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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

『Our Book 日本国憲法』を綴じ込んだ週刊ビッグコミックスピリッツの心意気

憲法 文化
 今晩(2016年7月5日)配信した「メルマガ金原No.2501」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
『Our Book 日本国憲法』を綴じ込んだ週刊ビッグコミックスピリッツの心意気

 小学館が発行する週刊マンガ雑誌「ビッグコミックスピリッツ」と聞いて思い出すのは、まず何より『めぞん一刻』(高橋留美子)ですね。

 調べてみると、同作は1980年11月号(創刊号/創刊当時は月刊誌だった)から1987年19号まで連載されたとありますが、私は、スピリッツが月刊や月2回刊だった当時に手に取った記憶はなく、『めぞん一刻』の連載も終盤にさしかかる1985年の暮れころから、毎週発売日を楽しみに待ちながら購入するようになりました。もちろん、一番の目当てが『めぞん一刻』であったことは言うまでもありません。
 その年の秋から、東京の荻窪に1人で下宿しながら司法試験の受験浪人として過ごし始めた私にとって、将来に対する不安(本当に司法試験に合格できるのか?という)に押しつぶされそうになる日常にともった希望の灯りが、ビッグコミックスピリッツ連載の『めぞん一刻』でした。
 そして、五代くんと響子さんの物語がハッピーエンドに向かって大きく動き出した2016年秋、私はようやく司法試験に合格したのでした。
 『めぞん一刻』の連載終了後しばらくして、雑誌本体を定期購読することはなくなりましたが、それでも『YAWARA!』(浦沢直樹)や『F』(六田登)は、完結まで単行本で追いかけましたね。
 しかし、その後、弁護士の実務に就くころから、スピリッツだけではなく、マンガ、コミックの世界とはほぼ縁が切れた状態となりました。
 
 その後、ビッグコミックスピリッツを意識することなどめったになかった私が、久しぶりに同誌のことを思い出したのは、『美味しんぼ』(原作:雁屋哲、作画:花咲アキラ)における鼻血描写と同作の休載をめぐってでした。
 
 前置きが長くなりました。私がビッグコミックスピリッツを「メルマガ金原」の2501回目の題材にしようと考えたのは、昨日(7月4日)発売された週刊ビッグコミックスピリッツNo.32(7月18日号)が「漫画史上初![日本国憲法全文]小冊子付きプレミア号」と銘打ち、全44ページの充実した小冊子付きで発売されたためです。私も、昨日早速近くのコンビニで買い求めました(税込360円)。

 この特集号については事前告知も行われ、取り上げたマスメディアもかなりありました。以下に、朝日新聞の記事を引用しておきます。
 
朝日新聞デジタル 2016年6月29日16時58分
コミック誌スピリッツ、付録に憲法 漫画家のイラストも

(引用開始)
 小学館は、7月4日発売の青年コミック誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」の付録に、憲法の全文を載せたとじ込み冊子「日本国憲法全文」を付ける。同社は「憲法公布から70年。参院選では憲法改正が争点の一つに浮上する中、改めて日本を考えてもらう機会になれば」としている。
 冊子はA5判で44ページ。憲法の各条文を掲載したページと、同誌に連載する13人の作家が「日本の情景」をイメージして描いた見開きのイラストを交互に掲載。吉田戦車さんは「東日本大震災で被害にあった海辺の町」、若杉公徳さんは「熊本・大分復興チャリティーライブ」、浅野いにおさんは「ある日の放課後」と題したイラストを寄せた。
 坪内崇編集長は「読んでみたいと思ってもなかなか機会がない憲法。選挙権が18歳に引き下げられ、若者に近い立場のコミック誌として企画した。政治的な意図はない」と話している。(塩原賢)
(引用終わり)
 
 「政治的な意図はない」かもしれませんが、事前にこの記事を読んだ私が直ちに思い出したのは、同じ小学館から30年以上にわたって刊行され続けている(初版は1982年、値下げした軽装版が2013年)、その名も『日本国憲法』という写真と憲法本文が交互に配された本です。1980年から1985年まで存続した写真雑誌「写楽」が編集名義人となっており、初版刊行当時も、軽装版刊行当時も大きな話題を集めたものでした。
 2013年に軽装版が出た際、版元の小学館のホームページに掲載された出版意図を引用してみましょう。
 
〈書籍の内容〉『日本国憲法』、まず読んでから考えよう

(引用開始)
 1982年、大きな活字と29葉の写真とともに、日本国憲法(昭和22年5月3日施行)の原典を、「読みやすく楽しく手に取れるように」と企画・発行され、これまで37刷92万部のベストセラー&ロングセラーの単行本『日本国憲法』を、軽装版にして、求めやすい価格で刊行する企画。
 現行憲法制定から66年、私たちが拠り所としてきた「日本国憲法」を改正しようということが、この夏の参議院議員選挙の争点となりつつある。まずは96条の改正条項を改正し、そののち自主憲法を制定しようという動きである。戦争の放棄を明記した「日本国憲法」は世界に誇る平和憲法として知られてきた。その誇るべき条文も含めて、所与の憲法は、現在の世界状況にそぐわないという。国家権力を規定し、基本的人権を保障した現行憲法を、ここで変えるのか変えないのか。これはとりもなおさず日本という国の存在そのものが問われているのである。日本のこれからを考えるのに、まず「憲法」にはなにが記されているか読んでみてから考えることが肝心なのでは。読んで、考えて、また読んでみる。一家に一冊、必備の『日本国憲法』、まずは軽やかなデザインの本を手に取ってみてください。
定価本体500円+税 発売日2013/6/20 判型/頁A5判/128頁
(引用終わり)
 
