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第12回「那賀9条まつり」とそこでお話しした「戦争法緊急事態条項とは」

 今晩(2016年11月20日)配信した「メルマガ金原No.2636」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
第12回「那賀9条まつり」とそこでお話しした「戦争法緊急事態条項とは」

 今日(11月20日)は、午前11時から、和歌山県紀の川市桃山町調月(つかつき)の那賀スポーツレクリエーションセンターを会場として、「九条を守ろう」那賀郡の会が主催する「那賀9条まつり」に行ってきました。
CIMG6778 様々な美味しい食べ物を提供してくれるブースや、新鮮野菜が驚きの価格で提供されるブースなどがあり、屋根付き固定ステージでは、音楽の演奏やフラダンスなどが披露されるという、和歌山城西の丸広場で開催している“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”によく似ているというよりも、まだ3回しか開催実績のない西の丸広場に対し、「那賀9条まつり」は今年が12回目の開催ということで、こちらの方がはるかに「先輩」なのですよね。

 さて、私が今年の「那賀9条まつり」を訪れたのは、プログラムの中の「平和について」リレートーク第1部で15分ほど話して欲しいというご依頼があったことによります。こういうリレートークが出来るのも、会場が適度にこぢんまりとまとまっていればこそだろうなあというのが、実際にしゃべってみた上での私の感想です。西の丸広場で同じことをやっても、広過ぎて誰も聴いていない、というか、誰も聴いているようには見えず、話し手の方が空しくなってしまうでしょう。

 おそらく来年の憲法記念日憲法施行70周年の節目の日)も、和歌山城西の丸広場では、“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2017”が開催されると思いますが、その企画の参考とするため、大先輩である「第12回 那賀9条まつり」の、本日会場で来場者に配られたプログラム(私が受け取ったもの)をPDF化するとともに、以下に転記します(若干補足・訂正した部分もあります)。

プログラムから引用開始)
2016年 第12回「好きなんよ 9条」まつり プログラム
11:00~ 開会のあいさつ(9条の会呼びかけ人 増田博さん)
 署名・カンパの訴えについて(司会者より)
11:15~ オープニング ウクレレ弾き語り(momoさん)
11:45~ 「平和について」リレートーク第1部
 戦争法緊急事態条項とは(憲法9条を守る和歌山弁護士の会 金原徹雄さん)
 教育の反動化について(那賀教組 覚道さん)
12:10~12:25 ビンゴ大会(金券500円×10人)
12:25~12:50 休憩(模擬店を散策して下さい)
12:50~13:10 バンド演奏(横出ファミリー)
13:10~13:30 フラダンス(年金者組合)
13:30~ 銭太鼓(新婦人紀の川支部桃山班)
13:50~ 「平和について」リレートーク第2部
 平和への願い、沖縄問題(田林さん)
 平和の願い、若者の訴え(光部さん)
14:15~14:35 バンド演奏(ROCK OUT)
14:40~14:55 みんなで歌いましょう 2曲(見上げてごらん夜の星を、一人の手)(うたごえ那賀、指揮 城さん)
14:55 閉会のあいさつ(赤山さん)
15:00 抽選会、終了
(引用終わり)
 
 私は、時間の都合で、開会から「休憩(模擬店を散策して下さい)」の途中までしかいられず、横出ファミリー(“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”での粉河高校軽音楽部の演奏でいつもお世話になっている横出先生のファミリーバンド)の演奏を聴くことが出来なかったのが心残りでした。いっそ、粉河高校のメンバーと一緒に来年5月3日のステージに登場してもらったら?

CIMG6781 ところで、私が貰ったプログラムには、「くじ引き抽選番号 0126」と印字されていますが、これは、閉会挨拶の後のお楽しみ「抽選会」まで残っていなかったので、当選していたかどうか不明です。
 ただし、私は12:10からのビンゴ大会では、真っ先に「ビンゴ!」となったうちの1人として、模擬店で使える金券500円分(100円券×5枚)をゲットしたのですよ。ただし、この金券については、残る賞品1人分となった最後で「ビンゴ!」になった3人の内、ステージ前でのじゃんけんに間に合わなかった小さな女の子に譲りました。というのも、私は「ビンゴ」の前に、主催団体から、出演料代わりに(?)金券500円分をいただいていましたので、何だかダブルでいただいたようで気が引けていましたので。
 結局、この金券は、カレーや焼きそばを食べ、野菜(白菜など)を買ったりして使い切りました(+500円出費)。
 西の丸広場の「売り」は「餅撒き」ですが、「那賀9条まつり」では、それが「ビンゴ」と「抽選会」なのですね。たしかに、「抽選会」の結果が気になる人は、最後まで残ってくれるでしょうから。
 
 さて、以下に、私が今日「那賀9条まつり」でお話したことのあらましを掲載します。ただし、これはスピーチ用原稿ではありません。本来なら、昨日のうちに原稿を書き上げ、今日のメルマガ(ブログ)にはその原稿をそのまま掲載する目論みだったのですが、書くための時間が確保できず、結局、原稿なしのアドリブでのスピーチとなりました。
 従って、以下に掲載するのは、「何を話したかなあ」と思い返しながら、「これも話せば良かった」という部分を補充したりした事後的「スピーチ用原稿」です。
 なお、緊急事態条項については、先月行った2回の講演で詳しくお話していますので、詳しくはそちらのレジュメをお読みいただければと思います。
 

第12回 那賀9条まつり
「平和について」リレートーク 第1部
「戦争法緊急事態条項について」
金 原 徹 雄 (憲法9条を守る和歌山弁護士の会)
 
