今晩(2016年8月8日)配信した「メルマガ金原No.2532」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
追悼・梅原貞晴先生~再配信・レジュメ「どうなる?日本!!安保法制(戦争法)の問題点」(九条の会・きし)
今日(8月8日)の昼休み、2年前の6月以来、毎月実施している「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)の第26回目に参加し(ここまで私は皆勤を続けています)、ゴール地点の京橋プロムナードで流れ解散となった後、私も役員を務めている地元の「九条の会・きし」事務局長の牧野ひとみさんから、同会の結成時に呼びかけ人を務めてくださり、何年か前の総会で私ほか1名とともに共同代表(代表世話人)に就任されていた梅原貞晴(うめはら・さだはる)先生が亡くなられ、今晩お通夜があると教えられて驚きました。
私が梅原さんと最後にお目にかかったのは、昨年(2015年)11月14日に「九条の会・きし」役員会で私が講師を務めた学習会に顔を出してくださった時ですから、既に9ヶ月近く前のことですが、いたってお元気そうでしたし、私の話の後の意見交換でも、私が新安保法制と中国抑止論について言及したからか、蘇州大学客員教授としての経験を踏まえた中国の学生や同僚の考え方を語っていただいたと記憶しています(9.19以降の「安保法制」学習会用レジュメ(論点絞り込み90分ヴァージョン/2015年11月14日)。
今晩のお通夜で顔を合わせた知人から聞いたところでは、梅原さんが会長を務めておられた貴志地区連合自治会の会議の席で倒れられたらしく、まことに急なご逝去であったそうで、ご遺族が被られた衝撃と悲しみの大きさは、今夜の参列者に配られたご遺族の「通夜御礼」を一読しても明らかです。
梅原先生の人となりを知っていただくため「通夜御礼」を勝手にご紹介しても、お許しいただけるのではないかと思い、その主要部分を引用します。
梅原先生の人となりを知っていただくため「通夜御礼」を勝手にご紹介しても、お許しいただけるのではないかと思い、その主要部分を引用します。
(抜粋引用開始)
通夜御礼 梅原家
通夜御礼 梅原家
「まっすぐに歩み続けた人生でした」
高等学校で教鞭を執る傍ら
週末は自宅で書道教室を開いていた父
定年後は 大学教授を務めながら
地域のボランティア活動にも
熱心に取り組んでおりました
週末は自宅で書道教室を開いていた父
定年後は 大学教授を務めながら
地域のボランティア活動にも
熱心に取り組んでおりました
いくつになっても研究熱心で 特に中国が好きな父は
蘇州大学で客員教授も務めていたほど
瞼をとじると浮かぶ面影に 目頭が熱くなります
蘇州大学で客員教授も務めていたほど
瞼をとじると浮かぶ面影に 目頭が熱くなります
厳父であり慈父であった
あまりに大きな存在を失い 悲しみは募りますが
私たちは父の輝かせた生涯を胸に
家族で支え合い 一日一日を大切に生きていきます
あまりに大きな存在を失い 悲しみは募りますが
私たちは父の輝かせた生涯を胸に
家族で支え合い 一日一日を大切に生きていきます
父 梅原 貞晴は 平成二十八年八月七日
満七十八歳の生涯をとじました
満七十八歳の生涯をとじました
良きご縁を結び 共に歩んでくださった皆様に
深く感謝いたします
(引用終わり)
深く感謝いたします
(引用終わり)
梅原先生のご逝去がいかに急なことであったかは、ラジオの和歌山放送から平日の朝に放送されている和歌山市の広報番組「ゲンキ和歌山市」の今年6月16日放送分で、地元の和歌山市立貴志南小学校の33回目の開校記念日の2日後の6月10日、梅原さんが貴志地区連合自治会会長として同校に招かれて挨拶されたことが紹介されていたことでも分かります。
6/16放送 小学校訪問⑧ 33回目の「開校記念日」~貴志南小☆
(抜粋引用開始)
この日は、
貴志地区連合自治会長の梅原貞晴(うめはらさだはる)さんが
招かれ、校長先生とともに、33年前の当時の学校や
貴志地区の様子についてお話をしました。
