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パブコメ締切まであと1週間!~原発事故費用・廃炉費用⇒東京電力が責任を取らないまま国民負担に!

 今晩(2017年1月10日)配信した「メルマガ金原No.2687」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
パブコメ締切まであと1週間!~原発事故費用・廃炉費用⇒東京電力が責任を取らないまま国民負担に!

 先月来、気にはなりながらメルマガ(ブログ)で取り上げてこなかったテーマがあります。それは、原発事故の処理費用や廃炉費用を国民に負担させるための枠組みを作ろうという国の方針であり、様々な団体が反対のアピールを出していますし、どういう風に取り上げたものか迷っているうちに時が経過し、気がついてみると、「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 電力システム改革貫徹のための政策小委員会 中間とりまとめに対する意見公募」なる長ったらしいタイトルのパブコメ募集期間が、あと1週間(1月17日まで)と迫っていました。
 そこで、とりあえず、このパブコメの募集要項と、その対象となった「中間とりまとめ」をご紹介することにしたいと思います。
 
(抜粋引用開始)
 経済産業省では、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の下に設置された「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(小委員長:山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授)において、競争活性化の方策と競争の中でも公益的課題への対応を促す仕組みの具体化に向け、検討してきました。
 本小委員会の検討結果を中間報告書としてとりまとめるにあたり、広く皆様からも御意見をいただきたく、以下の要領で意見の募集をいたします。
1.意見募集対象
 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 電力システム改革貫徹のための政策小委員会 中間とりまとめ
2.資料入手方法 略
3.意見募集期間(意見募集開始日及び終了日)
平成28年12月19日(月)~平成29年1月17日(火)
(郵送の場合は平成28年1月16日(月)必着)
4.意見提出先・提出方法
別紙の意見提出用紙に日本語で記入の上、以下いずれかの方法で送付して下さい。
(1)電子政府の総合窓口( e-Gov )意見提出フォーム
※(金原注)意見提出フォームへのアクセスはこちらのページから。
(2)郵送
(3)FAX
(4)電子メール
(引用終わり)
 
「電力システム改革貫徹のための政策小委員会 中間とりまとめ(案)」
※2016年12月16日に開催された小委員会で提案されたもの。実際にパブコメに際して公表された「中間とりまとめ」から(案)が外れていますが、どこか修正されたかどうかは未確認ですので、引用される場合には、「パブリックコメント:意見募集中案件詳細」から「中間とりまとめ」をダウンロードされることをお勧めします。
 
 ただ、いきなり「中間とりまとめ」(PDFファイルで34ページもある)を「読んでください」と言っても、何が特に問題なのか訳が分からないと思いますので、信頼するに足る団体の声明をまず2つお読みいただければと思います。
 1つは、「原子力市民委員会」が12月2日に発表した「声明:新たな東京電力救済策・原子力発電会社救済策は正当化できない」です。この12月2日というのは、「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」が「中間とりまとめ」を了承した12月16日よりも前ですが、大筋は明らかになっていたため、緊急に公表した声明です。声明自体は相当に長いものなので、同時に公表された声明の要旨を引用します。
 