 皆さん、こんにちは。ただいまご紹介いただきました弁護士の金原と申します。
 「那賀9条まつり」では、毎年楽しい企画が盛りだくさんということは聞いていましたが、おじゃましたのは今年が初めてです。
 今日私がお話することになったのは、「憲法九条を守るわかやま県民の会」の事務局長を通じて依頼があったからですが、どうせみんな模擬店のブースなどを回るのに忙しく、話をじっくり聴くような雰囲気ではないだろうから、せいぜい「みんなで頑張りましょう」という連帯挨拶を5分程度するのかな?と思っていたところ、主催団体事務局の部屋さんからFAXで届いたプログラムを読むと、「平和について」リレートーク第1部「戦争法緊急事態条項とは」となっており、その後電話で伺った部屋さんによると、「15分程度話して欲しい」ということでした。しかも、既にチラシは配布されており、今さらテーマを変更することは無理なようでした。
CIMG6789 だいたい、「戦争法」といえば、昨年9月19日に成立してしまい、今年3月29日に施行されたいわゆる安全保障関連法のことであり、対して、「緊急事態条項」というのは、戦争、内乱、大規模自然災害などが起きた際、行政権に権限を集中して緊急事態を乗り切るための憲法上の規定を設けるかどうかという問題です。私は、このいずれについても学習会で講師を務めてきましたが、どちらも少なくとも90分は時間をいただきたいとお願いする重大なテーマであり、それを、ひとまとまりのものとして「戦争法緊急事態条項とは」何かを、しかも15分で話をしろと言われても、これは至難の業ではないだろうか?と思わないではありませんが、まあ、何とかやってみることにします。
 
 ご承知のとおり、去る7月10日に実施された参議院議員選挙の結果、衆参両院で、自民、公明、日本維新の会、日本のこころを大切にする党などの「改憲勢力」が2/3以上の勢力を有するに至り、「明文改憲」が現実のものとなる条件が整いました。そして、いわゆる「緊急事態条項」を新設する改憲発議のなされる可能性が最も高いのではないかと言われていることは、皆さんご存知のことと思います。
 現に、日本会議神社本庁などの改憲勢力が結集した「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が作成したパンフレット類、あるいは「憲法おしゃべりカフェ」といった集会では、東日本大震災で、災害対応が十分に出来ず、多くの人が震災関連死したのは、憲法に緊急事態条項がないからだというとんでもないデマが平然と垂れ流されています。
 大規模自然災害に対する法的な備えについては、伊勢湾台風による甚大な被害を受けて制定された災害対策基本法を始め、多くの災害法制の整備が進んでおり、何より重要な災害対策は、緊急時に権限を現場の市町村に大胆に移譲することであり、中央政府に権限を集中するのは百害あって一利なしであることは、多くの識者が指摘しています。
 つまり、事前の法整備(憲法改正など必要ない)と、万一に備えた訓練や備蓄こそが災害による被害の最小化の王道であって、憲法に緊急事態条項を設ける必要などありません。 さらに、このことは、日本国憲法の制定過程を振り返ることによっても確認できます。
 日本国憲法は、大日本帝国憲法明治憲法)の改正案として、昭和21年に召集された第90回帝国議会の議に付され、同年中に制定・公布され、翌昭和22年5月3日に施行されました。
 その帝国議会の審議において、緊急事態条項についても議論されているのです。明治憲法には、帝国議会閉会中に発生した緊急事態に対処するためとして、緊急勅令(8条)や緊急財政処分(70条)などの規定がありましたが、日本国憲法は、参議院の緊急集会を例外としつつも、明治憲法のような緊急事態条項は設けないことにしていました。これについての議員からの質問に対し、憲法問題担当の金森徳治郎国務大臣は、次のように明確にその理由を述べています。
「緊急勅令及ビ財政上ノ緊急処分ハ、行政当局者ニ取リマシテハ実ニ調法ナモノデアリマス、併シナガラ調法ト云フ裏面ニ於キマシテハ、国民ノ意思ヲ或ル期間有力ニ無視シ得ル制度デアルト云フコトガ言ヘルノデアリマス」「此ノ憲法ハ左様ナ非常ナル特例ヲ以テ――謂ハバ行政権ノ自由判断ノ余地ヲ出来ルダケ少クスルヤウニ考ヘタ訳デアリマス」
 すなわち、現行憲法に旧憲法における緊急勅令や緊急財政処分などにあたる規定がないのは、単なる「不備」などではなく、明確な意図に基づいて「削除」されたのだということが明らかなのです。
 以上のことから、大規模自然災害に備えるために憲法に緊急事態条項を設ける必要があるという改憲勢力の主張には理由がないということはご理解いただけたでしょうし、改憲派が言い募る「デマ」に対しても、皆さん1人1人が十分に反駁できるはずです。
 
 残された問題が1つあります。それは、諸外国では憲法に緊急事態条項があるのが普通であるという改憲派の主張についてです。確かに、緊急事態条項のある国が多いという事実はありますが、それらの国は、みな「戦争をする」からこそ緊急事態条項を設けているのですね。日本は、絶対に「戦争をしない」と憲法で決意した国ですから、その不戦の決意を撤回せずに緊急事態条項だけを憲法に規定するというのは意味がないことになります。
 言い換えれば、改憲派が緊急事態条項を憲法に新設するように主張する本当の理由は、大規模自然災害への対処などではありません。それは、国民からの賛同を調達(盗み取ると言っても良い)するための手段に過ぎません。真の狙いは「戦争をする」ために、どうしても必要だからです。
 私たちは、このことを肝に銘じ、緊急事態条項を設けるとの「憲法改正」を何としても阻む決意を新たにする必要があります。
 ここで、ようやく「戦争法」と「緊急事態条項」が結びつきました。ごく雑駁ではありますが、「戦争法緊急事態条項とは」という主催者から指定されたテーマについてのお話を以上で終わります。ご静聴ありがとうございました。