梅原さんによると、当時の貴志地区は、周りが田んぼばかり。
クマや猿を見かけることもあったそうです。
現在、色々な行事等で学校を訪れることが多い梅原さん。
いつも貴志南小の児童からは、元気よく挨拶してもらって
パワーをいただいているとして
改めて児童たちに「ありがとう」
とお礼のことばを述べておられました。
(略)
なかよし集会のあと、
校長の犬塚博志(いぬづかひろし)先生にお話を伺いました。
貴志南小学校を始め、貴志地区は
地元の皆さんや育友会の皆さんのバックアップが大きく、
連合自治会長の梅原さんをリーダーとして、中学校区全体で
「貴志の教育を高める会」を作っているそうです。
「こういった方々のおかげで、学校にとって、とてもプラスになっています。」
と喜んでいらっしゃいます。
(引用終わり)
(抜粋引用開始)
この日は、
貴志地区連合自治会長の梅原貞晴(うめはらさだはる)さんが
招かれ、校長先生とともに、33年前の当時の学校や
貴志地区の様子についてお話をしました。
梅原さんによると、当時の貴志地区は、周りが田んぼばかり。
クマや猿を見かけることもあったそうです。
現在、色々な行事等で学校を訪れることが多い梅原さん。
いつも貴志南小の児童からは、元気よく挨拶してもらって
パワーをいただいているとして
改めて児童たちに「ありがとう」
とお礼のことばを述べておられました。
(略)
なかよし集会のあと、
校長の犬塚博志(いぬづかひろし)先生にお話を伺いました。
貴志南小学校を始め、貴志地区は
地元の皆さんや育友会の皆さんのバックアップが大きく、
連合自治会長の梅原さんをリーダーとして、中学校区全体で
「貴志の教育を高める会」を作っているそうです。
「こういった方々のおかげで、学校にとって、とてもプラスになっています。」
と喜んでいらっしゃいます。
(引用終わり)
梅原さんについてのインターネット検索結果の中から、上記の貴志南小学校訪問の他に、あと2つご紹介しておきます。
1つは、蘇州大学客員教授としての見聞を地元紙に連載された著書『蘇州慕情』(2003年9月刊)です。
内容説明を引用します。
「水の都、蘇州。そこはまほろば、よき思い出の詰まった土地。異国への旅立ち、水と柳の古都、専家楼の食堂は蘇大のサロンなど、憧れの土地に客員として招かれた大学教授の蘇州滞在記。『和歌山新報』の連載を書籍化。」
絶版ではあるようですが、中古品の入手は容易なようです。
もう1つは、「九条の会・きし」結成に先立つ2005年3月5日(土)、地元の河西コミュニティセンターで「守ろう9条河西のつどい」が開かれたことを伝える「憲法九条を守るわかやま県民の会」ニュース第15号に、梅原先生の発言が紹介されていました。
(引用開始)
「守ろう九条」河西のつどい
「守ろう九条」河西のつどい
3月5日(土)午後7時から「守ろう9条河西のつどい」が和歌山市河西オミュニテイーセンターで開かれました。多目的ホールいっぱいの75人の参加で熱気あふれました。「憲法をめぐる情勢と改悪阻止の展望」という演題で坂本文博氏(憲法九条を守るわかやま県民の会事務局長)が講演されました。坂本氏は講演の中で「改憲策動はものすごい勢いで加速している。9条守る運動を急速に広げないといけない」と強調されました。この会の賛同者のひとり梅原貞晴さん(蘇州大学客員教授)が「人間として、日本人として、守らなければあかんなということが(お話をお聞きして自分の中に)入りました」と、毎日新聞の高校生が書いた投稿を紹介しながら話されました。主催者側から「つどい」賛同者の方々が紹介されました。また今後の取り組みとして(1)3月20日の「憲法フェスタ」の成功(2)会員を広げる(3)校区ごとなど地域の会結成をめざしていく、の三点が提案されました。なお、この集いに向け、賛同する12人の方々の名前を載せたチラシを配って宣伝しました。
(引用終わり)
記事にある「校区ごとなど地域の会結成をめざしていく」の結実が「九条の会・きし」の結成でした。
私は、高校教員時代の梅原先生は全く存じ上げず、貴志地区連合自治会(私の地元でもありますが)会長としての素晴らしい業績も、私自身が自治会活動に縁遠い生活を送っているため、伝え聞くにとどまりました。