同声明(要旨)
(引用開始)
原子力市民委員会 
 座長:吉岡 斉           
 座長代理:大島堅一、島薗 進、満田夏花 
 委員:荒木田岳、大沼淳一、海渡雄一、後藤政志、筒井哲郎、伴 英幸、武藤類子  
 2016年9月に入って経済産業省は、新たに2つの審議会を設置した。経済産業省に置かれる「東京電力改革・1F問題委員会」(略称:東電委員会)と、同省の総合資源エネルギー調査会に置かれる「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(略称:貫徹委員会)である。前者は東京電力救済を目的としている。後者は東京電力のみならず、全ての原子力発電会社(旧電力9社および日本原子力発電、ならびに将来原子力発電所を保有する電力会社)の救済を目的としている。
 2つの審議会は、2016年内にも、新たな東京電力救済策と、原子力発電会社救済策の骨子を定めることを目指している。もしそれが実現すれば、2つの深刻な事態が発生することになる。
 第1に、2011年3月の福島原発事故に係る事故対策費の支払いの大半を、事故対策活動を続けるために今後追加されていく支払いも含めて、国民負担に転嫁する仕組みが整うこととなる。ここで重要なのは電気料金(当面は新電力も含めた電気料金、2020年からは送電会社の託送料金)への上乗せによって東京電力救済資金が調達されることである。これにより国会の承認なしに際限なく値上げしていくことが可能となる。
 第2に、東京電力だけでなく全ての原子力発電会社が抱える原子力発電固有のコストを、同じように将来追加される支払いも含めて電気料金に上乗せし、国民負担に転嫁する仕組みが整うこととなる。当面予定されているのは廃炉コストだけだが、この仕組みを他の費目にも当てはめていくことは簡単である。今後も次々と巨額の国民負担を求める事案が浮上してくると見込まれる。しかも国会の承認なしに、新たな国民負担を、際限なく追加していくことが可能となる。
 たとえば使用済み核燃料再処理コストについては、2006年より再処理等積立金が電気料金に上乗せされ、現在までに5兆円余りが積み立てられたが、すでに半分以上が日本原燃に注入され、しかも日本原燃の再処理実績はほとんどない(425トン)。六ヶ所再処理工場では新規制基準適合のための工事が続いており、今後の再稼働の見通しも立っていない。この状態が続けば、再処理が進まぬまま積立金が枯渇し、新たな国民負担が求められる事態となる恐れが濃厚である。たとえ将来再処理が廃止されても、今までの国民負担は返還されない。
 今まで述べてきた2つの原子力発電会社救済策が導入されれば、福島原発事故の対策コストと原子力発電固有のコストを、簡単に国民に転嫁するメカニズムが完成することとなる。つまり単に今回限りの救済策ではなく、永続的な救済策が導入されることに相当する効果をもつこととなる。こうした深刻な事態を踏まえて原子力市民委員会は、原子力発電にともなう国民の犠牲を最小限にとどめるため、2つの提案をしたい。
 第1は、福島原発事故の対策費について、電気料金からの上乗せによる東京電力への追加注入の仕組みの導入を見送ることである。東京電力は、2011年の福島原発事故によって深刻な経営危機に陥ったが、同年6月の東京電力債務超過にさせないという閣議決定にもとづき、手厚い政府主導の支援策により今日まで生き延びてきた。しかし早期に経営破綻させるべきだった。福島原発事故を引き起こした企業として3月期に債務超過に陥ることを防ぐ必要はない。東京電力延命という政府の努力目標を記載した2011年6月の閣議決定も見直す必要がある。なお東京電力を破綻処理しても支払えない事故対策コストが、国民負担となることは止むを得ない。東京電力原子力関係者は、そのような結果をもたらす恐れのある原子力発電事業を進めたこと自体が誤りだったことを謝罪し、原子力発電廃止を決定すべきである。
 第2は、原子力発電固有のコストは、数ある発電手段の中から原子力発電を選んだ電力会社が負担すべきである。今になって原子力発電コストが割高であることが明らかになったからといって、新電力会社に背負わせるべきではない。しかも原子力発電会社はすでに原子力発電施設解体引当金を積み立てている。廃炉コスト見積りが上昇した場合は、引当金の増額で対応するのが筋である。
                                           以上
(引用終わり)
 
 もう1つは、「原子力資料情報室」が12月19日に発表した「福島原発事故の損害を消費者転嫁する前に東電の破産処理をすべきだ」という声明です。これは、3日前の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」での取りまとめの結果を承けた声明です。
 
