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「原発被害者の子どもに対するいじめについての声明」(12/22原発被害者訴訟原告団全国連絡会)を是非読んで広めてください

 今晩(2016年12月23日)配信した「メルマガ金原No.2669」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
原発被害者の子どもに対するいじめについての声明」(12/22原発被害者訴訟原告団国連絡会)を是非読んで広めてください

 東京電力福島第一原発事故福島県から横浜市自主避難した現在中学1年生の男子生徒が、転入先の横浜市立小学校でいじめを受けて不登校になった問題は、多くの人に暗澹たる思いを抱かせたことと思います。
 報道により、経過を再確認しておきましょう。
 
東京新聞 2016年11月9日 夕刊
横浜で原発避難の生徒にいじめ 第三者委、学校など批判

(抜粋引用開始)
 
東京電力福島第一原発事故福島県から横浜市自主避難した中学一年の男子生徒(13)が不登校になり、いじめ防止対策推進法に基づく調査の結果、横浜市教育委員会の第三者委員会が避難直後から同級生によるいじめがあったと認定し、市教委や学校の対応を「教育の放棄」などと批判する報告書をまとめたことが、生徒側への取材で分かった。
 報告書によると、生徒は小学二年だった二〇一一年八月、横浜市立小に転校。直後から名前に菌を付けて呼ばれたり、蹴られたりするなどのいじめを受け、小三になって一時、不登校になった。
 小五の時には、同級生から「(原発事故の)賠償金をもらっているだろう」と言われ、ゲームセンターでの遊興費などを負担。一回当たり五万~十万円を約十回、十人前後に支払ったと生徒は証言した。その後現在に至るまで不登校が続いている。
 第三者委は、学校側について「原発事故からの避難で内面的な問題を抱えた生徒への配慮に欠け、積極的に対応する姿勢がうかがえない」と指摘。金銭の授受そのものはいじめと認定していないが、いじめから逃れるためだったと推察できるとし、事態を把握しながら指導しなかったことを「教育の放棄に等しい」と批判した。市教委に対しても、重大事態と捉えず調査の開始が遅れ、生徒への適切な支援が遅れたとした。
 生徒側が昨年十二月、調査を求める申し入れ書を市に提出。推進法に基づき、市教委の諮問で第三者委が調査していた。
 両親によると、生徒は精神的に不安定でカウンセリングを受けている。母親は取材に「市教委や学校は指摘されたことを受け止め、二度と同じことを繰り返さないでほしい」と話した。
(引用終わり)
 
毎日新聞 2016年11月15日 21時17分(最終更新 11月15日 23時16分)
いじめ 福島から避難生徒、手記を公表 横浜の中1

(抜粋引用開始)
 
生徒側の代理人の弁護士が15日、記者会見し、生徒の手記と保護者の声明を公表した。生徒は手記の中で「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」などと書き記していた。
(引用終わり)
 
毎日新聞 2016年11月15日 19時26分(最終更新 11月15日 20時44分)
いじめ 不登校生徒の手記詳細 福島から横浜に避難

(抜粋引用開始)
「(加害児童生徒の)3人から…お金をもってこいと言われた」
「○○○(加害児童生徒名)からは メールでも 言われた」
「人目が きにならないとこで もってこいと 言われた」
「お金 もってこいと言われたとき すごい いらいらと くやしさが あったけど ていこうすると またいじめがはじまるとおもって なにもできずに ただこわくてしょうがなかった」
「ばいしょう金あるだろ と言われ むかつくし、ていこうできなかったのも くやしい」
「○○○(加害児童生徒名) ○○(加害児童生徒名) には いつも けられたり、なぐられたり ランドセルふりま(わ)される、 かいだんではおされたりして いつもどこでおわるか わかんなかったので こわかった。」
「ばいきんあつかいされて、 ほうしゃのうだとおもって いつもつらかった。 福島の人は いじめられるとおもった。 なにも ていこうできなかった」
「いままで いろんな はなしを してきたけど (学校は)しんようしてくれなかった」
「なんかいも せんせいに 言(お)うとすると むしされてた」