私にとっての梅原先生は、中国を愛し、国民レベルからの日中友好を心から念願しておられた素晴らしい教養人であるとともに、そのためにも、日本国憲法第9条を是非とも守り抜かねばならないと決意した信念の人でした。
ここに心から哀悼の意を表します。
私にとっての梅原先生は、中国を愛し、国民レベルからの日中友好を心から念願しておられた素晴らしい教養人であるとともに、そのためにも、日本国憲法第9条を是非とも守り抜かねばならないと決意した信念の人でした。
ここに心から哀悼の意を表します。
最後に、私が最後に梅原貞晴先生とお会いし、お話が出来た昨年11月14日の学習会のために書いたレジュメを、梅原先生追悼のために再配信します。
以下は、2015年11月14日に配信した「メルマガ金原No.2274」(及びこれを転載した「弁護士・金原徹雄のブログ」「wakaben6888のブログ」)から、学習会用レジュメの部分を抜き出して再配信するものです。
2015年11月14日(土) 中団地自治会館
「九条の会・きし」学習会
どうなる?日本!!安保法制(戦争法)の問題点
「九条の会・きし」学習会
どうなる?日本!!安保法制(戦争法)の問題点
弁護士 金 原 徹 雄
第1 「安保法制」(戦争法)って何?
1 成立した法律は2つだけ
新法「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」(国際平和支援法)
一括改正法「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」
※細かな改正を含めれば全部で20(主要なものだけで10)の法律を「改正」。
自衛隊法
国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(PKO協力法)
周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律
周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律
武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律などが最も主要なもの。
2 大ざっぱに言って何が変わったのか?
(1)従来の(9.19前の)安保法制
〇武力攻撃事態(武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態)→防衛出動
※日本が攻撃を受けた場合に反撃する個別的自衛権の行使
〇周辺事態(そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態)→後方地域支援(周辺事態に際して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っているアメリカ合衆国の軍隊に対する物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置であって、後方地域において我が国が実施するものをいう/後方地域とは、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。」)
※主として朝鮮有事を想定。
〇テロ特措法(2001年)、イラク特措法(2003年)
非戦闘地域における協力支援活動、捜索救助活動、被災民救援活動等
〇PKO協力法(1992年)
国際平和協力業務等
(2)新「安保法制」で何が出来ることになったのか?
〇武力攻撃事態だけではなく存立危機事態でも防衛出動が可能になった。
存立危機事態:我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
※要するに集団的自衛権に基づく武力行使を認めた。
※5党合意(9月16日)「存立危機事態の認定は、武力攻撃を受けた国の要請又は同意があることを前提とすること」に注意!
