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「テロ対策」が嘘だと自信をもって言えるようになるために~共謀罪緊急学習会を受講する意義

 今晩(2017年4月9日)配信した「メルマガ金原No.2777」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「テロ対策」が嘘だと自信をもって言えるようになるために~共謀罪緊急学習会を受講する意義

 本日(4月9日)午後1時から、和歌山県御坊市の日高教育会館において、「“共謀罪”とは何か?・その狙いとは」と題した緊急学習会の講師を務めてきました(※チラシ)。
 主催の「憲法9条を守り・いかす日高連絡会」は、憲法9条を守る御坊・日高共同センターと御坊・日高地方の地域9条の会との連絡会ということで、開会前に会長さんと少しお話をしたところ、日高郡内の市町には全て9条の会があり、熱心に活動していることが分かりました。
 今日も、午前中にスタンディングアピールをした上で、午後から学習会に取り組んでいただいたのでし
た。
 共謀罪に反対する運動は、当面、安保法案の時よりもはるかに短期決戦と考えねばならず、悠長に学習会などやっている場合ではないという意見があるかもしれませんが、私の見るところ、安保法案の時よりも、さらに法案の中身自体についての理解が進んでいないように思われます。そして、そういう事情は、法案に賛成する側にしても同じようなものであり、どちらも、実際の法案自体は横に置いた上で、賛成とか反対とか声を上げているものの、中身がよく分かってないので、どうしても発言自体が自信なげになり
がちです。
CIMG7046 そういった状況の中、4月6日の衆議院本会議での安倍首相の答弁が、いくら官僚が用意した(多分オールルビ付きだと推測します)答弁用原稿の棒読みであろうが、何十回でも「テロ対策」のために必要という見え透いた嘘を繰り返そうが、嘘を嘘と見抜いている人は多くなく、「嘘も100回言えば本当になる」というたとえのとおり(ちなみに、ナチスドイツ宣伝相ゲッベルスがこう言ったというのは「嘘」
に近いらしいですが)、それがそのまま通用することになりかねません。
 自信をもって、「テロ対策は嘘だ」と言えるようになるだけでも、緊急学習会の意義はあるだろうと思
います。
 なお、3月3日の和歌山県平和フォーラムなど主催による学習会と同様、主催者に無理を言って、『一からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる』(全48頁・頒価200円)をテキストとして用意してい
ただきました。
 以下に、はなはだ不十分なものであり、とても公開するようなものではないという自覚はあるのですが、「短期決戦」という覚悟を決める以上、このようなレジュメでも、何かの役に立つこともあるかもしれ
ないと考え、今日の学習会のために書いたレジュメをご紹介します。ちにみに、これは、3月3日の学習会用に書いたメモをふくらませたものであることをお断りします。
 ちなみに、本稿は、本メルマガ(ブログ)における共謀罪シリーズの第19回となります。
 

2017年4月9日(日)午後1時00分~ 日高教育会館(和歌山県御坊市
憲法9条を守り・いかす日高連絡会 憲法連絡会・緊急学習会

            “共謀罪”とは何か?・その狙いとは
 
                               弁護士 金 原 徹 雄  
 
1 3月21日に国会に上程された共謀罪法案
(1)2月28日に自民・公明両党に示された法案には「テロ」の「テ」の字もなかった。
 ところが、与党からの指摘を受け、共謀罪の構成要件を定めた「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」第6条の2に、4箇所も「テロリズム集団その他の」という文言を追加する修正を加え、閣議決定の上、3月21日に衆議院に提出した。
 
テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)
第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。
 
 もちろん、「テロリズム集団」は単なる例示であり、意味があるのは「その他の」の方である。
(2)本レジュメ起案時は、4月6日に審議入りすることで、自民・公明両党が合意に達したと伝えられている段階である。
 
2 資料の説明
①「一からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる」(全48頁)
 (以下、本レジュメで「テキスト」と呼称)
 編集・発行
  「秘密保護法」廃止へ!実行委員会(平和フォーラム 新聞労連 ほか)
  「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会(許すな!憲法改悪市民連絡会 憲法会議)
  盗聴法廃止ネットワーク(盗聴法に反対する市民連絡会 日本国民救援会
 ※上記3団体に、
  「日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)」
  「共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会」
 が加わって「共謀罪NO!実行委員会」が作られ、統一署名が呼びかけられている(後記)。
②「対象の犯罪と罪名一覧」
 「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」別表第3と第4を新聞社でまとめたもの(対象犯罪数277)
 
3 共謀罪の「これまで」を振り返る(テキスト15、26頁)
 2000年11月:国連越境組織犯罪防止条約 採択
 2003年 3月:第1回 国会上程
 2004年 2月:第2回 国会上程
 2005年10月:第3回 国会上程
 2006年4月~6月:与野党修正案提出
 2006年 9月:第一次安倍晋三内閣成立
 2009年 7月:第3回法案が衆議院解散にともない廃案に
 2012年12月:第二次安倍晋三内閣成立
 2017年 3月:第4回 国会上程 
 
