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「私は立法府、立法府の長」は「私は行政府の長」と書き換えられた~国会会議録を考える

 今晩(2016年6月9日)配信した「メルマガ金原No.2482」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「私は立法府立法府の長」は「私は行政府の長」と書き換えられた~国会会議録を考える

 メルマガ「毎日配信」&ブログ「毎日更新」などと公言してこれを守ろうとすると、どうしても日によって内容に濃淡というか、長短というか、はたまた、繁簡の差というか、気合いの入り方に差が出てくる
のはやむを得ないところです。
 そして、ここ1か月以内に書いた記事の中で、自分でも結構頑張ったと思われるものの1つが「「内閣総理大臣である私は立法府の長?」~会議録と動画で振り返る安倍晋三首相の【4事例】」(2016年
5月19日)でした。
 これは、先頃閉会した第190回国会での5月16日衆議院予算委員会における山尾志桜里委員(民進党・無所属クラブ)からの質問に対し、安倍晋三首相が「私は立法府立法府の長であります。」と発言
したことが話題となったのを機に、安倍首相による同種発言をまとめてご紹介したというものでした。
 全部で4つ蒐集した同種事例のさわりの部分のみ再掲します。
 
【事例1/参議院会議録より引用】
第166回国会 参議院 日本国憲法に関する調査特別委員会 第12号
平成19年5月11日 簗瀬進委員(民主党・新録風会)の質問に答えて
安倍晋三内閣総理大臣
「それは、正に参議院のこの委員会の運営は委員会にお任せをいたしておりますか
ら、私が立法府の長として何か物を申し上げるのは、むしろそれは介入になるのではないかと、このように思います。」
 
【事例2/衆議院インターネット審議中継(9分14秒~)より文字起こし】
第190回国会 衆議院 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 
平成28年4月18日 下地幹郎委員(おおさか維新の会)の質問に答えて

安倍晋三内閣総理大臣
「議員歳費につきましては、これはまさに、これはまあ、国会、国会議員の、これ
はいわば権利につく話、関わる話でございますから、まあ、立法府の長である私がですね、それについてコメントすることは差し控えさせていただきたい。是非・・・(議場がざわめき、「行政府、行政府」と注意する者あり)あっ、行政府だ、失礼、ちょっと。」
 
【事例3/衆議院インターネット審議中継(9分10秒~)より文字起こし】
第190回国会 衆議院 予算委員会
平成28年5月16日 山尾志桜里委員(民進党・無所属クラブ)の質問に答えて

安倍晋三内閣総理大臣
「ええ、山尾委員はですね、議会の運営ということについて、少し勉強していただ
いた方がいいと思います。議会についてはですね、私は立法府立法府の長であります。国会は、国権の最高機関として、その誇りをもってですね、いわば立法府とは、行政府とはですね、別の権威として、どのように審議をしていくかということについては、各党、各会派において、議論をしているわけでございます。」
 
【事例4/参議院インターネット審議中継(36分39秒~)より文字起こし】
第190回国会 参議院 予算委員会
平成28年5月17日 福山哲郎委員(民進党新緑風会)の質問に答えて

安倍晋三内閣総理大臣
「議院の事務局がお答えしていることについて、私は、立法府の私としてはお答え
のしようがないわけであります。」
 
 今日、私がなぜこの話題を再度持ち出してきたか言えば、Yahoo!ニュースに掲載された渡辺輝人弁護士(京都弁護士会)による「安倍首相の「立法府の長」発言が国会議事録から消される」を読み、「やっぱりそうなったか」と思ったことがきっかけです。
 
 実際、5月19日に発信したブログで、私はこう書いていました。
「ところで、5月16日と17日の会議録はまだ確定していないようですが、一体どのような記述になる
のか、注目したいと思います。
 4月18日は、その場で注意されて「言い間違い」に気がついた安倍首相が(ごにょごにょとではありますが)一応言い直しましたので、会議録は、言い間違い訂正後のすっきりと整理された表現になっていますが、5月16日・17日の両日とも、誰もその場で間違いを指摘する親切心の持ち合わせがなかったため、首相は言い直しの機会を持てませんでしたから、2007年5月11日の時のように、言い間違え
た内容がそのまま会議録に掲載されるのでしょう、当然。
 もしもこれが勝手に「立法府」→「行政府」に書き換えられていたら、民進党は絶対に黙っていてはいけないですよね、福山さん。」
 
