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教育研究者有志による「教育現場における教育勅語の使用に関する声明」(4/27)のご紹介と賛同のお願い

 今晩(2017年5月7日)配信した「メルマガ金原No.2805」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
教育研究者有志による「教育現場における教育勅語の使用に関する声明」(4/27)のご紹介と賛同のお願い

 「教育ニ関スル勅語」(明治23年10月30日発布)が、これほど世間の耳目を集めることになったのは、森友学園問題もきっかけの1つかもしれませんが、今となってはそれはささいなことに過ぎないような気がします。
 政府閣僚の相次ぐ容認発言の上に、閣議決定を経た質問主意書に対する答弁書において、「憲法教育基本法(平成十八年法律第百二十号)等に反しないような形で教育に関する勅語を教材として用いることまでは否定されることではないと考えている。」(3月31日付・初鹿明博衆議院議員の質問に対する答弁書)と明言したことにより、この問題は新たなステージに達したと言うべきでしょう。
 
 そのような問題意識から、私も拙い感想をメルマガ(ブログ)にまとめたものでした。
 
 
 けれども、この問題に最も強い危機感を抱いたのは教育研究者の皆さんであったことは当然で、去る4月27日、多くの教育研究者有志が「教育現場における教育勅語の使用に関する声明」を発表しました。
 そして、同日以降、教育研究者のみならず、一般の方からも賛同者を募っています(賛同の意思はメールで連絡します。私も賛同しました)。
 以下に、「教育現場における教育勅語の使用に関する声明」のために作られた特設サイトから、声明本文、要約、賛同受付方法について引用します。
 是非ご一読の上、賛同いただける場合には、以下の賛同メールを送っていただければと思います。

(引用開始)
【賛同受付方法】
私たち教育研究者有志は、教育現場における教育勅語の使用に関する政府の姿勢に対して、以下の声明を発表します。
ご賛同いただける方は、①お名前、②ご所属(差し支えない場合のみ。公表しません)、③このウェブサイトのご賛同者リストへのお名前の記載の可否を、
 kyoikuchokugo.seimei@gmail.com 
までお知らせください。一般の方のご賛同も受け付けております。
 
【声明要約】
次世代を担う子どもたちの成長に対し重要な責任を負う教育において、現憲法下での国民主権に反する教育勅語を復活させることは弊害が大きい。しかし、最近の政府は「憲法教育基本法の趣旨に反しない」という条件をつけながらも、「教員および学校長の判断において」教育勅語の学校教育での使用を容認する姿勢を示している。これは教育勅語そのものが憲法教育基本法に反しているとした過去の国会決議や政府発言を根拠なく変更するものである。 
それゆえ我々は、「教育現場において、教育勅語の全体及び一部を、その歴史的な性格に対する批判的な認識を形成する指導を伴わずに使用することを認めない」という決然たる姿勢を政府に求めるとともに、教員・学校長・所轄庁のいずれもが、民主主義・国民主権基本的人権と相対立する教育勅語の思想や価値観と決別することの必要性を、強く訴える。
 
