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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

由良登信(ゆら・たかのぶ)弁護士の「自民党「憲法改正草案」を斬る!」~動画とレジュメによる受講のすすめ

 今晩(2016年8月1日)配信した「メルマガ金原No.2525」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
由良登信(ゆら・たかのぶ)弁護士の「自民党憲法改正草案」を斬る!」~動画とレジュメによる受講のすすめ

 7月10日の参議院議員通常選挙の結果、改憲勢力が衆議院に続き参議院でも2/3以上の議席を確保することとなり、いよいよ明文改憲が具体的な政治日程にのぼる公算が高まっています。
 もちろん、一口に改憲勢力と言っても、日本国憲法に対するスタンスには各党によって差異はあり、具体的な「改正発議」を行うための条文のすり合わせにはそれなりの時間を要するでしょうが、2014年の集団的自衛権行使を容認した閣議決定、2015年のいわゆる安保関連法の成立を目の当たりにした国民としては、結局、自民党が主導して他の政党はついていくんでしょう、と考えざるを得ず、マスコミ各社が自民党公明党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党の4党(その他無所属の一部)をひっくるめて改憲勢力と称することには合理性があると言わねばなりません。
 
 そこで、改憲勢力を主導する立場にある自民党が2012年4月27日に発表した「日本国憲法改正草案」が、当面の批判の対象であり続けることになります。
 これまでも、私たちは、自民党が政権に復帰した2012年12月以来、同党改憲案の問題点・危険性を1人でも多くの国民に知ってもらおうと、相当な努力を重ねてきましたが、これからは、質的にも量的にも、今までの常識を覆す憲法学習会の継続的、波状的な開催が必要だと思います。
 あすわか(明日の自由を守る若手弁護士の会)や各地の弁護士9条の会、青法協や自由法曹団の各支部など、あらゆる組織が、自民党改憲案の反立憲ぶりへの理解を訴える学習会に講師を派遣することを重点活動目標として取り組むべきでしょう(既に取り組んでいるところも多いでしょうが)。
 そして、このムーブメントが成功するためには、弁護士だけが頑張ってもどうにもならないのであり、いかに、これまでの殻を打ち破り、多彩な層の人々が参加する学習会を企画できるかが死活的に重要です。
 
CIMG6411 というような運動論を踏まえ、早急に和歌山県下100箇所で自民党改憲案を批判する学習会を開催しよう!と呼びかけている弁護士がいます。3週間前の7月10日まで、参議院議員選挙和歌山県選挙区の野党統一候補として県下を駆け巡っていた由良登信(ゆら・たかのぶ)弁護士その人です。
 落選から1週間も経たぬうちに、7月31日開催の緊急勉強会「自民党憲法改正草案」を斬る!」の講師を務めるというチラシが出回っていた由良さんは、その後、私が聞いただけでも他に2箇所(もしかしたら増えているかも)の学習会講師を引き受けたそうで、和歌山県下100箇所学習会構想の実現に意欲満々です。
 
 その由良さんが、予定通り、昨7月31日(日)午後2時から、JR和歌山駅前の新橘ビル8階会議室において、市9条センター(憲法9条を守る和歌山市共同センター)主催による緊急勉強会「自民党憲法改正草案」を斬る!」の講師を務めました。
 私自身は、ブログやFacebookなどで告知に協力したものの(由良登信(ゆら・たかのぶ)弁護士の“復活”~予告7/31緊急勉強会・自民党「憲法改正草案」を斬る!/2016年7月16日)、最初は聴きに行くつもりはありませんでした。普通、弁護士が他の弁護士の講演をわざわざ聴きに行くことはありませんからね。
 それよりも、私として、今後県下各地の学習会への講師派遣依頼が増えた場合(増えてもらわねば困ります)、講師を務める若手弁護士こそ由良さんの講演を聴くべきだと思い、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」の定例会議の席上、由良さん自身が7月31日勉強会のチラシを配った際、「是非若手には聴きに行って欲しい」と呼びかけたのですが、残念ながら効果はありませんでした。みんな予定が入っていたのでしょう。
 結局、由良さんから「来ないの?」と声をかけられ、何となく行かないと悪いような気になった私だけが(由良さん以外の弁護士としては)参加することになりました。最初は行かないつもりでしたが、やはり聴いて良かったですね。同じように、自民党改憲案の問題点を解説する学習会の講師を頼まれても、講師の個性によって、論じる内容や論じ方は全然違うということがよく分かりました。
 
