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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

7.1閣議決定についての木村草太説を振り返り 10.29木村草太氏講演会(和歌山県保険医協会)に期待する

 今晩(2016年9月1日)配信した「メルマガ金原No.2556」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
7.1閣議決定についての木村草太説を振り返り 10.29木村草太氏講演会(和歌山県保険医協会)に期待する

 1980年生まれの若き憲法研究者・木村草太(きむら・そうた)氏の名前を初めて私が意識したのは、それほど以前のことではありません。何しろ、基本的にテレビは見ない、ラジオは聞かない、新聞も熱心には読まないという習慣が身についてかなりになりますので(3.11以降はその傾向が顕著になりました)、若手ながら、様々なメディアに登場する機会の多い憲法学者という声望に接したのは、あることをきかっけに、「木村草太」という名前を憶えた後のことでした。

 巻末に、私のブログで木村草太さんを取り上げた記事を抜き出しておきましたが、その冒頭の記事で書いたとおり、2014年7月1日の閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」に対して、変わった解釈を示している憲法学者がいるということを、ビデオニュース・ドットコムで知ったのがその「きっかけ」でした。
 
 何が驚いたと言って、2014年7月時点での木村説というのは、7月1日閣議決定で容認した「集団的自衛権」というのは、これまで政府が個別的自衛権として容認してきたものの内、集団的自衛権としても説明できる、すなわち、個別的自衛権と集団的自衛権が重なった部分を取り出して「集団的自衛権」と呼称しているに過ぎず、これまでの個別的自衛権の範囲を超えるものではない、というものだったのですから、それは驚きますよね。
 ビデオニュース・ドットコムでの鼎談で、神保哲生さんや宮台真司さんも、ややあっけにとられているように私には思われました。
 
 

 おそらく、憲法学界でこの木村説を支持した人はあまりいなかったのではないかと想像するのですが(学界の内情など知りませんが)、その後、この木村説がどうなったかということについては、2015年6月13日に書いた「あらためて「存立危機事態」の解釈を問う~木村草太説と公明党(北側一雄氏)の認識」が一応の到達点を確認した記事なので、私の意見をまとめた部分を、煩をいとわず引用したいと思います。
 
(抜粋引用開始)
 さて、木村准教授の解釈は、文理解釈を基本としており、それなりに筋が通っているような気もする一方、7月1日閣議決定についての解釈の時と同様、どうもそのままには受け取れないなあ、という違和感があります。
 それは、ホルムズ海峡の機雷掃海にあくまでこだわる安倍晋三首相や、自分が何を言っているのか本当に理解しているのか時として疑わしい中谷元防衛相の答弁から推測される政治家の思惑からは一応離れた法律解釈論として、存立危機事態とは「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」することによって、同時に我が国に対する武力攻撃の着手があったという事態を意味するという木村説にはやはり無理があると思うのです。
 たしかに、武力攻撃事態法(改定案)の第2条4号の定義規定だけを読んで木村説に耳を傾けると、正しい解釈のような気がするのですが、仮にその解釈に立つとすると、「存立危機事態=武力攻撃事態」、より正確に言えば「存立危機事態<武力攻撃事態」ということになるのであって、そうであれば、なぜ武力攻撃事態とは別に存立危機事態という新たな類型を設け、武力攻撃事態と存立危機事態とを並立させ、各事態発生の認定、それに対する対処等を別々に規定しなければならないのかということについて、合理的な説明をつけかねるのではないか、ということが根本的な疑問です。
 さらに、自衛隊法改定案によれば、武力攻撃事態と存立危機事態のいずれにも共通して適用される規定が多いものの、武力攻撃事態には適用されるが、存立危機事態は明文で適用除外となっている以下のような諸規定があります。
  第77条の2(防護施設構築の措置)
  第80条(海上保安庁の統制)
  第92条(防衛出動時の公共の秩序の維持のための権限)
  第92条の2(防衛出動時の緊急通行)
  第103条(防衛出動時における物資の収容等)
自由法曹団「逐条検討・戦争法制 安全保障一括法案を斬る!」(2015年6月3日)7頁参照
 これらは、いずれも日本の領域(領土、領海等)内における防衛出動を前提とした規定であることからすれば、改定自衛隊法は、存立危機事態において、我が国の領域内に自衛隊を防衛出動させることなど想定しておらず、もっぱら海外派兵を念頭に置いていることは明らかでしょう。
 もちろん、存立危機事態でありかつ武力攻撃事態でもあるということがあり得ることは、政府・与党協議でも明示されていたところですが、とにかく今般の法制の建て付けとしては、木村草太説のように、存立危機事態が全て武力攻撃事態に包摂される(存立危機事態<武力攻撃事態)というのではなく、重なる部分はあるものの、それぞれ別個の適用範囲を持つ2つの円というのが正しい解釈であろうと思います。
 つまり、
 ①存立危機事態ではあるが武力攻撃事態ではない事態
 ②存立危機事態であるとともに武力攻撃事態でもある事態
 ③存立危機事態ではないが武力攻撃事態である事態
という3つの事態があることを前提に、今次の戦争法案における存立危機事態の解釈としては、②だけであるという木村説はとりがたく、①+②だろうというのが私の理解です。
(引用終わり)
 