(引用終わり)
 
読売オンライン 2016年12月13日
原発避難問題 いじめ内容、一部公表

(抜粋引用開始~
 
2011年の東京電力福島第一原発事故後に福島県から避難した男子生徒(13)が、転校先の横浜市立小でいじめを受けた問題で、同市教育委員会は12日、これまで公表していなかったいじめの内容の一部を市議会で明らかにした。市議からは、市教委の対応の遅れを批判する声が相次いだ。
 この日は、市教委の第三者委員会が11月にまとめた報告書のうち、生徒が2~5年生時に「プロレスごっこ」と称して複数人から暴力を受けていたことなどが市議会の常任委員会で公開された。一方で、「内部調整が終わっていない」(市教委)などとして、5年生の時に同級生らから「賠償金もらっているだろう」などと言われたことについては、引き続き明らかにしなかった。
 生徒が不登校となったため、保護者が学校に「100万円以上の現金がなくなった」「2年生の時からいじめがあり、いじめられるのが嫌でお金を持っていった」などと相談したことや、「学校が話を聞いてくれない」と副校長に訴えたことなども伏せられた。
 生徒側の代理人弁護士は読売新聞の取材に「一歩前進だ」としながらも、「個人情報でない部分も非公開となっていることは問題だ」と指摘した。
(引用終わり)

 上記報道にいう横浜市教育委員会の第三者委員会というのは、「横浜市いじめ問題専門委員会」のことで、いじめ防止対策推進法(平成二十五年六月二十八日法律第七十一号)第14条3項「前二項の規定を踏まえ、教育委員会といじめ問題対策連絡協議会との円滑な連携の下に、地方いじめ防止基本方針に基づく地域におけるいじめの防止等のための対策を実効的に行うようにするため必要があるときは、教育委員会に附属機関として必要な組織を置くことができるものとする。」に基づき、横浜市いじめ問題対策連絡協議会等条例(平成26年2月25日条例第7号)によって設置された組織です。
 同条例によれば、いじめ問題専門委員会は、「教育委員会の諮問に応じて、法第1条に規定するいじめの防止等のための対策その他教育委員会が必要と認める事項について調査審議し、答申し、又は意見を具申する。」(第11条)とあり、今回の具体的ないじめ問題の調査は、「その他教育委員会が必要と認める事項について調査審議し、答申し、又は意見を具申する。」活動の一環として行ったということです。
 
 このような「いじめ問題専門委員会」は、多くの自治体が条例によって設置しており、教育学、医学、心理学の専門家などと並び、弁護士も委員に加わっているのが通例です。
 私自身、所属弁護士会の推薦により、和歌山県下の某市教育委員会が設置した「いじめ問題専門委員会」の委員を務めています。
 「いじめ問題専門委員会」が調査にあたる案件は、いじめ防止対策推進法第28条1項に定めるいじめ事案、すなわち、
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
のいずれかに該当すると認める(とりあえずの認定権は教育委員会にあるのでしょう)事案ということになるのが通常だと思いますが、仮にそこまでの認定に至らぬ段階であっても、いじめ防止のための適切な提言を心掛けねばと気持ちを引き締めています。
 
 ところで、昨日(12月22日)、東京都千代田区霞が関の司法記者クラブにおいて、原発被害者訴訟原告団全国連絡会の代表らが出席して記者会見を開き、「原発被害者の子どもに対するいじめについての声明」を発表しました。
 同会共同代表の1人である森松明希子さんのFacebookに「声明」全文が掲載され、「できるだけ多くの方々に広めて下さい。」ということでしたので、以下に全文転載することとしました。
 「声明」はその末尾で、「子ども社会で起きていることは、大人の社会を映し出している鏡のようなものです。「子どものいじめ」は,実は誰にでも起こりうることです。そして何よりも、被害者への「いじめ」はそれによって自死に至ることもある、人の命に係わる重大な問題であり、国際人権法と日本国憲法で保障された、基本的人権の侵害にほかなりません。」「子ども達に対するいじめがあってはならないことはもちろんですが、これを子どもだけの「子どものいじめ」問題として捉えるのでは不十分です。」と訴えます。
 原発避難者である児童生徒に対するいじめのさらに奥にあるものへの理解を訴えるこの「声明」に込められた思いを、1人でも多くの方に共有していただきたく、ご紹介しました。「拡散」にご協力いただければ幸いです。
 なお、記者会見の動画はないかと探しているのですが、残念ながら見つけられませんでした。

