読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

月刊レファレンス(2016年4月号)の小特集「新安保法制の今後の課題」掲載論文のご紹介

政治 軍事
 2016年8月5日に配信した「メルマガ金原No.2529」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
月刊レファレンス(2016年4月号)の小特集「新安保法制の今後の課題」掲載論文のご紹介

 国立国会図書館が発行する「各分野の国政課題の分析、内外の制度の紹介、国政課題の歴史的考察等、国政の中長期的課題に関する本格的な論説を掲載した月刊の調査論文集」「レファレンス」については、過去何度かその掲載論文をご紹介したことがあります。
 今回ご紹介する小特集「新安保法制の今後の課題」(2016年4月号)は、昨年9月にご紹介した小特集「集団的自衛権」(2015年3月号)が、いわゆる新安保法制の国会上程前における、集団的自衛権にフォーカスした特集であったのに対し、昨年9月の新安保法制成立及び本年3月の施行という事態を承け、「新安保法制に関する議論においてなお残る今後の課題のいくつかを論じる3本の論文を収めた」(緒言より)ものです。
 かなり細かな専門分野に踏み込んだ論考もありますが(第1論文、第2論文)、昨年の国会審議では必ずしも十分な議論がなされなかった個別分野について多角的な検討がなされており、安保法制の廃止を目指す立場からも、しっかりと学ぶ必要があると思います。
 そして、第3論文は、「戦後日本の安全保障法制の展開と世論」という相当に読み応えのある、自衛隊創設から新安保法制まで、安全保障法制と世論調査の結果を後付けた労作です。もっとも、読み終わった後、冷や汗が流れかねませんけどね。

小特集「新安保法制の今後の課題」<緒言>
前国立国会図書館調査及び立法考査局
専門調査員外交防衛調査室主任 等 雄一郎

(抜粋引用開始)
 2015(平成27)年5月15日の国会上程の後、5月26日の衆議院本会議趣旨説明に始まり、9月19日未明の参議院本会議における可決を経て、平和安全法制整備法と国際平和支援法の2 つから成るいわゆる新安保法制が9月30日に公布され、翌2016(平成28)年3月29日に施行された。新安保法制審議のため、第189回通常国会では、両院それぞれに委員数45 人という大規模な特別委員会(名称は両院ともに、我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会)が設置された。特別委員会での審議時間は、衆議院が116時間30分、参議院が103時間32分で、合計220時間余となり、安全保障関連の法律案・条約承認案件で記録が残るものの中では最長であった。
 2014(平成26)年7月1日の閣議決定を受けて、新安保法制は、集団的自衛権の限定的行使が可能となる「存立危機事態」を自衛隊の防衛出動の対象とすること、「重要影響事態」において自衛隊が地理的制約なしに米軍等外国軍の後方支援活動を行うことができるようにすること、「国際平和共同対処事態」において自衛隊が時々の立法措置を経ずに外国軍への協力支援活動を実施できるようにすることなどを定め、新たに幅広い活動を自衛隊に可能とした(表1及び表2参照)。
 表1と表2に見るように新安保法制は多岐の法改正に及ぶとともに、自衛隊の活動の幅広い領域に影響を与えることになるため、新安保法制に関する国会審議においては多種多様な議論が行われた。
 そのうち国の安全保障政策全般に関わる主な議論として、①従来の憲法解釈との整合性や法的安定性を問う議論、②新安保法制提案の背景としての安全保障環境に関する政府の認識や法制整備に伴う国、国民及び自衛隊員のリスクを問う議論、③ 2015(平成27)年4 月の新たな日米防衛協力のための指針と新安保法制の関連性を問う議論、④従来の抑制的な政策である専守防衛や海外派兵禁止などの原則との関係を問う議論、⑤防衛予算や防衛力整備への影響を問う議論、さらには⑥新安保法制が徴兵制に結びつく可能性を指摘する議論などであった。
 個別的な論点に関する主な議論としては、⑦存立危機事態の認定の基準如何と政府が示した事例の妥当性、⑧自衛隊による外国軍への後方支援、⑨自衛隊による国連PKO 等での「安全確保業務」と「駆け付け警護」、⑩自衛隊による在外邦人の警護・救出、⑪自衛隊による米軍等外国軍部隊の武器等の防護、⑫自衛隊派遣の際の国会の関与などがあった。
 小論ではこれらの個々の議論や論点を取り上げて論じる余裕はないが、審議を通じてそれぞれに議論や論点が整理されて深掘りされた部分もあるものの、そうでない部分も多く残っている。この小特集には、新安保法制に関する議論においてなお残る今後の課題のいくつかを論じる3本の論文を収めた。以下に小特集の各論文の内容を簡単に紹介する。
(略)
 安倍晋三首相は、新安保法制の国会通過後の記者会見において新安保法制に関する国民の理解が深まっていない点を念頭に、あらゆるレベルの国民の理解を得るべく丁寧な説明を続けると述べており、今後も新安保法制やそれによって可能となる新たな自衛隊の活動に関して議論が続けられるものと思われる。もとより3論文で取り上げた課題は新安保法制をめぐる今後の課題のごく一部でしかないが、この小特集が今後の議論に資することになれば幸いである。
(引用終わり)
 