〇周辺事態法が重要影響事態法に「改正」されて後方支援を行う
支援対象国が米国以外にも広げられた。
周辺地域という限定が無くなった(世界中どこでも)。
非戦闘地域という制限がなくなり、「現に戦闘行為が行われている現場では実施しない」とするだけ。
具体的な後方支援としての「物品及び役務の提供」につき、従来は禁止されていた以下のような活動が出来ることになった。
弾薬の提供
戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備
※後方支援は、実態としては「logistic(兵站)」そのもの。現に今年の4月27日に締結された新日米ガイドラインでは「logistic support=後方支援活動」という用語が使われている。
〇国際平和共同対処事態→協力支援活動
テロ特措法、イラク特措法などに代わる恒久法。
協力支援の対象は多国籍軍。
非戦闘地域という制限が無くなったのは、重要影響事態(米軍等への支援)と同じ。
実際に行う協力支援活動の内容は、ほぼ重要影響事態法に基づく後方支援活動と同じ。
〇国連平和維持活動(PKO)において、新たに「住民保護・治安維持活動」、「駆け付け警護」などが追加され、それらの業務に従事する自衛官は、「やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で」「武器を使用することができる。」とされた。
また、新たに認められた国際連携平和安全活動は、アフガニスタンにおいて活動したNATO軍を主体としたISAF(国際治安支援部隊)などが想定されていると言われている。
〇自衛隊法の中に、「在外邦人の保護措置」や「合衆国軍隊等の部隊の防護のための武器の使用」などの規定が設けられたが、運用次第では非常に危険な事態を招来しかねない。
3 新「安保法制」はいつから施行されるのか?
一括法の附則により、公布の日から6か月以内の政令で定める日から施行されることになっている。9月30日に公布されたので、遅くとも来年3月31日までには施行される。
1 成立した法律は2つだけ
新法「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」(国際平和支援法)
一括改正法「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」
※細かな改正を含めれば全部で20(主要なものだけで10)の法律を「改正」。
自衛隊法
国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(PKO協力法)
周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律
周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律
武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律などが最も主要なもの。
2 大ざっぱに言って何が変わったのか?
(1)従来の(9.19前の)安保法制
〇武力攻撃事態(武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態)→防衛出動
※日本が攻撃を受けた場合に反撃する個別的自衛権の行使
〇周辺事態(そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態)→後方地域支援(周辺事態に際して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っているアメリカ合衆国の軍隊に対する物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置であって、後方地域において我が国が実施するものをいう/後方地域とは、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。」)
※主として朝鮮有事を想定。
〇テロ特措法(2001年)、イラク特措法(2003年)
非戦闘地域における協力支援活動、捜索救助活動、被災民救援活動等
〇PKO協力法(1992年)
国際平和協力業務等
(2)新「安保法制」で何が出来ることになったのか?
〇武力攻撃事態だけではなく存立危機事態でも防衛出動が可能になった。
存立危機事態:我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
※要するに集団的自衛権に基づく武力行使を認めた。
※5党合意(9月16日)「存立危機事態の認定は、武力攻撃を受けた国の要請又は同意があることを前提とすること」に注意!
〇周辺事態法が重要影響事態法に「改正」されて後方支援を行う
支援対象国が米国以外にも広げられた。
周辺地域という限定が無くなった(世界中どこでも)。
非戦闘地域という制限がなくなり、「現に戦闘行為が行われている現場では実施しない」とするだけ。
具体的な後方支援としての「物品及び役務の提供」につき、従来は禁止されていた以下のような活動が出来ることになった。
弾薬の提供
戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備
※後方支援は、実態としては「logistic(兵站)」そのもの。現に今年の4月27日に締結された新日米ガイドラインでは「logistic support=後方支援活動」という用語が使われている。
〇国際平和共同対処事態→協力支援活動
テロ特措法、イラク特措法などに代わる恒久法。
協力支援の対象は多国籍軍。
非戦闘地域という制限が無くなったのは、重要影響事態(米軍等への支援)と同じ。
実際に行う協力支援活動の内容は、ほぼ重要影響事態法に基づく後方支援活動と同じ。
〇国連平和維持活動(PKO)において、新たに「住民保護・治安維持活動」、「駆け付け警護」などが追加され、それらの業務に従事する自衛官は、「やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で」「武器を使用することができる。」とされた。
また、新たに認められた国際連携平和安全活動は、アフガニスタンにおいて活動したNATO軍を主体としたISAF(国際治安支援部隊)などが想定されていると言われている。
〇自衛隊法の中に、「在外邦人の保護措置」や「合衆国軍隊等の部隊の防護のための武器の使用」などの規定が設けられたが、運用次第では非常に危険な事態を招来しかねない。
3 新「安保法制」はいつから施行されるのか?