 上にも書いていますが、今年の4月18日、衆議院・環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会での発言(事例2)については、その場で言い直した結果、会議録では以下のように整理されていました。
 
安倍晋三内閣総理大臣「議員歳費につきましては、これはまさに国会議員のいわば権利にかかわる話でございますから、行政府の長である私はそれについてコメントすることは差し控えさせていただきたい。」
 
 実際、いかなる会議録(議事録)でも、発言を1字1句文字に置き換えたなら、とても読めたものではないので、ある程度の整理は当然許されるべきですし、上記4月18日の例などは、ぎりぎり許容できる範囲内かなと思います。
 けれども、問題は5月16日の衆議院予算委員会と翌17日の参議院予算委員会です。
 私が文字起こしした箇所が、実際の会議録でどうなったかを確認してみました。
 
【事例3/衆議院会議録より引用】
第190回国会 衆議院 予算委員会 第20号
平成28年5月16日 山尾志桜里委員(民進党・無所属クラブ)の質問に答えて
安倍晋三内閣総理大臣
「山尾委員は、議会の運営ということについて少し勉強していただいた方がいいか
もわかりません。議会については、私は行政府の長であります。国会は国権の最高機関としてその誇りを持って、いわば行政府とは別の権威として、どのように審議をしていくかということについては、各党各
会派において議論をしているわけでございます。」
※参考(金原による文字起こし再掲)
「ええ、山尾委員はですね、議会の運営ということについて、少し勉強していただいた方がいいと思いま
す。議会についてはですね、私は立法府立法府の長であります。国会は、国権の最高機関として、その誇りをもってですね、いわば立法府とは、行政府とはですね、別の権威として、どのように審議をしていくかということについては、各党、各会派において、議論をしているわけでございます。」
 
【事例4/参議院会議録より引用】
第190回国会 参議院 予算委員会 第22号
平成28年5月17日 福山哲郎委員(民進党新緑風会)の質問に答えて
安倍晋三内閣総理大臣
「院の事務局がお答えをしていることについて、私は、立法府の、私としてはお答えのしようがないわけ
であります。」
※参考(金原による文字起こし再掲)
「議院の事務局がお答えしていることについて、私は、立法府の私としてはお答えのしようがないわけで
あります。」
 
 【事例3】は渡辺輝人弁護士が「国会が公表している動画にも残っている発言を、国会の正式な議事録から消してしまうのは、歴史の改ざんではないでしょうか。」と言われるとおりで、これなら、発言者が「まずいことを言ったな」と思ったら、いくらでも事後的に訂正できるということになりかねません。
 それでは、「私が立法府の長として」という発言が会議録に残った【事例1】とどこが違うかと言えば、この平成19年のケースでは、この首相発言の後、簗瀬進委員が「あなたはそういう意味では行政府の長であります。」とたしなめていますので、先の首相発言を「私が行政府の長として」と書き換えてしまうと、後の簗瀬委員の発言が意味不明になってしまうため、そのまま残さざるを得なかったのかなとも思
います。
 しかし、そうすると、質問者がその場で誤りを指摘したか否かで、訂正できたりできなかったりすると
いうことになる訳で、とても合理的な基準とは言えません。
 
