皆様へお知らせ!3月から日本国は『ハイブリッド戦争の時代』になります。備えは万全でしょうか?弊社は世界最高レベルの戦闘外傷救護教育を提供します」自衛隊海上保安庁も教育してくれないでしょう?私達が教育してあげますよ。隊員の皆さん、
勉強しに来てくださいね、ということです。
 前例があるんです。自衛隊では市街地戦闘訓練を全くやっていなかったころ、自衛官は個人で戦闘インストラクターに習いに行っていたんです。これが本当の自衛隊の実態です。それで戦闘に参加させられて、殺されるのは自衛官ですから冗談ではないです。憲法9条に対する立場を除いても、これほど出鱈目な
ことに自衛隊を送ってはいけないというのが私の意見です。以上です。
 
谷山博史氏(日本国際ボランティアセンター代表理事)
 ご紹介に預かりました谷山と申します。私は1986年からタイ・カンボジア国境の難民キャンプで活動を始めて、その後、ラオスで3年半、そしてUNTAC国際連合カンボジア暫定統治機構)のPKOが派遣されていたカンボジアで、1992年?1994年の2年間、活動していました。一旦、東京に帰って事務局長をしておりましたが、9.11後のアフガニスタン戦争の後、自分で手を挙げてアフガニスタンに赴任しまして、東部の
ジャラーラーバードを拠点に4年半ほど活動をしていました。
 私はこれまで12年間、現場を歩いてきたんですが、PKO多国籍軍が展開しているところに赴任していることが多かったです。当然の話なんですが、NGOにとって紛争地での人道支援というのは、そもそもミッションですから、PKOが派遣されようがされまいが、自衛隊が派遣されようがされまいが、私達はそこに行く
んです。
 私達は現場で外国軍に守ってもらおうと思ったことは、一度もありません。逆に、外国軍が近づいてきたら逃げる、あるいは外国軍と共に行動しないよう、細心の注意を払うことによって、自分達の安全を確保してきました。徹底した情報管理、情報収集をしながら、特に地元の人達の需要を掴むことを徹底することによって、情報がつぶさに入り、危険なところには近づかないようにすると同時に、本当に危険な時
には守ってもらうということでしか、私達は自分を守る術がないと思ってやっていました。
 今日は南スーダンでの話を中心にということですが、後でアフガニスタンイラクの現場、外国軍が展開されていた現場でどういうことが起こっていたのかということにも触れたいと思います。やはりアフガ
ニスタン戦争、イラク戦争を検証せずに、今後、日本が紛争現場に自衛隊を送るというのは、とても危険なことなので、2つの戦争を検証し、振り返るということは絶対に必要だと私は思っています。
(略)
 これまでの紛争というのは、アフガン戦争、イラク戦争リビアでの戦争も、対テロ戦争という性格が
とても強くなってきています。対テロ戦争は普通の戦争とは違います。敵がどこにいるか分からないような状態の中で、外国軍が入って行って、鎮圧するという状態になっていますので、ちょっとやそっとで終わる戦争ではない。場合によってはずっと終わらない戦争です。交渉も出来ません。相手がテロリストであったら交渉はしないというのが対テロ戦争です。そして対テロ戦争は「住民の中で戦う戦争」です。したがって、外国軍にとっては前線も後方もない、どこから狙われるか分からない、「テロリスト」に対して撃ち返したら住民を巻き込むという、そういう性格の戦争です。
(略)
 南スーダンでの戦争に入る前に、スーダンの紛争について触れたいと思います。私達が南スーダン独立前のスーダン南部に入ったのは2007年からです。2010年まで「自動車整備学校」を開設して、帰還難民などに対する職業訓練を行ってきました。スーダン共和国の北の方には2005年の包括的和平協定の後に入っ
て平和構築の活動をしていました。
 本来であれば、スーダン紛争は2005年の包括的和平協定で解決したはずなんですが、2011年の南スーダン独立の前後に南スーダンと境界を接する州で内戦が勃発しました。私達が活動していたのは南コルドファン州で、州都はカードゥクリと言います。私達の事務所はそのカードゥクリという州都にありました。
突如、内戦が勃発して、事務所にいた駐在代表の今井高樹は孤立してしまったんですね。
 写真をまずお見せしましょう。これがカドクリ市内の爆撃被害の写真です。
 これは農村部で洞窟に避難している親子の写真です。長い紛争を経験してきたスーダンの人達は、戦争
になるとこうやって洞窟に逃げるんです。
 紛争が始まった時に、今井は国連に自分の所在を何回も電話で伝えていますから、当然、PKOにも紛争に今井が巻き込まれて孤立しているという情報は入っていました。しかし、PKOが助けに来てくれた訳ではあ
りません。その時の状況を今井がこのように伝えています。
――「私が緊急退避を行なった際の状況は、政府軍と反政府軍とがともに民兵を動員し、正規兵・非正規兵の区別が曖昧な中で戦闘が行なわれていました。明確な指揮系統はなく、市内では戦闘と同時に、『兵士』が商店や住宅に押し入り、『敵兵』を探索しながら、破壊や略奪行為が行なわれていました。誰が破壊・略奪をしているかもよく分からないまま、危険はNGO国連の施設にまで迫っていました。