CIMG6414 昨日の学習会の模様は、参院選の間、市民連合わかやま・動画班チーフとして大活躍された小谷英治さんが撮影してYouTubeにアップしてくださることになり、由良さんからも詳細なレジュメのデータを提供してもらえることになりましたので、まとめて今日のメルマガ(ブログ)でご紹介することとしました。
 全部で14ページのレジュメと約1時間40分の動画(質疑応答部分はカットされています)をセットにして、是非あなたも由良登信弁護士の講演を受講してください。
 また、昨日、新橘ビル8階会議室を立錐の余地なく埋め尽くした聴衆の皆さんにとっては、復習教材として活用していただけると思います。
 それでは、以下に、受講用の教材及び参考資料をご紹介します。
 
【動画教材】
由良登信 自民党憲法改正草案」を斬る 20160731 憲法9条を守る和歌山市共同センター緊急勉強会(1時間39分45秒)
 
 
【講師作成のレジュメ/印刷される場合はこちらからどうぞ】
(1)「自民党「憲法改正草案」を斬る!」(PDFファイル12頁)
(2)「自民党改憲草案「第九章 緊急事態」条項の危険性」(PDFファイル2頁)
 
【参考資料 自民党日本国憲法改正草案】
(1)自由民主党「日本国憲法改正草案」(現行憲法対照) 平成24年4月27日(決定)(PDFファイル縦書30頁)
(2)自由民主党「日本国憲法改正草案Q&A 増補版」(PDFファイル横書88頁)
※昨日の緊急勉強会では、この横書ファイルの現行憲法対照部分が配布されました。
 
【参考資料 同じテーマで書かれた他の弁護士(金原)のレジュメ】
2016年6月15日
自民党「日本国憲法改正草案」批判レジュメ~2016年参院選直前ヴァージョン
「自民党改憲案を斬る~いま主権者がなすべきこと~」(PDFファイル14頁)
 
 

2016.7.31
憲法9条を守る和歌山市共同センター
 
              自民党憲法改正草案」を斬る!
 
                       弁護士 由 良 登 信(ゆらたかのぶ)
                    
1 戦後最大の憲法の危機!
 今、戦後最大の憲法の危機を迎えている。
 憲法改正を企てている側も、憲法を変えられるとしたら今しかないと考えている。
 英BBC(公共放送)「日本の政治における地盤をさらに固めた安倍政権は、今後、憲法改正への動きを一段と進めるだろう。」「次のステップは平和主義の憲法を改正するかどうかの国民投票を行うことだ」(2016.7.11 NHK NEWS)
(1)衆議院参議院の会派別議員構成(改憲派議員が3分の2以上を占める)
 憲法改正の発議が可能な議員構成に衆・参ともなった。
(2)安倍晋三の思想の危険性(タカ派、歴史に逆行する思想)
 ア 「憲法前文には、敗戦国としての連合国に対する詫び証文のような宣言がある。」「アメリカは、自らと連合国側の国益を守るために戦争の放棄の条項をつくった。」(「美しい国へ」) 
 →ここには、日本の侵略戦争に対する反省の気持ちがない。日本国民310万人、アジアの2000万人の命が奪われたことへの謝罪の気持ちがない。侵略戦争であったことも認めようとしない。
 イ 「文化・伝統・自然・歴史を大切にする国=日本にふさわしい憲法を制定する。」(2006年9月1日政権構想)  
 → 日本国憲法の3原理を認めず、戦前の価値観から憲法を作りかえようとしている。
 ウ 「世界とアジアのための日米同盟」を強化し、日米双方が「ともに汗をかく」体制を確立する。
 エ 「戦後レジームからの脱却」が日本にとって最大のテーマである。「『日本を、取り戻す。』これは戦後の歴史から、日本という国を国民の手に取り戻す戦いであります。」(「新しい国へ」)
  「憲法改正は(私の)『歴史的使命』だ」
(3)財界の戦略(「希望の国、日本」2007年1月1日 日本経団連
 ・「現行憲法が一度も改正されずにきたなかで、規定と現実の乖離、国際平和に向けた主体的活動の制約など、多くの問題が生じている事実を直視しなければならない。」(P87)
 ・「自衛隊や集団的自衛権憲法上の位置づけが不明確であり、実効ある安全保障政策の展開が制約されている。・・・・自衛隊が国際社会と協調して国際平和に寄与する活動に貢献・協力できる旨を、憲法上、明示する必要性が高まっている。」
 ・「経団連は、2010年代初頭までに憲法の改正の実現をめざす。」(P88)
(4)アメリカの安全保障戦略と日本の役割
 ・「21世紀の国際関係における平和と繁栄を突き崩す可能性をもつ最も重要な地域はアジアだ。アジアは、アメリカの繁栄にとって死活的に重要な地域である。」「米日同盟は、アメリカの地球的安全保障戦略の中心だ。」(2002年ブッシュ国家安全保障戦略)
 ・(アーミテージ報告)
  「日本が集団的自衛権を禁止していることは、同盟間の協力にとって制約となっている。この禁止事項を取り払うことで、より密接でより効果的な安全保障協力が可能になる。これは、日本国民のみが下せる決定である。」「憲法9条は、日米同盟の邪魔だ」
 