 これに引き続き、「そして、公明党北側一雄氏(副代表、与党協議における公明党の責任者)自身が、①+②説に立つことが6月4日の衆議院憲法審査会で明らかになったということを、6月9日のTBSラジオ「荻上チキ Session-22」に長谷部恭男早大教授とともにゲスト出演した木村草太氏が語っておられましたので(その後の長谷部恭男教授(早稲田大学)~TBSラジオと高知新聞インタビューから/2015年6月11日)、その動画を再視聴してみました。」と書いたとおり、木村草太氏自身、安保法案を提出した政府・与党の解釈は、自説と合致するものでなく、そうである以上、安保法案は憲法に違反するという意見に固まったのだろうというのが私の理解なのです。
 
 さて、長々と2年前の7.1閣議決定から昨年の安保法案に至る木村草太説を振り返ったのは、来月(10月29日)、木村さんが和歌山市で初めて講演されることになり、そのご案内をしようと思うにつけても、私が木村草太氏講演会の紹介記事を書く以上、単なるマスメディアによく登場する有名な若手憲法研究者の講演会がありますよ、というだけでは私自身が物足りない。2年前からフォローしてきた木村草太説について触れない訳にはいかないだろうと思ったからです。もっとも、こんな細かな学説やそれに対する批判など、誰も興味ないかもしれませんけどね。
 
 ただし、以下に引用する10月22日の講演会チラシの講師紹介にあるとおり、木村草太さんは、集団的自衛権や安保法案についての見解を論考として発表されており(『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』(晶文社、2015年)、『検証・安保法案 どこが憲法違反か』(長谷部恭男編著、有斐閣、2015年)など)、その学説を批判しようというのであれば、本来それらの著作に目を通すことが最低限の礼儀でしょうが、とてもそんな時間もなければ意欲もなく、これらの著作を読めていないことをお断りしておきます。

 
 
 そもそも、憲法研究者でも何でもない私が、ある意味非常に刺激的な木村草太説をめぐってあれこれ考え続けたのは、木村説を触媒として、7.1閣議決定や安保法案の理解を少しでも進めたいという意識に促されてのことであったと、振り返ってみればそう思われます。
 結果として、木村説を支持することはできませんでしたが、私の安保法案理解が自分なりに相当進んだことは間違いありません。そういう意味から、木村草太さんには心から感謝しているのです。
 