 さらに、もっと微妙というか巧妙なのが【事例4】です。会議録では「立法府の、私としては」と間に「、」が入っています。この「、」は、誰がどういう意図で挿入したのでしょうか。速記官が作成したもともとの原稿(速報)に「、」はあったのでしょうか?(あるわけないと思いますけどね)
 皆さんも動画を視聴して確認いただきたいのですが、何度聞いても、安倍首相は、「立法府の私としては」とよどみなく一続きの流れで発言していますよね。誰が考えても、「立法府の私」であって、「立法
府の」「、」「私」ではないですよ。
 後世、何も知らない人が会議録のこの部分を読めば、首相は、「立法府の(ことについては)、私としてはお答えのしようがない」と答えたのかな(括弧内をつい省略して)と勘違いしかねません。これは巧妙というより悪質です。
 
 そこで、各議院規則において、委員会の会議録についてどのように規定されているのか調べてみました。
 
衆議院規則
 
 第七章 委員会 
  第一節 通則
第六十一条 委員会は、委員会議録を作り、次の事項を記載する。
一~七 略
八 議事
九~十七 略
第六十二条 委員会議録は、委員長及び理事がこれに署名し、議院に保存する。
第六十三条 委員会議録は、これを印刷して各議員に配付する。但し、秘密会議の記録中特に秘密を要す
るものと委員会で決議した部分及び第七十一条の規定により委員長が取り消させた発言については、この限りでない。
 
参議院規則
  
第七章 委員会 
  第一節 通則
第56条 委員会においては、その会議録を作成する。
第57条 委員会の会議録は、委員長又は当日の会議を整理した理事がこれに署名し、事務局に保存する

第58条 委員会の会議録は、印刷して各議員に配付する。但し、秘密会の記録の中で、その委員会において特に秘密を要するものと決議した部分及び第51条により委員長が取消を命じた発言は、これを掲載
しない。
第59条 前3条に定めるものの外、委員会の会議録については、第156条から第158条までの規定
を準用する。
  第十章 会議録
第156条 会議録には、速記法によつて、すべての議事を記載しなければならない。
第157条 国会法に特別の規定があるもの、特に議院の議決を経たもの及び議長において必要と認めた
ものは、これを会議録に掲載する。
第158条 発言した議員は、会議録配付の日の翌日の午後五時までに発言の訂正を求めることができる。但し、訂正は字句に限るものとし、発言の趣旨を変更することができない。国務大臣内閣官房副長官
副大臣大臣政務官、政府特別補佐人その他会議において発言した者について、また、同様とする。
 会議録に記載した事項及び会議録の訂正に対して、議員が異議を申し立てたときは、議長は、討論を用いないで、議院に諮りこれを決する。
 
 参議院規則の委員会の章(第七章)が引用している会議録の章(第十章)の規定は、本会議の会議録についての規定です。
 衆議院規則の委員会の章(第七章)には、本会議の会議録の章(第十五章)の規定を準用するという明文の規定は見当たりませんが、第二百一条「議事は、速記法によつてこれを速記する。」、第二百三条「演説した議員は、会議録配付の日の翌日の午後五時までに、その字句の訂正を求めることができる。但し、演説の趣旨を変更することはできない。」、第二百四条「会議録に記載した事項及び会議録の訂正に対して、異議を申し立てる者があるときは、議長
は、討論を用いないで議院に諮りこれを決する。」などは事実上準用されているのではないですかね。
 これ以上、どういう場合であれば「字句の訂正」として許され、どこからは「趣旨の変更」となって許
されないとして取り扱われてきたかは、各議院の先例集(先例録)にあたってみるしかないでしょう。
 
 さて本題に戻れば、【事例3】において、「私は立法府立法府の長であります。」が「私は行政府の長であります。」に、「いわば立法府とは、行政府とはですね、別の権威として」が「いわば行政府とは別の権威として」と、それぞれ修正されていることをどう理解するかです。
 まず第一に、委員会の会議録に責任を負うのはおそらく委員長だろうと思うのですが(衆議院規則第62条)、以上のように修正された形で各議員に配布(同規則第63条)されたのか、それともいったん配布された会議録について、発言者(内閣総理大臣)から「字句の訂正」の求めがあったのかについては、おそらく前者でしょうね。後者
であれば、それなりにニュースになるでしょうから。
 そうすると、衆議院予算委員会竹下亘委員長(自民党/故竹下登元首相の弟)が事務局に修正を指示
したということでしょうか?
 些末なことかもしれませんが、「ええ、山尾委員はですね、議会の運営ということについて、少し勉強していただいた方がいいと思います。」が「山尾委員は、議会の運営ということについて少し勉強していただいた方がいいかもわかりません」となっているのも気になります。もともと、安倍首相の発言自体、語尾不明瞭なため、私が「と思います」と聴き取った部分の正確性については正直自信がありません。けれども「かもわかりません」はないでしょう。少なくともこの部分の語頭が「か」ではなく「と」であることは誰でも聴き取れると思います。発言を勝手に書き直してはいけません。
 