一括法の附則により、公布の日から6か月以内の政令で定める日から施行されることになっている。9月30日に公布されたので、遅くとも来年3月31日までには施行される。
第2 「安保法制」(戦争法)のどこが憲法に違反するの?
1 集団的自衛権の行使は憲法9条(とりわけ2項)に違反する
憲法13条が保障する「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」が「国政の上で、最大の尊重を必要とする」とされていることから考えれば、我が国が他国から武力攻撃を受けた場合にその急迫不正の侵害を排除し、国民の権利を守ることは、国の責務として憲法もこれを容認している。従って、上記の目的を達成するための必要最小限の実力は、憲法9条2項が保持を禁じた「陸海空軍その他の戦力」にはあたらない。自衛隊は、そのような必要最小限の実力にとどまっているので合憲である。
以上が、自衛隊発足以来、2014年7月1日午後の閣議決定に至るまで、日本国政府が維持し続けてきた自衛隊を合憲とする論理である。
いわゆる1972年(昭和47年)政府見解というのは、上記の論理を前提として、「そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」と明確に断じたものである。
大半の憲法学者が、昨年7月1日の閣議決定と今次の安保法制(戦争法)が、従来の合憲性判断の枠組では説明できず、それを超えてしまったもので違憲であるとしているのは以上のような理由による。
これを別の面から評すれば、集団的自衛権の行使ができるとする解釈は、自衛隊の存在を正当化する憲法上の根拠を喪失させ、単なる私兵におとしめるものだと言わなければならない。
※6月4日の衆議院憲法審査会に出席して安保関連法案を違憲と断じた3人の参考人(長谷部恭男早大教授、小林節慶大名誉教授、笹田栄司早大教授)は、いずれも自衛隊合憲論者である。合憲論者「であっても」違憲としたという理解は正確ではない。合憲論者「だからこそ」違憲と判断するしかなかったということである。
2 後方支援、協力支援は武力の行使を禁じた憲法9条(特に1項)に違反する
米軍等への後方支援(重要影響事態法)、協力支援(国際平和協力法)は、「我が国周辺の地域」(周辺事態法)という地域的制限を廃し(世界中どこへでも)、非戦闘地域でなければ実施しないという制限も撤廃し(現に戦闘行為が行われていなければ良い)、従来から認められていた武器の輸送の他、弾薬の提供、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を解禁するなど、兵站(ロジスティック)そのものであり、米軍等による武力行使と一体となる可能性が非常に高い、あるいは一体化そのものであって、武力の行使を禁じた憲法9条1項に違反する。
なお、憲法9条1項は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定め、不戦条約(1928年)以来の伝統的慣用から、一般に侵略戦争の放棄を定めた規定と解されているが、9条2項が「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」として、戦争(含武力行使)を行うための物的手段と法的権限を否認していることから、侵略目的でないとしても、「武力の行使」一般が禁じられていると解するのが通説である。
この点に関する判例としては、2008年4月17日、イラク特措法に基づいて米兵等の空輸を行っていた航空自衛隊の活動を憲法9条1項に違反すると判断した名古屋高裁判決がある。
3 憲法73条(内閣の権限)に違反する
日本国憲法は、近代立憲主義に基づく権力分立制をとっており、各国家機関にいかなる権限を付与するかの基本は憲法自身によって定められている。そして、行政権を担う内閣に与えられた権限を明記しているのが憲法73条であるが、この規定をどのように読んでも、日本が武力攻撃を受けた訳でもないのに海外で戦争する(武力を行使する)権限を内閣に与えたと読める規定は存在しない。
戦前(大日本帝国憲法体制下)天皇大権とされていたもののうち、行政権は内閣に、立法権は国会に、司法権は裁判所にそれぞれ帰属することになったが、どこにも継承されなかった天皇大権があった。それは、以下の各条項である。
第11条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第12条 天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム
第13条 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス(条約締結権は内閣に)
第14条 天皇ハ戒厳ヲ宣告ス
2 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
すなわち、この1946年に行われた憲法改正の経緯から考えても、内閣に海外で戦争する権限などないことは明らかである。