2 憲法って何?(憲法が変わるとどうなるの?)
 「あたらしい憲法のはなし」(文部省作成、昭和22年から昭和27年の春まで中学1年生の社会科教科書として使用された)には次のように書かれています。
 「憲法とは、国でいちばん大事な規則、すなわち、「最高法規」というもので、その中には、だいたい二つのことが記されています。その一つは、国の治めかた、国の仕事のやりかたをきめた規則です。もう一つは、国民の一番大事な権利、すなわち「基本的人権」をきめた規則です。このほかにはまた憲法は、その必要により、いろいろなことをきめることがあります。こんどの憲法にも、これからは戦争をけっしてしないという、たいせつなことがきめられています。」
(1)憲法は、国民が、国家権力をしばる鎖です(近代立憲主義の考え方)
 国家権力を制限して、国民の人権を保障するもの(強い者(多数者)から弱い者(少数者)を守るもの)
憲法前文「日本国民は、・・・・ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」(国民が憲法制定者=主権者)
 憲法99条「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」
(※ 国民が義務を負う者の中に入っていない。)
(2)憲法は、国の最高法規です
 憲法97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」
憲法98条①「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」
憲法81条 「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」
(3)日本国憲法は、それまでの人類の進歩の成果の上に立ってつくられました。
 憲法97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」
前文「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法はかかる原理に基くものである。」
(4)日本国憲法侵略戦争の反省の上に立ってつくられました。
(5)日本国憲法は3つの基本原理を柱にしてつくられています。
 ① 平和主義(←軍国主義)「天皇は陸海軍を統師す」
 ② 国民(人民)主権(民主主義)(←天皇主権)「天皇は統治権を総覧す」
 ③ 基本的人権の尊重(←天皇の臣民)権利は法律の範囲内で天皇から与えられる。
13条 個人の尊厳・幸福追求権(※ 国家・社会より個人が尊重される)
 25条 生存権
 ※ この日本国憲法の3原理を「改正」することは、理論上認められない。
 