 さて、その木村草太さん(首都大学東京教授~今年の4月から教授です~)の初の(のはずです)和歌山市での講演会です。主催者である和歌山県保険医協会事務局からチラシのデータをお送りいただきましたので、その内容をご紹介します。
 チラシに書かれた「立憲主義諸国の憲法との比較、今の憲法ができた沿革などをお話いただきます。」が、どの程度当日の講演で実現するかは「行ってみないと分からない」のですが(講演会というのはそういうものです)、そのとおりの内容が講演の柱となっていれば、大いに期待したいですね。
 速報的に私のFacebookタイムラインにこの講演会開催のニュースを伝えたところ、非常に反響がありましたので、プラザホープ4階ホールが溢れるのではないか?と本気で心配しています。
 
チラシ文字情報から引用開始)
和歌山県保険医協会 第39回定期総会 記念講演
「テレビが伝えない憲法のはなし」
~今起きていることを、憲法学者はどのように捉えるか~
 
とき 2016年10月29日(土)午後4時~6時
ところ プラザホープ4Fホール
       和歌山ビッグホエール北隣
        和歌山市北出島1丁目5番47号 【TEL】073-425-3335
参加費 無料
 
講師 木村草太先生首都大学東京 都市教養学部法学系教授)
1980年神奈川県生まれ。東京大学法学部卒、同大大学院法学政治学研究科助手、首都大学東京 都市教養学部法学系准教授を経て、今年4月から教授に。専攻は憲法学。
著書に『憲法の急所――権利論を組み立てる』(羽鳥書店、2011年)『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書、2012年)『憲法の創造力』(NHK 出版、2013年)『テレビが伝えない憲法の話』(PHP 新書、2014年)。
共著には、『憲法学の現代的論点(第2版)』(有斐閣、2009年)、『憲法学再入門』(有斐閣、2014年)、『未完の憲法』(奥平康弘共著、潮出版社、2014年)、『「学問」はこんなにおもしろい!――憲法・経済・商い・ウナギ』(講談社、2014年)、『憲法の条件――戦後70年から考える』(大澤真幸共著、NHK 出版新書、2015年)、『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』(國分功一郎共著、晶文社、2015年)、『検証・安保法案 どこが憲法違反か』(有斐閣、2015年)、『ぼくらは未来にどうこたえるか』(大澤真幸小野善康中島岳志共著、左右社、2016年)がある。
 
 「改憲に積極的な国会議員が、衆参両院で3分の2を占めるに至った」という報道もあり、憲法について注目が集まっています。
 もっとも、それぞれの政党で、どこをどう改正するか主張は異なっており、また、改憲反対とされる政党にも、憲法改正に前向きな議員がいます。
 今なされている憲法論議を追うには、「改憲勢力」や「護憲派」といった大ざっぱなくくりではなく、それぞれの論者の主張を丁寧に分析することが必要でしょう。
 そのためには、憲法立憲主義について、明快な理解が必要です。
 今回、報道ステーションに出演されておられた若き憲法学者の木村草太先生(首都大学東京教授)をお招きして、立憲主義諸国の憲法との比較、今の憲法ができた沿革などをお話いただきます。
 この機会に憲法について理解を深め、今起きていることをどう捉えたら良いのかを一緒に考えてみませんか。
 
主催 和歌山県保険医協会
     〒640-8157 和歌山市八番丁11番地 日本生命和歌山八番丁ビル8F
       電話:073-436-3766 FAX:073-436-4827
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2014年7月22日
「閣議決定」についての木村草太氏の見解に耳を傾ける(ビデオニュース・ドットコム)
2014年10月28日
7月1日閣議決定についての木村草太氏の解釈には無理がある
2015年4月1日
木村草太氏の那覇市での講演動画の視聴をお勧めします(3/31)
2015年5月25日
「哲学と憲法学で読み解く民主主義と立憲主義」(國分功一郎氏&木村草太氏)を読む

2015年6月13日
あらためて「存立危機事態」の解釈を問う~木村草太説と公明党(北側一雄氏)の認識

2016年3月31日
開催予告5/14「憲法という希望~対談:木村草太×国谷裕子」(大阪弁護士会)
 
 

(付録)
『灰色の街』 作詞・作曲:長野たかし 演奏:長野たかし&森川あやこ
 

木村草太チラシ