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続・「天皇退位」問題を考えるためのいくつかの参考資料(メモとして)

 今晩(2016年8月9日)配信した「メルマガ金原No.2533」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
続・「天皇退位」問題を考えるためのいくつかの参考資料(メモとして)

 今日は、個人的な備忘のためのメモを兼ねて、「天皇退位」問題についての資料を集めておきます。去る7月17日に書いた「「天皇退位」問題を考えるためのいくつかの参考資料(メモとして)」の続編です。
 
宮内庁ホームページ
象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば(ビデオ)(平成28年8月8日)

(引用開始)
 
戦後70年という大きな節目を過ぎ,2年後には,平成30年を迎えます。
 私も80を越え,体力の面などから様々な制約を覚えることもあり,ここ数年,天皇としての自らの歩みを振り返るとともに,この先の自分の在り方や務めにつき,思いを致すようになりました。
 本日は,社会の高齢化が進む中,天皇もまた高齢となった場合,どのような在り方が望ましいか,天皇という立場上,現行の皇室制度に具体的に触れることは控えながら,私が個人として,これまでに考えて来たことを話したいと思います。
 即位以来,私は国事行為を行うと共に,日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を,日々模索しつつ過ごして来ました。伝統の継承者として,これを守り続ける責任に深く思いを致し,更に日々新たになる日本と世界の中にあって,日本の皇室が,いかに伝統を現代に生かし,いきいきとして社会に内在し,人々の期待に応えていくかを考えつつ,今日に至っています。
 そのような中,何年か前のことになりますが,2度の外科手術を受け,加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から,これから先,従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合,どのように身を処していくことが,国にとり,国民にとり,また,私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき,考えるようになりました。既に80を越え,幸いに健康であるとは申せ,次第に進む身体の衰えを考慮する時,これまでのように,全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが,難しくなるのではないかと案じています。
 私が天皇の位についてから,ほぼ28年,この間(かん)私は,我が国における多くの喜びの時,また悲しみの時を,人々と共に過ごして来ました。私はこれまで天皇の務めとして,何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが,同時に事にあたっては,時として人々の傍らに立ち,その声に耳を傾け,思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。天皇が象徴であると共に,国民統合の象徴としての役割を果たすためには,天皇が国民に,天皇という象徴の立場への理解を求めると共に,天皇もまた,自らのありように深く心し,国民に対する理解を深め,常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました。こうした意味において,日本の各地,とりわけ遠隔の地や島々への旅も,私は天皇の象徴的行為として,大切なものと感じて来ました。皇太子の時代も含め,これまで私が皇后と共に行おこなって来たほぼ全国に及ぶ旅は,国内のどこにおいても,その地域を愛し,その共同体を地道に支える市井(しせい)の人々のあることを私に認識させ,私がこの認識をもって,天皇として大切な,国民を思い,国民のために祈るという務めを,人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは,幸せなことでした。
 天皇の高齢化に伴う対処の仕方が,国事行為や,その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには,無理があろうと思われます。また,天皇が未成年であったり,重病などによりその機能を果たし得なくなった場合には,天皇の行為を代行する摂政を置くことも考えられます。しかし,この場合も,天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま,生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません。
 天皇が健康を損ない,深刻な状態に立ち至った場合,これまでにも見られたように,社会が停滞し,国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの皇室のしきたりとして,天皇の終焉に当たっては,重い殯もがりの行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き,その後喪儀そうぎに関連する行事が,1年間続きます。その様々な行事と,新時代に関わる諸行事が同時に進行することから,行事に関わる人々,とりわけ残される家族は,非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが,胸に去来することもあります。
 始めにも述べましたように,憲法の下もと,天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で,このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ,これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり,相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう,そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく,安定的に続いていくことをひとえに念じ,ここに私の気持ちをお話しいたしました。
 国民の理解を得られることを,切に願っています。
※ビデオメッセージはWindows Media Playerで視聴できます。
(引用終わり)
動画(ANNnewsCH)


首相官邸 Facebook 2016年8月8日 15時19分
(引用開始)
安倍晋三内閣総理大臣コメント
本日、天皇陛下より御言葉がありました。
私としては、天皇陛下が国民に向けて御発言されたということを、重く受け止めております。
天皇陛下の御公務のあり方などについては、天皇陛下の御年齢や御公務の負担の現状にかんがみるとき、天皇陛下の御心労に思いを致し、どのようなことができるのか、しっかりと考えていかなければいけないと思っています。
(引用終わり)
※動画(ANNnewsCH)

 
日テレNEWS24 2016年8月8日 17:42
陛下「お気持ち」 首相“重く受け止める”

(引用開始)
 天皇陛下は8日午後3時、「生前退位」をめぐり「お気持ち」を表明された。お気持ち表明を受け、安倍首相は記者団に対して「重く受け止める」とのコメントを発表した。
 安倍首相は「どのようなことができるのか、しっかりと考えていかなければいけない」と述べたが、具体的にどう対応するのかについては踏み込まなかった。
 