平和維持軍(PKO)は戦闘に巻き込まれることを恐れ、部隊の派遣を躊躇したのです。」――
 それはそうですよね。こういう混乱した中でやってくる外国軍であるPKOが、住民であれ外国人であれ、助けようとしたら完全に巻き込まれてしまいます。事務所で孤立した今井は、夜間に10名以上の兵士に襲われたと言いますか、事務所に押し入られて、しばらく拘束された状態になりました。その間に私達の事務所の物品や金銭は全て略奪されました。その時にPKOが突入していたら、今井の命があったかどうか分かりません。私達はこういう時、どういう対応をしたらいいかという訓練をしていますので、結局、今井は拘束されながら相手を刺激しないよう息を潜めていました。そのうち兵士達は去っていきました。最終的
に今井を助けに来たのは国連の非武装の民生機関の車両でした。
(略)
 これまでと違い、南スーダンPKO(UNMISS)の任務も昨年10月に明確に国連憲章第7章に基づいての派遣であるとされました。南スーダンの状態が地域の安全や国際平和への脅威であると認定した上での派遣
に変わっています。そこに日本の自衛隊も派遣されているという状態なわけです。
 先ほど、泥さんからお話がありましたが、南スーダンでは今、民族間の対立、紛争だけではなく、国連PKOに対する攻撃も頻繁に起こっています。ドクターが狙われたり、河川航行中のPKOの船舶が拘束されるということもありました。多くの場合、PKO武装勢力と交渉によって解決に至るケースが多いようです。これまでの紛争を見ていて、PKOが「駆けつけ警護」のような任務をした例というのは見当たりません。多くの場合、司令官が交渉する、或いはいろいろなことに対応出来るように、武装勢力側、政府軍側の双方
に対して、信頼関係を作れるということが司令官に求められる任務だと言われています。
 これらの状況を見て、南スーダンで「駆けつけ警護」ということをもし考えるとすれば、以下のような
ことが言えると思います。
 UNMIS(国際連合スーダン派遣団 United Nations Mission in Sudan)も、UNMISSも(国際連合南スーダン派遣団 United Nations Mission in the Republic of South Sudan:)も、「駆けつけ警護」はしな
かった。これからするんでしょうか?
 「駆けつけ警護」は、対立が紛争になってしまった段階で抑え込む鎮圧ですから、交戦に発展する可能性があります。そして、武装勢力に対して武器を使う場合、武装勢力が政府軍なのか、反政府軍なのか分
からないケースがままあります。
 武装勢力が政府軍だった場合、これは完全に憲法違反です。紛争解決において武力行使をしないというのが憲法の規定ですから。だから、駆け付け警護で武器を使用する場合は、相手が武装勢力であっても紛争当事者ではない場合に限ると日本政府は言っているわけです。それで憲法違反ではないと言っています。法律に書いてある「国及び国に準ずる組織」でない場合は、武力を行使しても大丈夫なんだという机上
の空論を言っているわけですが、それは現場では何の意味もありません。
 紛争当事者を武器を使って鎮圧をすれば、自衛隊そのものが紛争当事者になり、狙われ、それに対してまた反撃をするという循環に陥っていくわけです。そもそも、武器使用は武力の行使です。そして、今の南スーダンは紛争状態です。そもそもそういう状態の中に、自衛隊が派遣されている状態そのものを捉えなければいけない。これは一昨年の段階で議論をしていなければいけなかったのですが、私達は国会で議論されることなく、今まで来てしまったということについて、本当に反省しています。
 
柳澤協二氏(元内閣官房副長官補、自衛隊を活かす会代表呼びかけ人)
 先ほど、谷山さんのお話にありました「国または国準(国に準ずるもの)」です。端から見れば同じこ
とだということなんですが、日本人なりの憲法を理解する上で、日本国憲法には国際紛争を解決する手段として武力の行使を放棄すると書いてあるわけですね。
 国際紛争とは何かと言うと、国際法の主体同士の紛争です。国準とは、相手国に、相手国と同等の政治
力を持った――何と言うのでしょうか――、反政府団体、を国に準ずるものと言っているんですね。
 国準を相手に自衛隊が戦っちゃったらそれは憲法9条の違反になる。しかし、相手が国準でなければ、相手が単なる強盗や盗賊だったら、撃っても別に憲法に違反しないよねという理屈でやってきたわけです

 しかしこれは、例えば、シリアの和平協議が進んでいます。アサド政権とアサドに反対する自由シリア軍が和平協定のテーブルに入ってきている、これらは「国または国に準ずる」相手なんですね。これらと交戦してはいけない。だけど、ISIL(イスラム国)は和平交渉に呼ばれていないんです。ISILが「国または国に準ずる」団体ではないということになると、交戦しても憲法には違反しないということになります
。何かそれって変だよね?結局、やることは一緒でしょ?ということなんですね。
 これからいろいろと大きな矛盾が出てくるはずです。今までもこういう矛盾はあったのですが、私はそ
れに気づかずにずっと防衛官僚をやってきました。なぜ気づかなかったか。それは、1発も撃っていないから、気づく必要がなかったんですね。