3 自民党日本国憲法改正草案」の内容(問題点)
(1)立憲主義の崩壊
ア 「前文」の全面書きかえ(まず、国家ありき)
「日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するために、ここに、この憲法を制定する。」
 イ 102条で、国民に憲法尊重義務を明記し、天皇憲法尊重擁護義務をはずす。(国家権力を縛るためのルールから、権力の側が国民を縛るルールへと転換!)
 ウ 憲法にたくさんの国民の義務を書き込んでいる。
  現行憲法の3つの義務(納税の義務、勤労の義務、保護する子女に普通教育を受けさせる義務)に加え、新たに10の義務を国民に課す。
  ① 国防義務(前文3項)
  ② 日の丸・君が代尊重義務(3条)
  ③ 領土・資源確保義務(9条の3)
  ④ 公益及び秩序服従義務(12条)
  ⑤ 個人情報不正取得等禁止義務(19条の2)
  ⑥ 家族助け合い義務(24条)
  ⑦ 環境保全義務(25条の2)
  ⑧ 地方自治負担分担義務(92条の2項)
  ⑨ 緊急事態指示服従義務(99条3項)
  ⑩ 憲法尊重義務(102条1項)
 エ 憲法改正のための発議要件(96条)を各議院の総議員の3分の2から2分の1に変えて、憲法を改正しやすくする。
(2)憲法前文の削除・書き直し
 ア 憲法前文は、憲法の根本原理を示し、憲法の諸規定の解釈の導びきとなるもの。
 イ 戦後の日本の原点であった不戦の誓い「日本国民は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」を削除。→アジアの国々は、不戦の誓いを降ろした日本を受け入れようとしないだろう。再び軍事国家となるのではないかという懸念を生じさせる。
 ウ 平和的生存権を削除。(世界で初めて、平和のうちに生存することを憲法上の権利に高めた規定)
 エ 国家主権の尊重、対等平等な国家関係を前提とした国際協調主義の文章(前文第3段)を削除。
 オ 国民主権・民主主義の宣言がほとんど消えている。
自民党改憲案の前文〉
・「日本国は、・・・・天皇を戴く国家であって」
 ・日本国民に国と郷土を守る義務をうたう
 ・「和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」
  →少数意見が和を乱すとして非難を受ける。
→ 自立・家族による支えの強調により国の社会保障の怠りを免罪する。
 ・「日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。」
  →憲法は国家権力をコントロールするものではなく、国民が天皇を戴く国家を子孫に継承するよう求めている。
  →まったく異質な憲法に変えてしまうもの!
(3)戦争の放棄(第二章)
日本国憲法9条
1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 │
 憲法9条によって守られてきたこと(憲法9条は「宝」)
※「国家には本来自衛権が認められており、自衛の目的のために必要な限度の自衛力をもつことは9条のもとで許され、自衛隊は9条2項が禁じる戦力にあたらない。」(政府S29年見解、S55.12.8提出政府答弁書
自衛隊が「憲法9条2項の戦力ではない」という建前から出てくる限界(これまでの政府答弁)⇒しかし、安倍政権は、立法と閣議決定で、これらをなし崩しにきている。
① 海外派兵(武力行使目的で武装した部隊を他国に派遣)
② 集団的自衛権の行使(自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を実力をもって阻止すること)
③ 国連の平和維持活動を行う国連軍で、その目的・任務が武力行使を伴うものに参加
④ 攻撃的・壊滅的破壊能力を持つ兵器の所有
⑤ 徴兵制(13条、18条からも)
⑥ 交戦権(敵国領土への積極的攻撃、敵性船舶のだ捕など)
⑦ 先制攻撃
⑧ 非核三原則
⑨ 武器輸出禁止3原則
⑩ 軍事費支出GNP1%枠
 △また、自衛のための実力の行使については、次の3要件に該当する場合に限られる(S60.9.27提出政府答弁書
① 我が国に対する急迫不正の侵害があること(わが国に対する武力攻撃が発生したこと)
② これを排除するために他に適当な手段がないこと
③ 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
自民党改憲案〉
 ア 章の名称を「戦争の放棄」から「安全保障」へ変え、戦争しない国から「戦争をする国」へ変える
 イ 憲法9条2項を削除!それに代え、「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と規定し、集団的自衛権憲法に書き込む。
 ウ 「国防軍」という軍隊を持つ。
  国防軍は、保持できる軍事力について無制約
国防軍が行う活動
※国会による統制が不十分
① 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保する活動
    ※集団的自衛権行使も含む
  ② 「法律の定めるところにより」
   ア、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動
     ※国連の活動に限定されない
   イ、公の秩序を維持する活動
     ※ 治安活動により、国民に銃口が向けられる。
   ウ、国民の生命若しくは自由を守るための活動
     ※ 海外における邦人救出を口実にした派兵も
   エ 国民に「国と郷土を守る」義務をうたう(前文)
     ※ 前文の平和的生存権を削除!
   オ 国防軍の機密保持に関する法律をつくる(9条の2④項)
     ※ 特定秘密保護法
   カ 国防軍に審判所(軍法会議)を置く(⑤項)
   キ 9条の3で国に領土保全等を義務づける。
   ク 第9章に「緊急事態の宣言」の規定を新設。
