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10月29日の冒険~『法華経』、『標的の村』、木村草太氏講演会

 今晩(2016年10月29日)配信した「メルマガ金原No.2614」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
10月29日の冒険~『法華経』、『標的の村』、木村草太氏講演会

 まだ私が「メルマガ金原」も始めておらず、もちろんブログなどにも手を出していなかった頃、私の年
長の知人がブログを始められ、その意気込みを示す文章を読んだところ、「ブログはインターネットで読める日記」という趣旨のことが書かれており(間違っているかもしれませんが、私の記憶ではそうなっています)、私自身、日記をつける習慣はなかったものの、「別に日記を全世界の人に公開する必要はないのではないか?」という疑問をいだいたものでした。
 
 しかし後年、自分自身でメルマガを転載する形でブログをスタートさせ、行きがかり上、「毎日更新」することを公約してしまったため、時には否応なく、その日の「活動報告」というか「日記」というか、そういうものを書かざるを得ないことも珍しくなくなりました。
 今日のように、朝からいくつもの行事をはしごして多忙な1日を過ごした後、それと全く無縁の素材を探す元気はさすがに残っておらず、いささか雑然とした「身辺報告」になりそうなのですが、やむを得ません。
 
【10時10分~11時10分/和歌山市内の某法律事務所】
 和歌山弁護士会一の読書家かつ蔵書家のT先生を中心とした弁護士有志による輪読会が数年前から続いており、こういうところに参加でもしなければ、絶対に読む機会のない書籍を何冊か読んできました。
 最初に取り上げられたのが、大沼保昭著『国際法―はじめて学ぶ人のための』(東信堂という、非常に異色の、しかもレベルの高い国際法の教科書でした。

 輪読会でこの本を読んでいたおかげで、大沼先生がアジア女性基金の理事として、いわゆる「慰安婦問題」に尽力されたことも知ることができ、その関連でブログを書いたりもしました(“慰安婦”問題を考える様々な視点(たとえば「アジア女性基金」)「慰安婦」問題に立ち向かう「強い意志」~大沼保昭氏と朴裕河氏の会見(2/23日本記者クラブ)を視聴して)。
 この輪読会で取り上げられる書籍は、日々の法律業務に役立つものからどんどん離れていく傾向が顕著であり、その後取り上げられた本をざっとご紹介すると、以下のようになります。
日本法制史』(青林法学双書)  牧 英正、藤原 明久編

『ローマ法案内―現代の法律家のために』(羽鳥書店) 木庭 顕著

イスラーム法における信用と「利息」禁止』(羽鳥書店) 両角吉晃著

 そして、今読んでいるのが、
法華経 上・中・下』(ワイド版 岩波文庫) 坂本幸男、岩本 裕校注

で、今日ようやく中巻が終わったところです。
 どうでしょうか、自分1人でこれらの本を読み通すことって、普通ないでしょう?そもそも手に取ることすらない本もあったりします。
 
