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代表も司令官もいなくなった国連南スーダン派遣団(UNMISS)~半田滋さんの記事(現代ビジネス)を読む

 今晩(2016年12月3日)配信した「メルマガ金原No.2649」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
代表も司令官もいなくなった国連南スーダン派遣団(UNMISS)~半田滋さんの記事(現代ビジネス)を読む

 南スーダンの情勢はどうなっているのか?陸上自衛隊は無事に帰還できるのか?全ての日本人にとって
、悩ましい問題のはずです(どうしても自衛隊に「武力行使」させたい一部の人間を除く)。
 ところで、陸上自衛隊もそのミッションの一部に組み込まれている国連南スーダン派遣団(UNMISS)の軍事部門のトップであるオンディエキ司令官(ケニア)が更迭され、まだ後任も決まっていないとは、まことに心配なことだと思っていましたが、今日、講談社の「現代ビジネス」サイトに掲載された半田滋さんが書かれた記事によると、国連南スーダン派遣団(UNMISS)の代表を務めていたエレン・ロイ事務総長特別代表(デンマーク)が11月30日付で退任し、後任の代表も決まっていないということです。
 UNMISSの最高責任者も軍事部門の責任者も「いない」という、ほとんど「あり得ない」事態の中で、日
本の自衛隊を含むPKO要員が業務を行っているということであり、重大な事態が生じた時に迅速適切な判断と指示がなされるのか、重大な懸念があると言わざるを得ません。
 そういうところに自衛隊員を送り込んだ政権を選挙で支持した1人1人の国民が、こういう事態に無関心でいて良いはずはありません(選挙で野党に投票した人も、それだけで免責されるものではありません)。
 是非、リンク先で半田さんの記事をお読みください。
 
講談社 現代ビジネス 2016年12月03日 半田 滋
【スクープ】南スーダン「国連PKO代表」が不在の異常事態!
自衛隊は、本当に無事でいられるのか?

