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「家庭教育支援法案」を考えるための基礎資料のご紹介~(付)「和歌山市家庭教育支援条例」を読む

 今晩(2017年3月29日)配信した「メルマガ金原No.2766」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「家庭教育支援法案」を考えるための基礎資料のご紹介~(付)「和歌山市家庭教育支援条例」を読む

 自民党が今国会に上程すべく準備してきた「家庭教育支援法案(仮称)」については、様々な批判や懸念が表明されてきましたが、そのような意見に触れる機会があった人にとっても、法案自体が読めないのに批判だけを読んでも、なかなかポイントが掴みづらいところがあったと思います。
 とはいえ、共謀罪法案組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案)が3月21日に衆議院に提出され、新年度予算も27日に成立したことをうけ、与党が今国会での成立を図ろうとする未提出の重要法案は、上程のタイミングが近いと思わなければならないでしょう。
 そこで今日は煩をいとわず、「家庭教育支援法案」とはどういう内容の法案か?このような法案が上程されようとしている背景は何か?について(私自身の勉強も兼ねて)考えるための資料を集めてみました。
 
【家庭教育支援法案】
 何しろ、まだ国会に上程されていませんので、法案自体をネット上で読むことは出来ません。
 そこで、今この問題に関する情報を最も多く集積していると思われる「24条変えさせないキャンペーン」サイトに掲載された「家庭教育支援法案(仮称)」未定稿(2016年10月20日)をご紹介します。
 
 
(引用開始)
 今国会に上程されるといわれている「家庭教育支援法案」。昨年10月の段階での法案をアップします。
 
家庭教育支援法案(仮称)未定稿[平成28年10月20日]
 
(目的)
第一条 この法律は、同一の世帯に属する家族の構成員の数が減少したこと、家族が共に過ごす時間が短くなったこと、家庭と地域社会との関係が希薄になったこと等の家庭をめぐる環境の変化に伴い、家庭教育を支援することが緊要な課題となっていることに鑑み、教育基本法(平成十八年法律第一二〇号)の精神にのっとり、家庭教育支援に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、家庭教育支援に関する必要な事項を定めることにより、家庭教育支援に関する施策を総合的に推進することを目的とする。
 
(基本理念)
第二条 家庭教育は、父母その他の保護者の第一義的責任において、父母その他の保護者が子に生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努める
ことにより、行われるものとする。
2 家庭教育支援は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、社会の基礎的な集団である家族が共同生活を営む場である家庭において、父母その他の保護者が子に社会との関わりを自覚させ、子の人格形成の基礎を培い、子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにすることができるよう環境の整備を図る
ことを旨として行われなければならない。
3 家庭教育支援は、家庭教育を通じて、父母その他の保護者が子育ての意義についての理解を深め、か
つ、子育てに伴う喜びを実感できるように配慮して行われなければならない。
4 家庭教育支援は、国、地方公共団体、学校、保育所、地域住民、事業者その他の関係者の連携の下に、社会全体における取組として行われなければならない。
 
(国の責務)
第三条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、家庭教育支援に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
 
地方公共団体の責務)
第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、家庭教育支援に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
 
(学校又は保育所の設置者の責務)
第五条 学校又は保育所の設置者は、基本理念にのっとり、その設置する学校又は保育所が地域住民その他の関係者の家庭教育支援に関する活動の拠点としての役割を果たすようにするよう努めるとともに、国及び地方公共団体が実施する家庭教育支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
 
(地域住民等の責務)
第六条 地域住民等は、基本理念にのっとり、家庭教育支援の重要性に対する関心と理解を深めるとともに、国及び地方公共団体が実施する家庭教育支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
 
(関係者相互間の連携強化)
第七条 国及び地方公共団体は、家庭教育支援に関する施策が円滑に実施されるよう、家庭、学校、保育所、地域住民、事業者その他の関係者相互間の連携の強化その他必要な体制の整備に努めるものとする。
 
(財政上の措置)
第八条 国及び地方公共団体は、家庭教育支援に関する施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
 
