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放送予告4/16『防衛フェリー~甦る徴用の記憶と現実~』(テレメンタリー)

 今晩(2017年4月3日)配信した「メルマガ金原No.2771」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
放送予告4/16『防衛フェリー~甦る徴用の記憶と現実~』(テレメンタリー

 興味深いTVドキュメンタリー番組をたびたび紹介しているこのメルマガ(ブログ)ですが、テレビ朝日系列各社が共同で制作する「テレメンタリー」をご紹介するのは久しぶりのような気がします。
 
テレビ朝日 2017年4月16日(日)午前4時30分~5時00分
朝日放送 2017年4月16日(日)午前5時20分~5時50分
テレメンタリー2017「防衛フェリー~甦る徴用の記憶と現実~」

(番組案内から引用開始)
 防衛省は、有事や災害の際に民間のフェリーを活用する制度を新設した。現行の「防衛計画の大綱」に基づき、陸上自衛隊の戦車部隊などを南西諸島などに運搬するのも役割のひとつだ。さらに国は民間の船員の希望者に、防衛出動の要員となる資格を持たせる制度を新たに導入した。全国海員組合は、「戦争中の“徴用”に繋がる」として強く反対している。事実上、防衛省専属となったフェリーを取材。民間船と戦争との「距離」を考える。
ナレーター:上田定行
制作:メ~テレ
(引用終わり)
 
 制作局の「メ~テレ」って何だ?と驚きましたが、「名古屋テレビ」のことらしいです。
 
 ところで、この番組案内を読んで、私がただちに思い出したのは、昨年12月2日に行われた安保法制違憲・東京国家賠償請求訴訟の第2回口頭弁論において意見陳述した本望隆司さんのお話でした。
 この意見陳述については、私のメルマガ(ブログ)で既にご紹介していますが(司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述/2016年12月10日)、以下に再掲します。
 
本望隆司さんの東京地裁における意見陳述
(引用開始)
 私は、1962 年から 1987 年まで、主にタンカーや鉱石船で資源を運搬する船舶に乗船しました。
 印象深いのは、1980 年に始まったイラン・イラク戦争の際に、ペルシャ湾内を航行する船舶を攻撃すると両国が言いだしたときです。日本船も対象になるということで、大変な問題になりました。この時、タンカー攻撃を避けて日本の石油輸送を守ることができたのは、憲法9条のおかげでした。つまり日本がいずれの国にも武力で加担しない中立国であるとの認識が国際的に確立していたからです。日本船をペルシャ湾の入り口にまとめ、船団を組んでペルシャ湾に入ることを外交ルートを通じて両国に通報し、タンカーにはデッキと船側に日本船と判明できるよう、大きな日の丸を描いて視認できる日中に航行しました。当時攻撃を受け被弾した世界全体の船舶は407隻、333人の死者、317人の負傷者が出ました。しかし日本船は被弾ゼロ、日本人船員は外国籍船の乗船者のみ2名の犠牲を出しました。(1999 年5月18日参議院「新ガイドライン関連法」特別委員会中央広聴会での海員組合・平山公述人の口述から)こうして、日本船は攻撃をまぬがれ石油輸送を守ったのです。
 ところが、政府が憲法9条の精神を捨て去り、海外での武力の行使が可能になる集団的自衛権閣議決定してから、我が海運業界もその影響が現れています。
 