(抜粋引用開始)
 自衛隊国連平和維持活動(PKO)を行うために派遣されている国連南スーダン派遣団(UNMISS)。
その代表を務めたエレン・ロイ事務総長特別代表(デンマーク)が11月30日付で退任し、今月1日から代表の座が空席となっていることがわかった。11月には軍事部門のオンディエキ司令官(ケニア)が更迭され、やはり空席となっている。
 会社でいえば、社長と専務がいない状態だ。決断し、実行を命じるトップが不在では会社は成り立たな
い。UNMISSには副代表や軍司令官代理がいるものの、それでコト足りるなら、最初から代表や軍司令官は
不要ということになる。やはりこれは異常事態と見るべきだ。
 そんな中、陸上自衛隊第9師団(青森)を主力とする部隊は数次に分けて南スーダンへ出発した。UNMISS
の指揮命令系統のトップ不在という異常事態下で、武器使用を拡大した「駆け付け警護」「宿営地の共同
防衛」という新任務に12日から就くことになる。
 日本政府は派遣期間を延長した10月25日の閣議決定、新任務付与を命じた先月15日の閣議決定で、それ
ぞれ「基本的な考え方」を発表し、南スーダン情勢や新任務について踏み込んだ説明をしているが、UNMISS代表が不在となることには触れていない。自衛隊が派遣される首都ジュバを10月8日に訪問してロイ代表と面会した稲田朋美防衛相は自身の進退を含めた「今後のUNMISS」について説明を受けなかったのだ
ろうか。
2016年10月15日「派遣継続に関する基本的な考え方」
(略)
 UNMISS代表は事務総長特別代表という肩書が示すように、当該PKOについて、人事権はもとより、任務の
決定、予算の執行などあらゆる面で絶大な権限を持っている。UNMISSは国連加盟の約60カ国から軍事部門13058人、文民部門769人を集め、地元スタッフを加えれば15000人以上になる巨大な国連組織だ。
 そんな組織のリーダーが不在となった現在、二人いる副代表が役割を分担して補完しているようだ。い
つ代表が決まるのか、外務省国際平和協力室は「何も聞いていません」と答えるのみ。いつになれば代表
不在という異常事態が終息するのか、見通しはまったくたっていないという。
 ロイ代表より先に更迭されたオンディエキ軍司令官は、7月に起きた武力衝突で、指導力の欠如、準備不
足、指揮命令の混乱などの責任を問われた。国連の報告書によると、ジュバの政府軍と反政府勢力の間で武力衝突が発生した際、避難民が生活するUNMISSの保護施設も襲撃を受け、7月の3日間で20人以上の避難
民を含めて73人が亡くなった。
 報告書は「(オンディエキ軍司令官ら)幹部の指導力不足により、無秩序で非効果的な対応となった。
予兆があったのに、十分な警戒態勢もとらなかった」と指摘。政府軍兵士がホテル滞在者らに残虐行為をした事件についても、報告書は「政府軍兵士が略奪を始めた際、市民がUNMISSに通報したにもかかわらず、複数の部隊が出動要請を拒絶して市民らが殺人や威嚇、性的暴力などの重大な人権侵害にさらされた」
としている。
(略)
 問題はオンディエキ軍司令官の更迭を受けて、ケニア政府がUNMISSに派遣していた1000人の歩兵部隊を
撤収させることを決め、 近く全員が南スーダンから消えることにある。ケニア軍が治安維持を担っていた
のは北部のワウ、アウェイル、カジョクの三都市でいずれも州都にあたる。
 ワウでは中国の工兵部隊がケニア軍に守られて道路補修を続けており、さぞかし心細い思いをしている
に違いない。UNMISSはジュバを守る歩兵部隊を削って三都市に移動させ、治安維持を担わせる方針と伝え
られる。
  「ケニア軍が撤収するとなると自衛隊の宿営地があるジュバが治安悪化した場合、対応できないのでは、
という不安が出てくる」というのは陸上自衛隊幹部。「駆け付け警護」「宿営地の共同防衛」という新任務が追加されたとはいえ、主任務は道路補修などの施設復旧であることに変わりなく、部隊編成もこれま
で通りという。銃の扱いが得意な普通科(歩兵)部隊も増員されなかった。 
 治安状況を安定させようと、国連安全保障理事会は8月12日、ルワンダ、ケニア、エチオピアの近隣3カ
国で構成される4000人の「地域防護部隊」の追加派遣を決めた。当初は「介入軍」とみなして反対してい
南スーダン政府も受け入れを閣議決定している。
 ところが、こちらもケニアが不参加を表明したことで4000人のやり繰りが暗礁に乗り上げ、地域防護部
隊は現状では一人も派遣されていない。
 UNMISS代表と軍司令官の不在、ケニアの撤収、追加部隊の着任遅れという三重苦の中で、日本政府は撤
収するどころか、逆に武器使用の範囲を拡大させる新任務を自衛隊に命じたのである。
(略)
 国連が8月12日から10月25日まで2カ月以上に及ぶ情勢をまとめた報告書によると、ジュバとその周辺の
治安情勢について「『volatile(不安定な、流動的な)』状態が続いている」とし、「国全体の治安は悪化しており、とりわけ政府軍が反政府勢力の追跡を続けている中央エクアトリア州の悪化が著しい」と明
記した。同州にはジュバが含まれるのである。
 また国連人道問題調整事務所(OCHA)のジョン・ギング業務局長は11月16日、国連本部で南スーダン
視察した状況を報告、昨年の同時期より100万人多い、推定370万人が深刻な食糧危機に直面しているとし
て「食糧不足が今ほど悪化したことはなく、さらに悪化する情勢にある」と述べた。
 なぜこれほど日本政府と国連の見方が違うのか。安全保障関連法が成立して1年以上、また同法が施行さ
れて半年以上が経過した。自衛隊を活用する「積極的平和主義」を掲げ、成立を急いだ安保法がいつまで
も適用されないようでは説明がつかない、というのが安倍晋三首相の本音ではないのか。
 日々悪化する現地情勢に加え、PKO代表不在という不安。そのような中で、自衛隊が曇った目でしか状況
判断しない政府の犠牲者になる事態だけは避けなければならない。
(引用終わり)
 
 なお、「現代ビジネス」サイトには、伊勢﨑賢治さんも以下のような記事を書かれていますので、是非お読みください。
 
 伊勢﨑さんといえば、このところ、様々なメディアに積極的に登場して発言されています。そのうちの1つ、一昨日(12月1日)、BSフジ・プライムニュースに、柴山昌彦氏(内閣総理大臣補佐官衆議院員)とともに出演し、そのハイライトムービーが番組ホームページで視聴できます。なお、プライムニュースでハイライトムービーが見られるのは放送から10日間だけで、その後は文字起こししたテキストが代わりに掲載されます。
 番組の全体像を掴むためには、一度ハイライトムービーを見ておいた上で、後日テキストをじっくり読むのが良いと思います。