(家庭教育支援基本方針)
第九条 文部科学大臣は、家庭教育支援を総合的に推進するための基本的な方針(以下この条及び次条に
おいて「家庭教育支援基本方針」という。)を定めるものとする。
2 家庭教育支援基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 家庭教育支援の意義及び基本的な方向に関する事項
二 家庭教育支援の内容に関する事項
三 その他家庭教育支援に関する重要事項
3 文部科学大臣は、家庭教育支援基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、
関係行政機関の長に協議するものとする。
4 文部科学大臣は、家庭教育支援基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
 
地方公共団体における家庭教育支援を総合的に推進するための基本的な方針)
第十条 地方公共団体は、家庭教育支援基本方針を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における家庭教育支援を総合的に推進するための基本的な方針を定めるよう努めるものとする。
 
(学習機会の提供等)
第十一条 国及び地方公共団体は、父母その他の保護者に対する家庭教育に関する学習の機会の提供、家庭教育に関する相談体制の整備その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
 
(人材の確保等)
第十二条 国及び地方公共団体は、家庭教育支援に関する人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
 
(地域における家庭教育支援の充実)
十三条 国及び地方公共団体は、地域住民及び教育、福祉、医療又は保健に関し専門的知識を有する者がそれぞれ適切に役割を分担しつつ相互に協力して行う家庭教育支援に関する活動に対する支援その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
 
(啓発活動)
第十四条 国及び地方公共団体は、家庭教育支援に関する取組等について必要な広報その他の啓発活動を行うよう努めるものとする。
 
(調査研究等)
第十五条 国及び地方公共団体は、家庭をめぐる環境についての調査研究、海外における家庭教育支援に関する調査研究その他の家庭教育支援に関する調査研究並びにその成果の普及及び活用に努めるとともに、家庭教育支援に関する情報を収集し、及び提供するよう努めるものとする。
 
附則
この法律は、〇〇〇から施行する。
(引用終わり)
 
 以上が昨年10月段階の素案ですが、報道によれば、上記素案をブラッシュアップし、自民党の党内手続きも終えた最終案が固まったとのことです。
 比較邸詳細に伝えた朝日新聞デジタルの記事を引用します。
 
朝日新聞デジタル 2017年2月14日16時50分
家庭教育支援、地域住民に協力要請 自民の法案明らかに(水沢健一)

(抜粋引用開始)
 自民党が今国会で提出をめざす「家庭教育支援法案」の全容が明らかになった。国が家庭教育支援の基本方針を定め、地域住民に国や自治体の施策への協力を求めることなどが柱だ。一方、素案段階で「基本理念」にあった「子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」の文言を削除。与党
内からも、「公」が家庭に介入しかねないことへの懸念があり、考慮したとみられる。
(略)
 こうした内容については、昨秋の素案の段階で、与党内や識者から「家庭教育に公が介入するものと受け取られかねない」といった批判が出ていた。このため、今回明らかになった法案では、地域住民が「国又(また)は地方公共団体が実施する家庭教育支援に関する施策に協力するよう努める」との規定についても、素案で地域住民の「責務」としていた文言を「役割」と言い換えた。また素案では、家族を「社会の基礎的な集団」と位置づけていたが、この部分も削除された。識者からは、自民党憲法改正草案を想
起させるとの指摘もあった。
 一方で、素案にはあった「家庭教育の自主性を尊重」するとの文言は削除されており、法案が成立した
場合、基本方針に「公」と家庭教育の関係がどう具体的に位置づけられるのかが問題になりそうだ。
 自民党中曽根弘文・青少年健全育成推進調査会長は14日、党部会で「核家族化、地域社会の希薄化などの問題が発生し、これほど重要な課題はない。教育基本法にも家庭教育について明示されている。ぜ
ひ承認いただきたい」と述べた。(水沢健一)
自民党の家庭教育支援法案 こう変わった
【削除】
 ・家庭教育の自主性を尊重
 ・社会の基礎的な集団である家族
 ・国家及び社会の形成者として必要な資質
【追加】
 ・家庭教育支援の重要性
【文言の変更】
 ・地域住民等の責務→地域住民等の役割
 ・学習の機会の提供→学習の機会及び情報の提供
 ・地域における家庭教育支援の充実→地域における家庭教育支援活動に対する支援
(引用終わり)
 