2016 年には軍需物資の海上輸送に、防衛省と船舶会社との間で、既に、2隻のチャーター契約を結んでいます。これは、普段はこの船舶を通常利用してもよいが、有事の際には、防衛省の命令によって、これらの船舶を自衛隊に提供するというものです。そして、船舶を操船するのは、自衛官となっていますが、現役の自衛官では操船が無理ですから、船員を予備自衛官として、自衛官の身分で、船舶を航行させることになります。この契約は10年で合計250億円という金額ですから、船舶会社としては、黙ってもお金が入ってくる非常に魅力的な取引ですが、現場の船員にとっては、「後方支援」の名の下、いつ攻撃されるか分からない危険な状態におかれます。そして、これらの船舶会社に就職する際に、予備自衛官補になることを条件としています。それを拒否すれば下船させられます。
 政府は、あたかも「後方支援」は安全であるかのような説明をしておりますが、実際のところ、兵站活動です。前線部隊に兵員、食糧、武器弾薬、医療物資等を運ぶのですから、敵からみれば、それを攻撃し、補給を遮断するのがもっとも効率的であることは当然です。「後方支援」だからといって安全であることは全くなく、輸送船は反撃の手段を持っていませんから、むしろ前線より危険ともいえるわけです。このことは、第二次世界大戦中に、日本の民間の船舶が輸送船として徴用され、攻撃対象になって、約半数の船員が犠牲となり、保有船舶もわずか数隻にまで壊滅した歴史で明らかです。日本海運が立ち直るために長い年月を要したのです。これは我々船員としては繰り返してはならない歴史です。「海員不戦の誓い」は海運界の切実な願いです。
 さらには、集団的自衛権の行使容認を政府が決めてから、日本の船舶だから安全ということは全くなくなりました。先日のダッカでの日本人襲撃でも明らかなように、むしろ日本が攻撃対象として扱われる事態になっており、海運業界を初めとする運送に関わる業界にもろに影響が出て来るのではないかと非常に恐れています。イラン・イラク戦争の当時、憲法9条のもと日本は戦力を保持しない平和国家であると国際的に認知されていたが、その国際的認知は崩れ去り戦争やテロに巻き込まれる可能性が増大したと言わざるを得ません。船舶が攻撃される危険性に恐怖を感じます。正規の憲法改正の手続をとらず、専門家を初め多くの人たちが違憲であると言っている安保法制を強行採決し、海運業界がまた、再び戦争への協力をさせられる途がひらかれてしまったことに対し、海運業界にいた者として、これほどの苦痛はありません。 
(引用終わり/※下線は金原による)
 
 本望さんの陳述の中で「2016年には軍需物資の海上輸送に、防衛省と船舶会社との間で、既に、2隻のチャーター契約を結んでいます。」とあるのが、まさに今日ご紹介したテレメンタリーで取り上げられる「防衛フェリー」のことです。この事業は、防衛省が進めている「民間船舶の運航・管理事業」のことであり、その実施方針等については、昨年12月10日に書いた私のメルマガ(ブログ)でご紹介していますので、ご参照ください。
 
 以下では、全日本海員組合(番組案内に「全国海員組合」とあるのは多分誤記でしょう)が昨年1月29日に発表した声明をご紹介します。
 
(引用開始)
                                  平成 28 年1月 29 日
 
        民間船員を予備自衛官補とすることに断固反対する声明
 
                                     全日本海員組合
 
 一昨年からのいわゆる「機動展開構想」に関する一連の報道を受け、全日本海員組合は、民間船員を予備自衛官として活用することに対し断固反対する旨の声明を発し、様々な対応を図ってきた。しかしながら、防衛省は平成 28 年度予算案に、海上自衛隊予備自衛官補として「21 名」を採用できるよう盛り込んだ。われわれ船員の声を全く無視した施策が政府の中で具体的に進められてきたことは誠に遺憾である。
 
 先の太平洋戦争においては、民間船舶や船員の大半が軍事徴用され物資輸送や兵員の輸送などに従事した結果、1万 5518 隻の民間船舶が撃沈され、6万 609人もの船員が犠牲となった。この犠牲者は軍人の死亡比率を大きく上回り、中には 14、15 歳で徴用された少年船員も含まれている。

 このような悲劇を二度と繰り返してはならないということは、われわれ船員に限らず、国民全員が認識を一にするところである。
 政府が当事者の声を全く聞くことなく、民間人である船員を予備自衛官補として活用できる制度を創設することは、「事実上の徴用」につながるものと言わざるを得ない。このような政府の姿勢は、戦後われわれが「戦争の被害者にも加害者にもならない」を合言葉に海員不戦の誓いを立て、希求してきた恒久的平和を否定するものであり、断じて許されるものではない。
 
 全日本海員組合は、民間人である船員を予備自衛官補とすることに断固反対し、今後あらゆる活動を展開していくことを表明する。
                     
                         以 上
(引用終わり)
 
 『防衛フェリー~甦る徴用の記憶と現実~』の制作スタッフの問題意識は、「甦る徴用の記憶と現実」というサブタイトルに明確に現れていると思い、皆さまにも是非視聴していただきたいと思い、ご紹介しました。
 
(参考サイト)
 
(参考動画)
陸上自衛隊90式戦車 高速船ナッチャンWORLDで輸送~特大型運搬車へ搭載@大分-2015 JGSDF TYPE 90 TANK(10分53秒)
 
高速船「ナッチャンWorld」 船内見学会 2017.3.1.(6分18秒)
 

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2014年2月3日
今年初めてETV特集の新作が見られる!(2/8『戦時徴用船~知られざる民間商船の悲劇~』)

2016年12月10日