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横田耕一九州大学名誉教授が日本記者クラブで語った「生前退位」(2016年11月16日)~憲法学の観点から

 今晩(2016年12月29日)配信した「メルマガ金原No.2675」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
横田耕一九州大学名誉教授が日本記者クラブで語った「生前退位」(2016年11月16日)~憲法学の観点から

 天皇生前退位問題については、政府の「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が、どこが「有識者」か?と疑わしい人物を多数含む「有識者」からのヒアリングを終え、特例法での退位容認という違憲の疑いが濃厚な方針で答申をまとめるのではとされる一方、民進党は12月21日、党内に設置した皇位検討委員会による「皇位継承等に関する論点整理概要版」を公表し、特例法ではなく皇室典範の改正によるべきと主張し、漫画家の小林よしのり氏が民進党案を全面的に支持するなど(今日、野田幹事長と小林氏がネット対談している)、風雲急を告げているかに見えます。
 
 私自身、この問題について色々思うところはあるのですが、メルマガ(ブログ)で取り上げることは躊躇してきました。それは、端的に言って「憲法」との関係をどう理解すべきかについての自分の立ち位置が、残念ながら確固としたものではないという自覚があるせいでした。
 
 従って、今日ご紹介する横田耕一先生(九州大学名誉教授・憲法学)による日本記者クラブでの会見動画及び会見詳録(テキスト)も、とても勉強になることは疑いなく、是非皆さんにも視聴(もしくは通読)していただきたいと思ってご紹介したのですが、だからといって、私自身が「横田説」に全面的に賛成か?と問われれば、「いやあ」と、まだまだ考え込まざるを得ないのです。
 ただ、最初にご紹介した、特例法で今上天皇の生前退位をさっさと片付けたがっている安倍・菅政権とそのお先棒をかつぐ有識者会議、そして彼らを「逆賊」と決めつけて全面対決を主張する小林よしのり氏などの今上天皇支持派(?)という2極対立というような単純な問題ではないのだ、ということに気付かせてくれる、まっとうな憲法研究者である横田耕一先生の憲法解釈に耳を傾けることは、この問題について「複眼的思考」を働かせるためのとても重要な視点を提供してくれると思います。
 
天皇による「生前退位」の意向表明は前代未聞の出来事として大きな衝撃を与えた。横田教授は、象徴天皇制を長年研究してきた憲法学者。今回の「お言葉」問題に関して、憲法学の諸学説などを紹介しながら、横田教授自身の見解を語ってもらった。
 政府見解では、天皇の行為には、国事行為、公的行為、私的行為の3 種類がある。しかし、横田教授は、憲法に根拠を持たない天皇の公的行為を認めた場合、①範囲・責任の所在が不明確②内閣による政治利用の危険性③天皇の意思で政治が左右されるなどの懸念があるので、「公的行為は違憲」と自説を展開した。
 今回の退位問題については、「生前退位自体には問題はないが、今回は、天皇の意思で政治が動いており、憲法的には大きな問題がある。天皇の意思を忖度して政府が主導すべきだった」と語った。」
 
 上記「要約」の最後の部分(下線を引きました)、会見での横田先生の発言は、以下のようなものでした。
 
「だから、何で宮内庁が、いろいろ理由はあるでしょうけれども、リークしてしまったか。あれが問題の間違いの元ですね。だから、ああやってザーッと動いてしまった。本来、ああいうことは内々の議論を踏まえて政治が考えることなんですね。天皇の発意で、天皇のお言葉だから大事にしなければいけない、早くしなければいけないなんていう動きになっているでしょう。これ自体が問題なんですよ。何で天皇の意思で日本が動くのか。国民の意思で動けばいいんです。
 天皇の意思を無視しろとかなんとか言っているわけではございませんよ。天皇の意思を忖度することは当然あり得るわけです。けれども、天皇の意思で、「お心をお心としてやらなければいけない」みたいな形で動いていく。これ自体が問題だというのが私が憲法学者として危惧する基本です。天皇の意思で日本の政治が動く、これが問題なんです。」
 
 しかし、毎日新聞が熱心に伝えているところによれば、今上天皇の生前退位の意向は数年前から周囲に伝えられ、さらに、昨年のうちに「おことば」案が官邸に打診されていたとということからすれば、少なくとも安倍・菅政権には「忖度」しようというようなつもりが全くなかったことだけは間違いないのでしょうけどね。
 

(付録)
『希求』 作詞・作曲:長野たかし 演奏:長野たかし&森川あやこ