【13時00分~14時31分 橋本市産業文化会館「アザレア」3階会議室】
 午前中の輪読会を早退させてもらい、車で橋本市高野口町の「アザレア」を目指しました。岩出から高野口間は、自動車専用道路(京奈和道)が無料で通れるのでこれを利用し、スムースに高野口インターを降りたところまでは良かったのですが、初めて行く「アザレア」の場所をよく確認していなかったため、少し道に迷ってしまって時間をロスし、ようやく午後の上映開始の15分前にたどり着いた時には駐車場が満車になる寸前でした(ぎりぎり駐められて良かった)。今日は、14時からメインホールにおいて、第5回「乳がんいのちプロジェクト市民公開講座」として、『112日間のママ』(小学館)の著者・清水健さん(読売テレビアナウンサー)の講演会が行われることになっており、もう少し到着が遅ければ、車を駐めるところを見つけるのにまた右往左往しなければならないところでした。
 1階ロビーの人混みをかき分け、映画『標的の村』上映会が行われている3階の会議室まで行ってみると、午前11時からの第1回上映を見終えたばかりの(和歌山市から来ていた)知人数人と出会い、その関心の高さをあらためて実感しました。
 知人の多くが、16時から和歌山市のプラザホープで開かれる木村草太氏講演会を目指して会場を去ってゆく中、私も同じ講演会に参加予定ではあるものの、『標的の村』の13時からの2回目上映を鑑賞することになりました。
 この三上智恵さんの第1回監督作品『標的の村~国に訴えられた東村・高江の住民たち~』(91分)については、既に予告記事(10/29映画『標的の村』自主上映会@和歌山県橋本市のお知らせ~今の沖縄問題が90分で分かる!)に書いたとおり、沖縄限定放送用の60分ヴァージョンが一度関西でも放送され、私はそれを録画して視聴していましたので、だいたいの作品の流れは分かっていましたが、初めて91分の劇場用ヴァージョンを観ることができて、やはりテレビ60分版(といっても実質は50分余りですが)以上の感銘を受けました。
 どの部分がテレビ版になく、劇場版で加えられた部分なのかは、もう一度録画を観てみないとはっきりとしたことは言えませんが、私は、劇場用のために寄せた森達也氏(作家・映画監督)の推薦の言葉を思い出し、「そのとおりだ!」とうなずいていました。現場の記者(琉球朝日放送報道部)がどちらの側に立って報道しているのかが、テレビ60分版に比べても、よりひしひしと伝わってきましたから。
 森氏の推薦文を再掲します。
「公正中立などありえない。なぜなら情報は視点なのだ。主観的で当たり前。ところが現在のマスメディアは、ありえない公正中立を偽装している。特に大メディアになればなるほど、この建て前は崩せないのだろうか。……僕のその思いを、この作品はあっさりと覆した。全編にみなぎる人々の怒りと悲しみは、撮影クルーや取材する記者たちの怒りと悲しみの声でもある。すがすがしいほどに主観全開。それでいい
。だってそれが本来のメディアなのだから。」
 ちなみに、この映画が取り上げているのは、2012年秋のオスプレイ普天間基地配備までの状況です。SLAP訴訟を住民に仕掛けたのは自・公政権でしたが、オスプレイ配備をぎりぎりまで秘匿しながら普天間配備を強行したのは民主党政権(野田内閣)でした。これはしっかり憶えておきましょう。
CIMG6676 それから、1回目の上映がどうだったかはよく分からないのですが、2回目の上映では、小さいお子さ
ん連れのお母さんたちの姿が目に付きました。主催者のママ友だろうか?しかも、子どもたちがみんな真剣に画面に見入っているのには感心しました。映画に同年代の女の子や男の子が出てきたからかもしれませんが。
 和歌山市でも上映しようと企画している団体があるようですが、もしも実現する場合には、今日の橋本上映会のように、是非たくさんの子どもたちにも観てもらいたいと思います(当然子どもは無料で)。
 写真は、個人で(お友だちと2人でだったかな?)この上映会を企画された草島さんです。上映会後の座談会(交流会?)に参加する時間があれば良かったのですが、16時からの木村草太氏講演会に間に合わせようとすると、映画が終わった直後に会場を飛び出さないと間に合わなかったので、ろくにお話をすることもできなかったのは残念でした。是非また別の企画のおりにでもゆっくりとお話が出来ればと思います。
『標的の村』劇場予告編
 


【16時00分~17時50分/和歌山県勤労福祉会館プラザホープ4階ホール】
 橋本市高野口町から車で和歌山市にとって返し、プラザホープで開催された和歌山県保険医協会第39回定期総会記念講演「テレビが伝えない憲法のはなし」(講師:木村草太首都大学東京教授・憲法学)に滑り込みました。
CIMG6678 会場は、あふれるところまでは行きませんでしたが、200数十人の聴衆でぎっしり埋まり、私も、主
催者が最後方に出してくれた予備椅子に座り、最後までじっくりと聴講することができました。
 なお、この講演会の予告記事(7.1閣議決定についての木村草太説を振り返り 10.29木村草太氏講演会(和歌山県保険医協会)に期待する)に詳しく書いたとおり、ここ2年余り、憲法学者としての木村草太さんの意見については、かなり詳しく私のメルマガ(ブログ)でフォローしてきましたし、また、今日の講演の中で木村さんが詳しく紹介された、安保法案強行可決直前に与党と弱小3党との間で締結された5党合意、それに基づく参議院附帯決議、その附帯決議を「尊重する」との閣議決定については、「メルマガ金原」(及びブログ)で逐条解説を連載していたくらいですから、私のメルマガ(ブログ)をきっちりと毎回読み込んでくださっていれば、「意外な話」などはほとんどなかったはずです。とはいえ、そんな熱心な読者はまあいないでしょうけど。
 ということで、今日の講演の内容を詳しくレポートするだけの用意はありませんので、2点に絞って参
考サイトをご紹介するにとどめます。
 