 【事例4】における「立法府の、私としては」の不必要な「、」の挿入はどうなのでしょうか。岸宏一参議院予算委員会委員長(自民党)は、この「、」を認識していたのでしょうか。
 
 ここで、とりあえず私の結論を書いておきます(何の権威もありませんけどね)。
 
【事例3】
「少し勉強していただいた方がいいと思います。」→「少し勉強していただいた方がいいかもわかりませ
ん」 
  不可(勝手な事後的書き換え)
「私は立法府立法府の長であります。」→「私は行政府の長であります。」
  不可(「字句の訂正」の域を超えている)
「いわば立法府とは、行政府とはですね、別の権威として」→「いわば行政府とは別の権威として」
  可(その場で発言者自身が言い直していると解される)
 
【事例4】
「私は、立法府の私としてはお答えのしようがないわけであります。」→「私は、立法府の、私としては
お答えのしようがないわけであります。」
  不可(意図的な誤導の可能性すらある)
 
 とりあえず、今日のところはここまでとします。これ以上の検討を進めるためには、先例集(先例録)等、各種文献にあたるなどの基礎調査が必須になるでしょうから、とても私の手に負えません。
 
 最後に、国会における会議録というものを考える上で、非常に重要な質疑を、5月17日開催の参議院予算委員会で、福山哲郎議員(民進党新緑風会)が行っています。【事例4】での安倍首相発言「立法府の私」も、その質疑の中で飛び出したものですが、そのようなこととは別に、この部分は是非お読みいただきたいと思います。併せて、そこで問題とされている昨年9月17日の参議院・我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会の、問題の「会議録」も再掲しておきます。
 
第189国会 参議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会
平成二十七年九月十七日

同会議録第21号(PDFファイル)
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(抜粋引用開始)
○委員長(鴻池祥肇君)……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)
 〔委員長退席〕
  午後四時三十六分
     ────・────
本日の本委員会における委員長(鴻池祥肇君)復席の後の議事経過は、次のとおりである。
速記を開始し、
○我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(閣法第
七二号)
○国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律
案(閣法第七三号)
○武力攻撃危機事態に対処するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(参第一六号)
○在外邦人の警護等を実施するための自衛隊法の一部を改正する法律案(参第一七号)
○合衆国軍隊に対する物品又は役務の提供の拡充等のための自衛隊法の一部を改正する法律案(参第一八
号)
○国外犯の処罰規定を整備するための自衛隊法の一部を改正する法律案(参第一九号)
○国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律案(参第二〇号)
国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案(参第二三号)
○周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律及び周辺事態に際して実施
する船舶検査活動に関する法律の一部を改正する法律案(参第二四号)
右九案を議題とし、
○我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(閣法第
七二号)
○国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律
案(閣法第七三号)
右両案の質疑を終局した後、いずれも可決すべきものと決定した。
なお、両案について附帯決議を行った。
     ─────・─────
 
