2017年7月12日配信(予定)のメルマガ金原.No.2871を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
本日(7月12日)午前11時から、和歌山県庁内の県政記者室において、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」など、和歌山県下で平和憲法を守る活動に関わってきた7団体が、「安倍首相による改憲発言についての声明」を発表するための記者会見を開きました。
その7団体は以下のとおりです。
憲法9条を守る和歌山弁護士の会
九条の会・わかやま
9条ネットわかやま
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合わかやま
憲法九条を守るわかやま県民の会
和歌山県平和フォーラム
平和と憲法を守りたい市民の声
並べた順序は、共同声明を提案した憲法9条を守る和歌山弁護士の会を先頭に、あとは賛同の意思を表明した順としています。
今日の会見に出席したのは、以下の5名でした(写真、向かって左から、由良さん、藤井さん、西村さん、松浦さん)。
藤井幹雄さん(弁護士)
由良登信さん(弁護士)
市民連合わかやま共同代表
松浦攸吉さん
平和と憲法を守りたい市民の声代表
市民連合わかやま共同代表
西村佳三さん
憲法九条を守るわかやま県民の会事務局長
金原徹雄(弁護士)
末尾の(参考サイト2)に掲げたように、総がかり行動実行委員会が5月10日に、市民連合が5月16日に、立憲デモクラシーの会が5月22日にと、いずれも5月中に声明や見解を発表しているのに比べると、いかにも間延びしている感は否めません。
一つには、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が検討を始めたのが、月例会議が開かれた5月下旬であったこと、同会単独ではなく、出来れば多くの団体との共同で発表したいということで、呼びかけや、各団体内の機関決定の手続にそれなりの時間を要したことなどから、やむを得ずこのタイミングとなったという事情があります。
それから、自民党の党内手続も全く無視した唐突な発言であったため、党内の意見のとりまとめにそれなりの時間を要するかと思いきや、2012年の同党・日本国憲法改正草案はどこへ行ったの?状態で、唯々諾々と総裁のご意向のままに改憲案をまとめる方針のようである上に、当初、来年の通常国会に提案というスケジュールが語られていたはずであるのに、これまたいきなり安倍首相(総裁)が、6月24日の神戸「正論」懇話会で、「きたるべき臨時国会が終わる前に、衆参の憲法審査会に自民党の案を提出したい。」と言いだしても、それに正面から異を唱える者がほとんどいない状態を見るにつけ、安倍政権の不可逆的崩壊を確認するまでは、当面、この「安倍改憲発言」路線に対峙することが最重要の課題であり続けるだろうと思います。
従って、県下の諸団体が一致してその認識を共有し、対外的なアピールを行うタイミングとして、「7月12日」は決して遅過ぎることはないと考えます。
(引用開始)
安倍首相による改憲発言についての声明
1 安倍首相は、2017年5月3日、唐突に憲法9条について「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」、「高等教育を無償化する」ことなどを内容とする憲法改正を実現し、2020年の施行を目指すと発言した。
2 その上、その改憲提言の内容そのものが、問題の多いものである。
すなわち、現行憲法は、9条1項で武力の行使を禁じ、2項において軍隊及び「その他の戦力」を保持しないものと定めている。ここから、これまでの政府解釈によっても、自衛隊は「戦力」に該当しない「自衛の目的のために必要最小限の実力」の範囲でしか憲法上認められず、海外への武力行使目的での派遣や武力の行使は禁じられてきた。そのため、自衛隊が行えるのは武力行使に当たらない活動と例外的な自衛のために必要な活動に限定されるとされてきたが、憲法上に「自衛隊」を明記すると、それらの制約が解かれ、逆に9条2項の「戦力不保持」の規範が無効化することになると言わざるを得ない。
2017年7月12日
憲法9条を守る和歌山弁護士の会
九条の会・わかやま
9条ネットわかやま
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合わかやま
憲法九条を守るわかやま県民の会
和歌山県平和フォーラム
平和と憲法を守りたい市民の声
(引用終わり)
(引用終わり)
