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高レベル放射性廃棄物・地層処分のための「科学的特性マップ」が発表された

 2017年7月30日配信(予定)のメルマガ金原.No.2889を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
高レベル放射性廃棄物・地層処分のための「科学的特性マップ」が発表された
 
 一昨日(7月28日)、経済産業省資源エネルギー庁は、原子力発電に伴って発生する「高レベル放射性廃棄物」を地層処分するための適性を基に、日本全土を、
 〇好ましくない特性があると推定される地域(地下深部の長期安定性等の観点)
 〇好ましくない特性があると推定される地域(将来の掘削可能性の観点)
 〇好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域
 〇輸送面でも好ましい地域
に4大別した「科学的特性マップ」を公表しました。
 
 
 
 誰しも、まず自分の住む地域がどうなっているか気になるのが人情というもので、私もまず「和歌山県は?」と眺めてみました。
 その結果、大阪との府県境沿い、というより紀の川沿いと言った方が良いでしょうが、東西に走る中央構造線沿いの細長い地域が「好ましくない特性があると推定される地域(地下深部の長期安定性等の観点)」とされた他は、大半が「輸送面でも好ましい地域」であり、それ以外の紀伊山地の奥が「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」となっていました。
 これを眺めながら、「そういえば、日置川町(現在は白浜町の一部)の元原発建設候補用地を、関西電力はいまだに手放しておらず、駐在員も置いているという話を聞いたことがあったな」などと想起している和歌山県民も少なくないのではと思います。
 
 ただし、東海から近畿、四国、九州の太平洋沿岸や中国、四国の瀬戸内海沿岸地域などは、のきなみ「輸送面でも好ましい地域」というAランク(?)評価であり、そういえば、あれだけ地震津波の多い三陸沿岸もほぼAランクですね。このマップのどこが「科学的」なのか、正直よく分からないと言うしかありません。
 とりあえず、報道を1つご紹介しておきましょう。
 
(抜粋引用開始)
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定で、政府は28日、地質学的条件から適否を推定して日本地図を塗り分けた「科学的特性マップ」を公表した。適地とされたのは国土面積の約65%、適地を持つ市区町村は全体の8割超の約1500自治体に上る。
 一方、最終処分場を作らない確約を国と唯一結んでいる青森県について、世耕弘成経済産業相は同日の閣議後の会見で「約束を順守する」と候補地から除外する考えを示した。東京電力福島第1原発事故からの復興途上である福島県についても「負担をお願いする考えはない」と述べた。候補地から事実上外れる。
 政府は核のごみを地下300メートルより深い地層に埋設処分する方針。マップは最終処分場選定に向けた基礎資料で、既存の地質学的なデータから処分場の適性度合いを4種類に塗り分けた。
 「火山から15キロ以内」や「活断層付近」など地下の安定性に懸念があったり、「石炭・石油・ガス田」があったりして「好ましくない特性があると推定される」地域は、国土の約35%を占めた。
 これら以外の地域は「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域で国土の約65%に及ぶ。このうち、海岸から20キロ以内の沿岸部は、廃棄物の海上輸送に便利なことからより好ましいとされ、全体の約30%を占めた。
(略)
 政府はマップ提示後、9月ごろから自治体向けの説明会を実施する方向で調整中。その後、数年かけ自治体の意向を探りながら複数の候補地を選び、(1)文献調査(2年程度)(2)概要調査(4年程度)(3)精密調査(14年程度)--の3段階で建設場所を決めたい考えだ。
(略)
(引用終わり)
 
 発表からわずか2日、この「科学的特性マップ」をどう受け止めたものか、判断に迷う人も少なくないでしょう。こういう時には信頼できる先達の言葉に耳を傾けてみようと思い、原子力資料情報室サイトを閲覧したところ、期待にたがわず、7月28日のうちに「声明」が発表されていました。
 併せて、原子力資料情報室ほか全6団体によるステイトメントも掲載されていました。
 是非、熟読して参考にしたいと思います。
 