第190回国会 予算委員会 第22号
平成二十八年五月十七日(火曜日)午前八時五十五分開会

(抜粋引用開始)
福山哲郎君 こうやって前向きに答えていただくと本当に地域の人喜ぶと思います。本当にありがとう
ございます。
 少し話題を変えます。
 あの安保法制の強行採決から、十、十一、十二、一、二、三、四、五、八か月たちました。私は今でもあの強行採決は断じて認めていません。日本の民主主義、立憲主義をないがしろにしたことへの怒りは日本国中にまだ充満をしています。我が党の吉川沙織議員が議運の中で懸命にあのひどい強行採決について
追いかけていただいていますが、今日少しお話をしたいと思います。
 九月十七日の安保特別委員会で強行採決をされて、その未定稿の議事録はこういう形でずっと出ていました。聴取不能です。速記中止、議場騒然、聴取不能。しかし、一か月たって、連休の合間に突然公式な議事録が国民の目の前に出てまいりました。それには何となっていたか。見てください。急に、いろいろなものがあって、先ほどの聴取不能のところから、「本日の本委員会における委員長復席の後の議事経過
は、次のとおりである。」、「速記を開始し、」と書いてあります。
 参議院の事務局、「速記を開始し、」と、速記が中断しているにもかかわらず、あと議場騒然になった
のに、「速記を開始し、」という文言を入れた、補足をした例が過去参議院の議事録にございますか。
○事務総長(中村剛君) お答えいたします。
 会議録末尾の補足掲載中に速記を開始した旨の記録があるものは、昨年の通常国会、九月十七日の平和
安全特別委員会の例、一件だけでございます。
福山哲郎君 私はあの場にいましたが、どこに附帯決議があったかよく分かりません。これ、附帯決議
も実は残っています。
 誰が提案したのか分からない、誰が賛成したのか分からないような附帯決議を補足掲載した例はありま
すか。
○事務総長(中村剛君) お答えいたします。
 附帯決議の動議提出者の氏名や会派が、速記が聴取不能となり会議録上明らかでない例につきましては
、昨年の通常国会、九月十七日の平和安全特の例、一例でございます。
福山哲郎君 外部の方をお招きした地方公聴会について、派遣委員の報告が委員会になされないまま議
案が採決された例はありますか。
○事務総長(中村剛君) お答えいたします。
 地方公聴会のための委員派遣が行われた後、派遣委員の報告が行われないまま議案の採決が行われた例
につきましては、昨年の常会の九月十七日の平和安全特の例、一例のみでございます。
福山哲郎君 外部の方をお招きしての地方公聴会の報告がされないまま議案が採決された例は、去年の
一回きり。
 じゃ、その地方公聴会の報告が行われていないのに議事録に掲載をした例はありますか。
○事務総長(中村剛君) お答えいたします。
 地方公聴会のための委員派遣を行った場合において、派遣委員の報告を聴取しないで地方公聴会速記録
を会議録に掲載した例につきましては、昨年の常会、九月十七日の平和安全特、一例でございます。
福山哲郎君 これは議会のことなので国民の皆さんよくお分かりにならないかもしれませんが、ここ、速記中止というふうに言われているということは、議会が一回休憩になったということです。つまり、簡単に言うと、野球でいうとタイムが入ったということです。新たにプレーボールという宣言がないにもか
かわらず、いつの間にか、誰か分からないけれども、プレーボールが鳴りましたということにして、さも整然と議事が進んだように書かれているのがこの議事録です。それも、九月の強行採決から十月の一月、ずっと聴取不能のままだったのに、連休の谷間に突然出てきたら、国民の前に出てきたらこういうことになっていました。これはまさに事実をねじ曲げる、歴史に対して背くことになると思います。
 こういった議事録は、私はもう一度やり直すべきだと思いますが、総理はいかが思いますか。
内閣総理大臣安倍晋三君) これは、参議院の運営のことでありますから、参議院で御議論をされ、
お決めになっていると思います。
福山哲郎君 総理、何か都合が悪いことがあると国会のことだと言われるのはやめた方がいい。誰が考えても、国民は総理の指示で国会で無理やり強行採決をしたと思っています。そして、都合のいいときだけ国会のことだと言うことは、やっぱりそれは御都合主義過ぎます。それは、悪いけど、国民に対する説