(4)国民主権の後退
 ア 天皇を「日本国の元首」との明文を置く(1条)。
 イ 日章旗を国旗、君が代を国歌と定め、国民に尊重義務を課す(3条)。「元号」を憲法に明記(4条)
 ウ 天皇の国事行為に内閣の「助言と承認」が必要とされているのを、「内閣の進言」に変えた(6条4項)
 エ 天皇ができる行為を「その他の公的な行為を行う」(6条5項)と拡大。
(5)国民の基本的人権保障の後退   
 ア 権利は、「公益及び公の秩序に反しない限り」での保障とされ、権利の制約が拡大できることにする(12条)(13条)。→基本的人権は国家といえども侵すことのできない人間の生来の権利(自然権)という考えの否定。
 イ 13条「個人として尊重される」を「人として尊重される」に書き換える→「個人」とは国家・社会に対する概念であり、「個人」と書いていることが重要であり、これを「人」とすることは本来の意味を失う。
 「国家」や「公の秩序」、「公益」が、個人の上の価値として考えられている。
 ウ 12条 「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」という文言を新設。
 エ 21条 表現の自由(集会・結社・出版その他一切の表現の自由)に、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」(2項)を新設。
 ※ 政党についての規定(64条の2)を新設→政党規制に道を開く。
 オ 20条で、政教分離をゆるくする(3項)。
 カ これまでとは逆に、22条の営業の自由については、「公共の福祉に反しない限り」を削除。
※前文に「活力ある経済活動を通じて国を成長させる」と記載
 キ 国民に「国旗及び国家尊重」義務(3条2項)を課すことで、「思想・良心の自由(19条)が制約される。
 ク 公務員について「全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより」労働基本権の全部又は一部を制限できると定めた(28条2項)。
 ケ 97条の削除
(6)憲法改正手続を緩和
 現行96条「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認(国民投票において、その過半数の賛成)を経なければならない。」
  ↓
自民党改憲案〉
 改憲手続をやりやすく「各議院の議員の過半数で発議」できるようにする(100条)
△ 憲法改正手続の改正を先行させるという企みについて(その本質と狙い)
 96条改正派の主張と反論
 1 Q「世界的に見ても改正しにくい憲法だ。日本は一度も改正できてないが、戦後アメリカ6回、フランスは27回、イタリアは15回、ドイツは58回も改正している」「新しい人権を定める必要がある」
 A 他の国も憲法改正手続は、厳格な要件を置いている。
 ☆ 日本国憲法が改正されなかったのは、国民に改正要求がなかったから。(むしろ改正を阻止してきた)
 ・世界的に見ても、今でも先進的(朝日新聞
 ・他の国(ドイツ)の憲法には、法律レベルで規定されるような細かいことまで基本法で規定しているため、頻繁な改正が求められるが、日本国憲法は、人権とそれを支える統治機構の本質的な内容に絞り込んだ規定となっている。
 ・新しい人権は、13条、25条で対応できる。
 2 Q「国民に提案される前の国会での手続を余りに厳格にするのは、国民が憲法について意思を表明する機会を狭められることになり、国民の意思を反映しないことになる」。
 (橋下徹)「国民に改正案の是非を問うこともできない状態を放置していいのか。」
 A 憲法は最高法規であり、国の根本(骨格)を示しているので、万人の十分な納得のもとに行われなければならない
 ☆ 憲法の定める基本価値秩序を時の多数派による安易な手段(法律と同じような通常の手続)により変えられるのを守る。=憲法は国家権力を縛るもの。それを、権力をとった者(多数派)が容易に変えられるようにするのは、立憲主義憲法の自殺行為だ。
 3 改正要件(発議要件)の緩和がもたらすもの
 ・その時の多数者の意向で、少数派の基本的人権が制約されてはならない。
 ・国の骨格をころころと変えては混乱する(憲法の安定性を貫く必要)。
  ※ 本当の多数派でもない政党により発議すべきではない。
  ※ 「有効投票数」の過半数、では国民の過半数ではない。最低投票率も定めていない。投票率50%なら、20%台の賛成で改正承認とされてしまう。
 ・国民投票運動のとき有料意見広告野放し
 ・議席数に応じて構成される広報協議会がつくる改憲案のPR紙が全戸配布される。
  ※ そもそも、このように改正を容易にする改正規定の変更は、憲法改正の限界を超えているのではないか。
 4 憲法96条改正の目的
 ・次々に改憲を発議してゆく。
 ・改憲派の自信のなさ(国民の意向に反していることの自覚)、弱さの表れ。
 ・「裏口入学みたい」「姑息」
  説得して2/3の賛成を得るべきで、それができないから手続を変えるというのは邪道だ(小林節慶応大名誉教授)
 ・「手続部分だけ先行するのは邪道だ。憲法のあり方、国家像を明示して議論すべきだ」(小沢一郎、H25年4/8)
(7)「第9章緊急事態」の新設
 ア 武力攻撃、内乱等の社会秩序の混乱、大規模な自然災害、その他法律で定める緊急事態において、内閣総理大臣が緊急事態の宣言を発することができる(98条1項)。
 ※ 国会における民主的統制が不十分。総理大臣の独裁の危険!
 イ 内閣は、法律と同一の効力を有する政令を制定できるほか、財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をできる(99条1項)。
 ウ 何人も・・・・指示に従わなければならない(99条3項)
 →憲法は停止してしまう!権力を内閣総理大臣に集中するもの。(非常に危険)
 →大規模災害への対応は法律の整備で対応十分
 →日本国憲法の立場-参議院の緊急集会で対応
 