ユニット・セルフディフェンスから見た新安保法制の論点
―米軍等武器等防護の意義と限界―
前国立国会図書館調査及び立法考査局
専門調査員外交防衛調査室主任 等 雄一郎

(〈緒言〉から引用開始)
 まず、上記の個別的な論点の1つであった自衛隊による米軍等外国軍部隊の武器等防護に関して掘り下げて論じるのが、第1論文の等雄一郎「ユニット・セルフディフェンスから見た新安保法制の論点―米軍等武器等防護の意義と限界―」である。米軍等武器等防護規定は改正自衛隊法第95条の2によって新設された。新安保法制論議において、同規定は武力攻撃に至らない侵害に部隊指揮官の判断で防護措置をとることを指すユニット・セルフディフェンスという概念と関連づけて議論された。同論文は、米軍統合参謀本部の標準交戦規則(SROE)やサンレモROEハンドブックなどを手掛かりに、ユニット・セルフディフェンスの国際的な考え方について検討する。この検討によれば、ユニット・セルフディフェンスの行使としての米軍等武器等防護の実施に際して重要となるのが、自衛隊による防護対象となる米軍等外国軍部隊の「ユニット性」及び「事前回避義務と事後追撃禁止」の確保という2点である。これらは憲法第9条の要請から導かれる米軍等武器等防護規定に関する論点とも重なっており、同規定に基づく自衛隊の実際の運用が始まった後も、これらの2点が確保されるかどうかは重要な論点であり続けるであろう。
(引用終わり)
 
他国軍隊の敵対行為への支援の国際法上の評価
国立国会図書館調査及び立法考査局
外交防衛課長 松山健二

(〈緒言〉から引用開始)
 
第2論文の松山健二「他国軍隊の敵対行為への支援の国際法上の評価」は、国際法の観点から、敵対行為を行っている他国への軍隊による支援が法的にどう位置づけられるのかを明らかにしようとする試みである。同論文はこれを2つの切り口から行う。1つは当該支援が国際法上の武力行使と位置づけられるか否かの評価である。被支援国の武力行使が違法のとき、当該支援が武力行使禁止原則に反する武力行使を構成する可能性がある一方、被支援国の武力行使自衛権に基づく適法な行為のとき、当該支援の国際法上の評価は必ずしも定まっていない。
 もう1つの切り口は当該支援がジュネーヴ諸条約等の武力紛争法の適用対象かどうかの評価である。武力紛争法は武力紛争の存在という事実によって適用され、当事国の認否とは無関係である。結論として、当該支援の実施国の認識にかかわらず、敵対行為を受ける国からは当該支援が国際違法行為を構成すると評価される可能性があり、また、武力紛争法上では、支援実施国が当該支援行為のみをもって紛争当事国になるかどうかは定かでないものの、支援実施国が敵対行為を受けたときは紛争当事国になることがあるという。この結論は新安保法制をめぐる政府答弁とどのように整合するのか、今後の議論が待たれる。
(引用終わり)
 
戦後日本の安全保障法制の展開と世論
国立国会図書館調査及び立法考査局
外交防衛課 山本健太郎

(〈緒言〉から引用開始)
 第3論文の山本健太郎「戦後日本の安全保障法制の展開と世論」は、長期のスパンでわが国の安全保障関連法制が国民にどのようにとらえられてきたかを世論調査から読み解いて、今回の新安保法制の今後を考えようとするものである。自衛隊創設、日米安保条約改定に始まり、1990年代の自衛隊海外派遣論議、その後の周辺事態法や有事法制、2000年代の自衛隊による米軍等の国際平和活動支援のための各種の特別措置法の制定、そして新安保法制まで、その時々の世論調査の分析からは、今回の新安保法制において反対の世論が他の時期に比べて特に強かったと言える。その一方で、過去に議論となってきた自衛隊日米安保条約、それに自衛隊の海外派遣について、現在では国民世論が許容するところとなっていると同論文は指摘し、新安保法制に基づく実際の運用開始後の世論の推移に注目すべきであるとしている。
(引用終わり)
 
 ここまで読んで来てくださった方の中には、〈緒言〉による第3論文の要約「過去に議論となってきた自衛隊日米安保条約、それに自衛隊の海外派遣について、現在では国民世論が許容するところとなっていると同論文は指摘し、新安保法制に基づく実際の運用開始後の世論の推移に注目すべきであるとしている。」に、心穏やかでない方も多いのではないかと推測します。
 この論文を読むことで、継続的な世論への働きかけの死活的な重要性が一層身にしみて理解されると思います。