(引用開始)
         原発被害者の子どもに対するいじめについての声明
 
 2016年12月22日
 
                 原発被害者訴訟原告団国連絡会
                   共同代表 早川篤雄 中島孝 鴨下祐也
                           村田弘 森松明希子 金本友孝
 
胸が痛むいじめ事件
 横浜市の事例をはじめとして、各地に避難している原発避難者の子どもに対するいじめ事件が報道されています。
 私たちは、この「いじめ」の連鎖に深い悲しみと怒りに打ちひしがれています。どのような理由であれ、いじめは絶対に許されるものではないことを訴えます。本来学校は、子どもたちが安心して教育を受けられる場でなくてはならないはずです。管理が強化されているなかでも、学校は子どもたちの成長や悩みに寄り添い、すこやかな人格の形成を進める場であってほしいと願います。
 残念なことに、報道された原発避難者の子どもに対するいじめは氷山の一角です。そして、子どものみならず、大人の世界でも、心ない仕打ちや嫌がらせという事態が続いているのが実情です。全国21か所で提訴している私たちの裁判の中でも、以下のように、多くの法廷で、子どもや大人に対するいじめや嫌がらせがあることが明らかにされています。
・避難地から福島に戻り、新しい学校に転校、少し新学期から遅れたために、いじめにあった。その結果不登校になり、転校した。
福島県民と分かると差別されるので、出身地を言えない。隠れるように生活している。
・福島から来ましたとあいさつをしたら、あなたとはおつきあいできませんと言われた。
 私達原発事故被害者は、このような事態が生じてしまう根底には、残念ながら、以下のとおり、原発事故による被害者が置かれた現状に対する周囲の理解が不足しているものと感じています。
 
原発事故による避難者が置かれた現状
 原発事故による避難者は、原発事故そのものによる被害を受けたばかりか、国や東京電力による誤った被害対応と、被害区域の線引きによる「分断」、不当な「帰還政策」による被害者の切り捨てによって、さらに苦しめられています。
 国と東京電力は事故発生の直後から、国による避難指示の範囲と被害補償をリンクさせる「分断」政策をとることによって、責任を曖昧にして賠償を低額にとどめようとしてきました。その ために被災者は、「避難するか、留まるか」という、いのちと健康に関わる個々の判断を「賠償」の有無という「基準」によって歪められてきました。
 その結果、被害補償の打ち切りによって不本意な帰還を余儀なくされ、他方では避難区域外からの避難者は、現に避難生活が続いているのに、何の保障も得られず、困窮に陥るという事態が生じたのです。
 さらに、事故後5年目を迎えた昨年から、国と東京電力は、「福島原発は終わった」「汚染水は完全にブロックされている」という誤った説明を繰り返して、「帰還強要」政策を強めました。
 すなわち、来年2017年3月には帰還困難区域を除いた避難区域を解除し、これと 合わせて賠償と住宅支援打ち切りという、被害者の切り捨てを強行しようとしており、福島県もそれを容認しています。
 他方で、帰還困難区域についても、復興支援住宅などへの「定住」を求める政策が始まっています。これらは、「もう安全だから避難など認めない」か、「もう戻れないのだから移住しろ」という両面によって、「避難者をいなくする=抹消する」ことを目論む政策と言わざるを得ません。
 その「論拠」として言われているのが「20ミリシーベルト以下の放射線被ばくには健康への影響はない、癌の発症率は、喫煙、肥満、野菜不足の方が高いなどという 「20ミリシーベルト安全論 」です。しかし、そのような言説は、国際的な放射線防護学の知見に反するものであり、ICRP(国際放射線防護委員会)の見解では、100ミリシーベルト以下においても、被ばくした線量に応じた影響があるとされています。それにもかかわらず、国と東京電力は、あたかも福島県全土が放射能汚染から解き放された安全な地域になった、帰らない方が悪いと思わせようとする政策をとり続けているのです。
 その目的は、賠償責任を小さくすることと、帰還の促進によって「復興」を進めようとすることです。こうした意図による「復興政策」「避難者抹消政策」のために、困難な避難生活をしている被害者が一層困難な状況に追いやられていることを、どうかご理解頂きたいと思います。
 このような 政策が実施され、さらにはその内実や被害者の置かれている実情の報道が不十分な中で、誤解と偏見が蔓延していることから、残念ながら、本来被害者である福島県民・原発被害者 に対し、「多額の賠償金をもらっている」とか「なぜ帰らないのか、わがままだ」という誤った理解や、歪んだ見方をしてしまう風潮がつくられていることも事実です。
 私達は、原発事故による被害者が置かれたこのような現状が周囲に十分に理解されていないことが、全国で報道されているような、いじめや嫌がらせにつながっているのではないかと感じています。
 