4 改憲論者はもっともらしく言うけれど
(1)「押しつけられた憲法を自分たちの手でつくり直す。」って言うけど・・
 ・国民は歓迎した。誰が押しつけられたと感じたのか。
憲法25条も追加した。1条も国民主権が明確になるよう修正した。制定後、吉田首相が「憲法を変える意思はない」とマッカーサーに回答した。
 ・68年も経って今さら。国民が憲法を守り通してきた。憲法改正は誰が求めているのか。
(2)「70年ほど前につくった憲法は時代に合わない。新しい時代に合う憲法を。新しい人権もとり入れる。」って言うけど・・・  
・今でも新しい内容。世界の宝。改憲論者は戦前へ戻ろうとしている。
 ※ スイスの「軍隊のないスイスをめざす」グループ(3万人以上のメンバー)日本国憲法9条を知り「こんなすばらしい憲法があったのか」
 ※ 世界市民平和会議(世界100カ国以上のNGO参加)1995年5月「公正な世界秩序のための10の基本原則」採択
 その第1原則「各国議会は、日本国憲法9条のような、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである。」
 ※ 2000年5月 国連ミレニアムフォーラム
  「平和・安全保障フォーラム最終報告書」
 「すべての国が、日本国憲法9条に述べられる戦争放棄の原則を自国の憲法において採択する。」
憲法13条・25条はドラえもんのポケット(新しい人権を取り出せる)
 ※ 自民党改正草案の「新しい人権」は、権利として不十分な規定の仕方をしているので、意味がない。
(3)「自衛隊がすでに存在しているんだから、憲法でも認めるようにした方がよい。」って言うけど・・・
・9条を改正すると、自衛隊は今の自衛隊ではなくなる(現状を認めるものではない)。
(4)「日米同盟を重視するのが国益にかなう。」って言うけど・・・
・アメリカの先制攻撃戦略、単独行動主義は世界の嫌われ者。
・9条がなくなると、日本の軍隊が危険な最前線へ
・軍事費拡大とめどなく
・アジアの一員として日本が進む方が国益にそう
(5)「国際貢献のために対応できる普通の国にする」ためって言うけど・・・
・軍隊を外国に送り込むのは「普通の国」ではない。
(6)「北朝鮮の脅威から日本を守るのに、有事法制憲法改正も必要だ。」って言うけど・・・
 ・本当に脅威か。
・脅威を感じているのは北朝鮮の方。追いつめず、「日朝平壌宣言」の道が平の道 
国防軍にしても、テポドンが発射されたらふせげるか。(アメリカの9.11)
(7)尖閣諸島の領土問題を9条改正の理由として言われるが・・・・
 ・尖閣は日本の領土。しかし、中国と軍事力で対抗するべきではない(孫崎) 
 ・平和的に解決する道をとるべき
 
