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立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」(6/26)を読む

 今晩(2017年6月30日)配信した「メルマガ金原No.2859」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。

立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」(6/26)を読む


 昨日に引き続いて「立憲デモクラシーの会」の活動をご紹介します。
 同会が、去る6月26日、「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」を発表し、そのための記者会見には、山口二郎法政大学教授(同会共同代表)、石川健治東京大学教授、西谷修立教大学特任教授が出席されたこと(IWJによる動画もある)、にもかかわらず、肝腎の「声明」自体が同会ホームページになかなかアップされないということは既に3日前のこのメルマガ(ブログ)で書いたとおりです。
 「立憲デモクラシーの会」としてもようやくそれに気がつき、6月28日に(私が気がついたのは昨日・29日でしたが)同会ホームページにアップされました。以下に声明全文とIWJによる記者会見動画をご紹介します。この動画は会員登録(一般会員で十分ですが)しないと全編視聴できず、会員でない方は5分弱のハイライト動画しか視聴できませんので、是非会員登録して視聴していただければと思います。


ハイライト動画(4分51秒)


安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明
(引用開始)
 2017年6月18日、数多くの深刻な問題や疑念を残したまま、通常国会が閉じられた。立憲デモクラシーの会は、「共謀罪」法案(組織的犯罪処罰法改正案)の審議入りに先立つ3月15日に同法案への反対を表明し、「立法の合理性・必要性に深い疑念の残る法案を十分な説明もないまま、数の力で無理やり押し通せば、日本の議会制民主主義に対する国民の信頼をますます損なう」と警鐘を鳴らしたが、この懸念が現実のものとなってしまった。
 形式的に審議時間を消化すれば足りるという態度で、法務省刑事局長を政府参考人として常時出席させて金田勝年法務大臣の代わりに答弁をさせ、最後は参議院法務委員会の審議を一方的に打ち切り、委員会採決を省略し、数の力に任せて本会議で可決させる暴挙に至ったことは、共謀罪法が、政府さえその合理性や必要性をまともに説明することができない悪法であることを明らかにした。立憲デモクラシーの会はひきつづき、このように正当性を欠いた共謀罪法が悪用されないよう注視し、その廃止を求めていく。
 政府与党が、両院における圧倒的な議席数を恃みに説明や説得への努力を放棄したことがもたらした議会政治の劣化は、今般の通常国会でついに「国会崩壊」と言わざるを得ないレベルまで進んだ。資質や能力において不適格というほかないのは、共謀罪法案審議に際しての金田法務大臣だけではない。稲田朋美防衛大臣松野博一文科大臣、山本幸三内閣府特命担当大臣らも、南スーダンPKO活動「日報」問題や森友学園加計学園問題などに関して、何の論理も誠意も見受けられない答弁、さらには明白な虚偽答弁を繰り返してきた。そして、これら適格性を欠いた大臣の任命責任と内閣全体の説明責任の放棄は、いずれも安倍晋三首相が直接その責めを負うべきものである。
 さらに今国会、目に余ったのは、不都合な事実の説明を免れようと、公文書、公的意味を持つ文書の隠蔽や廃棄が横行したことである。このことは安倍政権の下、議会制民主主義のみならず、法の支配や行政の透明性・公平性の原則が大きく歪められていることを示しており、まさに森友学園加計学園問題において、首相とその側近や夫人による公権力や国有財産の私物化が疑われていることにも通底する、安倍政権の体質そのものに関わる問題である。
 国会、ひいては国民に対して説明責任を果たそうとしない安倍政権のふるまいは、公権力が私的な人間関係により簒奪されているとの疑惑を深めている。新たな文書の存在が明らかとなったにもかかわらず、閉会中審査や関係者の証人喚問を拒絶しとおして「疑惑隠し」をもくろむなど、国民主権を無視した暴挙である。すでに野党議員が憲法53条の定めに従って臨時国会の召集を求めた以上、内閣は速やかに臨時国会を開き、説明責任を果たさなければならない。

2017年6月26日
立憲デモクラシーの会
(引用終わり)

 上記「声明」にもあるとおり、民進、共産、自由、社民の野党4党は、6月22日に憲法53条の規定に基づき、臨時会(臨時国会)の召集を求めました。
 
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
 
 しかるに、伝えられるところでは、内閣はこの憲法の規定を遵守する気など毛頭ないようです。
 
時事ドットコム(2017/06/29-20:13)
臨時国会、早期召集応ぜず=稲田氏罷免も拒否-安倍政権

(抜粋引用開始)
 安倍晋三首相は29日、民進党など野党が求める臨時国会の早期召集に応じない方針を決めた。東京都議選(7月2日投開票)の応援で「自衛隊としてもお願いしたい」と発言した稲田朋美防衛相の罷免要求についても拒否した。8月上旬にも行われる内閣改造で続投させるかどうか判断する。
 野党の臨時国会召集要求は、衆参いずれかで総議員の4分の1以上の求めがあった場合の召集決定を政府に義務付けた憲法53条に基づくものだ。
 これに関し、菅義偉官房長官は29日の記者会見で「政府は召集義務を負うが、憲法上期日の規定はない」と語った。稲田氏についても菅氏は「今後とも誠実に職務に当たってほしい」と述べた。
 稲田氏は同日、防衛省に登庁する際、記者団から野党の辞任要求に対する考えを問われたが、無言を貫いた。
 安倍政権としては、学校法人「加計学園」の問題や稲田氏の失言などで逆風が吹く中、国会で野党に追及の場を与えるのは得策ではないとの判断を固めているもようだ。
(引用終わり)
 
 2015年10月21日、当時の野党5党が憲法53条に基づいて臨時会の召集の決定を要求したにもかかわらず、安倍政権がとうとう臨時会の召集を決定せず、翌年1月の常会開会まで、国会が開かれなかったことが想起されますが、「立憲デモクラシーの会」が上記「声明」を発表したのも、そのような事態を懸念、というか予想したからでしょう。ちなみに、IWJ全編動画の33分から、石川健治東大教授(憲法学)が、憲法53条の趣旨を解説してくれています。
 時事が伝えるところでは、昨日の記者会見で菅義偉官房長官は、「政府は召集義務を負うが、憲法上期日の規定はない」と語ったそうで、これを読んで私が思ったのは、「この人とは、法律の解釈を議論する共通の基盤が存在しない」ということでした。
 この発言の要諦を抽出すれば、「法律が明文で禁じていない限り、何をやってもよい」ということに尽きます。2012年12月以来、安倍政権がやってきたことというのは、つまりそういうことの連続なのです。
 「立憲デモクラシーの会」に結集した学者の皆さんが最も危機感を持たれるのもその点ではないかと思います。
 
 ちなみに、2015年10月の野党による臨時会招集要求が行われた際、国会における先例を調べて書いた私のブログ(憲法53条後段に基づく臨時会召集要求と国会の先例について/2015年10月21日)に、再びアクセスが増え出しているのは、安倍政権がまたぞろ憲法53条の無視を決め込んでいるからでしょう。
 
 とにかく、憲法を守らない者に憲法「改正」を主張する資格などない、ということは声を大にして言い続けなければなりません。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/最近の「立憲デモクラシーの会」関連)
2017年3月17日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.6~立憲デモクラシーの会が声明を出しました
2017年5月17日
「共謀罪」をめぐる5月16日の動きを動画で振り返る~衆議院法務委員会参考人質疑、日比谷野音大集会、立憲デモクラシーの会シンポ
2017年5月24日
立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」を読む
2017年6月16日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」発表記者会見(5/22)