wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

「学者の会」呼びかけ人一同が発表した「共謀罪法案の強行採決に対する抗議声明」(6/18)を読む

 今晩(2017年6月19日)配信した「メルマガ金原No.2848」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「学者の会」呼びかけ人一同が発表した「共謀罪法案の強行採決に対する抗議声明」(6/18)を読む

 共謀罪シリーズの第34回は、昨日(6月18日)、「安全保障関連法に反対する学者の会・呼びかけ
人一同」名義で発表された「共謀罪法案の強行採決に対する抗議声明」をご紹介します。
 参議院採決がなされた6月15日にお送りした共謀罪シリーズ第33回
「「共謀罪」法案の参議院採決は違法だ(付・日弁連、市民連合、日本ペンクラブなどによる抗議声明)」では、
  日本弁護士連合会
  安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
  日本ペンクラブ
  日本新聞労働組合連合新聞労連
  日本労働組合総連合会(連合)
という5団体の声明や談話をご紹介しましたが、他にも続々と抗議声明が出されています。
 その内、本日ご紹介する声明は、いわゆる「学者の会」(安全保障関連法に反対する学者の会)の「呼びかけ人一同」によるものです。「学者の会」そのものによる「声明」ではなく、「呼びかけ人(という個人)一同」としたのは、もともと「学者の会」が、「安全保障関連法に反対する」(当初は「・・・法案に反対する」だった)という単一目的を掲げて結集した団体であることに配慮してということでしょう。
 
 とはいえ、多くの呼びかけ人の「共謀罪」に関する思いは様々でしょうから、これを最大公約数的に声明文にまとめるこ
と自体、容易な作業ではなかったのではないかと推測します。
 呼びかけ人の内の7人の方々が出席して、昨日、東京都千代田区の学士会館において、この声明を発表するための記者会見が開かれました。その模様については、とりあえずIWJによる中継動画がアップされていましたのでご紹介します。ただし、会員登録していない場合には、約6分のハイライト動画しか視聴できませんので、これを機会に是非会員登録をご検討ください(※IWJ会員登録)。
 
安保関連法に反対する学者の会が共謀罪強行採決へ抗議 内田樹名誉教授「この法律は明らかに社会秩序をもたらしたり社会に平安をもたらすのではなく、国民に分断をもたらすために意図的につくられた法律」 2017.6.18
※会見に出席された方々の基調発言
冒頭~ 佐藤学氏(学習院大学教授、東京大学名誉教授)
6分~ 高山佳奈子氏(京都大学教授)
9分~ 内田樹氏(神戸女学院大学名誉教授)
12分~ 池内了氏(名古屋大学名誉教授)
16分~ 横湯園子氏(元中央大学教授、元北海道大学教授、臨床心理学)
22分~ 千葉眞氏(国際基督教大学特任教授)
31分~ 広渡清吾氏(東京大学名誉教授、元日本学術会議会長)
38分~ 佐藤学氏(学習院大学教授、東京大学名誉教授)
41分~ 質疑応答
 ハイライト動画(6分20秒)
 