深刻な被害の継続と、 国と東電の明白な加害責任
 各地における被害者を原告にした裁判を通じて、避難区域からの強制避難者も避難区域外からの避難者も同様に、避難生活による著しい生活阻害による苦痛が今も続いていること、そして「故郷(ふるさと)の喪失」という深刻な被害が生じていることが明らかになっています。被災者の多くは、懐かしい町で家庭を築き、学び、働き、地域の暖かな交流の中で過ごしてきたのです。そうした大切な故郷(ふるさと)に戻れないということは、人間にとって耐えがたい事態です。
 そして、現在も多くの被害者が避難生活を続けていますが、皆、故郷(ふるさと)を深く愛しているけれども、「避難をする必要があるので避難を続けている」のです。誰が、深く愛している故郷を、理由もなく離れることができるでしょうか。
 原発事故被害者が受けている甚大な被害は、国と東京電力の過失によるものであり、法的責任を負うことも明白です。これまでに多くの専門家の知見によって、この事故は「想定外の自然災害」などではなく、東京電力津波によるシビアアクシデントの発生を予見できたこと、従ってこの事故を防止する手段を講じることが可能であったことが示されました。また、原発事業に対する安全規制の責任を負う国も、必要な規制権限の行使を怠っていたことが明らかにされています。
 それにも関わらず、被害者である避難者が、被ばくを避けるためにやむを得ず行っている避難生活について、心ない批判や理不尽な仕打ちを受けることは、まことに残念な事態です。
 
私たちは訴えます
 子ども社会で起きていることは、大人の社会を映し出している鏡のようなものです。「子どものいじめ」は,実は誰にでも起こりうることです。そして何よりも、被害者への「いじめ」はそれによって自死に至ることもある、人の命に係わる重大な問題であり、国際人権法と日本国憲法で保障された、基本的人権の侵害にほかなりません。原発事故にかぎらず、すべての災害の被災者は社会全体で保護すべきであることは国際人権法で確立されている原則です。
 子ども達に対するいじめがあってはならないことはもちろんですが、これを子どもだけの「子どものいじめ」問題として捉えるのでは不十分です。私たちは、上記のとおり、やむを得ず故郷(ふるさと)を失い、困難な避難生活を送っている深刻な被害、あるいは今も日々被ばくの不安にさらされている被害の実相について、多くの国民のみなさんのご理解を切に願うものです。それが、原発事故を二度と起こさないための、そして被害者への二重の侵害となるいじめを繰り返さないために必要な礎になると信じます。
 みなさまのご理解と温かいご支援をお願いいたします。
                                     以上
(引用終わり) 
 
 
 
 

(付録)
『Don't mind(どんまい)』 
作詞・作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