読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

南相馬市が全戸配布した憲法冊子(全条文収録)を市民はどう読んだか?~予告・ハートネットTV「シリーズ 暮らしと憲法 第三回 被災地(2/7)」「第四回 障害者(2/15)」

憲法 報道
 今晩(2017年1月23日)配信した「メルマガ金原No.2701」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
南相馬市が全戸配布した憲法冊子(全条文収録)を市民はどう読んだか?~予告・ハートネットTV「シリーズ 暮らしと憲法 第三回 被災地(2/7)」「第四回 障害者(2/15)」

 NHK・Eテレの「ハートネットTV」(毎週月曜~木曜午後8時00分~8時29分、再放送翌週月
曜~木曜午後1時05分~1時34分)で始まった「シリーズ 暮らしと憲法」の「第一回 女性」と「第二回 外国人」の再放送を紹介してから2週間が過ぎました。
 その時、「憲法施行70周年の5月3日まであと4ヶ月近くあるのですから、まさかこの2本で終わりということはないでしょう。」と書いたとおり、第三回と第四回の放送が予告されていました。テーマは「被災地」と「障害者」です。いずれも重要なテーマですが、わずか30分の放送枠の中で、どういう切り口から取り上げようとしているのか、とても興味があります。
 まず。番組案内を見てみましょう。
 
NHK・Eテレ 
本放送 2017年2月7日(火)午後8時00分~8時29分
再放送 2017年2月14日(火)午後1時05分~1時34分
ハートネットTV「シリーズ 暮らしと憲法 第三回 被災地」

(番組案内から引用開始)
放送内容
今年は、日本国憲法が施行されてから70年の節目の年。戦後日本は、憲法を道しるべに社会を築いてきま
した。しかし、憲法のことを普段は、あまり意識しないのではないでしょうか?ハートネットTVでは、シ
リーズで暮らしの現場から憲法を見つめていきます。
第三回 被災地
福島県南相馬市。昨年、全国で初めて全2万5000世帯に憲法の冊子が配布されました。そこは、憲法
の間接的な起草者と言われる鈴木安蔵氏の故郷です。第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」・・・終戦後、GHQや政府案にもなかったこの草案を作ったのが、安蔵氏を中心とした民間の憲法研究会でした。そんな安蔵の故郷に起きた、原発事故。そこに、憲法の理念は生
きているのでしょうか?
今回番組では、昨年7月に避難指示が解除された南相馬市小高区にカメラを据えました。1万人以上いた住民のうち、戻ってきたのは1000人程度。町の居酒屋やパーマ屋、酪農家の元に、突然、1冊の憲法が届けられたのです。原発事故という未曾有の試練を経験した人々は、憲法を手に何を想うのか。憲法
は何か?70年の時を経て、その問いに向き合う町で考えます。
(引用終わり)
 
NHK・Eテレ 
本放送 2017年2月8日(水)午後8時00分~8時29分
再放送 2017年2月15日(水)午後1時05分~1時34分
ハートネットTV「シリーズ 暮らしと憲法 第四回 障害者」

(番組案内から引用開始)
第四回 障害者
憲法に具体的な文言として明記されていない障害者。しかし今日では様々な法が整備され、社会生活支援
も提供されるようになってきています。その実現に大きな役割を果たしてきたのは他でも無い当事者の声。それはまさしく憲法12条が謳う「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」という理念そのものでした。現在もなお「不断の努力」を続ける障害者、そして憲法が制定された戦後からの障害者運動の歩みを振り返りながら、私たちはどう憲法と付
き合うべきなのかを考えます。
(引用終わり)
 
 「第四回 障害者」を憲法13条(個人の尊重、幸福追求権)や14条(法の下の平等)からではなく、12条から考えるという視点がユニークですね。日本国憲法12条の条文を、それと一体として読むべき11条、及び前記13条、14条とともに引用します。
 
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用す
る責任を負ふ。
十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利について
は、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治
的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
 
 そして、「第三回 被災地」です。
 福島県南相馬市で、昨年、「全2万5000世帯に憲法の冊子が配布され」たというのを初めて知りました。「南相馬市憲法冊子」でGoogle検索をすると、トップで毎日新聞の記事がヒットしました。
 