【声明本文】
          教育現場における教育勅語の使用に関する声明
 
                         2017年4月27日 教育研究者有志
 
現代においては、国境を超えた人々や情報の交流が進むとともに、人々の生活や人生の多様化も進んでいる。このような中で次世代を担う子どもたちは、多様な他者との協同のもとで、全ての人々の基本的人権を尊重し民主主義的な社会を築く主体となることが期待されており、そのために教育は重要な責任を負っている。それゆえ、戦前の大日本帝国憲法下における「国家元首かつ統治権の総攬者」としての天皇や国体思想を前提とし、現憲法下での国民主権に反するかつての教育思想を現在に復活させることは、いかなる面から見ても弊害が大きいことは論を俟たない。しかるに今、教育勅語を教育現場で使用することに対する政府の容認的姿勢が目立ち始めている。
 政府は、2017年2月27日に逢坂誠二議員より提出された「教育基本法の理念と教育勅語の整合性に関する質問主意書」に対する答弁書において、学校教育法上の学校において教育のために教育勅語が使用されること、教育勅語を繰り返し暗唱させることに関して、「お尋ねのような行為が教育基本法(平成十八年法律第百二十号)や学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に違反するか否かについては、個別具体的な状況に即して判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。その上で、一般論として、仮に、同法第一条の「幼稚園」又は「小学校」(以下これらを合わせて「学校」という。)において不適切な教育が行われている場合は、まずは、当該学校の設置者である市町村又は学校法人等において、必要に応じ、当該学校に対して適切な対応をとり、都道府県においても、必要に応じ、当該学校又は当該学校の設置者である市町村若しくは学校法人等に対して適切な対応をとることになる。また、文部科学省においては、必要に応じ、当該学校の設置者である市町村又は当該都道府県に対して適切な対応をとることになる。」と答弁している。
 その後も国会答弁、文部科学省記者会見、質問主意書に対する答弁において、政府は「憲法教育基本法の趣旨に反しない限り」、「教員および学校長の判断において」教育勅語の学校教育での使用を容認し、不適切な場合は「所轄庁が適切に指導する」という発言を繰り返している。
 むろん、個々の教師は思想信条の自由を保障されるべきであり、また私立の学校は建学の理念に即した教育を行うことが認められている。しかし、教育勅語という対象への上記のような政府の姿勢は、過去の国会決議や政府見解に照らせば、従来の方針に対して重大な変更を恣意的に加えたものと言わざるをえない。
 すでに1948年の時点で、衆参両院は、「根本理念が主権在君並びに神話的國体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ國際信義に対して疑点を残すもととなる」(1948年6月19日衆議院教育勅語等排除に関する決議)との理由から、教育勅語の排除・失効を決議している。それゆえ、教育勅語そのものが憲法教育基本法に反しているのであり、「それらに反しない」形での使用とは、「教育勅語憲法教育基本法に反している」ことを教える場合のみであるということになる。
 また歴代文部大臣は、「敗戰後の日本は、國民教育の指導理念として民主主義と平和主義とを高く揚げましたが、同時に、これと矛盾せる教育勅語その他の詔勅に対しましては、教育上の指導原理たる性格を否定してきたのであります」という1948年6月19日第2回国会衆議院本会議における森戸辰男文部大臣発言、およびある私立高校が学校行事で教育勅語を朗読していることが問題とされた際の「昭和二十一年及び二十三年、自後教育勅語を朗読しないこと、学校教育において使わないこと、また衆参両議院でもそういう趣旨のことを決議されております。(中略)教育勅語の成り立ち及び性格、そういう観点からいって、現在の憲法教育基本法のもとでは不適切である、こういうことが方針が決まっておるわけでございます」という1983年5月11日第98国会参議院決算委員会における瀬戸山三男文部大臣発言等、これを教育理念とすることを明確に否定してきた。過去の国会決議や政府発言と比べて、今回の政府見解等は、教育勅語への容認の度合いを根拠なく強めるものであり、正当性を欠いている。
 さらに、以下の諸点において、前記の政府の姿勢は、子どもたちが民主主義的な社会の担い手として成長を遂げる過程に対し、教育現場で教育勅語が不適切な形で使用される事態を防ぐためにはきわめて不十分である。
 第一に、その成り立ちや性格全体から切り離して、憲法教育基本法の趣旨と一見合致するような教育勅語の一部分が教育現場で使用された場合、教育勅語全体の性質や歴史的背景についての批判的理解が子どもたちに形成されないおそれがある。
 第二に、実際に学校教育法上の学校(幼稚園を含む)において教育勅語の朗読等が長期にわたり行われていた複数の事例が存在することからもわかるように、憲法教育基本法の趣旨と反する思想をもつ教員や学校長が教育勅語を使用し、所轄庁の発見や指導が遅れたり不十分となったりするケースは容易に想定される。その場合、子どもたちは、そのような教育が行われなければ実現されていたはずの成長を阻害されるという点で、多大な損害を被ることになる。
 これらの理由により、教育現場における教育勅語の不適切な使用に対しては、より実効ある防止策が求められる。
 それゆえ、我々は、過去の政府見解も踏まえ、「教育現場において、教育勅語の全体及び一部を、その歴史的な性格に対する批判的な認識を形成する指導を伴わずに使用することを認めない」という決然たる姿勢を政府に求めるとともに、教員・学校長・所轄庁のいずれもが、民主主義・国民主権基本的人権と相対立する教育勅語の思想や価値観と決別することの必要性を、強く訴えるものである。

2017年(平成29年)4月27日
教育研究者有志
※賛同者名簿は以下を参照
 
賛同者(2017年4月27日7時時点。五十音順。敬称・所属略)
浅井 幸子  飯田 浩之  生澤 繁樹  乾 彰夫  今井 康雄
今津 孝次郎  岩下 誠  岩見 和彦  植田 健男  上西 充子
上野 正道  上間 陽子  上森 さくら  牛渡 淳  内田 良
大内 裕和  大多和 直樹  大橋 基博  岡邊 健  岡本 智周
小川 正人  尾川 満宏  小澤 浩明  小野田 正利  折出 健二
影浦 峡  柏木 智子  片岡 洋子  片山 勝茂  片山 悠樹
加野 芳正  釜田 史  苅谷 剛彦  河上 婦志子  菊地 栄治
北村 友人  木戸口 正宏  木村 拓也  木村 元  木村 涼子
久冨 善之  久保田 貢  小国 喜弘  小杉 礼子  児美川 孝一郎
子安 潤  佐久間 亜紀  佐々木 啓子  佐藤 香  佐藤 学    
佐野 正彦  澤田 稔  敷田 佳子  篠崎 祐介  志水 宏吉
清水 睦美  白川 優治  杉田 真衣  鈴木 雅博  高田 一宏
高野 和子  高橋 寛人  多賀 太  竹石 聖子  武井 哲郎
竹内 常一  竹内 久顕  竹川 慎哉  田尻 敦子  田中 智志
谷口 知美  谷尻 治  知念 渉  土屋 明広  筒井 美紀
土井 妙子  豊田 ひさき  中井 睦美  仲田 康一  仲嶺 政光
中村 清二  二宮 祐  仁平 典宏  額賀 美紗子  能智 正博
野崎 志帆  野平 慎二  南風原 朝和  橋本 紀子  長谷川 裕
羽田野 真帆  ハヤシザキカズヒコ  樋口 明彦  平石 晃樹  平塚 眞樹
福田 敦志  藤井 啓之  藤田 武志  星加 良司  堀 健志
本田 由紀  松下 佳代  松田 盛雄  松田 洋介  森 直人
山岸 利次  山田 隆幸  山田 哲也  山中 吾郎  山本 敏郎
山本 宏樹  山本 雄二  湯川 嘉津美  油布 佐和子  吉川 卓治
芳澤 拓也  吉田 文  米田 俊彦  李 正連  渡辺 雅之
亘理 陽一
(引用終わり)
 
 なお、この「声明」特設サイトには、この間の政府閣僚等による発言や、内閣としての質問主意書に対する答弁書など、本問題に関する基礎資料が「教育勅語関連資料」として集積されており、非常に有益であることをご紹介しておきます(参照先のサイトがあるものについては、リンクしておいてくれるとなお良いのですが)。