 それでは、以下に、「安全保障関連法に反対する学者の会・呼びかけ人一同」による「共謀罪法案の強
行採決に対する抗議声明」全文を引用します。
 
(引用開始)
            共謀罪法案の強行採決に対する抗議声明
 
 2017年6月15日に、自民党公明党日本維新の会は、参議院において、組織的犯罪処罰法改正法
案につき、法務委員会での採決を経ることなく本会議での採決を強行した。内容的にも、手続的にも、民主主義を破壊する暴挙である。
 閣僚・与党および法務省は本法案を「テロ等準備罪」を創設するものと称したが、当初明らかになった案には「テロ」の語が存在しなかった。その後も「テロリズム集団その他」の語が挿入されただけで、テロ対策を内容とする条文は全く含まれない。しかも、日本はテロ対策主要国際条約をすべて批准し、国内法化を終えていることから、組織的なテロの準備行為はすでに網羅的に処罰対象である。本立法にテロ対策の意義はない。内閣が法案提出にあたって理由とした国連国際組織犯罪防止条約も、その公式「立法ガイド」の執筆者が明言するとおり、テロ対策を内容とするものではない。
 本改正法の処罰対象は、犯罪の計画の合意と「実行準備行為」から成る、国際的に共謀罪(conspiracy)と理解されるものにほかならない。主体の要件とされる「組織的犯罪集団」には、一般の団体の一部をなす集団の性質が犯罪的なものに変化すれば該当することとなり、人権団体や環境保護団体として組織されたものも対象たりうることを政府答弁は認めている。「実行準備行為」は実質的な危険を含まない単なる「行為」で足り、無限定である。約300に及ぶ対象犯罪は、テロにもマフィアにも関係のない多数の類型を含む一方で、警察の職権濫用・暴行陵虐罪や公職選挙法違反など公権力を私物化する罪や、民間の商業賄賂罪など組織的経済犯罪を意図的に除外
しており、国連条約の趣旨に明らかに反している。
 こうした点について国会で実質的な議論を拒み、虚偽の呼称により国民をだまし討ちにしようとする政府の姿勢は、議会制民主主義への攻撃である。さらに参議院での採決は、委員会採決を経ない手続を「特に緊急を要する」場合にしか認めない国会法に違反している。
 これらの内容・手続の問題点を問いただす公式の書簡がプライバシー権に関する国連特別報告者から首相宛てに出されたにもかかわらず、政府は質問に回答するどころかこれに抗議した。国連人権委員会においては、表現の自由に関する特別報告者によって、日本の政治家の圧力によるメディアの情報操作も公式に報告されている。国連との関係の悪化は、北朝鮮問題の解決や国連国際組織犯罪防止条約への参加を要する日本の国益を侵害している。
 ここに、本強行採決に強く抗議し、今後、市民の自由を侵害する怖れのある法が悪用されないよう厳しく監視することと、立憲主義と民主主義を回復する勢力によって、この法を廃止することを広く社会に対して呼びかける。
 
2017年6月18日
安全保障関連法に反対する学者の会・呼びかけ人一同
 
安全保障関連法に反対する学者の会・呼びかけ人

青井 未帆 (学習院大学教授 法学)
浅倉 むつ子 (早稲田大学教授 法学)
淡路 剛久 (立教大学名誉教授・弁護士 民法・環境法)
池内 了 (名古屋大学名誉教授 宇宙物理学)
石田 英敬 (東京大学教授 記号学・メディア論)
市野川容孝 (東京大学教授 社会学
伊藤 誠 (東京大学名誉教授 経済学)
上田 誠也 (東京大学名誉教授 地球物理学/日本学士院会員)
上野 健爾 (京都大学名誉教授 数学)
上野 千鶴子 (東京大学名誉教授 社会学
鵜飼 哲 (一橋大学教授 フランス文学・フランス思想)
内田 樹 (神戸女学院大学名誉教授 哲学)
内海 愛子 (恵泉女学園大学名誉教授 日本-アジア関係論)
宇野 重規 (東京大学教授 政治思想史)
大澤 眞理 (東京大学教授 社会政策)
岡野 八代 (同志社大学教授 西洋政治思想史・フェミニズム理論)
小熊 英二 (慶應義塾大学教授 歴史社会学
戒能 通厚 (早稲田大学名誉教授 法学)
海部 宣男 (国立天文台名誉教授 天文学
加藤 節 (成蹊大学名誉教授 政治哲学)
金子 勝 (慶応義塾大学教授 財政学)
川本 隆史 (国際基督教大学特任教授 社会倫理学
君島 東彦 (立命館大学教授 憲法学・平和学)
久保 亨 (信州大学教授 歴史学
栗原 彬 (立教大学名誉教授 政治社会学
小林 節 (慶應義塾大学名誉教授 憲法学)
小森 陽一 (東京大学教授 日本近代文学
齊藤 純一 (早稲田大学教授 政治学
酒井 啓子 (千葉大学教授 イラク政治研究)
佐藤 学 (学習院大学教授 教育学)
島薗 進 (上智大学教授 宗教学)
杉田 敦 (法政大学教授 政治学
高橋 哲哉 (東京大学教授 哲学)
高山 佳奈子 (京都大学教授 法学)
千葉 眞 (国際基督教大学特任教授 政治思想)
中塚 明 (奈良女子大学名誉教授 日本近代史)
永田 和宏 (京都大学名誉教授・京都産業大学教授 細胞生物学)
中野 晃一 (上智大学教授 政治学
西川 潤 (早稲田大学名誉教授 国際経済学開発経済学
西崎 文子 (東京大学教授 歴史学
西谷 修 (立教大学特任教授 哲学・思想史)
野田 正彰 (精神病理学精神病理学
浜 矩子 (同志社大学教授 国際経済)
樋口 陽一 (憲法学者 法学/日本学士院会員)
広田 照幸 (日本大学教授 教育学)
廣渡 清吾 (東京大学名誉教授 法学/日本学術会議前会長)
堀尾 輝久 (東京大学名誉教授 教育学)
益川 敏英 (京都大学名誉教授 物理学/ノーベル賞受賞者
間宮 陽介 (青山学院大学特任教授 経済学)
三島 憲一 (大阪大学名誉教授 哲学・思想史)
水島 朝穂 (早稲田大学教授 憲法学)
水野 和夫 (法政大学教授 経済学)
宮本 憲一 (大阪市立大学名誉教授 経済学)
宮本 久雄 (東京大学名誉教授・東京純心大学教授 哲学)
山口 二郎 (法政大学教授 政治学
山室 信一 (京都大学教授 政治学
横湯 園子 (中央大学元教授・北海道大学元教授 臨床心理学)
吉岡 斉 (九州大学教授 科学史
吉田 裕 (一橋大学教授 日本史)
鷲谷 いづみ (中央大学教授 保全生態学
渡辺 治 (一橋大学名誉教授 政治学憲法学)
和田 春樹 (東京大学名誉教授 歴史学
(引用終わり)
 