 昨年10月段階の素案に、朝日新聞が伝えた変更を反映させれば、「家庭教育支援法案」の全貌が判明するかと思い、ためしにやってみましたが、どうもうまく文章が繋がらないところが出てきます。とはいえ、自民党「家庭教育支援法案」(最新版)がネットで読めない(少なくとも私は見つけられませんでした)現段階では、この辺のといころで我慢するしかありません。
 
【参考法令/廃止された法律・勅語及び憲法草案を含む】
 それでは、次に、この法案が国会に上程されようとしている背景を理解するために参照すべき法令等をご紹介しておきます。
 まず、法令ではありませんが、学校法人森友学園が運営する塚本幼稚園が園児に暗唱させているということでにわかに注目を浴びている教育勅語です。
 明治22年2月11日に公布された大日本帝国憲法には、教育に関して直接定めた規定は置かれず、翌年10月、憲法施行(明治23年11月29日)を前にして、天皇が教育に関する「勅語」を臣民に下すという形がとられました。
 戦前の学校では、この勅語奉読が行われたということで(塚本幼稚園はそれを模しているのですが)、戦後の右翼も一時期「勅語奉読」をしていたものの、「俺たちは右翼だから、やらなくちゃいけないんだということでやってる。そうすると、若い人が読むと、つっかえるんですね(笑)。難しいから、読めな
いんです。」ということになって、野村秋介氏の意見で止めてしまったとか(鈴木邦男さんの「愛国」スピーチ@3/19国会正門前~全編文字起こし/2017年3月25日)。それも宜なるかなですね。
 ということで、以下には振り仮名付きのヴァージョンもご紹介しておきます。
 
(引用開始)
朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運
ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇?皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施
シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
御名御璽
(振り仮名付き)
朕(ちん)惟フニ(おもうに)我カ(わが)皇祖皇宗(こうそ こうそう)國ヲ(くにを)肇ムルコト(はじむること)宏遠ニ(こうえんに)德ヲ樹ツルコト(たつること)深厚ナリ(しんこうなり)我カ(わが)臣民(しんみん)克ク(よく)忠ニ(ちゅうに)克ク(よく)孝ニ(こうに)億兆(おくちょう)心ヲ一ニシテ(しんをいつにして)世世(よよ)厥ノ(その)美ヲ(びを)濟セルハ(なせるは)此レ(これ)我カ國體(こくたい)ノ精華ニシテ敎育ノ淵源(えんげん)亦(また)實ニ(じつに)此ニ(ここに)存ス(ぞんす)爾(なんじ)臣民(しんみん)父母ニ孝ニ(ふぼに こうに)兄弟ニ友ニ(けいていに ゆうに)夫婦相和シ(ふうふ あいわし)朋友相信シ(ほうゆう あいしんじ)恭儉己レヲ持シ(きょうけん おのれをじし)博愛衆ニ及ホシ(はくあい しゅうにおよぼし)學ヲ修メ業ヲ習ヒ(がくをおさめ しゅうをならい)以テ智能ヲ啓發シ(もってちのうをけいはつし)德器ヲ成就シ(とっきをじょうじゅし)進テ公益ヲ廣メ(すすんでこうえきをひろめ)世務ヲ開キ(せむ/せいむ をひらき)常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ(つねにこっけんをじゅうし こくほうにしたがい)一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ(いったんかんきゅうあれば ぎゆうこうにほうじ)以テ(もって)天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ(てんじょうむがいのこううんをふよくすべし)是ノ如キハ(このごときは)獨リ(ひとり)朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス(ちんがちゅうりょうのしんみんたるのみならず)又(また)以テ(もって)爾(なんじ)祖先ノ遺風
ヲ顯彰スルニ足ラン(そせんのいふうをけんしょうするにたらん)
斯ノ(この)道ハ實ニ(じつに)我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ(いくんにして)子孫臣民ノ倶ニ(ともに)遵守スヘキ(じゅんしゅすべき)所(ところ)之ヲ古今ニ通シテ謬ラス(あやまらず)之ヲ中外ニ施シテ悖ラス(もとらず)朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ(けんけんふくよう して)咸(みな)其
德ヲ(そのとくを)一ニセンコトヲ庶幾フ(こいねがう)
明治二十三年十月三十日
御名御璽(ぎょめい ぎょじ)
(引用終わり)
 