明にはなりません。
 じゃ、国会が決めることならば、自民党の国対に、この議事録についてはもう一度精査し直せと、そう
いう指示を出していただけませんか。
内閣総理大臣安倍晋三君) 国会のことについては国会に任せる、これは、もう自民党、これずっと
結党以来そういう方針でやってきているところでございます。
福山哲郎君 じゃ、この安保法案の強行採決について、総理は一切国会に指示を出しておられないんで
すね。採決をしろとか、採決をこの国会中にやれとか、指示を一切出しておられないんですね、国対に。
内閣総理大臣安倍晋三君) もちろん政府としては、この法案が必要というふうに考えておりました
から、できるだけ早く成立をさせたいという中において答弁を重ねてきたところでございます。
 しかし、議事が熟し、そして終結をしたという判断をされるのは、これはまさに委員会でありますから、
委員会の皆さんがこれは誇りを持って独自に決定されてきたことでございます。
福山哲郎君 事務総長にお伺いします。
 この議事録が十月に掲載されたときに、特別委員会の委員長並びに委員は、理事は存在しましたか。
○事務総長(中村剛君) 昨年の通常国会は九月二十七日に閉会してございますので、当日、九月十七日
の会議録が出た時点では特別委員会は存在しておりません。
福山哲郎君 つまり、国会の判断だと、総理は国会の判断だと言われましたが、国会の委員長も理事も
存在していないんですよ。
 じゃ、誰が判断しているんですかね、これ。誰が判断しているんですかね。総理、どうお考えですか。
内閣総理大臣安倍晋三君) 院の事務局がお答えをしていることについて、私は、立法府の、私とし
てはお答えのしようがないわけであります。
福山哲郎君 つまり、委員長も存在していないのに、いきなり連休のさなかに一か月たってこういう議
事録が国民の前にさらされると。本当に事実をねじ曲げていると私は考えます。
 もっと申し上げれば、我々はもっと審議してほしいと言っていました。そうしたら、あの強行採決、休
憩している、速記が中止になっているにもかかわらず、与党の議員がどおっと入ってきて乱闘騒ぎになりました。私は、休憩だったので委員長のところに歩み寄って、何を次の議題にしましょうかと言いに行ったら、いきなり来られました。まさにひどい状況の採決でございました。
 やっぱりこういう国会は駄目ですよ。民主主義を壊すと私は考えます。総理も、総理でありますが議会
人でもあられると思います。議会人としてどうお考えになりますか。
内閣総理大臣安倍晋三君) 私も千回以上答弁をしてまいりました。防衛大臣も二千回答弁をしてま
いりました。これはかなり長い時間を掛けて議論をしたんだろうと思います。その中で円満に採決されることが望ましいわけでございますが、例えば委員長が委員長席に閉じ込められるという事態というのも、
これはやはり異常な事態ではないかということは申し上げておきたいと、このように思います。
 静かな雰囲気の中でですね、これはやはり選挙の結果我々は選ばれ、そしてそれぞれ議席が配分されています。その中で、政党に対しても、それぞれ少数政党であっても質問の時間が十分に取れるように我々
も配慮をしている中において終結をしたわけであろうと、このように思っております。
福山哲郎君 私たちは会期末まで審議してほしいと申し上げていましたが、強行採決されて、その次の
日と次の日、総理は何されていました。
内閣総理大臣安倍晋三君) それは休暇を取っておりました。
福山哲郎君 何をされていました、二日間。強行採決をした次の日と次の日です。
内閣総理大臣安倍晋三君) これは土日でありますから、私はゆっくり静養して体調を整えることが
言わば総理大臣としての義務でもあろうと思っているところでございます。
福山哲郎君 なぜゴルフをしたと言えないんですか。何で言えないんですか。
 私は本当に、国民を本当に私はばかにした態度だと思いますよ、あの強行採決の中も雨の中で国会に何人もの方が来ていただいていましたので。本当にこの強行採決は私はいまだに認めたくないと思いますし、議事録はこういう状況だと。これは日本の民主主義の、立憲主義の歴史を本当に私は壊すものだと思い
ます。
 ほかもありますが、次行きます。
(引用終わり)