 この『日本国憲法』軽装版が刊行されたのが3年前の参議院議員選挙の前でした。そして、今年の7月、再びめぐってきた参議院議員選挙、しかも選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて初めて実施される国政選挙、その直前に若い人たちによく読まれている週刊ビッグコミックスピリッツに綴じ込む方法により、「憲法の各条文を掲載したページと、同誌に連載する13人の作家が「日本の情景」をイメージして描いた見開きのイラストを交互に掲載」した小冊子を世に送り出そうという企画は、同社が34年にわたって刊行してきた『日本国憲法』の精神を引き継ぐものと言うべきでしょう。
 
 それから、この号は、単に日本国憲法全文と連載作家によるイラストを掲載した付録の小冊子を付けただけではなく、「丸ごと日本入ってます。」と題した力の入った特集を組んでいます。
 巻頭グラビア10ページは、“Discover the Spirits of Japan 18歳の主張”と題し、「全国各地の18歳アイドルとそれぞれの地元の良さを、6人のカメラマンが思いを込めて引き出しております。アイドルたちも、真剣に憲法や選挙について率直な思いを語ってくれました。」ということで、以下のアイドルが取り上げられています。
 加藤夕夏さん @大阪府大阪城
 菊原結里亜さん @愛媛県伊予市
 小林れいさん @埼玉県/さいたま新都心
 新井ひとみさん @宮城県/松島
 新木こころさん @中州/屋台
 山木梨沙さん @東京都/東京タワー
 
 さらに、条文だけでは「どこから読んでいいのか分からない」という人のために、「『日本国憲法のポイント』を、憲法問題に詳しいノンフィクション・ライターの神田憲行さんに聞いてみました。」という解説ページが4ページにわたって続きます。立憲主義憲法制定権力についての解説もあり、どこまで読者にとって分かりやすいかはともかく、編集者の意気込みのほどが伝わってきます。
 
 最後に、「スピリッツ・イン・ニッポン!ニッポン・イン・スピリッツ!?」と題した「憲法特集口上」を引用します。
 
(引用開始)
 
皆さんは「日本」や「日本人」と聞いて、どんな情景を思い浮かべるでしょうか。
 故郷、東京、富士山、四季、和食・・・・今号表紙の波瑠さんは「日本人は、慎み、優しさ、思いやりの人」だと言います。7月10日(日)予定の参院選で選挙権を持つ一番若い18歳。ご当地アイドルの皆さんが日本にどんなイメージを持っているかは、これまでご覧いただいた通りです。
 そんな日本と日本人の暮らしの大切な約束事が決められているのが憲法です。
 今年は憲法公布から70年、参院選では憲法改正が争点の一つとして取りざたされています。普段は触れる機会の少ない憲法ですが、『しあわせアフロ田中』の田中のゲストハウス開業も『土竜の唄』の玲二の潜入捜査にも実は憲法が深く関わっています。“私たちの本”―憲法をこの機会に読んでみませんか?
 今回スピリッツは連載作家の皆さんと一緒に「日本国憲法全文」を読みやすい一冊の本に綴じ込みました。連載陣は“今の日本”として何を描いたのでしょう。ぜひ皆さんのイメージと重ね合わせてみてください。
 イラストに導かれ、一度くらいは憲法を全て読んだという経験をしてみませんか?
 日本をもっと考えてみませんか?
(引用終わり)
 
 ここまで素晴らしい特集の内容をご紹介する文章を読んでくださった方が、近くのコンビニや書店に赴かれてはたしてこのスピリッツを入手できるのか?私には分かりません。ネット通販では既にプレミア価格がついているようです。
 私のような付録目当ての者はともかくとして、普段からスピリッツを購読している若い人たちの内1人でも多くの人が、切り取った付録「日本国憲法」を読んでくれることを(編集者ともども)願っています。仮に7月10日の参院選に間に合わなかったとしてもです。
 
 なお、ご紹介した「口上」に「“私たちの本”―憲法」とあったとおり、付録の小冊子のタイトル「日本国憲法」の下には「Our Book」と書かれていました。
 
(付記)
 週刊ビッグコミックスピリッツ憲法特集号を入手できなかったけれど日本国憲法の条文を読んでみたいという方は、ネットでいくらでも読めますが、まずは総務相法令データベースのものをご紹介しておきます。
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2013年9月24日
読むためのテキスト『日本国憲法』2種類(小学館&講談社学術文庫)のご紹介

スピリッツ日本国憲法・表紙