1 集団的自衛権の行使は憲法9条(とりわけ2項)に違反する
憲法13条が保障する「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」が「国政の上で、最大の尊重を必要とする」とされていることから考えれば、我が国が他国から武力攻撃を受けた場合にその急迫不正の侵害を排除し、国民の権利を守ることは、国の責務として憲法もこれを容認している。従って、上記の目的を達成するための必要最小限の実力は、憲法9条2項が保持を禁じた「陸海空軍その他の戦力」にはあたらない。自衛隊は、そのような必要最小限の実力にとどまっているので合憲である。
以上が、自衛隊発足以来、2014年7月1日午後の閣議決定に至るまで、日本国政府が維持し続けてきた自衛隊を合憲とする論理である。
いわゆる1972年(昭和47年)政府見解というのは、上記の論理を前提として、「そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」と明確に断じたものである。
大半の憲法学者が、昨年7月1日の閣議決定と今次の安保法制(戦争法)が、従来の合憲性判断の枠組では説明できず、それを超えてしまったもので違憲であるとしているのは以上のような理由による。
これを別の面から評すれば、集団的自衛権の行使ができるとする解釈は、自衛隊の存在を正当化する憲法上の根拠を喪失させ、単なる私兵におとしめるものだと言わなければならない。
※6月4日の衆議院憲法審査会に出席して安保関連法案を違憲と断じた3人の参考人(長谷部恭男早大教授、小林節慶大名誉教授、笹田栄司早大教授)は、いずれも自衛隊合憲論者である。合憲論者「であっても」違憲としたという理解は正確ではない。合憲論者「だからこそ」違憲と判断するしかなかったということである。
2 後方支援、協力支援は武力の行使を禁じた憲法9条(特に1項)に違反する
米軍等への後方支援(重要影響事態法)、協力支援(国際平和協力法)は、「我が国周辺の地域」(周辺事態法)という地域的制限を廃し(世界中どこへでも)、非戦闘地域でなければ実施しないという制限も撤廃し(現に戦闘行為が行われていなければ良い)、従来から認められていた武器の輸送の他、弾薬の提供、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を解禁するなど、兵站(ロジスティック)そのものであり、米軍等による武力行使と一体となる可能性が非常に高い、あるいは一体化そのものであって、武力の行使を禁じた憲法9条1項に違反する。
なお、憲法9条1項は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と定め、不戦条約(1928年)以来の伝統的慣用から、一般に侵略戦争の放棄を定めた規定と解されているが、9条2項が「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」として、戦争(含武力行使)を行うための物的手段と法的権限を否認していることから、侵略目的でないとしても、「武力の行使」一般が禁じられていると解するのが通説である。
この点に関する判例としては、2008年4月17日、イラク特措法に基づいて米兵等の空輸を行っていた航空自衛隊の活動を憲法9条1項に違反すると判断した名古屋高裁判決がある。
3 憲法73条(内閣の権限)に違反する
日本国憲法は、近代立憲主義に基づく権力分立制をとっており、各国家機関にいかなる権限を付与するかの基本は憲法自身によって定められている。そして、行政権を担う内閣に与えられた権限を明記しているのが憲法73条であるが、この規定をどのように読んでも、日本が武力攻撃を受けた訳でもないのに海外で戦争する(武力を行使する)権限を内閣に与えたと読める規定は存在しない。
戦前(大日本帝国憲法体制下)天皇大権とされていたもののうち、行政権は内閣に、立法権は国会に、司法権は裁判所にそれぞれ帰属することになったが、どこにも継承されなかった天皇大権があった。それは、以下の各条項である。
第11条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第12条 天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム
第13条 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス(条約締結権は内閣に)
第14条 天皇ハ戒厳ヲ宣告ス
2 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
すなわち、この1946年に行われた憲法改正の経緯から考えても、内閣に海外で戦争する権限などないことは明らかである。
第3 中国・北朝鮮脅威論と「安保法制」(戦争法)
1 前提として(法制の合理性を判定するために)
①立法事実は存在するか?