(報道)
和歌山放送ニュース 2017年07月12日 19時21分
(引用開始)
「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」など、日本国憲法改正に反対の立場をとる和歌山県内7つの市民団体は、安倍総理大臣が行った「憲法に自衛隊の存在などを明記し、2020年に改正憲法施行を目指す」との発言に抗議する声明をきょう(12日)発表しました。
声明では、ことし5月3日の憲法記念日に、安倍総理が「憲法9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むことや、高等教育を無償化することなど憲法を改正し、2020年の施行を目指す」と発言したことに対して「憲法で自衛隊を明記すると、9条2項の「戦力不保持」の規範が無効化される。高等教育の無償化も財政措置さえ講じれば可能で、いまの憲法を改正する必要は無い」と主張し、安倍総理の発言に抗議しています。
憲法9条を守る和歌山弁護士の会の藤井幹雄(ふじい・みきお)共同代表は「安倍総理は、東京オリンピックの開催を理由に憲法改正を数の力で押し通そうとしているが、オリンピックは平和の祭典であり、政治利用するべきではない」と述べ、憲法改正に強い懸念を示しました。
(引用終わり)
(参考サイト1/安倍首相「改憲メッセージ」)
朝日新聞デジタル 2017年5月3日15時09分
憲法改正「2020年に施行したい」 首相がメッセージ
(参考サイト2/安倍首相改憲発言に抗議する声明等)
5月10日
戦争をさせない・9条を壊すな!総がかり行動実行委員会
5月16日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
「安倍改憲メッセージ」についての市民連合の声明
5月22日
立憲デモクラシーの会
「今回の安倍提案が問題を情緒化しているだけで理性的な思考には支えられていないことは、仮に今回の提案が否決されたら一体どうなるのかということを考えてみればよくわかります。「現状を追認し、それを憲法に書き込むだけのことだ」ということですので、反転させてみますと、この提案が否決されてしまうと、「現状を主権者たる国民が否定をした」ということになります。従って、もはや、現状に戻ることはもうできません。どこに立ち戻ることになるのか。人によっては、それは集団的自衛権の行使が否定されたところに戻るのだということになるのかもしれませんし、PKO活動ももうできなくなるのだと。あるいはさらに言えば、自衛隊の存在そのものが否定されてしまったのだというふうに主張する人もいるだろうと思います。可決されることばかりを念頭において、否決された場合にどうなるのか。これをおそらく考えていないのではないでしょうか。現状では約6割の有権者は「9条に手を触れるべきではない」と言っているわけですが、否決される蓋然性は決して否定できないと思います。そうなりますと、収拾不能の大混乱がもたらされることになるのではないでしょうか。「情緒論に訴えかけて、何が何でも憲法を変えよう」という自身の願望を通そうとするあまり、国の安全保障を大きく損なう。そういう事態を招こうとしているのではないか。
同じ日本国民である以上は、自衛隊員の尊厳は守られる必要があります。しかし、安倍首相の改憲提案というのは、是が非でも9条を変えたい。憲法を変えたいという自身の願望を遂げるための単なる手段として、この自衛官の尊厳、自衛官の誇りと自信というものを扱っているのではないでしょうか。「人を道具としてのみ、手段としてのみ扱うな」というカントの道徳原則に真っ向から反していると思います。人を単なる道具として扱う極みでありまして、「自衛官を道具扱いするのにも程があるのではないか」というふうに私は考えています。」
(弁護士・金原徹雄のブログから/安倍改憲メッセージ関連)
2017年5月24日
立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」を読む
2017年6月16日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」発表記者会見(5/22)
2017年6月22日
羽柴修弁護士講演会「憲法をめぐる情勢と国民投票を意識した取り組み」から学ぶ
2017年6月27日
立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」を読む
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