原子力資料情報室 2016年12月19日
福島原発事故の損害を消費者転嫁する前に東電の破産処理をすべきだ

(引用開始)
 福島第一原発事故の損害費用を広く消費者に転嫁するという本末転倒した制度の導入が目論まれている。ことの発端は10月に東京電力がこのままでは債務超過になり経営破綻する恐れが出たことを理由に政府の救済を求めたことにある。政府は東電を破産から救済するために、「新制度」を導入して消費者転嫁をいっそう進めようとしている。私たちは、なし崩し的かつ上限のない青天井の救済策より、東電を破産処理した上で出直すことを求めたい。
 「新制度」の導入は2020年、総括原価方式が終了した時点である。損害費用は、現在は東京電力が電気料金を通して調達している。損害賠償費用が被災者目線で支払われていない問題があるが、それはともかく、例えば、発送電が法的に分離される2020年以降は、送電会社を通して損害費用を確保しようとするのが「新制度」である。こうすることで東電と契約解消した消費者も費用を支払わされることになる。4年も先に導入する制度をいま決めているのだが、いったん消費者転嫁の「新制度」が導入されれば、今後、増えていく損害費用に容易に対応できる。
 東電の損害額は賠償費用8兆円、除染・中間貯蔵5.6兆円、廃炉費用7.9兆円という。経産省が改めて見積もりをした結果だ。ただし、廃炉費用の金額は廃炉支援機構からのヒアリングを転記しただけで、経産省自身が見積もったものではないと、無責任な対応をしている。廃炉に要する金額はさらに膨らむ可能性が高い。不透明なのは、費用のうち事故炉の廃炉技術の開発費用は政府が負担していて、東電負担がどの割合かが明らかになっていない点だ。上記見積で廃炉費用がヒアリング結果を吟味せずにそのまま載せているのは、あえて政府負担分と東電負担分を明らかにしないために違いない。
 損害額のうち、除染費用4兆円は政府が購入した東電株(1兆円)の売却益を充てる皮算用だ。中間貯蔵1.6兆円は電源三法交付金から支出する。税金で賄うことになる。
 問題は賠償費用と廃炉費用だ。賠償費用は送電部門を通して確保したいという。いわゆる託送料金に加えるのだ。
 本来なら、東電が身を切って支払うべき賠償を消費者に転嫁することを合理づけるために、経産省は「過去分」という概念をひねり出してきた。「受益者負担の公平等の観点から、事故前に確保されておくべきであった賠償への備え(=過去分)」という。否応無しに原子力の電気を使わされてきた消費者も負担するのが「公平」だというのである。通常では考えられない理屈を振りかざしている。屁理屈さは次のように考えると明瞭だ。レストランが火災になり保険では支払いきれないので、これまでに食事をした方全員に不足分の負担を求めているのと同じようなものだ。
 理屈にならない屁理屈をとおすのだから、金額の根拠も数字合わせそのもので、2015年度の原発の設備容量と1966年から2011年までの設備容量を比較して3.8兆円とし、2020年までには1.4兆円を電気料金から徴収するから残り2.4兆円を託送料金に上乗せするという。
 また、廃炉費用は送電会社の利益で賄うという。合理化を進めその分も廃炉費用に充てる。これが「新制度」の内容だ。
 負担を消費者転嫁する「見返りに」、原発の電気を市場で取引できるように「ベースロード電源市場」を創設することも経産省は目論んでいる。一部の新電力が「安い」原発の電気を卸電力市場に出すことを求めていることへの対応だ。一般消費者はそんなことを望んではないだろう。むしろ原発の電気を使いたくないと考えている方たちが多数だ。それはともかく、すでにある日本卸電力取引所に既存の原子力事業者(大手電力会社)が原発や石炭火力などの「安い」電気を出さないからだといって、ベースロード電源市場を創設すれば機能するとは限らない。詳細は今後決めるというから、結局は市場創設に失敗し、損害費用の消費者転嫁だけが残る恐れが強い。
 東電を破綻させないことを前提に場当たり的な救済策を後付けしているから、理屈にならない論理を押し付けることになるのだ。菅直人元総理大臣が国会エネルギー調査会(準備会)(11月)の席上、2011年当時は事故の最中にあり東電救済が止むを得ないと考えたが、今なら東電を破産処理しても大きな問題は起きないので破産処理をするべきだと述べている。河野太郎衆議院議員は過去分をいうなら過去に原発であげてきた利益をまず差し出すべきで、また、火力など設備を売却して損害に充てるのが真っ当な対応だと主張する。
 東電経営陣や大株主が懐を痛めず、消費者に損害費用を転嫁することは認めがたい。東電の破産処理を行うことが先決だ。
                                       以上
(引用終わり)
 
 また、パブコメを書くための手引きとして、以下のサイトがよく推奨されています。
 
 
 最後に、この問題を考えるための参考動画です。
 
 
2016年12月20日 BSフジLIVEプライムニュース ハイライトムービー
『廃炉・賠償21.5兆円 なぜ従来試算の2倍に』
ゲスト 山本拓氏(自民党資源・エネルギー戦略調査会会長)、石川和男氏(社会保障経済研究所代表)、大島堅一氏(立命館大学国際関係学部教授)

※まもなくこのハイライトムービーは見られなくなり、代わってテキストアーカイブが公開されることになります。
  
2017年1月8日 IWJ兵庫 
政府は原発救済費用を電気代に上乗せするな!福島事故の賠償はまず東京電力に払わせよう!「原発負担金はお断り!神戸集会」 2017.1.8

※一昨日(1月8日)、「さよなら原発神戸アクション」が神戸市勤労会館で開いた集会です。環境経済学が専門の朴勝俊(パク・スンジュン)氏(関西学院大学教授)が、経産省が求める原発事故処理・賠償などの費用負担の仕組みと問題点を分かりやすく解説してくれています(チラシ参照)。