②立法目的は正当か?
③法制の内容は立法目的達成の手段として合理的か?
2 中国・北朝鮮脅威論に立法事実はあるか?
脅威のレベルをどこに想定するかが問題の本質であり、両国による直接軍事侵攻を本気で心配しなければならないのか否かを議論すべきだろう。
3 「安保法制」(戦争法)は中国・北朝鮮に対する抑止力を高めるか?
(1)9.19前の我が国の有事法制の中核は、武力攻撃事態法と周辺事態法であった。
武力攻撃事態とは、要するに日本が侵略された場合に、個別的自衛権を行使してこれを排除するための法制である。ちなみに、その場合、日本が米国に救援を求めるとすれば、その根拠は日米安保条約5条であって、この場合、米国は「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動」することを日本に対して約束している。
従って、日本が中国や北朝鮮から武力攻撃を受けたのであれば、武力攻撃事態法と日米安保条約で対処することになるのであって、「存立危機事態」など不要である。
次に、周辺事態法は、主には朝鮮有事を想定して合意した1997年版日米ガイドラインを踏まえて制定された法律であり、米軍に対する自衛隊の「後方地域支援」を行うことを主目的としていた。要するに、米軍が(韓国軍とともに)北朝鮮軍と交戦状態に入った場合に、日本が米軍にどのような支援をするのかということであって、北朝鮮が日本にミサイルを発射した場合の話ではない。そういう場合は、武力攻撃事態となる。
(2)それでは、新安保法制でやろうとしている「これまで出来なかったこと」とは何か?それは本当に中国や北朝鮮に対する抑止力向上に役立つのか?
先に第1、2で述べたとおり、その中核は、「存立危機事態」なる曖昧な要件で、日本が武力攻撃を受けてもいないのに、自衛隊に「防衛出動」を命じることができるようにするということと、「周辺事態」や「非戦闘地域」という制限を取り払い、世界中どこへでも自衛隊を派遣して、米軍等の兵站(後方支援または協力支援)に従事させることができるようにするということである。
これのどこが中国や北朝鮮に対する抑止力を向上させることになるというのか?海外派遣のオペレーションに対応するためには、そのような任務に即応できる部隊編成が必要となるのが当然で、その分、日本防衛が手薄になるのは見やすい道理である。
(3)察するに、同盟国である米国のコミットメントをより確保するために(つまり、日本有事の際に米軍に確実に参戦してもらうために)、対価としての日本からのサービスを奮発し、「見捨てられ」恐怖を払拭したいということなのだろうが、そもそも抑止力が効果を発揮するかどうかは、相手国(中国や北朝鮮)が「抑止されている」と考えるかどうかにかかっているのであって、自衛隊が世界中で米軍の2軍となって活動することによって、中国や北朝鮮が「より抑止された」と感じるとは到底思えない。
(4)この他にも、本気で中国や北朝鮮による侵攻を心配するのなら、まず真っ先にやらなければならないのは原発全基廃炉であるにもかかわらず、中国に最も近い鹿児島県・川内原発を再稼働し、さらに敦賀湾に面した高浜原発を再稼働しようとしているということ自体、安倍政権が本気でそんな心配などしていない証拠である、ということも付け加えておこう(これは「立法事実」の問題だが)。
1 前提として(法制の合理性を判定するために)
①立法事実は存在するか?
②立法目的は正当か?
③法制の内容は立法目的達成の手段として合理的か?
2 中国・北朝鮮脅威論に立法事実はあるか?
