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「緑の大地計画」のこれまでとこれから~中村哲さん、日本記者クラブで語る(2016年8月26日)

 今晩(2017年3月30日)配信した「メルマガ金原No.2767」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「緑の大地計画」のこれまでとこれから~中村哲さん、日本記者クラブで語る(2016年8月26日)

 昨年の9月、ETV特集で放送された『武器ではなく 命の水を~医師・中村哲アフガニスタン~』をご紹介した際にも触れましたが、私は、和歌山市で行われた中村哲さんの講演会に3回とも参加しています。
 
2005年12月1日 和歌山市民会館小ホール
「氷河の流れのように~憲法9条に守られて~」
主催:9条ネットわかやま創立総会実行委員会
 
2008年4月19日 和歌山市民会館市民ホール
中村哲医師講演会 アフガン最前線報告」
主催:和歌山県平和フォーラム
 
2010年10月29日 和歌山市民会館小ホール
「アフガン最前線報告~アジアの同朋としての同じ目の高さをもって~」
主催:9条ネットわかやま、憲法9条を守る和歌山弁護士の会
 
 その後も、中村さんは毎年一時帰国されては、各地で講演されています。アフガニスタン現地の実情を多くの人に知って貰いたいという目的でお話されていることはもちろんであり、今日ご紹介する、昨年8月26日に日本記者クラブで行われた会見なども、そのような活動の一環でしょう。他方で、現地での活動資金を日本で集めるために、直接・間接に役に立つようにという目的も併せ持っていることは当然だと思います。
 
 日本記者クラブでの会見から既に7ヶ月経っていますが、アフガニスタンがどういう国かという前提から始まり、長年にわたる中村さんのこれまでの活動を、写真を交えて1時間程度にコンパクトにまとめて分かりやすく説明しておられますので、多くの人に視聴をお奨めしたいと思います。
 
中村哲 ペシャワール会現地代表 2016.8.26(1時間17分)

司会 原田正隆氏(前日本記者クラブ企画委員、西日本新聞
ゲスト 中村哲氏(ペシャワール会現地代表、PMS(平和医療団・日本)総院長)
 
会見リポート
(引用開始)
「一隅を照らす」記者へメッセージ
30年以上にわたるアフガニスタンでの活動を紹介した。医師として現地医療に携わる傍ら、2000年の大干ばつで必要に迫られた飲料水源の確保にも取り組み、約10年間で、砂漠化した土地に全長27㌔メートルの用水路を完成させた。「2020年までに1万6500㌶に及ぶ地域を緑豊かな土地によみがえらせ、65万人が暮らせるようにしたい」と今後の目標も語った。現在、その9割を達成しているという。
01年のアメリカによるアフガン空爆にも触れ「ピンポイント爆撃と説明していたが、あれは無差別爆撃。日本の人々はサッカー観戦でもするようにテレビにかじりついていた」と振り返った。IS(イスラム国)の今後や、日本の果たすべき役割についても言及し「日本はイスラムと欧州の対立構図にはのみ込まれないでほしい」と警鐘を鳴らした。
中村さんが最後に参加者に贈った言葉は「一隅を照らす」。これまでアフガンに懸けてきた自身の半生を踏まえ「浅く広くなってしまいがちだが、1つのテーマを深く追い、真実を見極める。それを眺めることで広く他のことも見えるようになる」と各記者の仕事に通じるメッセージを残してくれた。
静岡新聞社社会部 大沼 雄大
(引用終わり)
 
 私が、この会見動画で特に注目したのは、質疑応答に入ってからの部分です。JICAとの協力関係に言及された部分もそうですが、1時間12分~は是非視聴してください。ペシャワール会による「緑の大地計画」を、アフガニスタン政府(農業省)と連携して全土に拡げていく計画があることや(政府が全土を掌握しているかは大問題ですが)、国連食糧農業機構などと協力して、トレーニングセンター(研修所)を作り、人材を養成していく予定であることなどが語られており、昨年の9月で満70歳になられた中村さんが、中村さん以後を見据えた体制作りを本格化しておられることが分かります。一部文字起こししておきます。
 
「明らかに一つの計画が始まったばっかりで、具体的にはですね、アフガン政府、今までは我々を煙たく見ておりましたけれども、政府もですね、「この方法がいい」ということでですね、「是非このやり方を拡げよう」という動きが、特に農業省を中心に高まってきております。その結果として、山田堰を次々と訪問したりとかですね、そういうことが起きてます。それから具体的に、トレーニングセンターを開設する契約が国連のFAO、食料農業機構ですかね、と出来ておりまして、現在、まもなく着工致します。これによって、他地域からの研修者も受け容れまして、これを次々と隣接地帯に拡げていこうと。私、あと10年ぐらいすれば、ぼけるか死ぬかどっちかですけども、そのあともですね、限りなくこれは続いていくように、今手配中でございます。」
 
 なお、事業の拡大や研修所の計画については、2016年10月5日発行の「ペシャワール会報 No.129」に中村さんが書かれた報告「今秋から広域かつ大規模な事業展開 「緑の大地計画」の仕上げ―ミラーン堰対岸工事と研修所の設立」で詳しく説明されていますので是非お読みください。
 
 ペシャワール会が営々と実績を重ねてきた「緑の大地計画」を、JICA、国連アフガニスタン政府などが一致協力して、アフガニスタン全土に拡げていければ、どれだけ素晴らしいでしょう。そして、その計画が本当に実現するためには、計画の輪の中にタリバーンも入ることが必須だと思うのですが、無理でしょうか?