(付記・和歌山弁護士会企画のお知らせ)
 和歌山弁護士会では、上記記者会見にも出席されていた京都大学高山佳奈子教授をお招きした市民集
会を下記日程で開催します。多くの方のご参加をお待ちしています。
民集会「あらためて、いわゆる共謀罪テロ等準備罪)がもたらす社会を考える(仮称)」
講師 高山佳奈子氏(京都大学教授・刑事法学)
日時 2017年7月6日(木)午後6時30分~
会場 和歌山ビッグ愛 1階大ホール
入場無料・予約不要
主催 和歌山弁護士会
共催 日本弁護士連合会・近畿弁護士会連合会(予定)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/共謀罪シリーズ)
2017年2月6日
レファレンス掲載論文「共謀罪をめぐる議論」(2016年9月号)を読む
2017年2月7日
日弁連パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」(五訂版2015年9月)を読む
2017年2月8日
「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」(2017年2月1日)を読む
2017年2月10日
海渡雄一弁護士with福島みずほ議員による新春(1/8)共謀罪レクチャーを視聴する
2017年2月21日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介
2017年2月23日
日本弁護士連合会「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む
2017年2月24日
「安倍政権の横暴を許すな!」連続企画@和歌山市のご案内~3/3共謀罪学習会&3/25映画『高江―森が泣いている 2』上映と講演
2017年2月28日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.3
2017年3月1日
ついに姿をあらわした共謀罪法案(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案)
2017年3月3日
「共謀罪」阻止の闘いは“総がかり”の枠組みで~全国でも和歌山でも
2017年3月4日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.4

2017年3月6日
共謀罪に反対するのも“弁護士”、賛成するのも“弁護士”
2017年3月8日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.5~「テロリズム集団その他」のまやかし

2017年3月9日
3月9日、和歌山で共謀罪に反対する街頭宣伝スタート~総がかり行動実行委員会の呼びかけで
2017年3月17日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.6~立憲デモクラシーの会が声明を出しました
2017年3月21日
閣議決定された「共謀罪」法案~闘うための基礎資料を集めました
2017年3月31日
2017年4月7日
2017年4月14日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.9~民科法律部会の声明を読む
2017年4月18日
声明「許せない「共謀罪」」~「「大逆事件」の犠牲者を顕彰する会」が引き継ぐ「志」
2017年4月26日
緊急開催!和歌山弁護士会「共謀罪法案(テロ等準備罪)を考える県民集会」(5/10@プラザホープ)
2017年4月27日
高山佳奈子京都大学大学院教授による共謀罪法案についての参考人意見陳述(2017年4月25日・衆議院法務委員会)を読む

2017年5月9日
「共謀罪」阻止のために~5/9WAASA学習会で話したこと、6/11くまの平和ネットワーク講演会で話すべきこと

2017年5月17日
「共謀罪」をめぐる5月16日の動きを動画で振り返る~衆議院法務委員会参考人質疑、日比谷野音大集会、立憲デモクラシーの会シンポ

2017年5月20日
闘いはこれからだ~5/19「安倍政治を終わらせよう5.19院内集会」&5/20「安倍政権に反対する和歌山デモ」
2017年5月22日
「共謀罪」法案の衆議院における修正案(可決)を読む
2017年6月6日
予告・「共謀罪」って何?こんなにある問題点!(講師:金原徹雄弁護士)@新宮市(6/11)と真宗大谷派による共謀罪法案反対声明(5/18)
2017年6月7日
国際ペン会長声明「共謀罪は日本の表現の自由とプライバシーの権利を侵害する」&加藤健次弁護士による現状分析
2017年6月10日
2017年6月11日 
2017年6月15日
「共謀罪」法案の参議院採決は違法だ(付・日弁連、市民連合、日本ペンクラブなどによる抗議声明)