[5党合意について]
 2015年5月15日に内閣から衆議院に提出されたいわゆる安全保障関連法案(「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」及び「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」の2法案)は、7月16日に衆議院を通過して参議院に送られました。参議院では、「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」(鴻池祥肇委員長)で審議が行われてきましたが、9月27日の会期末を控え、与党による強行採決が取り沙汰される中、9月15日には中央公聴会、翌16日には地方公聴会横浜市)が行われるという日程が確定しました。
 以上のような緊迫した情勢の中、自民・公明の与党と一部少数野党との間で修正協議が行われてきましたが、修正案を可決しても、会期末までに衆議院での再議決を行う時間的余裕はなく、結局9月16日、自由民主党公明党、日本を元気にする会、次世代の党、新党改革の5党は、「平和安全法制に関する合意事項」を内容とするいわゆる「5党合意」を締結し、これを踏まえ、翌17日の参議院特別委員会において「附帯決議」を付した上で安保関連2法案を可決し、9月19日未明の参議院本会議における採決によって両法案が成立したことを受け、持ち回りにより、閣議決定「平和安全法制の成立を踏まえた政府の取組について」が行われました。
 参議院における「附帯決議」に法的効力はありませんが、この「5党合意」の特徴は、合意事項を担保する方法として、「附帯決議」の他に「閣議決定」を行うことも合意されたことであり、この合意に基づき、9月19日に行われた閣議決定において、「4 政府は、本法律の施行に当たっては、上記3の5党合意の趣旨を尊重し、適切に対処するものとする。」とされました。
 この「附帯決議」について、浅学非才の身をもかえりみず、逐条解説を試みたのは、いずれこの「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」が重要な意味を持つ日が来るかもしれない(来て欲しくはないが)と思ったからです。とはいえ、残念ながら、私が書いた逐条解説が注目されたという気配は全くありませんでしたけどね。
 なお、今日の講演で木村草太教授が強調されていた、存立危機自体における防衛出動に例外なく国会の事前承認を要するとの点は、5党合意の2項前段「存立危機事態に該当するが、武力攻撃事態等に該当しない例外的な場合における防衛出動の国会承認については、例外なく事前承認を求めること。」のことです。ただし、この2項についての木村さんの解釈と私の解釈との間には、微妙な相違があるような気もするのですが。
 木村草太氏講演を機会に、是非多くの人にこの「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」に注目して欲しいですね。タリーズのコーヒーは飲まなくてもいいから(意味、分かります?)。
2015年10月4日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(1)~とにかく読むだけは読まなければ(資料編)
2015年10月5日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(2)~逐条的に読んでみた①(前文・1項)
2015年10月7日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(3)~逐条的に読んでみた②(2項)
2015年10月9日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(4)~逐条的に読んでみた③(3項)
2015年10月11日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(5)~逐条的に読んでみた④(4項)
2015年10月13日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(6)~逐条的に読んでみた⑤(5項)
2015年10月15日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(7)~逐条的に読んでみた⑥(6項)
2015年10月18日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(8)~逐条的に読んでみた⑦(7項、8項)
2015年10月20日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(9)~逐条的に読んでみた⑧(9項)
2015年10月25日
安保法制:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか(10・完)~私はこう読んだ(総集編)
 
辺野古新基地建設と日本国憲法
 米軍のための新基地建設は、地方自治体の権限を大きく制約するものであって、法律事項である(憲法92条)とともに、「一の地方公共団体のみに適用される特別法」(憲法95条)に他ならず、住民投票で過半数の賛成を要するが、そのような手続を践んでいない辺野古基地建設は違憲であるとの木村説が、憲法学界でそこそこ支持があるのか、それともないのか知りませんが、なかなか興味深い説でしょう。以下に、これに関連する木村さんの文章や講演動画をご紹介します。
沖縄タイムス+ 2015年2月3日
【木村草太の憲法の新手(1)】なぜ、住民投票もなしに、新基地建設が進むのか?
沖縄タイムス+ 2015年4月20日
【木村草太の憲法の新手】(6)「辺野古基地設置法」問われる首相の憲法理解
ポリスタ 2015年7月10日
「辺野古基地設置法」制定で住民の意思を確認せよ  木村草太
動画・木村草太氏講演会「憲法と沖縄~戦後70年の内実を問う」(29分30秒から)