毎日新聞 2016年4月26日 15時00分
南相馬市 全戸に憲法冊子 原発事故で軽視された人権守る

(抜粋引用開始)
 福島第1原発事故の被害を受けた福島県南相馬市は、県内外の避難住民を含む全世帯約2万5000世帯に、憲法の小冊子を配布することを決めた。原発事故で今も約1万人が市外に避難しており、憲法が保障する国民の権利を見つめ直してもらう狙い。5月1日発行の市広報紙とともに全戸配布する。憲法は5
月3日、施行から69年を迎える。
 南相馬市では、旧原町市が憲法公布25年を記念し、1971年に小冊子を全戸配布したのに続く試み。市内に四つある市民団体「九条の会」が昨年2月、原発事故で軽んじられた基本的人権生存権を取り戻そうと、南相馬市議会に復刻を陳情した。同6月には、自民党に近い保守系会派の市議を含む全会一致
で、陳情を趣旨採択していた。
 小冊子はA6判で約60ページ。前文と全103条が記され、「震災と原発事故で憲法が保障する健康で文化的な生活がかなえられない市民がいる。憲法とは何かを考えていただきたい」という桜井勝延市長のあいさつが入る。約70万円かけて3万部を作成し、残部が出た場合も来年以降の成人式で配り、市外
の避難者には郵送する。
(略)
(引用終わり)
 
 そして、「南相馬市憲法冊子」Google検索で2番目にヒットするのが、南相馬市ホームページに掲載された桜井勝延市長による挨拶と全64ページに日本国憲法全文を印刷した冊子のPDFファイルです。
 以下に、桜井市長のあいさつをご紹介しましょう。
 
(引用開始)
市長あいさつ
 私たち南相馬市民は、東日本大震災東京電力福島第一原発の事故によって、大きな苦難に直面しまし
た。五年経った今でも、憲法で保障された健康で文化的な生活がかなえられていない市民が数多くいます

 このような中、政治を担う人たちから憲法改正を積極的に呼びかける動きが出てきました。
 しかしながら、東日本大震災によって人権の大切さを改めて痛感させられました。加えて、恒久平和
必要性を考えさせられています。
 子どもたちの未来のため、幸せのために私たちはどのような憲法を伝えていくべきなのでしょうか。私
たちの生活再建と安心して暮らせる環境を取り戻すため、日本の憲法とは何かを考えていただきたいと思い、本冊子を発行いたしました。
                           南相馬市長 桜井勝延
(引用終わり)
 
 桜井市長が「憲法で保障された健康で文化的な生活」と言及されたのは、南相馬市民が置かれた窮状を訴えるという他に、1945年12月26日に「憲法草案要綱」を発表し、その後のGHQ草案に大きな影響を与えた憲法研究会の中心メンバーであった鈴木安蔵氏が、相馬郡小高町(現南相馬市)出身であるということも当然念頭にあったことでしょう。
 
 制憲議会となった第90回帝国議会枢密院の議を経た帝国憲法改正案が勅書をもって提出されたのは、1946年6月20日のことでした。その帝国憲法改正案では、「健康で文化的な生活」はどのように規定されていたかというと、日本国憲法25条に連なる条文は23条でした。
 
帝国憲法改正
第二十三条 法律は、すべての生活部面について、社会の福祉、生活の保障及び公衆衛生の向上及び増進のために立案されなければならない。
 
 これが、制憲議会での審議を経てどのように修正されたかを見ておきましょう。
 
日本国憲法
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
 
 国の努力義務を定めていた原案を第2項に回し、その前に国民の基本的権利として第1項を規定することにしたもので、制憲議会における修正の中でも、最も重要なものの1つと言われています。
 そして、その基になったのが、憲法研究会「憲法草案要綱」の以下の条項でした。
 
憲法研究会「憲法草案要綱」 1945年12月26日
国民権利義務
一、国民ハ健康ニシテ文化的水準ノ生活ヲ営ム権利ヲ有ス
 
 鈴木安蔵氏は、憲法研究会の事務局を担っていましたが、一民間人に過ぎず、制憲議会に修正案を提案するようなことはできません。現行憲法25条1項の生存権規定を憲法に盛り込むように強く主張したのは、憲法研究会のメンバーの1人であり、「憲法草案要綱」の発表後に行われた戦後第1回目の選挙で衆議院議員に当選していた森戸辰男氏(日本社会党、政界引退後は広島大学学長等)であったと言われています。
 
 日本国憲法との所縁も深い南相馬市を襲った東京電力福島第一原発事故憲法はどのように生かされなければならないのか、全戸配布された憲法全文を、南相馬市民はどのような思いで読んだのでしょうか。この回のハートネットTVは是非とも視聴したいですね。
 
 ところで、行政が日本国憲法の全条文を冊子化して全戸配布したという例が、南相馬市(及び旧原町市)以外にもあるのか、残念ながら私は知らないのですが、ここでは、憲法施行(1947年5月3日)にあたり、GHQの指導もあり、貴族院衆議院の両院と政府が、帝国議会内に設置した「憲法普及会」が様々な(今から思えばその規模の大きさに驚きますが)普及啓発活動を行ったことが想起すべきでしょう。
 中でも、『新しい憲法 明るい生活』という30ページの小冊子が「直接国民への普及を図るために刊行され、全国の各家庭に配布され」ました。その発行部数は2,000万部にも及んだそうです。
※『新しい憲法 明るい生活』は、上記記のとおり、ネットでも読めますが、岩波現代文庫にも収録されています。