 その後、第二次世界大戦の敗戦(ポツダム宣言の受諾、降伏文書への調印)を経て、昭和21年11月3日に公布され、翌22年5月3日に施行された日本国憲法は、家族(家庭)及び教育に関し、以下のように規定しました。
 
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関して
は、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利
を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
(引用終わり)
 
 そして、この憲法の理念を具体化するため、内容的には憲法と一体をなす実質的意味の憲法の一部と言ってもよい(旧)教育基本法が、憲法施行の約1ヶ月前の昭和22年3月に制定されました。
 (旧)教育基本法で家庭教育という用語が登場するのは第7条ですが、この機会に、平成18年(2006年)12月、第一次安倍晋三内閣によってこの旧法が廃止され、新教育基本法が制定されたことが、そもそも今般の「家庭教育支援法案」に至る直接的な端緒であることを想起するためにも、(旧)教育基本法の全文を読んでみましょう。
 文部科学省ホームページの中の「教育基本法資料室へようこそ!」コーナーに、「昭和22年教育基本法制定時の条文」として掲載されています。
 
(旧)教育基本法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十五号/平成十八年十二月二十二日法律百二十号により全部改正)
(引用開始)
 朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝国議会の協賛を経た教育基本法を裁可し、ここにこれを公布せしめる
 
教育基本法

 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉
に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
  われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてし
かも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
 ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、
この法律を制定する。

第一条(教育の目的) 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
 
第二条(教育の方針) 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。
 
第三条(教育の機会均等) すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。
 
第四条(義務教育) 国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。
2 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。
 
第五条(男女共学) 男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない。
 
第六条(学校教育) 法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
2 法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならな
い。

第七条(社会教育) 家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体
によつて奨励されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方
法によつて教育の目的の実現に努めなければならない。

第八条(政治教育) 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動を
してはならない。

第九条(宗教教育) 宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重し
なければならない。
2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはなら
ない。

第十条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われ
るべきものである。
2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行わ
れなければならない。

第十一条(補則) この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定さ
れなければならない。

附則
 この法律は、公布の日から、これを施行する。
(引用終わり)
 
 その教育基本法が、第一次安倍内閣によってどういうものに変えられたかを見てみましょう。全文はリンク先の総務省データベースでお読みいただくとして、以下には、前文と家庭教育を独立して規定した第10条を引用します。
 
  教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の全部を改正する。

 我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、
世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教
育を推進する。
 ここに、我々は、日本国憲法 の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振
興を図るため、この法律を制定する。
 
(家庭教育)
第十条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものと
する。
2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
(引用終わり)
 
 これで、ご理解いただけたことと思いますが、「家庭教育支援法案」第2条1項が「家庭教育は、父母その他の保護者の第一義的責任において、父母その他の保護者が子に生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めることにより、行われるものとする。」と定めているのは、新教育基本法第10条1項を直接踏まえた規定であり、同法2項で国及び地方公共団体に課された「保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」という義務を果たすために「家庭教育支援法」が必要であるというのが、法案立案者の主張だろうと思います。
 もっとも、そういうことであれば、なぜ閣法ではなく、自民党議員立法を目指しているのかがよく分
かりませんが。
 
 いずれにせよ、2006年に実質的意味の憲法であった旧教育基本法が廃止された時点で、憲法改正手続を経ない、実質的な憲法改正がなされたのだということを踏まえておかないと、「家庭教育支援法案」を正しく理解することができないのではないかと思います。
 自民党改憲案が、「家族は、互いに助け合わなければならない。」という規定を新設しようと提案しているのも、2006年版・教育基本法から一直線に繋がっていると考えるべきでしょう。
 
 (家族、婚姻等に関する基本原則)
第二十四条 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなけれ
ばならない。
2 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力に
より、維持されなければならない。
3 家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律
は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 (教育に関する権利及び義務等)
第二十六条 全て国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有
する。
2 全て国民は、法律の定めるところにより、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う。義務
教育は、無償とする。
3 国は、教育が国の未来を切り拓く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に務めなければならない。
(引用終わり)
 
