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京都脱原発訴訟第4回原告団総会(7/24)における井戸謙一弁護士講演「脱原発訴訟の現状と展望」を視聴する

 今晩(2016年7月25日)配信した「メルマガ金原No.2518」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
京都脱原発訴訟第4回原告団総会(7/24)における井戸謙一弁護士講演「脱原発訴訟の現状と展望」を視聴する

 島崎邦彦東京大学名誉教授(前原子力規制委員会委員長代理)が、大飯原発の基準地震動を入倉・三宅式によって計算すると過小評価となる可能性が高く、再計算すべきだと主張されていることについては、ここ1週間以内に3回も(!)メルマガ(ブログ)で追いかけてきました。
 
 
 もともと、2011年3月28日に「メルマガ金原」の配信を始めた当初1年ほどの間は、連日何本も配信し、しかもその大半が原発問題をテーマとしたものでした。最近、ブログを読んでくださるようになった方には信じられないかもしれませんが。
 それが、徐々に原発問題を取り上げる頻度が低下し、主要なテーマが憲法問題に移行していったのは、日本国憲法をあからさまに敵視する
政権が権力を掌握したためであることは言うまでもありません。
 けれども、本来注目すべき原発問題をスルーしてしまっているという引け目は常に感じていたのですが、個人が目を行き届かせることの出来る範囲など非常に限られたものですから、「仕方がない」と自分に
言い聞かせていた部分があります。
 それが、ここ1週間、島崎邦彦氏という1人の地震研究者の勇気ある行動に感銘を受けてフォローしていると、関連する情報が目に入ってきやすくなるのですよね。
 
 ということで、今日も原発問題を取り上げます。ご紹介するのは、昨日(7月24日)開催された京都脱原発訴訟原告団の第4回総会における井戸謙一弁護士による記念講演をIWJ京都が中継したアーカイブ動画です。地方局のツイキャス中継の映像は、とりあえず会員登録しなくても視聴できるようです。音声はクリアに録音されており、非常に聴きやすいです。
 井戸謙一弁護士(滋賀弁護士会/1954年3月生)は、金沢地方裁判所で部総括判事(いわゆる裁判長)として在勤中の2006年3月、北陸電力志賀原発2号機の運転差止を命じる画期的判決を言い渡したことで知られており(運転中の原発の稼働停止を命じた唯一の判決ですが高裁で破棄されました)、3.11直後の2011年3月末、大阪高等裁判所裁判官を最後に退官して弁護士登録され、滋賀県彦根市
に事務所を構えられました。
 その後、様々な原発訴訟に代理人として参加されてきましたが、とりわけ井戸弁護士が弁護団長を務めておられる以下の事件において、画期的な仮処分決定を勝ち取られたのは、記憶に新しいところです。
 今年の3月9日、日本の裁判所が、史上初めて運転中の原子力発電所の設置主体に対して「運転してはならない」という仮処分決定を言い渡しました(判決ではなく仮処分は即時に効力を生じます)。裁判所は大津地方裁判所(山本善彦裁判長)、設置主体は関西電力、運転が禁止された原発は高浜原子力発電所3号機(運転中)及び4号機でした。
 井戸弁護士は、昨日の講演で、高浜原発仮処分決定のみならず、日本における現在の原発裁判の全体的な見取図を、分
かりやすく語っておられます。
 IWJ京都による動画は2本に分かれています。講演は約1時間、その後の質疑応答が約15分です
Ustream録画1/2)。
 
京都脱原発原告団(大飯原発差止訴訟)第4回原告団総会 ―記念講演 井戸謙一・弁護士 2016.7.24
Ustream録画1/2
11分~ 主催者挨拶 竹本修三氏(京都脱原発訴訟原告団長、京都大学名誉教授)
18分~ 出口治男氏(京都脱原発弁護団長)
23分~ 記念講演「脱原発訴訟の現状と展望」 井戸謙一氏(弁護士、福井原発訴訟(滋賀)弁護団長)
1時間22分~ 質疑応答
Ustream録画2/2
23分~ 報告「大飯原発差止訴訟の経過と今後の方向」 渡辺輝人氏(弁護士、京都脱原発弁護団事務
局長)
45分~ 「原告団世話人からの報告と訴え」 吉田明生氏(京都脱原発訴訟原告団事務局長)
56分~ 質問・意見
1時間15分~ 決議文提案・採択
 
 ところで、昨日4回目の総会を開いた京都脱原発訴訟が京都地裁において、どのような裁判を闘っているのかを知っていただくため、その「請求の趣旨」を訴状(第一次訴訟)から引用します。
 