4 共謀罪が出来たなら~最も重大な3つの問題点
(1)日本の刑事法体系が破壊される(テキスト6頁)
①陰謀(共謀)→予備→未遂→既遂
・陰謀(共謀)罪は例外中の例外
・刑法77条「内乱の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の禁錮に処する。」
・他に、外患陰謀罪、私戦陰謀罪、爆発物取締罰則等 
・ところが、広汎な犯罪について共謀(計画)を罰することになると、未遂は処罰されないのにその前々
段階の共謀(計画)は処罰されるというような犯罪が続出するという不合理な事態が現出する。
 ※例:横領罪(刑法252条/5年以下の懲役) 未遂処罰規定なし
②未遂罪との均衡がくずれる
 刑法43条「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」
 実行に着手までしながら、自らの意思で中止した場合(中止未遂)には、必要的にその刑が減軽または免除されるのに、その前々段階の共謀(計画)の段階で検挙されれば、自ら(抜け駆けで)実行の着手前に自首しない限り、減軽・免除の利益を受けられない(共謀罪法案第6条の2第1項ただし書)という不均衡が生じる。  
③日本の刑事法体系の思想(テキスト6頁)
 罰すべきは「意思」ではなく「行為」である。
 具体的な「法益侵害」またはその「具体的危険」が発生したことが刑罰権行使の根拠とする。
(2)「捜査」のあり方が一変する(テキスト7頁)
・共謀(計画)罪は、2人以上の者の意思の合致によって成立する。
・どうやって捜査するのか?盗聴(通信傍受)、おとり捜査が常態化する恐れがある。
・既に昨年、通信傍受法・刑事訴訟法が「改正」され、通信傍受できる対象犯罪が拡大されており(同年12月施行)、また、従来のように通信事業者の施設内でその立会いの下でやらねばならないという制約も撤廃されている(こちらの施行はまだ)。共謀罪が成立すれば、これも盗聴(通信傍受)の対象とされる可能性が非常に高い。
(3)人権が蔑ろにされる息苦しい社会となる(テキスト5、21、28頁)
・犯罪構成要件が曖昧過ぎる。
・刑罰法令の人権保障機能が失われる。
・思想・良心の自由、表現の自由などの人権体系の根幹をなす優越的権利が危機に瀕する。
・現在よりも、一層の「監視社会化」が進んだ息苦しい社会が到来することは疑いない。法案(第6条の2第1項ただし書)による密告奨励の自首規定はそれを助長する。
⇒昨年の参院選大分県警(別府署)が野党統一候補陣営を隠しカメラで盗撮していたことを想起せよ。
 
5 国連越境組織犯罪防止条約の批准に共謀罪は不要(テキスト15頁)
・そもそも条約はマフィアや蛇頭などの国際的組織犯罪集団の効果的な取り締まりのために締結された条約であってテロ対策は無関係。
・日本は全てのテロ対策条約(全部で13)を批准済み。
国連越境組織犯罪防止条約を批准済みの187カ国のうち、批准のために新たに共謀罪を作ったのはノルウェーブルガリアの2カ国のみと政府も答弁している。
・現行法のままで条約批准は可能。必要であれば留保宣言付きで批准すればよい。 
 海渡雄一弁護士レジュメから引用
 「越境組織犯罪条約については、日本政府は異常なほど律儀に条約の文言を墨守して、国内法化をしようとした。むしろ、一部の法務警察官僚は、批准を機に過去になかったような処罰範囲の拡大の好機ととらえた節がある。もしかすると、アメリカ政府との間で、アメリカ並みの共謀罪を作るという合意があったのかもしれない」
 
6 戦争する国づくりの集大成としての共謀罪(テキスト11頁)
 2006年 教育基本法「全面改悪」(第一次安倍政権)
 2013年 秘密保護法(以下、第二次安倍政権)
 2015年 安保法制(戦争法)
 2016年 盗聴法(通信傍受法)拡大
 2017年 共謀罪
 国が常時市民を監視し、萎縮させ、戦争に協力させるための体制作りの集大成としての共謀罪。 
 
7 共同の取組で共謀罪阻止を
(1)「共謀罪NO!実行委員会」結成(2017年3月~)
 呼びかけ団体
 ●「秘密保護法廃止」へ!実行委員会(新聞労連、平和フォーラム等)
 ●解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会(憲法会議、許すな!憲法改悪・市民連絡会等)
 ●日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
 ●共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会
 ●盗聴法廃止ネットワーク(日本国民救援会等)
(2)3月~5月 緊急統一署名に取り組もう!
 「共謀罪NO!実行委員会」
 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」
 が共同で呼びかける。
(3)和歌山でも
和歌山県平和フォーラムと和歌山県地方労働組合評議会が「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の枠組により、共謀罪に反対する共通チラシを作成・配布している。
・3月9日(木)18時~19時、JR和歌山駅前で、上記両団体などが参加する緊急行動(統一署名も)が行われた。
・国会での審議入りを踏まえた早急な運動の拡大が求められている。
                                             以 上
 

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2017年2月6日
レファレンス掲載論文「共謀罪をめぐる議論」(2016年9月号)を読む
2017年2月7日
日弁連パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」(五訂版2015年9月)を読む
2017年2月8日
「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」(2017年2月1日)を読む
2017年2月10日
海渡雄一弁護士with福島みずほ議員による新春(1/8)共謀罪レクチャーを視聴する
2017年2月21日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介
2017年2月23日
日本弁護士連合会「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む
2017年2月24日
「安倍政権の横暴を許すな!」連続企画@和歌山市のご案内~3/3共謀罪学習会&3/25映画『高江―森が泣いている 2』上映と講演
2017年2月28日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.3
2017年3月1日
ついに姿をあらわした共謀罪法案(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案)
2017年3月3日
「共謀罪」阻止の闘いは“総がかり”の枠組みで~全国でも和歌山でも
2017年3月4日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.4

2017年3月6日
共謀罪に反対するのも“弁護士”、賛成するのも“弁護士”
2017年3月8日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.5~「テロリズム集団その他」のまやかし

2017年3月9日
3月9日、和歌山で共謀罪に反対する街頭宣伝スタート~総がかり行動実行委員会の呼びかけで
2017年3月17日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.6~立憲デモクラシーの会が声明を出しました
2017年3月21日
閣議決定された「共謀罪」法案~闘うための基礎資料を集めました
2017年2月6日2017年3月31日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.7~4/9日高教育会館(御坊市)で学習会がありま
2017年4月7日