【家庭教育支援法案を批判するサイト】
 既にご紹介した「24条変えさせないキャンペーン」の他に、以下のサイトをご紹介しておきます。
 
 
和歌山市家庭教育支援条例を読む】
 家庭教育支援法案では、「地方公共団体は、家庭教育支援基本方針を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における家庭教育支援を総合的に推進するための基本的な方針を定めるよう努めるものとする。」(第10条)としていますが、地方自治体の中には、法律の制定を待たず、家庭教育支援条例を制定しているところがあります。
 都道府県では、2013年(平成25年)に熊本県が先陣を切って「くまもと家庭教育支援条例」を制定したことが知られています。
 そして、政令市・中核市の中で先陣を切ったのが、何と私の住む和歌山市だったのです。昨年(2016年)12月15日に「和歌山市家庭教育支援条例」が制定・施行されていました。
 パブコメも募集されていたようなのですが、気がついていなかったというのはうかつでした。
 和歌山市議会の戸田正人議員のブログに「我が至政クラブが提言した、政令指定都市中核市で初となる「家庭教育支援条例」が可決されことに大変満足のいった議会であったと思います。」という記事が載っていました。
 ホームページのカバー写真にわざわざ百田尚樹氏の著書を手に持つ写真を掲げる議員に「大変満足のいった議会」だったと言われるのも「なんだかなあ」ですが。
 ということで、反省の意味も込めて「和歌山市家庭教育支援条例」全文を転記しておきます。「良いことばかり書いてある」と思う人もいるでしょうが、今日ご紹介した資料なども参照しつつ、どこがおかしいのか、考えていただければと思います。遅ればせながら、私も考えてみます。
(引用開始)
 家庭は、教育の根幹である人づくりの基盤であり、家庭教育は、全ての教育の出発点である。子供の基本的な生活習慣及び生活力、豊かな情操、人に対する信頼、他者への思いやり、善悪の判断等の基本的な倫理観、自立心及び自制心等は、家族のふれあいを通じて、家庭で育まれるものである。
 私たちが住む和歌山市は、四季を通じて温暖な気候及び豊かな自然環境の下で先人が育んだ伝統、文化及び技術を受け継ぎながら、家庭及びその家庭を取り巻く地域社会が一体となって子供の健やかな成長を見守り続けてきた。
 しかし、近年では、核家族化、地域社会の人間関係の希薄化等により、家庭が孤立し、保護者の子育てへの不安や負担感の増大とともに、家庭や地域の教育力及び子育て力の低下が指摘されている。
 本市では、これまでも「ともに学び ともに支えあい 未来につながる教育」を基本理念とし、地域社
会全体で将来の和歌山市を創造できる人を育てる教育の充実に取り組んできたが、こうした家庭、社会等の変化を踏まえ、より一層の支援を進めていくことが求められている。
 私たちは、家庭教育の意義を見直し、家庭教育における家庭の果たす役割を改めて認識するとともに、家庭を取り巻く市、学校等、地域住民、地域活動団体及び事業者が家庭教育の自主性を尊重し、それぞれ適切な役割分担を果たしつつ、連携を深め、家庭教育を支えていくことが必要である。
 ここに、家庭教育に十分な支援がなされ、家庭教育が充実することにより、子供が健やかに成長することを願い、この条例を制定する。
 (目的)
第1条 この条例は、家庭教育の支援に関し、基本理念及びその実現を図るための施策の基本となる事項を定め、市、保護者(親権を行う者又は未成年後見人をいう。以下同じ。)、学校等、地域住民、地域活動団体及び事業者の役割を明らかにするとともに、家庭教育のための施策を総合的に推進することにより、保護者が親として学び、成長していくこと及び子供が将来親になることについて学ぶことを促すとともに、子供の基本的な生活習慣の確立並びに子供の自立心の育成及び心身の調和のとれた発達に寄与することを目的とする。
 (定義)
第2条 この条例において「家庭教育」とは、保護者がその現に監護する子供に対して行う教育をいう。
2 この条例において「子供」とは、おおむね18歳以下の者をいう。 
3 この条例において「学校等」とは、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(大学を除く。)、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第6項に規定する認定こども園をいう。
4 この条例において「地域住民」とは、本市の区域内に住所を有する者をいう。
5 この条例において「地域活動団体」とは、社会教育法(昭和24年法律第207号)第10条に規定する社会教育関係団体、地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第1項に規定する地縁による団体その他地域的な共同活動を行う団体をいう。
6 この条例において「事業者」とは、法人及び事業を行う個人をいう。 