5 平和憲法を守りぬくために!(わたしたちの運動)
(1)自民党改憲案の異常さ、危険性を知らせよう
(2)平和憲法を守りたいという1点で、広く手をつないでゆく-私たちの運動をもっと広げ、確かなものに。国民の過半数が9条を守れという姿勢を維持すれば、必ず9条は守れる!
※ 国民投票に持ち込まさない闘いを!
(3)ひとりひとり、自分の思いと言葉で話してゆく-たくさん話し合いの場をつくろう。過半数署名をとりきろう!
(4)主権者として、責任感をもって。
 そして、楽しく、取り組もう!
                                          以 上
 

         自民党改憲草案「第九章 緊急事態」条項の危険性
   
                                                          弁護士 由 良 登 信
 
1 日本国憲法が国家緊急権についての規定を置いていないことについて
 →積極的意味を持つ(従来の多数説)
 ① 明治憲法のもとでの天皇による戒厳の宣告、戒厳令下で軍司令官が立法権と行政権を持つこととされ、国民の権利義務に関する規定が停止された。その体験と反省にもとづき、国家権力を立憲主義憲法体制の枠内に閉じ込めようとした。
 ② 民主主義国家でもワイマール憲法のもとで大統領の緊急権が濫用され、ヒトラー独裁の露払いの役割りを演じた。緊急権がきわめて濫用されやすいものであることを反省した。
 ③ 日本国憲法の前文や第9条により一切の戦争、陸海空軍その他の戦力、交戦権を放棄・否認したことから、軍事力の発動を伴うような緊急権を否認して、平和国家の確立を志向して、規定を置かなかった。
 ④ 憲法秩序のもとで、予め緊急時の対処について法律で備えておけば対応できる(東日本大震災でも憲法に緊急権を創設する必要はなかった)。災害対策基本法警察法自衛隊法、武力攻撃事態法などに緊急の場合の対処を定めていて、これで十分である(必要であれば法改正すればよい)。
 ⑤ 衆議院が解散されたときに、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会の規定を置いて対応しようとしている。

2 自民党の「緊急事態条項」の危険性
(1)「緊急事態」の非限定性
  「外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害、その他の法律で定める緊急事態において」
 ※ 「等」に何を含めるかによって対象は拡大する。
 ※ 法律(議会の過半数の議員)で、緊急事態の対象を拡大できる。
 ※ 3つの例示事態はそれぞれ性質が異なっているにもかかわらず、一律に取り扱っていいのか。
(2)緊急事態宣言を内閣総理大臣にほぼフリーで可能とする(要件・手続の問題)
 「内閣総理大臣は、・・・・特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。」
 「緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。」
 ※ 「特に必要があると認めるとき」は歯止めにならない。
 ※ 「閣議にかけて」は「閣議決定」を不要とするもの
 ※ 国会の承認は、事後でもよい。そして、事後何日後までに承認が必要なのかも定めていない。
 ※ ドイツでは、この認証を議会の合同委員会に委ねている。
(3)法律への委任が多い(8カ所)
  憲法を停止する権限の行使について、議員の過半数により制定可能な法律に委ねてよいのか。憲法で法律の内容も縛っておく必要があるはず。
(4)緊急事態宣言の効果の問題
  「法律と同一の効力を有する政令を制定可」
  「財政上必要な支出その他の処分を行える」
  「地方自治体の長に対して必要な指示ができる」
  「何人も・・・・国その他公の機関の指示に従わなければならない」
  ※ 内閣が法律を変え、廃止し、新たに作れることになる。
    これは、国会中心政治、議会制民主主義の停止。
    三権分立の停止=政府の独裁を可能にするもの
  ※ 政令によって改正できる事項について無限定。
    場合によっては、98条、99条の「法律の定め」も政令でつくり、変えられることになる。人権制約の政令も出てくる。
  ※ 政令は「事後に国会の承認」を得ることにしているが、「事後」何日までに承認を得なければならないのか時期の限定がない。
  また、承認される前の政令や処分の効力についても定めがない。承認されなかった時に、すでに行った処分についての定めがない。
(5)司法的統制の不存在
  緊急事態における司法権のあり方について言及がない。
  実際上、憲法裁判所がないので、その政令を裁判所でコントロールすることは困難。
(6)衆議院は解散されず、両議院の議員の任期及び選挙期日の特例を設けることができる。
 ※ 緊急事態宣言が濫用される危険がある。
 → 緊急事態宣言で、憲法は停止し、憲法によって縛られない内閣(総理大臣)が何でもできるようになってしまう。安倍首相にこんな権限を与えるのは危険すぎる。
                                                  以 上
 

(付録)
『この島~憲法9条のうた』 作詞・作曲:烏野政樹 演奏:M&N(クロウフィールド)
 
※“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama (2014)”より