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中野晃一氏『つながり、変える 私たちの立憲政治』を読み、4月28日の講演会@和歌山市に期待する

 今晩(2017年4月24日)配信した「メルマガ金原No.2792」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
中野晃一氏『つながり、変える 私たちの立憲政治』を読み、4月28日の講演会@和歌山市に期待す

 中野晃一上智大学教授(国際教養学部長)をお招きした講演会(主催:青年法律家協会和歌山支部)が今週末(4月28日)に迫ってきました。既にこのメルマガ(ブログ)でご案内しましたが(
中野晃一氏講演会「市民の力で立憲民主主義を創る~他者性を踏まえた連帯の可能性~」(4/28和歌山県民文化会館)のご案内/2016年3月18日)、開催概要を以下に再掲します。

青法協憲法記念行事 憲法を考える夕べ
講演 中野晃一氏(上智大学国際教養学部長、教授)
「市民の力で立憲民主主義を創る~他者性を踏まえた連帯の可能性~」
日時 2017年4月28日(金) 
     開場:午後5時30分 開演:午後6時00分
場所 和歌山県民文化会館 小ホール
      和歌山市松原通1丁目1 電話:073-436-1331
入場無料 予約不要
主催 青年法律家協会和歌山支部
連絡先 和歌山市岡山丁50番地2 電話:073-436-5517
        岡本法律事務所(弁護士 岡 正人)

 多忙を極める中野先生は、講演会開始の直前に会場入りし、講演会終了後、関西空港から即日帰京され
るというハードスケジュールのため、ゆっくりお話する時間もとれないのが残念です。
 出来れば、講演を終えられた後は、奥様や小学生の息子さんを伴われて、白浜アドベンチャーワールドでパンダファミリーでも見学されれば、今ならまだ8頭生活していますし、昨年9月に生まれた末娘の結浜(ゆいひん)は可愛いさかりですから、連休明けに学校に行った息子さんがクラスメートに自慢できるのではないか、などと期待したのですけどね。またの機会に、是非和歌山をゆっくり観光していただければと思います。

 ところで、私自身、中野先生の講演に大いに期待していることは、末尾に掲載した、過去私のブログで
中野先生を取り上げた記事を参照していただければご理解いただけるかと思います。
 その私が、講演会を前に気になっていることが一つあります。それは、講演の演題のうち、サブテーマである「他者性を踏まえた連帯の可能性」についてです。これは、中野先生からご提案いただいたものだということを、交渉にあたった青法協和歌山支部の事務局長から聞いているのですが、何となく分かるような気もする
けれど、明確に説明できるか?と言われても困惑する、というテーマなのです。
 おそらく、この演題を目にして、私と同じように「気になった」人もいるのではないかと推測します。
 そして、そのような疑問を持ちながら聴講すること、つまり、講師のお話によって、自分の抱いた疑問
を何とか解きたいと意識付けしながら講演を受け止めるというのが、実は最も身になる聴き方なのだろうと思います。

 ということで、今日は、28日の講演会のだめ押しの予告編として、皆さんに是非ご来場くださいと呼
びかけるのが主な目的なのですが、昨年の10月に刊行された中野先生の近著をご紹介したいというのがもう一つの目的です。
 実は、先週末、私は、28日の講演会の予習をしようと一念発起し(というのは大げさですが)、中野先生の以下の著書3冊を入手しました。
 
『右傾化する日本政治』 岩波新書(単著) 2015年7月22日刊


『いまこそ民主主義の再生を!――新しい政治参加への希望』 岩波ブックレット(共著/中野晃一、コ
リン・クラウチ、エイミー・グッドマン) 2015年12月3日刊
 


『つながり、変える 私たちの立憲政治』 大月書店 (単著/田中章史氏による聞き書き) 2016
年10月20日刊

 
 時間の都合で、まだ通読できたのは『つながり、変える 私たちの立憲政治』だけです。何しろ「聞き
書き」なので読みやすく、また、市民が主導して立憲野党に共闘を呼びかけ、全国32の全ての1人区で市民と野党の共闘を実現した参院選を総括した上で、今後に向けた課題を確認しながら展望を語るという内容に惹かれて一気に読了しました。
 実は、「他者性を踏まえた連帯の可能性」という私が気になったテーマを読み解くヒントももちろん語
られています。
 1つは、「第2章 新たな「リベラル左派」勢力の再起動」で語られる「メタレベルのリベラリズム」(60頁~)です。一部引用します。
 
「社会の中には多様な意見があり、ひとつの声に収斂されないということが政治の前提であって、そのうえで、それぞれが保守だったり革新だったり、社民党であれ、共産党であれ、民進党であれ、互いの存在と価値を認め、それぞれの立場をふまえて、どうしたら一緒に政治を構築できるかを議論する。それがメタレベルのリベラリズムです。
 いま安倍政権にノーを突きつけているのは、こうしたメタレベルのリベラリズムを前提とした人たちです。それは、安倍さんの政治が、メタレベルのリベラリズムを壊すような、反自由主義を体質としているからです。個人の自己決定権をとにかく否定したい。労働にせよ性の問題にせよ、もちろん教育もそうで
すね。」

 もう1箇所、「第3章 「安倍政権」の本質とは何か」の中で、「「連帯の名乗り」という抵抗運動」
(111頁~)から一部引用します。

「現在のように自己責任論が蔓延し、政治に対する期待がなくなり、野党が分断され、投票率が低ければ、何度やっても自民党が勝てます。国民全体を代表したり、より多くの人を代表することによって政権を
維持しようなんてことは最初から考えていないでしょう。
 それに対する「連帯の名乗り」は、自分のアイデンティティとは異なるアイデンティティをあえて名乗
ることによって連帯の意思を表明し、水平的な方向で社会を再生させようという動きです。
 自己責任によって分断され、アイデンティティのタコツボに入った状態を乗り越えて「保育園落ちたの私だ」と言うことによって、あなたの問題は私の問題でもあり社会の問題なのだとと言って、そこに「社
会」をつくるのです。一人と一人がつながるだけでは線にしかなりませんが、複数の人どうしがつながれば、面になり場ができる。」

 私は、『つながり、変える 私たちの立憲政治』を読んで多くのことを学びましたが、とりわけ感銘深
かったのは、上記引用箇所の「そこに「社会」をつくるのです。」という認識です。
 マーガレット・サッチャーが、雑誌のインタビューに答え、「社会などというものは存在しない」と言い放ったことは、新自由主義の本質を象徴する言葉として有名ですが、新自由主義による「改革」というまやかしに対抗するためには、意識して「社会」をつくり出す営みが必要であり、そこにこそ目指すべき
方向性があるという有力な示唆を得ることができました。
 そういう意味でいうと、私が先週入手した3冊は、岩波ブックレットのタイトルを借りれば、「民主主義の
再生」という大きな流れの中にそれぞれ位置を占めている著作なのだということに気がつきます。
 やはり、残りの2冊もちゃんと読まなければ。

 なお、「疑問を持ちながら聴講すること」が大事だと言いながら、疑問を解くための予習の成果を紹介するのは矛盾ではないか?と思われるかもしれませんが、「何を知りたいのか」と疑問を意識化した上で、可能な限り予習を行い、それでも分からぬ点や気付いていなかった点を知ろうとすることが、あるべき学びの姿勢というものだと思いますから、少しも矛盾していなはずです。
 

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中野晃一氏講演会(青法協)チラシ