 (基本理念)
第3条 家庭教育への支援は、保護者が教育基本法(平成18年法律第120号)第10条第1項に定めるところにより、子供の教育について第一義的責任を有しているとの基本認識の下に、家庭教育の自主性を尊重しつつ、市、学校等、地域住民、地域活動団体及び事業者が、それぞれの役割を果たすとともに、相互に協力しながら一体的に行うものとする。
 (市の役割)
第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、家庭教育を支援するために必要な体制を整備するとともに、家庭教育を支援するための施策を総合的に策定し、及び実施しなければならない。
2 市は、家庭教育を支援するための施策を策定し、これを実施しようとするときは、保護者、学校等、地域住民、地域活動団体及び事業者と連携して取り組むものとする。
3 市は、家庭教育を支援するための施策を策定し、これを実施しようとするときは、保護者及び子供の障害の有無、保護者の経済状況その他の家庭の状況に配慮するものとする。
 (保護者の役割)
第5条 保護者は、基本理念にのっとり、子供に愛情をもって接し、子供の基本的な生活習慣の確立並びに子供の自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を図るとともに、自らが親として成長していくよう努めるものとする。
 (学校等の役割)
第6条 学校等は、基本理念にのっとり、保護者、地域住民及び地域活動団体と連携し、子供の基本的な生活習慣の確立並びに子供の自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
 (地域住民及び地域活動団体の役割)
第7条 地域住民は、基本理念にのっとり、保護者及び学校等と連携し、家庭教育を行うため、良好な地域環境の整備に努めるとともに、地域における行事、歴史、伝統、文化及び技術の継承を通じ、子供の健全な育成に努めるものとする。
2 地域活動団体は、基本理念にのっとり、保護者及び学校等と連携し、家庭教育を支援するための取組を行うように努めるものとする。   
3 地域住民及び地域活動団体は、市が実施する家庭教育を支援するための施策に協力するよう努めるものとする。
 (事業者の役割)
第8条 事業者は、基本理念にのっとり、家庭教育における保護者の役割の重要性に鑑み、その雇用する者の健康に配慮し、職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な就業環境の整備に努めるものとする。
 (親としての学びの支援)
第9条 市は、親としての学び(保護者が子供の発達段階に応じた家庭教育に関する知識、子育ての知識その他の親として成長するために必要なことを学ぶことをいう。以下この条及び第14条において同じ。)を支援するための学習の方法を研究し、その研究結果に基づく普及を図るものとする。
2 市は、親としての学びを支援するための学習の機会を提供するものとする。
3 市は、学校等及び地域活動団体が親としての学びを支援するための学習の機会を提供することを支援するものとする。
 (親になるための学びの支援)
第10条 市は、親になるための学び(子供が家庭の役割、子育ての意義その他の将来親になるために必要なことについて学ぶことをいう。以下この条及び第14条において同じ。)を支援するための学習の方法を研究し、その研究結果に基づく普及を図るものとする。
2 市は、親になるための学びを支援するための学習の機会を提供するものとする。
3 市は、学校等及び地域活動団体が親になるための学びを支援するための学習の機会を提供することを支援するものとする。 
 (人材の養成)
第11条 市は、家庭教育の支援を行う人材の養成に努めるとともに、家庭教育への支援に関する人材のネットワークの構築及びその拡充に努めるものとする。
 (連携した活動の促進)
第12条 市は、保護者、学校等、地域住民及び地域活動団体が相互に連携して取り組む家庭教育を支援するための活動を促進するものとする。
 (相談体制の整備及び充実)
第13条 市は、家庭教育に関する保護者の相談に応じるため、相談体制の整備及び充実、相談窓口の周知その他の必要な施策を実施するものとする。
 (広報及び啓発活動の充実)
第14条 市は、家庭教育に関する情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。
2 市は、家庭教育における家庭の果たす役割について、市民の理解を深め、意識を高めるため、親としての学び及び親になるための学びの重要性に関する研修の実施その他の必要な啓発を行うものとする。
3 市は、家庭教育の支援に関する社会的気運を醸成するため、家庭教育の支援に積極的に取り組む団体の活動を促進するための取組の実施、家庭教育の支援に関する事例の紹介その他の必要な施策を実施するものとする。
附 則
 この条例は、交付の日から施行する。
(引用終わり)