 それは確かにいろいろなごまかし的なガラス細工のような理屈はあった。しかし、それが壊れなかったのは、自衛隊が1発も撃たずにこれまでやってきたからなんですね。今度の安保法制では、撃たなければいけない仕事が出てくるわけです。だから、現憲法との矛盾もはっきり出てくる、そして現場の抱える矛
盾もはっきり出てくるということです。
 私は官邸にいた時、陸上自衛隊イラク派遣をずっと統括する立場にいました。1人も死なずに帰ってきたことを、私はまず良かったと思っているのですが、なぜ、それで済んだかということを、小泉総理に記者会見で言って頂いたんです。1人の犠牲者も出なかったのはいいことですが、もっと大事なことは、1発も撃っていないことなんだということなんですね。イラクにいた陸上自衛隊の相手は全部イラク人です。何万人もイラク人がいます。そこで1発撃ったなら、何発返ってくるのかということを考えないといけないということですね。それを考えると私は本当につくづく撃たないでくれて本当に良かったと思います。と同時に、政治の雰囲気も、そんなに無理して撃つような状況になっちゃまずいよね、という雰囲気
があったんです。隊員の皆さんも抑制的に頑張ってくれたんですね。
 やはり、自分の属する組織の雰囲気というものが最後に人間の判断を決めちゃうんですね。そうすると、今の政権のような状況でやっていけば、撃たないで帰ったら怒られるんじゃないかという発想になるんだろうなと思います。これはすごくまずいと思うんですね。イラク以上のことをやったら、絶対に戦死者
が出るというのが私の確信です。だから今、声を上げなければいけないと私は思っているんです。
(略)
 もう1つ、自衛官は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる」という服務の宣誓をしています。一番最初に何と書いてあるか。ここに私は最近こだわっています。こう書いてあるんですね。「私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し」と書いてあ
るわけです。
 そして「日本国憲法及び法令を遵守し」と書いてあります。――最近ではブラックジョークのように聞こえてしまいますが――、そのために「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め」とあり、一番大事なことは「もって国民の負託にこたえる」ということなんですね。総理大臣の命令や、総理大臣の意志にこたえるんじゃないんですね。裏から読めば、国民が本当に負託しているのか。それがな
ければ、命をかけるということにはならないんです。逆にそうでないと死ねないんですね。
 私達が自衛隊を活かす会をやらさせて頂いているのは、憲法9条について、この間も国会で、自民党稲田朋美議員と安倍総理の間で議論があったんです。9条2項で軍隊を持たないと書いてあって、自衛隊の存在を説明しにくいから、それは変えた方がいいのかもしれないというようなことです。私はこれは、
二重の意味でおかしいと思うんです。
 1つは、説明しにくくても、まずそれをきちんと説明するのが現職の総理大臣の責任でしょうというの
が1つ。もう1つは、分かりにくい、国民の理解が得られないから憲法を変えるというのなら、国民が理解出来ない安保法制はどうするの?安保法制も変えるの?という話になるんです。憲法学者の7割が自衛隊に反対している、だから憲法を変えるんだと言っている。そうなると、安保法制は憲法学者の95%が反対している――賛成しているのは3人しかいないわけですから――、そっちをどうするのかという話になります。
 要は今、憲法9条の中身、憲法9条の下でどうして自衛隊がいるのか。それは災害派遣で国民を献身的に助けながら、そして60年間、海外で1発も撃っていない、1人も殺していない、1人も戦死者を出していない、そういう自衛隊の姿を90%の国民が支持している。つまりそれが、生きた憲法9条の内容なんだということなんです。なぜ総理大臣が胸を張ってそう言えないのか――そう考えていないからなんですが――。私達は、そういう自衛隊を国民が支持してきたということを出発点にして、これからも活動していきたいということです。ありがとうございました。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年4月15日
「自衛隊を活かす会」5/18「提言」発表記念シンポジウム&6/20関西企画のお知らせ
※この記事の末尾に、これ以前に私がメルマガ(ブログ)で取り上げた「自衛隊を活かす会」関連のほぼ
全記事にリンクしています。
2015年5月19日
「自衛隊を活かす会」による「提言・変貌する安全保障環境における「専守防衛」と自衛隊の役割」(5/18)
2015年6月21日
「自衛隊を活かす会」三題~6/20関西企画、6/19柳澤協二氏講演(神戸)、5/18提言発表記念シンポ
2015年9月8日
「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「新安保法制にはまだまだ議論すべき点が残っている」