(引用開始)
1 被告関西電力株式会社は、福井県大飯郡おおい町大島1字吉見1-1所在の大飯原子力発電所1号機
、2号機、3号機、4号機を運転してはならない。
2 被告国と被告関西電力株式会社は、連帯して、原告らに対し訴状送達の日から1項記載の大飯原子力
発電所各号機を使用停止するまで1月あたり各金1万円を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決を求める。
(引用終わり)
 
 京都脱原発訴訟原告団長の竹本修三先生(京都大学名誉教授)は、原告勧誘のために各地を飛び回り、昨年3月8日に和歌山城西の丸広場で開催された「フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2015」にもゲストスピーカーとして登壇し、大会後のデモ行進でも増山麗奈さん(参院選おしかったですね)とともに先頭を歩まれ、さらに原告募集のブースも出展されました。
 このような努力の甲斐もあり、和歌山からも何人もの原告がこの訴訟に参加しておられます。
 京都脱原発訴訟原告団のホームページに、昨年3月8日、西の丸広場における竹本修三団長によるスピーチの原稿が掲載されていますので、京都脱原発訴訟についての理解を深めていただくため、主な部分を引用します。
 
◆原発再稼働は認めない!和歌山集会にて 竹本修三原告団長の訴え
(抜粋引用開始)
2015 年3 月8 日「フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2015」(3/8和歌山城西の丸広場)
原発再稼働は認めない。すべての原発廃炉に!
竹本修三(大飯原発差止京都訴訟原告団長、京都大学名誉教授)
◆ご紹介いただいた竹本でございます。本日は、この大きな集会にお招きいただき、発言の機会を与えてくださった金原徹雄先生や江利川春雄先生をはじめとする実行委員会の皆さまに、厚く御礼を申し上げます。
◆さて、ここ和歌山県は、日高町那智勝浦町周辺及び日置川(ひきがわ)町で原発設置計画がもちあがったときに、そのすべてに「NO!」の回答を出し、県内に原発を作らせませんでした。この和歌山県民の皆さまの見識の高さに、私は深く敬服いたしております。いま、和歌山の皆さんと私たち京都の仲間が、
全ての原発廃炉にするために共に闘っていくことができることを、大変嬉しく存じます。
◆皆さま、よくご存じのように、昨年5月21日に福井地裁で樋口英明裁判長から「大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない」という原告勝訴の歴史的判決が言い渡されました。この判決文のなかに、ひとたび原発事故が起これば、250km以内の人に被害が及ぶ可能性があることが指摘されています。日本の原発から250kmの範囲を、コンパスで描いてみますと、日本のほとんどがこの範囲に入ります。僅かに
北海道の東部と、沖縄県がここから外れるだけです。
◆和歌山の皆さんも、若狭湾原発群や浜岡原発から250kmの圏内に入ります。あなた方も原発事故の当事者なのですね。ですから、今日お集まりの皆さんは、原発の問題を他人事でなく、自分の問題として考え、自分のできる範囲で原発ゼロへの意思表示をしたいという思いで来られておられるのだろうと思います
。私も同じ思いで、今日、ここに参りました。
(略)
◆昨年(2014年)、福井地裁で大飯原発差止の判決が出されましたが、これ1つだと、それ以前の「もんじゅ」訴訟や「志賀原発」訴訟のように、上級審でひっくり返される可能性が高いです。そこで京都地裁でも福井地裁と同様に原告側の主張を認める判決が出て、2つの地裁で原告側が勝訴すれば、それを高裁でひっくり返すのが難しくなるでしょう。そこからすべての原発廃炉にする道筋が開けると考えております。
◆また、昨年11月27日に大津地裁では、「大飯原発、高浜原発の再稼働差し止め仮処分申し立て」に対して、山本善彦裁判長から申し立て却下が言い渡されてしまいました。しかし、その決定内容には、基準地震動の策定方法に関して関電から何ら説明がないことや住民の避難計画の策定が進んでいないことなども述べられていて、裁判長が原発稼働に強い危惧を抱いていることが読みとれます。そのうえで、こんな危険な状態なのだから「原子力規制委員会がいたずらに早急に、再稼働を容認するとは到底考えにくい」として、申し立てを却下したのです。この判決が出てすぐに、私は新聞社からコメントを求められ、「裁判長の判断の原子力規制委員会が早急に再稼働を容認するとは考えられないという見通しは、楽観的すぎる」と返事をしました。その後の原子力規制委員会の動きをみますと、まさに私が指摘した通りの経緯を辿
っています。
◆今年2月12日に、原子力規制委員会は、高浜原発3・4号機が新規制基準を満たすと認めて、再稼働を承認しました。規制委員会の新規制基準には、「原子力施設の設置や運転等の可否を判断するためのもの」で、「絶対的な安全性」を確保するものではない、と書かれています。つまり、規制委員会は、「安全審査」ではなく、基準に合っているかどうかの「適合性の審査」を行うものであり、原発稼働にお墨付きを与えるための委員会なのです。ですから、規制委員会は、電力会社に対して対応可能な程度の改善策を提示し、電力会社の対応を見たうえで、「運転にあたり求めるレベルの安全性は満足しています」という審査書を出すことは、あらかじめ予想されていました。これは規制委員会と電力業界のなれあいの茶番劇であ
り、こんなことを許していては、無辜の国民は救われません。
◆話は戻りますが、昨年5月21日に福井地裁で出された判決文の地震原発に関する個所には、次のように書かれています。「地震大国日本において、基準地震動を超える地震大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できる」。これは、当日、福井判決の出る一時間前に私が京都地裁で陳述した内
容と軌を一にするものだったので、大変心強く思いました。
(略)
◆私達は、2012年に1,107名の原告で大飯原発(1~4号機)の運転差し止め訴訟を起こしました。その後、2013年に856名で第二次提訴、2015年1月29日に730名で第三次提訴を行い、現在の原告は合計2,693名となっています。数は力なので、2015年中にさらに1,000人の新規原告を増やして第四次提訴をしたいと考えております。今日お集まりの皆さんも、ぜひこの趣旨にご賛同いただき、原告のひとりになっていただきたいと思います。
◆原告になっていただくには5,000円の参加費が要りますが、そのほとんどは訴訟の際の収入印紙代に消えてしまい、弁護士費用も捻出できません。私も個人としては、5,000円の参加費はいささか痛いですが、そ
れが可愛い孫の世代に負債を残さないで済む道筋につながると思えば、仕方ないかと思っております。
◆本日、西の丸広場に大飯原発差止京都訴訟のブースも設けられておりますので、皆さんどうかお立ち寄
りください。
(引用終わり)
 