原子力資料情報室声明】地層処分ありきでは問題は解決しない
 
                                                     2017年7月28日
                                                     NPO法人 原子力資料情報室
                                                     共同代表 山口幸夫、西尾漠、伴英幸
 
 本日、高レベル放射性廃棄物最終処分地の選定に向けた「科学的特性マップ」が最終処分関係閣僚会議で決定され、経済産業省から公表された。マップは4色に色分けされ、オレンジとシルバーは「好ましくない特性があると推定される」地域であり、グリーンのところが「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域とされている。グリーンのうち、沿岸から20㎞の範囲(グリーン沿岸部)は「輸送面でも好ましい」地域として、濃いグリーンに色分けされている。
 政府はこの公表は「処分地域を特定するものではなく」、「処分の実現に向けた長い道のりの最初の一歩」としている。このマップを示した後、政府は全国規模の理解活動をこれまで同様に進め、処分地選定と処分実施を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)は「グリーン沿岸部」を中心とした「重点的な対話活動」を展開するとしている。実際には、交付金と「国策」の力によって「理解」の強要が行なわれることだろう。
 政府やNUMOの姿勢は、高レベル放射性廃棄物を地層処分することを既定の方針として固執するもので、きわめて強い疑問がある。これまで誰も受け入れてこなかった厄介な廃棄物であるからこそ、発生源である原発政策そのものに立ち返って議論を進めるべきではないか。また、現行の地層処分計画は、いずれ放射能が環境に漏れ出て、将来世代に負の影響を与えることが懸念される。拙速に地層処分ありきで進めるのではなく、当面は管理を続けながら、よりよい方法を模索することも含めて議論をするべきであろう。
 ともあれ今回のマップの公表は、現行の再稼働ありきの原子力政策や安易な地層処分に反対の声を上げる良い機会を提供したと私たちは考えている。
                                                                                      以上
 
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高レベル放射性廃棄物処分場「適地マップ」公表に当たって
 
 本日、最終処分関係閣僚会議の確認を経て「科学的特性マップ」が公表された。
 これは、これまでトイレ無きマンションと揶揄されるほど後回しにされ、めどが立っていない高レベル放射性廃棄物処分場の立地を進めるために、有望地を示したものだ。有望地とされることへの反発に配慮し、「表現を適切に見直し」た結果、分かりにくくされているが、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」が「適性がある」、「輸送面でも好ましい」が「より適性が高い」地域に相当する。
 国は「『有望地』に『選定』されれば、調査や処分施設が押し付けられてしまうのではないかというのは典型的な誤解に基づく懸念で、マップの提示は調査の受け入れについて自治体に何らかの判断をお願いするものではない」としているが、処分主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)はマップが示されたら「より適性が高い地域」で重点的な対話活動を展開していくとしている。「より適性が高い地域」で地層処分受入れ派が多数になったと見なされれば、国の立地調査申し入れが行われるだろう。
 高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全性は確認されていない。地震列島で地層処分すれば、漏れだした放射能は地下水を汚染し、やがては地上へと到達するであろう。一度環境を汚染してしまえば、除染がいかに困難かは福島の現実が教えてくれている。日本学術会議は2012年に、科学・技術的能力の限界の認識や、暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築を提言している。国民的合意がないまま原発再稼働を急ぎ、処分困難な高レベル放射性廃棄物をさらに生み出しながら、地層処分の必要性を説かれても、誰も納得しないであろう。
 適地提示を機に、これまで原子力と縁のなかった地でも、行き場のない核のごみの矛盾が広く知られることになり、より大きな脱原発のうねりが生まれることだろう。私たちは、破たんしている原子力政策を根本から見直すことを訴え続けていく。
 
2017年7月28日
 
原子力資料情報室、原水爆禁止日本国民会議フォーラム平和・人権・環境、さよなら原発1千万人アクション、核のごみキャンペーン関西、反原発運動全国連絡会、どうする!原発のゴミ・全国交流会岡山県実行委員会