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「選挙に行こう」と呼びかけることは集団示威運動か?~市民連合わかやま有志弁護士から和歌山県警に対する申入書(2016年7月1日)

「選挙に行こう」と呼びかけることは集団示威運動か?~市民連合わかやま有志弁護士から和歌山県警に対する申入書(2016年7月1日)
(配信日:2016年7月4日)
 
 今日(7月4日)、週刊ビッグコミックスピリッツ小学館)No.32(7月18日号)が「漫画史上初![日本国憲法全文]小冊子付きプレミア号」と銘打ち、全44ページの充実した小冊子付きで発売されました。
 私も早速近くのコンビニで買い求めましたが(税込360円)、売切店の続出が予想されますので、目に付いたら迷わず購入されることをお奨めします。

 今日は、この話題を書こうかとも思ったのですが、表現の自由や公正な選挙運動をめぐる重要な問題が和歌山で起きていますので、とりあえずこの問題についての報道、及び弁護士有志(私も名前を連ねていますが)から和歌山県警察本部への申入書をご紹介しておきます。
 実は、この件は、突き詰めて考えていくと、県条例の憲法適合性まで行き着かざるを得ないのではないかという予感も働くのですが、今はとてもそこまで検討している余裕がありません。
 何が起こったのか、そして、市民や弁護士有志が何を問題としているのかを知っていただければと思います。
 
和歌山放送ニュース 2016年07月02日 14時22分
警察の投票呼びかけ中止に弁護士ら抗議

(引用開始)
 
和歌山市内で「選挙に行こう」と呼びかけていた男女の活動を中止させたのは違法だとして、安全保障関連法の廃止を求める市民団体の担当弁護士が、きのう(1日)和歌山県警察本部に抗議しました。抗議したのは、安全保障関連法の廃止を求めている「市民連合わかやま」の豊田泰史(とよだ・やすふみ)弁護士らです。
 豊田弁護士によりますと、団体の男女およそ20人が、きのうの午前中、和歌山市内の量販店前で投票を呼びかけていたところ、和歌山西警察署の警備課長らにビデオなどで撮影され、集団による行進などに関する和歌山県の条例に違反することを理由に、中止させられたということです。
 豊田弁護士らは、きのうの夕方、和歌山県庁で記者会見を開き「条例で選挙運動は除外されており、示威(じい)行為にも当たらない。県警の対応は違法だ」と批判しました。
 一方、抗議を受けた県警察本部は「選挙運動ではなく、全員で声を合わせ『選挙に行こう』などと叫んでいた点が集団示威に当たる。適正な職務執行だった」とコメントしています。
(引用終わり)
 
毎日新聞 和歌山版 2016年7月2日
警告で県警に申し入れ 選挙活動の市民団体

(引用開始)
 和歌山市内の歩道で選挙活動をしていた市民団体メンバーに、県警が県条例違反に当たると警告したのは誤っているなどとして、市民団体「市民連合わかやま」の弁護士らが1日、直江利克県警本部長宛ての申し入れ書を県警に提出した。
 記者会見した豊田泰史弁護士らによると、女性市民グループ約20人は1日午前10時45分ごろ、歩道から通行人らに向かって「市民の力で政治を変えましょう」などと呼び掛けていた。これに対し、和歌山西署が、許可なく示威運動をすることなどを禁じた県条例に違反するとして警告。その際、写真やビデオ撮影もしたという。
 申し入れ書では女性らの行為を、「選挙の啓発活動で許可を必要とせず、示威運動にも該当しない」と指摘。県警の対応について、「条例の解釈・運用を誤っており、選挙活動の自由などを侵害するおそれが強い」と主張している。
 県警警備課の増田雅美次席は事実関係を認めた上で、「適正に職務を執行したと考えている。(申し入れ書については)意見として承りたい」と話した。【倉沢仁志、最上和喜】
(引用終わり)
 
 上記報道に引かれている申入書は、既に1日の記者会見でマスコミに配布しているものですから、以下に全文引用します。
 
(引用開始)
                                     平成28年7月1日
 
和歌山県警察本部長 直 江 利 克 殿
 
          安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合わかやま
                    代表 弁護士 豊 田 泰 史
                        弁護士 山 﨑 和 友
                        弁護士 上 野 正 紀
                        弁護士 阪 本 康 文
                        弁護士 小野原 聡 史
                        弁護士 金 原 徹 雄
 
              申        入       書
 
 本日午前10時45分頃発生しました事案について、以下のとおり申し入れ致します。
 上記日時頃、和歌山市広瀬所在のコーナン前歩道上で20名程度の女性市民グループが、「市民の力で政治を変えましょう」「選挙に行きましょう」などと道行く市民に呼びかけ行動をしていたといころ、突然、和歌山西警察署の警備課の〇〇課長以下4名の署員の方が近づき、この女性達に対し、「上記行動が集団行進や集団示威運動に関する条例に違反する」として警告し、直ちにその活動をやめるよう求めてきました。
 この女性達は、訳が分からないまま恐怖心を覚え、すぐに上記呼びかけを中止しましたが、彼女らの行動は、現在行われている参議院議員通常選挙の期間において、自らの政治的意見を述べたり、選挙の啓発活動を行ったりしていたもので、上記条例6条2項により、許可を要しない行為であります。そもそも、同条例4条によって、警告を発しその行為を制止出来るのは「公共の秩序を保持するため」に限定されているところ、彼女らが行っていた行為は前記のとおりであり、これが示威運動に該当するようなものでないことは誰の目から見ても明らかであり、公の秩序を害するようなものではありません。
 さらに、〇〇氏らは、上記活動を行っていた人々の写真撮影やビデオ録画をされていましたが、これは最高裁判決からも許される行為ではありません。
 以上により、今回和歌山西警察署警備課において行った行為は、上記条例の解釈・適用を誤っているだけでなく、参議院議員選挙期間中における市民の選挙活動の自由並びに表現の自由を侵害する惧れが強く、今後、かかる問題が生じないよう善処を求めるとともに、上記違法な撮影による映像等を破棄されるよう申し入れ致します。
(引用終わり)
※注 引用に当たり西警察署警備課長の名前は伏字としました。
 
(参考条文)
集団行進及び集団示威運動に関する条例
昭和33年7月12日 和歌山県条例第23号

(許可を要する行為)
第1条 道路、公園その他公共の用に供せられる場所で、集団行進を行おうとするとき、又は場所のいかんを問わず集団示威運動を行おうとするときは、あらかじめ和歌山県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次の各号に掲げるものは、この限りでない。
(1) 学生、生徒その他の遠足、修学旅行及び体育競技
(2) 婚礼、葬儀及び宗教上の祭礼
 
(違反行為に対する措置)
第4条 警察本部長又は警察署長は、第1条の規定、第2条の規定による記載事項及び前条第1項ただし書の規定により付けられた条件に違反して行われた集団行進又は集団示威運動の主催者、主催団体の代表者及び参加者に対して、公共の秩序を保持するため警告を発し、その行為を制止し、その他その違反行為を是正するについて必要な限度において所要の措置をとることができる。
 
(注意規定)
第6条 この条例は、第1条に定めた集団行進又は集団示威運動以外の集会を開催する権利をいかなる方法においても禁止し、又は制限するものではない。また公安委員会、警察職員その他公共団体の職員に対して集会、政治運動、プラカード、出版物その他の印刷物若しくは文書を監督し、又は検閲する権限を与えるものでもない。
2 この条例は、公職の選挙に関する法令に何等の影響を及ぼし、又は選挙運動中における政治的集会若しくは演説に関し許可を要するものとするものではない。