安倍首相「私としては、天皇陛下が国民に向けてご発言されたということを重く受け止めております。天皇陛下のご公務のあり方などについては天皇陛下のご年齢やご公務の負担の現状に鑑みる時、天皇陛下のご心労に思いを致し、どのようなことができるのかしっかりと考えていかなければいけないと思っています」
 
今回、安倍首相が具体的な対応に踏み込まなかったのは、今回のお言葉が憲法で禁じられている天皇の政治的な発言にならないよう配慮したため。政府は当面は、すでに内閣官房に設置されている皇室典範改正準備室で検討を進める考え。しかし、生前退位を可能にするために皇室典範を改正するのか、今の天皇陛下のみに適用される特例法を制定するのか、などの方針については定まっていない。
 そうした中、政府高官は結論を出す時期について、「そんなに急ぐものではないが、かといって何年もかけるものではない」としている。世論の動向も見極めながら慎重に対応することとなりそうだ。

(引用終わり)
 
 「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」については、早速、改憲派天皇元首制論者、天皇制廃止論者の双方を含む)からの批判的見解が出始めていますし、象徴天皇制支持者であっても、受け取り方次第では、批判しようと思えばいくらでもその余地がある「おことば」でしょう。
 ただし、私としては、「天皇退位」問題についての自らの基本的見解をまとめられるようになるまでは、一々のことに感想を述べるつもりにはなれません。

 とはいえ、例えば上記「日テレNEWS24」などで、「生前退位を可能にするために皇室典範を改正するのか、今の天皇陛下のみに適用される特例法を制定するのか、などの方針については定まっていない。」などと報じられているのを読むと、この記事を書いた者は憲法を読んでいないのか?と言いたくもなりますよね。
 
日本国憲法
第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範 の定めるところにより、これを継承する。
 
 この規定のどこをどう読めば、皇室典範ではない「今の天皇陛下のみに適用される特例法」で、生前退位(つまり「皇位の継承」です)を可能と出来るのか、訳が分かりません。あるいは、憲法9条の下でも集団的自衛権の行使を可能としてくれた今の内閣法制局なら、特例法による生前退位を認めることなど何でもないのかもしれませんけどね。
 
 これだけでも驚いたのに、以下のFNNニュースには仰天しましたね。既に昨日からネットで大きな話題になっていますので、今さらのような気はしますが、これは記録にとどめておく価値はあるでしょう。
 
FNNニュース 08/08 19:29
「生前退位」可能となるよう改憲「よいと思う」8割超 FNN世論調査

(引用開始)
「生前退位」が可能となるよう、憲法改正をしてもよいと「思う」人が、8割を超えた。
FNNが7日までの2日間実施した電話による世論調査で、天皇が、生前に天皇の位を皇太子に譲る「生前退位」に関し、政府のとるべき対応について尋ねたところ、「『生前退位』が可能となるように制度改正を急ぐべきだ」と答えた人は、7割(70.7%)だった。
「慎重に対応するべきだ」と答えた人は、2割台後半(27.0%)だった。
今後、「生前退位」が可能となるように、憲法を改正してもよいと思うかどうかを聞いたところ、8割を超える人(84.7%)が改正してもよいと「思う」と答え、「思わない」は1割(11.0%)だった。
(引用終わり)
 
「政治に関するFNN世論調査」(2016年8月6日(土)~8月7日(日))
全国から無作為抽出された満18歳以上の1,000人を対象に、電話による対話形式で行った。

(抜粋引用開始)
Q13. 現在の皇室制度では、天皇が生前に退位し、天皇の位を皇太子に譲る「生前退位」の規定がありません。生前退位について、あなたは、政府がどのように対応すべきだと思いますか。次の中から、あなたのお考えに近いものを1つ選び、お知らせください。
「生前退位」が可能になるように制度改正を急ぐべきだ 70.7%
慎重に対応すべきだ 27.0%
わからない・言えない 2.3%
Q14. 今後、天皇の「生前退位」が可能となるように、憲法を改正してもよいと思いますか、思いませんか。
思う 84.7%
思わない 11.0%
わからない・どちらともいえない 4.3%
(引用終わり)
 
 寡聞にして、私は天皇の「生前退位」を認めるために改憲が必要という学説は聞いたことがないのですが、もしかすると百地章日大教授あたりならそういう主張をしていますかね?(知りませんけど)。
 しかし、この世論調査の設問を作った者が、憲法の条文も学界の定説も、百も承知の上でミスリードするために意図的にこういう設問にしたのか、それとも「生前退位」を認めるためには本当に改憲が必要だと思い込んでいたのか、にわかに判断をつけかねますが、それをまた麗々しく「「生前退位」可能となるよう改憲「よいと思う」8割超 FNN世論調査」という見出しで大きく報道しますかね。
 ちなみに、産経ニュースでもこの世論調査結果なるものは大きく報じられていますが、FNNにしても産経にしても、別にデスクの責任問題になったりはせず、「改憲の気運の盛り上げに貢献した」ということで、社内的なポイントアップになるのでしょうか?
 本来、同業他社から批判が出て当然だと思うのですが、日本のマスメディアはやりそうもないなあ。