(参考書籍)
 竹本修三原告団長は、「固体地球物理学・測地学」を専門とする研究者でもあるそうなのですが、一体どういう研究分野なのか、理系に疎い私にはさっぱり分かりません。けれども、どうやら地震学とも縁
がありそうだ、という位の直感は働きます。
 その竹本先生が、今年の4月、『日本の原発地震津波・火山』(マニュアルハウス)という新著を
刊行されました。著者が執筆意図を語った文章を引用しておきます。
 

(引用開始)
筆者の専門は固体地球物理学・測地学なので、国内の測地学会や地震学会のみならず、国際測地学及び地球物理学連合などで議論された資料を改めていろいろ調べた結果、地震・火山大国のニッポンにおいて、原発稼働は土台ムリ筋であるという強い確信を持つに至った。それ以来、孫達の世代に辛い思いをさせないために、原発稼働反対の運動に携わっている。第1章「地震大国ニッポン」は、国内の測地学会や地震学会のみならず、国際測地学及び地球物理学連合で見聞きした話を日本が地震大国であるとしてまとめてみた。第2章「原発地震」以降の章は、京都地方裁判所で行われている大飯原発差止京都訴訟において、被告関電及び国と対峙している原告側の主張について、原告団長としての考えを示したものである。これらの記述は、日本のすべての原発稼働の是非を考える上で、普遍性のある問題点だと考えている。本書が日
本において原発稼働の是非を考える多くの人々に、広く読まれることを期待する。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2013年9月18日
井戸謙一氏講演会「ふくしま集団疎開裁判から見えてきたふくしまの現状」
2014年10月6日
あなたも京都脱原発訴訟(大飯原発差止請求)の原告になりませんか?~第三次提訴原告募集中!
2014年10月21日
竹本修三先生(脱原発京都訴訟原告団長)奔走する~第三次原告募集中!(10/19神戸集会にて)
2014年12月21日
とりあえず1/8まで「京都脱原発訴訟」第三次原告なお募集中!(付・5/21福井地裁判決と12/15安倍記者会見)
2016年3月9日
高浜原発3号機(運転中)、4号機の運転禁止を命じた大津地裁仮処分決定の大きな意義