脅威のレベルをどこに想定するかが問題の本質であり、両国による直接軍事侵攻を本気で心配しなければならないのか否かを議論すべきだろう。
3 「安保法制」(戦争法)は中国・北朝鮮に対する抑止力を高めるか?
(1)9.19前の我が国の有事法制の中核は、武力攻撃事態法と周辺事態法であった。
武力攻撃事態とは、要するに日本が侵略された場合に、個別的自衛権を行使してこれを排除するための法制である。ちなみに、その場合、日本が米国に救援を求めるとすれば、その根拠は日米安保条約5条であって、この場合、米国は「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動」することを日本に対して約束している。
従って、日本が中国や北朝鮮から武力攻撃を受けたのであれば、武力攻撃事態法と日米安保条約で対処することになるのであって、「存立危機事態」など不要である。
次に、周辺事態法は、主には朝鮮有事を想定して合意した1997年版日米ガイドラインを踏まえて制定された法律であり、米軍に対する自衛隊の「後方地域支援」を行うことを主目的としていた。要するに、米軍が(韓国軍とともに)北朝鮮軍と交戦状態に入った場合に、日本が米軍にどのような支援をするのかということであって、北朝鮮が日本にミサイルを発射した場合の話ではない。そういう場合は、武力攻撃事態となる。
(2)それでは、新安保法制でやろうとしている「これまで出来なかったこと」とは何か?それは本当に中国や北朝鮮に対する抑止力向上に役立つのか?
先に第1、2で述べたとおり、その中核は、「存立危機事態」なる曖昧な要件で、日本が武力攻撃を受けてもいないのに、自衛隊に「防衛出動」を命じることができるようにするということと、「周辺事態」や「非戦闘地域」という制限を取り払い、世界中どこへでも自衛隊を派遣して、米軍等の兵站(後方支援または協力支援)に従事させることができるようにするということである。
これのどこが中国や北朝鮮に対する抑止力を向上させることになるというのか?海外派遣のオペレーションに対応するためには、そのような任務に即応できる部隊編成が必要となるのが当然で、その分、日本防衛が手薄になるのは見やすい道理である。
(3)察するに、同盟国である米国のコミットメントをより確保するために(つまり、日本有事の際に米軍に確実に参戦してもらうために)、対価としての日本からのサービスを奮発し、「見捨てられ」恐怖を払拭したいということなのだろうが、そもそも抑止力が効果を発揮するかどうかは、相手国(中国や北朝鮮)が「抑止されている」と考えるかどうかにかかっているのであって、自衛隊が世界中で米軍の2軍となって活動することによって、中国や北朝鮮が「より抑止された」と感じるとは到底思えない。
(4)この他にも、本気で中国や北朝鮮による侵攻を心配するのなら、まず真っ先にやらなければならないのは原発全基廃炉であるにもかかわらず、中国に最も近い鹿児島県・川内原発を再稼働し、さらに敦賀湾に面した高浜原発を再稼働しようとしているということ自体、安倍政権が本気でそんな心配などしていない証拠である、ということも付け加えておこう(これは「立法事実」の問題だが)。
第4 これからを見すえた運動を
1 様々な「共同」をさらに発展させよう。
2 間断なく声を上げ続けよう。「声明」、「スタンディングアピール」、「デモ」、「集会」、「学習会」、「2000万人統一署名」。
3 今まで声をかけていなかった人にも訴えよう。
4 来年7月の参議院議員通常選挙の勝利のため、野党協力の機運を盛り上げよう。
5 1人1人があきらめず、出来ることをやり抜こう。
1 様々な「共同」をさらに発展させよう。
2 間断なく声を上げ続けよう。「声明」、「スタンディングアピール」、「デモ」、「集会」、「学習会」、「2000万人統一署名」。
3 今まで声をかけていなかった人にも訴えよう。
4 来年7月の参議院議員通常選挙の勝利のため、野党協力の機運を盛り上げよう。
5 1人1人があきらめず、出来ることをやり抜こう。